(2)私立学校耐震化の促進について
それでは、続きまして、重点施策と思うものについて取り組み方針をお伺いいたします。
第一は、私立学校耐震化の促進についてであります。
県政は、すべて県民のためにある。命の安全に格差があってはならない。こうした観点から、改めて私立学校の耐震化への取り組みについてお伺いいたします。
私が、私立学校の耐震化について質問するのは、これが三度目であります。最初は、平成十九年十二月県議会でありまして、知事は、このときの質問の趣旨をしっかり受けとめていただいて、平成二十年度予算においては、私学の耐震化改築工事に対して六分の一の補助をすることを、単県補助事業として創設されました。
二回目の質問は、平成二十年六月県議会で、二井知事が四期目に向けての夏の知事選前に公表されたマニフェストにおいて、私立学校の耐震化率を平成二十四年度までに八○%にするとされたことを取り上げまして、その実現に向けての具体策をお伺いしたところであります。
その後、四期目当選を果たされた知事は、平成二十一年度予算においては、国の地方活性化・生活対策臨時交付金を活用し、単年度限りということで、私立中学・高校の耐震化改築工事に対し三分の一単県補助することとされました。
そして、平成二十二年度は、耐震の改築工事への単県補助は再び六分の一となりましたが、そのために借り入れをした場合、その支払い利子分については全額補助する支援策を新たに講じられました。
このような本県の支援策は、他県に先んじたものとして評価されていいと思いますが、それでも、ことしの四月一日現在の本県の私立中学・高校耐震化率四三・三%は、四十七都道府県中最下位で、全国平均耐震化率六九・六%にも遠く及びません。
耐震改修促進計画の対象施設の耐震診断実施率は、平成十九年度末に九・三%であったものが、平成二十二年度末には八○%となる見通しですが、肝心の耐震補強、耐震改築の取り組みは進捗しておりません。
県が私立中学・高校の耐震改築への支援策を創設した平成二十年度以降で、耐震改築を行った私学は、梅光女学院の一校のみで、同校は平成二十一年度に普通教室等を耐震改築し、県からの補助を受けております。
改築ではなく改修による耐震補強は、国が三分の一、県が六分の一で、あわせ二分の一の補助があるにもかかわらず、平成二十年度、二十一年度は実績がなく、平成二十二年度は、十一月補正で追加計上された学校も含めて三校六棟の補強工事が実施される予定であります。
本県の私立中学・高校で耐震化工事が必要と診断された数は、平成二十一年度末で十四校、四十三棟であります。この時点での耐震診断実施率は六一・三%でありますので、すべての私学において耐震診断が実施されれば要耐震化の数は、さらに大幅に増加するものと思われます。
こうした現況からすると、二井知事が加速化プランにおいても示している平成二十四年度までに、私立中学・高校の耐震化率を八○%にするという目標は、ほとんど実現の見通しが立っていないと言っても過言でありません。
一方、このこととは対照的に、公立学校の耐震化は確実に進んでおります。県立の高校及び特別支援学校の耐震化は、加速化プランでは平成二十四年度までに耐震化率九○%を目指すとされておりますが、この目標は一年前倒しで、平成二十三年度じゅうに実現する方向で次年度予算化が図られようとしています。
県下の市町立小中学校の耐震化は、国の支援措置も手厚くなってきており、確実に進んでいくものと思われます。
加速化プランの総仕上げとなる次年度予算編成において、優先すべき重点事業に位置づけられている学校の耐震化の推進は、当然に私立学校も含めてのものであるはずですが、現状のまま行けば、一人私立学校が取り残されてしまいます。
私は、本県が私立学校耐震化促進の必要性を認め、施策を講じてきていることは評価するものです。しかし、さらに思い切った大胆な支援の施策を講じなければ、私学も含めた学校耐震化の目標達成は不可能であります。
私学の耐震化が進まない最大の理由は、私学の経営環境が厳しいからであります。少子化の影響で生徒数が減少する中、県からの運営費補助が私学の経常経費のおよそ二分の一を占め、どうにか現状維持が精いっぱいの学校経営になっていて、耐震化への投資の余裕がないというのが、本県の多くの私学の実情と思われます。
