1.電力対策について
(2)県の電力行政
私は、主たる役割が上関原発建設計画に係ることである県の電力行政の現状を終わらせる決断の時を、本県は迎えていると考えています。
これまで何度も議会において指摘してきたところでありますが、将来にわたって上関原発が建設されることはあり得ません。民主党の菅政権の時に閣議決定された「エネルギー基本計画」は、2020年までに我が国の総発電の50%以上をゼロ・エミッション電源にするため原子力の新増設を少なくとも14基以上とする内容で、その計画において建設が位置付けられていたのが上関原発でした。その後、東日本大震災が発生し福島第一原発が津波に襲われて陥った過酷事故は、偶然の結果が良い方向に向いたため東日本壊滅という最悪事態は回避することができましたが、国の存立自体を脅かすリスクを原発が内包していることが明らかとなりました。このため、原発新増設の計画は改められ、その後のエネルギー基本計画においては「原発への依存度は可能な限り低減していく」方針が明記されてきました。こうした国のエネルギー政策の延長線上に上関原発の建設はあり得ないことは明白です。
私は、昨年の2月県議会で、今後の我が国のエネルギー政策において原発が担う役割は補完的なものとの見方を示しました。現岸田政権は、原発推進に転じたかのように報じられていますが、その中身は既設原発の再稼働と運転期間の延長が主であって原発の補完的役割をやや強化して延長しようというものであります。従って、上関原発の建設は、岸田政権による原発推進の視野には入っていないと見て間違いないと思われます。
資源エネルギー庁の原子力国際戦略検討小委員会の委員を務めた経歴を持つ評論家市川真一氏は、原子力産業新聞に昨年11月、「原子力利用に一歩踏み出した岸田政権」と題して寄稿し、「政府、電力業界にとって残された課題は、福島第一原子力発電所の事故前に既に建設の初期段階にあった東京電力・東通1号機、建設準備中だった日本原電・敦賀3・4号機、東北電力・東通2号機、中国電力・上関1・2号機、九州電力・川内3号機、計7基について結論を出すことだろう。」と指摘しています。そして、「上関原発1・2号機、東通原発1・2号機の4基は、炉型が沸騰水型軽水炉(ABWR)で、福島第一とベースは同一の沸騰水型であることも論点になる可能性は否定できない。」と述べ、上関原発建設計画が国民の理解を得ることの困難さを示唆しています。
その上で、岸田総理が原子力の活用継続に一歩踏み込んだことを評価し、次のように結んでいます。「再生可能エネルギーと原子力、水素(アンモニア)を組み合わせ、且つ使用を避けられない化石燃料については、二酸化炭素回収・有効利用・貯留(CCUS)などの技術を活用してカーボンニュートラルを達成する・・・これが次世代の日本のエネルギー戦略の基本になる道筋がようやく見えてきたと言えるだろう。」と。
中国5県のエリアでこの道筋を展望した場合、上関に建設されるべきは原発ではなく将来アンモニア発電への移行も可能なCO2回収型の石炭ガス化複合発電(IGCC)もしくは同様CO2回収型の石炭ガス化燃料電池複合発電(IGFC)であると考えます。中国電力は、広島県大崎上島町の瀬戸内海の島でこのIGCC、IGFCの実用化に向けて実証実験を行っており、その成果を同じ瀬戸内海に面する上関で生かすことが望ましいと考えます。
中国エリアにおける原子力発電は、島根2号機の再稼働が認められ、既に建設が完成している島根3号機の営業運転が開始されれば充分で、あえて世論の強い反発を押し切ってまで上関原発を建設する選択は、もはやあり得ないと見ています。
上関にCO2回収型カーボンフリーのIGCC若しくはIGFCを建設した場合、将来的には水素のエネルギーキャリアであるアンモニアの混焼、更にはアンモニア専焼の発電への移行も想定されます。燃やしてもCO2を出さないことから脱炭素の切り札としての期待が高まっているアンモニア発電が、上関において実現すれば中国エリアにおける電力供給は、主に再生可能エネルギーと原子力そしてカーボンフリーの火力により行われることになり、カーボンニュートラルの達成に大きく近づくことになります。
本県は、瀬戸内コンビナートにおいて全国の1割の水素を生成する水素先進県であり、そのことを本県産業の強みとして活用する施策の推進を図っていますが、水素のエネルギーキャリアであるアンモニアによる発電への活用も検討されていいテーマであると考えます。
以上申し上げたことを踏まえ、お尋ねいたします。本県の電力行政は、上関原発建設計画を、CO2回収型の石炭ガス化複合発電(IGCC)若しくは石炭ガス化燃料電池複合発電(IGFC)に変更する方向でリーダーシップを発揮し役割を果たすべきと考えますが、ご所見をお伺いいたします。
→(理事答弁)