NO18 『抜かずして勝つ剣』

『抜かずして勝つ剣』

友人のH氏は、剣道を生涯の趣味とする教士七段です。
ここ数年、剣道界の最高段位である八段への昇段を目指して精進、挑戦を続けていますが、なかなかうまくいきません。
剣道では、七段になるにも相当の年季と修練を要しますが、その練達の七段の剣士であっても八段への昇段審査の合格率は1~2%程度で、合格者の殆どの方が5~10回受験されています。
正しく難関中の難関であります。
H氏が、最近御縁が出来たある識者に、そのことを話したら「抜かずして勝つ剣を目指しなさい。」とアドバイスされたそうです。
「抜かずして勝つ剣」は、実際に刃を交わすことなく勝を制しますので、血を流しません。
そういう意味で「平和の剣」と言ってもいいでしょう。
日本の建国物語は、大和の地を平定する際、苦戦を強いられた神武天皇が、「刃に血ぬらずして勝つ」ことを叡慮されたと伝えています。
明治維新は、王政復古の大号令に始まりますが、そこでは諸事「神武創業の始に原(もと)づく」旨、宣言されています。
その後の、我が国の歩みは近代国家として目覚ましい躍進を遂げた半面、苦戦、苦闘の連続でありました。
そして今日、日本は、神武創業の故事に倣い「刃に血ぬらずして勝つ」ことに思いを致し、「抜かずして勝つ剣」の徳を備えた国となり、世界平和の大業を成就すべき時を迎えているのではないでしょうか。
H氏から聞いた「抜かずして勝つ剣」の話から、気宇壮大な希望の二十一世紀地球村ストーリーが浮かんできました。
もっとも、先ずは私たち自身が身近な人生百般において「抜かずして勝つ剣」の域に達したいものですね。

(合志栄一)

2013年7月1日