平成22年9月定例県議会 (1)治水対策について

(1)治水対策について

「コンクリートから人へ」は、現民主党政権の基本的な姿勢を示す政策スローガンですが、人々の命と暮らしを守るコンクリート、公共事業が、今日の時代においても多くの方面で必要とされていることは言うまでもありません。この耳ざわりのいいスローガンに影響されて、地域と人々の暮らしに必要な公共事業がおろそかにされるようなことは、あってはならない。最初にまず、このことを強調いたしまして、今回は治水対策についてということで数点お伺いいたします。
治水の根幹をなしてきたのは、御案内のとおり河川の整備であります。戦後、我が国は、死者・行方不明者が一千名を超える水害が、七回発生いたしております。犠牲者が最も多かったのは昭和三十四年の伊勢湾台風でありまして、死者・行方不明者は五千九十八名を記録しました。しかし、これを最後に水害の被害は、人的な面においても、被災家屋数においても激減いたしました。水害発生の原因となった台風の勢力規模は、その後襲来した台風においても、そう変わりなくとも、被害が減少した背景には、堤防やダム等の河川整備が着実に進んだことがあります。
国は、平成九年に新河川法を施行し、現在は、この法に基づき河川整備は進められています。この新河川法は、従来の工事実施基本計画を、河川整備基本方針と河川整備計画とに分けました。河川整備基本方針は、河川整備の百年の大計とも言うべきもので、河川整備の長期的将来像を示すものであります。河川整備計画は、当面する二十年ないし三十年間に行う整備事業及びそのことにより達成すべき整備水準を具体的に計画として示したものでございます。
山口県では、現在、県管理の河川のうち、二十八河川の水系において河川整備の基本方針と整備計画の両方を策定しており、四河川の水系において基本方針のみを策定しております。
そこで、治水対策についての質問の第一は、この河川整備計画についてであります。
ただいま申し上げましたように、本県では、二十八の県管理河川水系において河川整備計画が策定されておりますが、気になりますのは、近年の異常気象とも言うべき雨の降り方にも対応できる内容になっているだろうかということであります。
より具体的に言えば、昨年やことしの豪雨で堤防越水による浸水被害を生じた椹野川、厚狭川、木屋川は、整備計画が実現しておれば、そうした越水被害は生じなかったのかということであります。
知事は、さきの七月臨時議会の議案説明において、「昨年の七月二十一日豪雨災害に続き、過去に経験したことのない大規模災害が、二年連続で発生したことを踏まえ、新たに防災等の専門家からなる検討委員会を設け、河川ごとに整備内容を定めた河川整備計画等をしっかり検証し、県民生活の安心・安全の基盤づくりを一層推進していく」と表明しておられます。また、質問に答えて「集中豪雨による大規模災害が二年連続して発生したことを踏まえ、このような災害は、いつでもどこでも起こることを想定して、さらなる防災対策の強化を図っていく」と述べておられます。
福岡管区気象台は、異常気象レポート二○○九を発表し、九州・山口県における観測結果から得られた大雨増加の長期傾向は、全国と同様の傾向を示しており、地球温暖化の影響があらわれている可能性があると記しております。
つきましては、検討委員会の検証結果の報告も含め、本県が策定している河川整備計画は、今後予想される大雨にも対応できる内容となっているのか、御見解をお伺いいたします。
河川整備計画についてお尋ねしたいことの第二は、財源確保の見通しについてであります。
国は、平成十五年に、社会資本整備重点計画法を制定し、従来の九本の事業分野別の計画を一本化しました。一本化された各事業分野は、道路、交通安全施設、空港、港湾、都市公園、下水道、治水、急傾斜地、海岸の九本であります。これ以降、国は、五年間を期間とする社会資本整備重点計画を策定し、これを閣議決定して社会資本の整備を進めることとしております。現在は、平成二十年度から二十四年度を計画期間とする社会資本整備重点計画が閣議決定され、進行中であります。
河川整備も、この計画に基づいて遂行されているわけですが、私は、二つの理由で河川整備計画の財源が、将来にわたって確実に確保されるのか不安を抱いております。その一つの理由は、この計画では、河川整備は、治水事業の分野に記されておりますが、河川整備計画についての言及は何らないということであります。もう一つの理由は、この計画が、事業額を示していないということであります。
本県の、二十八水系別河川整備計画の事業額総計は三千七十三億円に上りますが、平成二十一年度末実施済み事業額総計は千百八十二億円でして、整備事業進捗率は三八%であります。この数字をどう見るかは見解の分かれるところでしょうが、私は、本県はこれまで河川整備費をよく確保してきていると受けとめております。進捗率が最も高いのは、三隅川水系で九九%ですが、計画策定から五年以上経過しても、いまだ進捗率が二%の柳川水系、五%の玉鶴川水系、六%の南若川水系等もありまして、本県において河川整備推進の重要性は、いささかも変わっておりません。
こうした中、平成二十二年度から、公共事業への国補助金は廃止され、社会資本整備総合交付金として交付されることになりました。
公共事業の抑制基調が続いている今日、以上のような一連の公共事業に係る国の制度設計の変更が、河川整備計画の財源確保にどう影響するのか、気にかかるところであります。
そこでお尋ねいたします。公共事業の計画策定は、九本の分野別事業計画から一つの「社会資本整備重点計画」に変わり、個別の公共事業への国補助金はなくなり、社会資本整備総合交付金として一括交付されることになりましたが、こうした公共事業に係る国の仕組みの変更は、本県の河川整備計画の遂行に影響はないのか、そして今後の財源確保の見通しはどうなのか、さらに財源確保に向けてどう取り組んでいかれるのか、御所見をお伺いいたします。