私は、国や県は、こうした私学の実情を踏まえた上で、どういう支援策を講ずれば、私立学校の経営者は耐震化に踏み切ることができるかを考えなければならないと思います。
私は、そうした観点から、私立学校の耐震化への取り組みを促すことになる具体的な支援策として、基金の創設を提案いたします。
私学の耐震化は、現在の進捗状況からして、平成二十四年度までに加速化プランの目標を達成することは無理であります。
そこで、二井知事が、このことにおいて任期中になすべきは、任期後も継続する私学耐震化の支援策を設けることであると考えます。
もともと県は、平成十九年に「山口県耐震改修促進計画」を策定しておりまして、この計画において、平成二十七年度までに私立学校施設の九○%以上を耐震化する目標を設定しております。
よって、平成二十三年度から二十七年度までの五カ年で、私立学校施設の九○%以上を耐震化することを目標に、私学の耐震化への取り組みを資金面から支援することを目的にした基金の創設を提案いたします。
平成二十一年に、一校耐震改築をした私学があったのは、この年に限り耐震改築への支援が六分の一ではなく三分の一と手厚くなっていたからだと思われます。この支援のかさ上げの財源になったのは、山口県地域活性化・生活対策基金でしたが、一年で使い切ってしまいました。
平成二十二年度に、耐震補強に三校が取り組むことになったのは、補強の場合も含めて耐震工事のための借り入れの利子分は、全額補助する支援策が打ち出されたからであると思われます。ところが、この補助は加速化プランの計画期間である平成二十四年度が期限となっております。
こうしたことから、私学の耐震工事への支援のかさ上げや、耐震工事のための借り入れ利子分への補助が、私学の耐震化への取り組みを促すためには有効と思われまして、そういうことへの活用を目的とした基金の創設が検討されていいと思う次第であります。そして、この基金の原資には、山口県振興財団についてのお尋ねの際に述べましたように、この財団の基本財産である中国電力株の売却益を充てること等も考慮されていいのではないでしょうか。
そこで、改めてお尋ねいたします。平成二十三年度から二十七年度までの五カ年で、私立学校施設の九○%以上を耐震化することを目標に、私学の耐震化への取り組みを資金面から支援することを目的にした基金を創設すべきと考えますが、御所見をお伺いたします。
【回答】◎総務部長(岡田実君)
私立学校耐震化の促進についてのお尋ねです。
私立学校の施設につきましては、私立学校法や私立学校振興助成法の趣旨から、本来、設置者である学校みずからが自主的に整備されることが基本でありますが、県といたしましては、私立学校施設の安全性を確保する観点から、その耐震化につきましては、特に、私立学校の経営環境の厳しさや学校施設の老朽度等にかんがみまして、県単独の支援制度の拡充に努め、その促進を図ってきたところであります。
具体的には、耐震化に必要な診断から、補強・改築工事に対する助成、さらには、耐震化工事に係る借入金に対する利子補給に至るまで、各段階において支援する、全国的にも例の少ない、きめ細かく手厚い県費補助制度を設けているところであり、さきの九月補正予算におきましても、利子補給制度のさらなる拡充を図ったところであります。
こうした中で、お示しもありましたように、各私立学校における耐震診断が約八割と進展したことなどから、多くの学校で、充実した県費補助制度を活用して、耐震化工事を前倒し実施することを検討するなど、耐震化に向けた取り組みが加速化してきており、今回の補正予算案におきましても、所要の助成額を計上しているところであります。
したがいまして、県といたしましては、私立学校法等の法の趣旨からも、御提案のありました基金の創設までは考えておりませんが、加速化プランに掲げる目標に向けて、全国トップレベルにある県費補助制度を活用し、それぞれの私立学校の耐震化の進捗状況に応じた個別具体的な支援を行い、私立学校の耐震化の促進を図ってまいりたいと考えております。