令和4年6月定例県議会 (4)デジタル化の推進について

1.県政と大学の連携について

(4)デジタル化の推進について

最後に、デジタル化の推進に関し大学との連携についてお伺いいたします。村岡知事は、全国知事会のデジタル社会推進本部の本部長でもあり、本県の県政運営においてデジタル化の推進には、特に力が入っているように感じています。ただ、本県のデジタル化に関する施策は、どういう関係者により、どのような議論を経て政策が形成され、施策が推進されているのだろうかとの思いがあります。率直に申し上げて、本県のデジタル化は、様々なデジタル化への取組はあるものの、個別的な業務・製造プロセスのデジタル化であるデジタライゼーションの域にとどまっていて、県民の立場に立った全体的、構造的なデジタル化を意味するDX(デジタル・トランスフォーメーション)が進んでいるとは思えません。しかし、県のデジタル化に関する施策には、DXの言葉が、ふんだんに出てきます。
令和4年度の県予算では、「やまぐちDX推進事業」に3億円余の予算措置がなされていますが、この事業のメインは山口市熊野町のニューメディアプラザ10階にある「やまぐちDX推進拠点Y―BASE」の運営事業です。予算概要にあるこの事業の説明を見ますと、「専門スタッフを配置し、DXコンサルティングや技術サポートによる多様な分野におけるDXの推進」とあります。実は、私はこの施設を訪ねました。そして、ここの専門スタッフの方々が、使命感をもって熱心に職務を遂行しておられる様子には感心致しましたが、果たして此処が本県のDX推進拠点と言えるのだろうかとの思いを持ちました。ここで説明を受け、体験したデジタル技術は、私の理解では、デジタライゼーションに関するものだったからです。
私は、こういう施設があることの意義は認めるものです。ただ、デジタル化に係る事業を担っている民間事業者が、一般市民や企業または子供たちにデジタル技術の可能性を知ってもらうために取り組んでいいはずの事業だなとの思いを、正直持ちました。
私は、本県のデジタル化を進める上においては、もっと大学との連携を進めるべきだと考えています。一口にデジタル化と言っても、デジタル化には三段階あります。第一段階は、アナログ・物理データのデジタル化で、デジタイゼーションと言われています。様々な情報を、デジタル情報に置き換えるデジタル化です。第二段階は、デジタライゼーションで、個別の業務・製造プロセスのデジタル化です。本県のデジタル化は、概ねこの段階が進行中だと見ております。この第一段階のデジタイゼーション、第二段階のデジタライゼーションを土台にして進められる第三段階のデジタル化が、デジタルトランスフォーメーションでDXと称されています。このDXは、組織全体且つ横断的な業務・製造プロセスの構造的なデジタル化で、個別最適と全体最適を同時に実現するものです。ビジネスモデルにおいては顧客起点による構想が求められます。
山口県のデジタル化は、村岡知事の熱心な取り組みにより、第一段階を経て第二段階に至り、いよいよ本格的に第三段階のDXに向かおうという地点に立っていると見るのが、現状の正確な認識だと思います。
そうした認識に立ってこれからの本県のデジタル化推進の取組を考えるとき、
県民起点で県全体のデジタル化を構想していく力を持つ必要があります。その力は、デジタル化についての知識・技術は当然ですが、更に人間・社会のことも含めた幅広い総合的な知の力があって発揮されるものと考えられます。私が、県のデジタル化の推進において大学との連携を進めるべきと主張する理由は、そこにあります。
2020年、25年ぶりに科学技術基本法の本格的な改正が行われまして、これまで科学技術の規定から除外されていた「人文・社会科学(法では「人文科学」と記載)」に係るものを、同法の対象である「科学技術」の範囲に位置付けました。このことに関し令和3年に閣議決定された「科学技術・イノベーション基本計画」は、その背景について次のように説明しています。
「科学技術政策が、一人ひとりの価値、地球規模の価値を問うことが求められるようになり研究開発だけではなく、社会的価値を生み出す政策へと変化する中、人文・社会科学の「知」と自然科学の「知」の融合による、人間や社会の総合的理解と課題解決に資する「総合知」の創出・活用がますます重要になってきた。」と。そして、我が国が、直面する様々な課題を解決していくためには、自然科学のみならず人文・社会科学も含めた多様な「知」の創造と、「総合知」による現存の社会全体の再設計、更には、これらを担う人材育成が避けて通れないと、この基本計画は指摘しています。
先般5月に、山口大学、山口県立大学、山口学芸大学の三大学は、文部科学省のSPARCと称する「地域活性化人材育成事業」に応募し、令和5年秋に大学等連携推進法人を設置し、大学や学部・研究科の枠を超えて、人間中心の視点から地域課題の解決に貢献する文系DX人材の育成に取り組もうとしています。
私は、国の新たな科学技術政策の要請にこたえる取組としてこのことを評価し、この教育計画で育った文系DX人材が、本県のみならず我が国のDXを担うようになることを期待しています。そしてまた、そういうDXを担う人材を育てる大学の知見や人材が、現在本県が進めようとしているDXを、実りあるものにするためにも生かされることを期待するものです。
以上、縷々申しましたが、いずれにせよ県民起点で一人ひとりの多様な幸せ(Well-Being)を実現できる県づくりに向けて本県のデジタル化を進め、DXを実現していくためには、総合知を結集して県全体のデジタル化を構想設計するプロセスが不可欠であり、そのためには大学との連携が重要と考えます。ついては、このことにつきご所見をお伺いいたします。

(部長答弁)