【回答】◎知事(二井関成君)
私からは、治水対策に関する御質問のうち、財源確保についてお答えをいたします。
お示しがありましたように、国の公共事業は、平成十五年度以降、道路、治水等の各事業分野ごとに五カ年計画を策定し、これに基づいて事業が進められてまいりました。現在も、形式的には、平成二十年度を初年度とする「社会資本整備重点計画」の期間中であります。
しかしながら、昨年の政権交代で、公共事業そのもののあり方が大きく変わることとなり、国の本年度予算におきまして、公共事業費は前年度比マイナス一八・六%と大幅に削減をされたところであります。その中にあって、河川整備計画も当然例外ではありません。
こうした中、私は、集中豪雨等による洪水被害から県民の生命と財産を守り、県土の保全の活用を図る観点から、治水対策につきましては、本年度予算の編成に当たりまして、厳しい財政状況にはありましても、予算の重点配分に努めたところであります。
具体的には、お示しがありました、国の新たな社会資本整備総合交付金も、これを主体的に活用すること等によりまして、河川整備費につきましては、前年度を上回る一○○・八%の事業量を確保したところであります。
一方、国は、明年度予算におきましても、公共事業費の抑制を継続することといたし、前年度比一○%の削減を概算要求の基準といたしております。このため、全国知事会は、今月六日、「社会資本整備予算の総額確保に関する緊急声明」を発表し、国への積極的な要請活動を展開をしたところであります。
今後、国の予算編成を通じて、公共事業がどのように取り扱われるのか、さらには、明年度からの導入が予定されている公共事業関係補助金の一括交付金化がどのように具体化されるのか、極めて不透明な状況にあります。
私は、これらの動向をしっかりと見きわめて、どこまでも、安心・安全基盤の強化を図るという観点に立って、明年度予算編成に取り組んでいかなければならないと考えております。
いずれにいたしましても、私は、長期的な視点に立って、治水対策を総合的・計画的に進めていくという観点に立って、今後とも、必要な予算の確保に全力で取り組んでまいる考えであります。
そのほかの御質問につきましては、関係参与員よりお答えいたします。

2010年9月30日