令和6年6月定例県議会 農業試験場跡地利用について(1)

1.  跡地利用の目的意思について

平成31年1月に始まった山口県農業試験場跡地利用(以下、跡地利用)についての県と山口市の検討協議会は、基本構想の策定やサウンディング型市場調査等を経て、現在、基本計画の策定に向けて、その素案のとりまとめを図る段階、いわば最終段階にきているようであります。

ただ私は、この跡地利用についての検討協議の経緯及び関係資料をつぶさに見て、現時点で示されている内容は、跡地利用の目的意思が明確でない、跡地利用の焦点が絞り切れていないとの感を持ちました。

この跡地は、18.7haと広大な敷地であることに加え、山口市と防府市を結ぶルート上に在ることから、その跡地の利活用は山口市のみならず防府市も含めた県央部の広域的なまちづくり、ひいては山口県全体の将来像の中において位置づけられる必要があると考えます。 従って、この跡地利用の構想及び計画は、その目的意思をもっと明確にする必要があるのではないかと思う次第です。

山口市は、平成の時代に二つの大規模な土地利用プロジェクトに取り組みました。一つは、現在、山口情報芸術センタ―、NHK山口放送局、山口ケーブルビジョンが立地している中園町一帯の整備プロジェクトです。もう一つは、新山口駅及びその駅北一帯を整備開発するプロジェクトであります。

前者の中園町一帯には,元々県立体育館や市民球場そして県立山口中央高校がありましたが、情報化の進展という大きな時代の趨勢の中で情報文化都市づくりの拠点整備を図ろうとの山口市の強い意思があり、県の施策との整合性も図られ、県立体育館はその機能を維新公園のアリーナに移して解体、市民球場は宮島町にあった県設野球場とともに宮野に移転、山口中央高校は、一旦現地建て替えの計画が決定されていたのが変更されて宮島町への移転となりました。このため、宮島町にあった県設野球場は宮野移転となり、運転免許試験場は、当時の小郡駅南に移転し山口県総合交通センターとなり、その跡地が山口中央高校の敷地となりました。

山口情報芸術センターは、その建設を巡って市民間で大きな賛否の議論がありましたが、そのプロセスを経て建設され、今日では情報文化都市やまぐちを象徴する施設として意欲的な企画に取り組み発信して、内外の注目を集め続けています。山口中央高校の現地建て替えの計画変更がなければ、今日の中園町一帯の整備は実現していなかったと思われることから、一旦県の教育委員会が決定したことであっても、山口市が情報文化都市づくりという明確な土地利用の目的意思をもってその計画変更を働きかけて実現し、目的に沿った拠点整備を成し遂げていったことは評価されていいと思っています。

後者の、新山口駅及びその駅北一帯の整備開発は、新山口駅ターミナルパーク整備ということで事業化が図られました。その目的意思は明確で、交通の要衝であるといった立地特性を生かし、新山口駅を含めた交通結節点の機能を高める基盤整備を行うとの考え方のもと事業は推進されました。

新山口駅は、表口・新幹線口の駅前広場が県の玄関にふさわしい景観デザインに配慮した整備が行われ、交通結節点としての機能向上が図られました。また、通行機能だけではなく賑わい、交流、たまりなどの機能を魅力的に装置した南北自由通路が整備され、駅南北の移動の円滑化と一体感の創出に加えて、快適な都市空間が形成されています。さらに、駅北地区には、展示・コンベンション・イベントの3つの機能を併せ持つ多目的ホールとしてのKDDI維新ホールが建設され、地域高規格道路山口宇部道路の長谷IC と新山口駅を結ぶアクセス道路も完成しました。こうした、「交通結節点機能の強化」という明確な目的意思の下に構想・計画され推進されている「新山口駅ターミナルパーク整備」は、山口市及び山口県の振興において交通の要衝地が担う役割を的確に実現しています。

では、農業試験場跡地は、どういう目的意思のもと整備されようとしているのでしょうか。令和5年3月に策定された山口県農業試験場跡地利用基本構想(以下、基本構想)は、サブタイトルが~新しい「未来のまち」モデルの構築に向けて~となっていまして、18.7haの敷地に新しい「未来のまち」のカタチを具体的に実現し、それを核として県下の他市町に波及させ、本県における未来のまちづくりを推進していこうとの目的意思が読み取れます。基本構想は、「やまぐち未来のまち創造プロジェクト」の実施ということで、「みんなで紡ぐ 幸せのまちづくり」をコンセプトにして、1.生涯活躍のまちづくり、2.スマートシティの実現、3.脱炭素化の推進の3つの政策テーマに取り組み、多世代共生、地域交流、子ども、安らぎ・憩い、学・遊・楽、チャレンジ・しごとを構成要素としてゾーニングし、「未来のまち」モデルを実現しようとしています。

私は、そうした「未来のまち」のカタチの実現を目指そうとすること自体を否定する者ではありません。ただ、「未来のまち」のカタチの全体像を、モデルとしてこの跡地において実現しようとすることには、根本的な疑問を持つ者です。18.7haの敷地は、「未来のまち」の特定の役割や機能を担うところとしては充分な広さを有していると思われますが、様々な機能をトータルして「未来のまち」としてのカタチを実現して示すには充分でないというより全く狭く、そのためには幾数倍もの広さが必要と考えるからです。この跡地において、「未来のまち」のカタチをモデルとして示すという土地利用の方向、即ち目的意思は、この跡地の広さと適合していません。その結果、現時点で示されている跡地利用の内容は、「未来のまち」のアイデアが網羅的に語られていますが、まとまりを欠いています。私は、先ずそのことを指摘してお尋ねいたします。

山口県農業試験場の跡地利用は、ここに「未来のまち」モデルを構築するというのではなく、山口市の未来のまちづくり、更には山口県の未来の県づくりに向けてどういう役割を担うところとしてこの跡地を利活用するかという観点から具体的に問い、利活用の目的意思を明確にすべきであると考えます。よって、農業試験場跡地利用の計画策定に向けた取組は、改めて目的意思を明確にすることから再スタートすべきであると考えますが、ご所見をお伺いいたします。

 

→(知事答弁