NO23『風鈴』

『風鈴』

夏に涼風を呼ぶ風鈴。次のような詩があります。

渾身口に似て虚空に掛かる
東西南北の風を問わず
唯一等に他のために般若を談ず
滴丁東了 滴丁東

 南宋時代の中国の偉大な禅師で、曹洞宗の開祖道元禅師の師である如浄禅師の作であります。
ある道元禅の大家は、不安の絶えない現代人がその不安の根源を断ち切るための法がこの詩に示されていると説いています。
「渾身□に似て」は、風鈴の全身が、□のようであるとの意。
「虚空に掛かる」は、虚空と云う何も無いところに掛かることは出来ないことから、何物にも依存せず、それ自ら在ることを意味しているようです。
「東西南北の風を問わず」は、何物にも依存していないので、東西南北どの方向から吹いてくる風かを、風鈴は問わないということです。
「唯一等に他のために般若を談ず」は、そういう風鈴は、どの方向からの風を受けようとも、等しく発する響きは悉く他のための真理の法となるとの意。
「滴丁東了 滴丁東」は、チリリン チリンと鳴り響く風鈴の音を漢字表現したものです。
不安の根源を断ち切る法は、「虚空に掛かる」の一句に端的に示されているように思われますが如何。この夏、風鈴の音に耳を澄ませながら、そういうことに思いを馳せてみるのもいいかもしれませんね。

(合志 栄一)

2015年7月15日