令和4年2月定例県議会【1.自律分散型地域社会の形成について】

県づくりの基本的方向について

1.自律分散型地域社会の形成について

生かし合いの関係を基本とする自律分散型地域社会を形成していくことが、これからの国づくり、地域づくりの目指すべき方向であると考えます。

そこで先ず、ここで言う「生かし合いの関係を基本とする。」とは、どういうことなのか、私なりの考えを申し述べたいと思います。私は、市議、県議、市長、そしてまた県議と多年にわたり山口の地において地方政治に携わり、様々な課題に取り組み、人の世の移り変わりを見てきました。そして、私なりに到達した一つの世界観があります。それは、私たちが生きている世界は、生かし合いの関係が基本であり、その生かし合いの関係の中に位置付けられ、役割を果たすものが、存在を支持されて存続し、栄えていくということであります。裏返せば、生かし合いの関係の中に位置付けられないものは、時の経過の中で淘汰されていくとの世界観です。このことは、人や企業などの栄枯盛衰においてだけではなく、世の中の制度、仕組み、ルールなどにおいても同様で、そうしたものの改革とは、生かし合いの関係を、時代や環境の変化に対応して改め進化させていく取組であるべきであり、その妥当性は、生かし合いという観点から検証評価されるべきと考えています。

次に、自律分散型ということについてであります。ご案内のように、我が国は、明治維新を経て、徳川幕藩体制という封建制の国家から、中央集権の近代主権国家への転換を成し遂げました。この体制変革の成功により、我が国は帝国主義の時代に、欧米列強の植民地になることを回避し、帝国主義の時代における国際社会の構成単位である主権国家として世界の中で枢要な地位を占めるにいたりました。この明治以来の中央集権の統治構造は、現在も基本的に変わっていません。

思いますに、私が山口市議会議員をしていた昭和50年代は、「地方の時代」ということがしきりに強調されていました。その後、そうした主張は、地方分権を促す動きとなり、1999年(平成11年)には地方分権一括法が成立しました。さらに、2015年(平成27年)からは地方創生が担当大臣を置いて推進されて今日に至っています。このように国による地方重視の施策の推進が図られてきているのは確かですが、それが功を奏しているかといえば疑問であります。私たちは、現在の中央集権の構造を残したままでは、本格的な地方活性化はできないことを知るべきなのではないでしょうか。

今日、その中央集権管理型の統治は時代的役割を終えて、新たに自律分散型統治の国家への転換を図るべき時を迎えているのではないか。そうすることにより、日本は新たな活力を生み出し、飛躍を実現していくことが出来るのではないか。中央集権管理型の場合よりも自律分散型の方が、国を構成する地域や人、また企業や様々な団体、組織等が有する個々の力を、より引き出し発揮させることが出来るのではないか、私には、そう思えてなりません。

そういう思いの背景には、デジタル技術の進化とインターネットの普及がもたらしている組織の在り方の劇的な変化があります。これまでは、ピラミッド型にイメージされる中央集権管理型の組織が一般的でしたが、これからは、網の目でイメージされる多極分散型の組織が増えていくと見ています。その網の目多極分散型組織を成り立たせているのが、デジタル技術でありインターネットを含むネットシステムでして、そのテクノロジーに支えられた多極分散型組織は、組織構成員のマンパワーの最大化においても、課題解決の最適解の形成という面においても優れており、次第に従前のピラミッド型組織に比して優位性を持つことが周知され、広まっていくのではないかと予想しています。ただ、そのためには多極を構成する個々の存在が、組織の目的や方向性を共有し自律的に役割を果たしていくことが求められます。従って、網の目多極構造で自律分散型の組織が、これからの時代、望ましい組織の在り方になっていくと考えられ、そのことは、国の在り方においても同様なのではないかと思う次第です。

インターネットが普及し高速大容量の情報通信インフラの整備が進んでいる我が国においては、既に、ハード面においては、国の統治の在り方を、中央集権型から自律分散型に転換していく素地は整っていますし、現岸田政権が掲げるデジタル田園都市国家構想は、その環境をより望ましい方向にレベルアップしていくものと思われます。岸田総理は、自らが提唱する新しい資本主義に関して、今年の文藝春秋2月号に寄稿し、その中でデジタル田園都市国家構想を、地方を重視する「新しい資本主義」実現に向けた成長戦略の重要な柱と位置づけ、この構想実現のため、デジタル基盤を、道路・港湾・空港のように公共インフラとして整備する必要があり、海底ケーブルで日本を周回するデジタル田園都市スーパーハイウェイを3年程度で完成させ、日本中津々浦々どこにいても、高速大容量のデジタルサービスが使えるようにする旨、述べています。願わくば、私は、この地方重視の施策としてのデジタル田園都市国家構想が、これまでの中央集権管理型統治における地方重視路線の延長ではなく、その域を超えてデジタル基盤が整った国における望ましい統治構造の在り方を追求する取り組みとなることを期待するものであります。そこで、お尋ねです。

ア.都道府県を極とする自律分散型国家への移行について

その1は、都道府県を極とする自律分散型国家への移行についてであります。

私は、国の統治構造の中央集権型から自律分散型への転換は、明治維新のように一挙に体制変革するというのではなく、順を追ってだんだんにという意味での漸進的移行により転換を図っていくのが現実的で、その第一段階は、都道府県を極とする自律分散型国家への移行だと考えています。そのためには、国メニューに沿い、国査定を経た地域活性化策だけに予算が付くという在り方は、改められなければなりません。そして、それぞれの都道府県内における地域活性化策の実現及び地域課題の解決は、基本的に都道府県と域内市町とで取り組むことが出来るよう必要な財源・権限・情報の確保が保証されている仕組みの構築が図られるべきと考えます。ついては、そうしたことも含め、都道府県を極とする自律分散型国家への移行に向けて、山口県からその動きを起こしていくことを期待するものですが、このことにつきご所見をお伺いいたします。

→(知事答弁

イ.山口県における自律分散型地域社会の形成について

お尋ねその2は、山口県における自律分散型地域社会の形成についてであります。私は、デジタル技術やインターネットなどのテクノロジーが、自律分散型組織の比較優位を実現していると申し上げましたが、中国における共産党統治のツールとしてデジタル技術が駆使されていることからも明らかなように、使い方によっては、人を管理支配する強力な手段ともなるのがデジタル技術であります。要は、デジタル技術は、人の思いを形にする上において極めて優れた技術であることからして、どういう思いで、どのような地域社会を実現していくためにこの技術を活用していくのかが、政治行政に携わる者には問われることになります。そこで、そのことに関心を向け私なりに至った結論が、生かし合いの関係を基本とする自律分散型地域社会の形成を目指すのが、デジタル化によって実現すべき望ましい方向であるということです。
このことも、その方向性をもって漸進的に進めていくべきで、本県の人、企業、様々な組織、団体等のそれ自体の在り方やネットワーク、また、公共交通や医療の在り方など県民の生活にかかわる事業の仕組み、更にはオープンイノベーションなどの産業振興に係る環境整備等、本県のあらゆる分野においてそれぞれの構成単位が、デジタル技術を活用して自律分散しながら生かし合いの関係でつながっている、そういう意味での生かし合いの関係を基本とする自律分散型地域社会の形成こそ、村岡知事が目指される「活力みなぎる山口県」の実現に至る道であると考えます。ついては、このことにつきご所見をお伺いいたします。

→(副知事答弁