1.コロナ対応と県政運営について
(1)財政運営について
イ.県債の発行について
県債の発行に関して先ず申し上げておきたいことは、一旦、行財政構造改革で財政の収支均衡を実現した上は、将来に向けた施策の推進、即ち将来への投資に重点的に取り組むべきで、そのためには財政の収支均衡を自己目的化せず、県債発行の増加があってもいいということであります。
県のコロナ対策に関する予算収支を見て痛感したことは、財源面における国の権能が如何に強大であるかということです。それは二つありまして、一つは、財源の確保においてであり、もう一つは、地方財政の管理においてであります。
その一の財源確保の面を、コロナ対策を通して見ていきますと、国は令和2年度に三度補正予算措置しまして、その総額は約80兆円に上りますが、財源は国債の発行によるものです。一方、本県は、コロナ対策のための県債の発行は一切ありません。9月補正で県債が20億円予算計上されていますが、これは7月豪雨災害対策関連事業の財源確保のためであります。
国と地方自治体とでは、起債による財源確保に大きな違いがあります。それは、国は歳入不足が生じると見込まれる場合、赤字国債を発行して財源を確保し充当することができますが、地方自治体の場合は、地方債の発行は原則として建設事業債に限られていて、歳入不足を補う一般財源確保のために赤字地方債を発行することは認められていません。コロナ対策のために国は国債を発行して財源を確保しているのに、県債によるコロナ対策の財源確保がなされないのは、そうした制度上の理由によるものと思われます。
国が、赤字国債の発行で財源を確保することは将来の世代に借金を残し、国の財政破綻を招く恐れがあるとの理由で不安視する見方がありますが、通貨の独占的発行権を有する国が、経済の血液としての通貨の供給を国債の発行を通して適宜図っていくことは、社会経済活動ひいては国民生活を守っていく上においての国の責務であり、そのことにより国の経済力、国力がしっかり保たれていけば国の借金の累積は、そう恐れる必要はないと見ております。そのことに関する論議はさておき、いずれにせよ国は、国債の発行と通貨発行の独占的権限により財源確保に絶大な権能を有していることは、間違いありません。
次に、もう一つ国の地方財政の管理についてであります。平成11年に地方分権一括法が成立して地方分権は大いに進んだように見えます。確かに、国と地方公共団体は上下関係ではなく対等の関係との原則に立っての法改正が行われ、機関委任事務は廃止され、地方債の発行は許可制から協議制に改められました。さらに財政状況が一定の水準を満たし健全性が保たれていれば、協議は不要で事前の届け出があれば地方債を発行できるようになりました。しかし、協議なしに事前の届け出で地方債の発行ができる財政水準の自治体も(山口県もそうですが)、ほとんどは国と協議を行い同意のうえで起債しています。従って、自治体が一般財源を確保する上での有力な手立てである地方債の発行は、制度上その自由度は増したかに見えますが、実際上は今日も地方債に係る国との関係は実質変わっていないといっても過言でないでしょう。また先程、赤字地方債は認められていないと申し上げましたが、実は近年、ご案内のように地方交付税による財源保障が十分でないため生じた地方財政収支の不足額を補填するために臨時財政対策債の発行が、国が示す限度額まで認められるようになりました。これは実質、赤字地方債に相当するものですが、その元利償還分は後年度、基準財政需要額に算入されて地方交付税措置されることとされていまして、そういうことも含め地方債の発行は,国が策定する地方財政計画の大枠の中で行われていると見てよく、我が国においては地方財政にも国の管理がしっかり行き届いていると言えます。
そこでお尋ねです。以上申し上げましたように、国が財源も含めて地方財政をしっかりコントロールしている現状は、財政力の地域間格差がある中において全国のどの地域においても一定水準の行政が等しく担保されるという意味で評価されていい在り方と見做しますが、私は、地方債の発行に関しては、もう少し自由度を高め対象を広げて道路や公共施設などの建設事業に対してだけではなく、産業振興策としての設備投資などへの補助財源やコロナ対策のような緊急事態対応ための自主財源の確保にも県債の発行ができるようにするのが望ましいと考えています。また、そうした将来への投資に相当する事業や緊急事態対応のためには、県債の増加も容認する柔軟な財政運営の姿勢が、県にはあってもいいと考えるものです。ついては、現在の地方債制度についての見解と、本県における今後の県債発行の方針につきご所見をお伺いいたします。