(1)観光力の増強について
「秋吉台の地質構造を知ることは、日本列島の生い立ちを知ることになる。」、秋吉台科学博物館発行の「秋吉台3億年」には、こう記されています。
美しい広大なカルスト台地である秋吉台は、その地下に秋芳洞をはじめとする450もの鍾乳洞を蔵しており、学術的価値の高い自然の景勝地として、山口県を代表する観光地になっております。
山口県観光客動態調査によれば、昨年平成24年の県外からの観光客数第一位の観光地は秋吉台・秋芳洞で、694,884人県外から訪れています。以下県外からの観光客数ベストファイブをご参考までに紹介いたしますと、 第二位が岩国市の錦帯橋で649,062人、第三位がしものせき水族館「海響館」で470,884人、第四位が山口市の瑠璃光寺五重塔があります香山公園で466,791人、第五位が萩の松陰神社で450,704人となっております。 次に、インバウンド即ち海外からの観光客の動態を市町別に見れば、県内ビッグスリーは岩国市、山口市、美祢市でして、平成24年は美祢市が第一位で24,988人の外国人観光客が美祢市に訪れています。 その殆どは、秋吉台・秋芳洞を観光したであろうことは想像に難くありません。
このように秋吉台・秋芳洞が、今日も本県を代表する観光地であることに変わりはありませんが、かって年間200万人もの観光客が訪れて賑わっていた当時と較べると、現状はいささかさびしい感がいたします。
この景勝に優れ、学術的価値の高い秋吉台・秋芳洞に、かっての賑わいを回復することができれば、美祢市のみならず近隣の山口市、長門市、萩市、下関市、宇部市、ひいては岩国市を含む全県の観光力アップ、 経済活性化に繋がると見ております。県内で最も離れている岩国市との関連では、昨年12月に開港した岩国錦帯橋空港の復路の利用者の1割強は目的地が美祢市であり、秋吉台、秋芳洞等への観光客であることがうかがわれます。
県が今年の10月に策定した「やまぐち観光推進計画」を見ますと、本県観光の課題として「観光ポイントが分散」していることを指摘していますが、観光地としての評価、実績においても、 地理的位置が県内各地の観光地と観光ルートを組み合わせやすい点においても、秋吉台・秋芳洞を県内観光の核となるポイントとして育てていくことが、山口県全体の観光力増強に繋がるのではないでしょうか。
そこで、本県の観光力増強に向けてのお尋ねの第一点は、山口県観光の核となるポイントに、秋吉台・秋芳洞を位置づけることについてであります。
秋吉台・秋芳洞は、全国的に知名度があり誘客力ある本県を代表する観光地であります。私は、その秋吉台・秋芳洞への特に県外からの観光客が増えることは、県内各地の観光地が潤うことに繋がると見ております。 県外から秋吉台・秋芳洞の観光に来た人たちは、必ず他の県内観光地をセットで観光すると思われますし、宿泊は美祢市は受け入れ能力が小さいので、 大方は周辺の長門市の湯本温泉や山口市の湯田温泉あるいは萩市等になるであろうと思われまして、秋吉台・秋芳洞と県内観光地はウィン・ウィンの関係にあるからです。
ついては、秋吉台・秋芳洞を県観光の核となるポイントとして位置づけ、時代のニーズに応じた観光地としてのリニューアルとブラッシュアップに取り組むことを、県の観光力増強に向けた戦略の柱の一つにすべきと考えますが、ご所見をお伺いいたします。
次に第二点は、ジオパークへの取り組みについてであります。
ご案内のように、美祢市が世界ジオパーク認定に向けて取り組んでいます。
ジオパークとは、「地球科学的に見て重要な自然の遺産を含む、自然に親しむための公園。地球科学的に見て重要な特徴を複数有するだけではなく、その他の自然遺産や文化遺産を有する地域が、 それらの様々な遺産を有機的に結びつけて保全や教育、ツーリズムに利用しながら地域の持続的な経済発展を目指す仕組み」とされています。ジオパークのジオはギリシャ語で、土地、地理、地球などを表す言葉です。
ジオパークには日本ジオパークと世界ジオパークと二通りあり、先ず日本ジオパークの認定を経て世界ジオパークの認定を目指すことになります。日本国内におけるジオパークの評価や認定は日本ジオパーク委員会が行い、 この委員会が、日本ジオパークの認定を受けた地域の中から世界ジオパークの候補を推薦することとなっております。現在、日本国内において世界ジオパークの認定を受けた地域は、京都府・兵庫県・鳥取県の山陰海岸や島根県の隠岐など6地域、 日本ジオパークの認定を受けた地域は、伊豆半島、佐渡、阿蘇など32地域となっております。
美祢市においては、「世界遺産への登録を。」という声もあったようですが、世界遺産とジオパーク双方について議論検討をした結果、世界ジオパーク認定を目指すこととし、平成22年度に策定した「美祢市総合観光振興計画」に、そのことを重点プロジェクトとして掲げました。
その後、平成23年4月に市役所内にジオパーク推進室を設置、翌平成24年3月には、21団体で構成される「美祢市ジオパーク推進協議会」を設立、 この協議会には山口県も宇部県民局長を構成メンバーとする形で参加しております。そして、今年平成25年4月に、日本ジオパークネットワークに加盟申請書を提出、 審査結果は9月に開催された日本ジオパーク委員会において発表されましたが、「拠点施設、パンフレット、解説板等のジオパークを認識できる整備は進んでいない」等との理由で認定は見送りとなりました。
私は、美祢市が世界遺産登録ではなく世界ジオパーク認定を目指すことにされたことを、妥当な判断として評価するものです。美しいカルスト地形を造り、 その地下に秋芳洞をはじめとする巨大な鍾乳洞を育んだ秋吉台は、地球の歴史の中で自然が造りあげた大傑作であり、冒頭紹介しましたように日本列島の生い立ちを知るうえでの貴重な地質構造を、 今日に残している学術的価値が高い自然の景勝地であります。そうした秋吉台・秋芳洞をはじめとする地域の様々な大地の恵みと特質の広がりを、地道ではあっても時の経過とともに着実にブラッシュアップしていく方向として、 世界遺産よりジオパークの方がふさわしい、私は、そう理解しております。
今回は、美祢ジオパークの日本認定は見送りとなりましたが、この地域のジオパークとしての潜在的価値は卓越したものがあり、必ず近い将来、日本ジオパークの認定、そして世界ジオパークの認定に至るものと確信しております。
そして、そのことは結果的に秋吉台・秋芳洞をはじめとするこの地域の観光的価値もさらに高めることになり、ひいては本県観光の底上げにも資することになると思われます。
このような美祢市のジオパーク認定に向けての取り組みに対して、県はこれまで推進協議会の構成メンバーになり、支援の姿勢は取っていたものの、基本的には見守るスタンスではなかったでしょうか。 私は、美祢市のジオパーク認定に向けての取り組みは、県全体の観光力増強にもつながることを認識し、県も支援の姿勢から更に一歩踏み込み、美祢市と共に取り組むということにすべきだと考えます。
そこでお尋ねです。ジオパークの認定は、ジオパークとしての活動や事業がどういうものかということが問われ、そのためのハード、ソフト両面での整備が充分かどうかが審査されることになると思われます。 そうしたジオパークとしてのハード、ソフト両面での整備に、県も美祢市と共に取り組み、必要な役割を担うべきだと考えますが、ご所見をお伺いいたします。
観光力増強に向けてのお尋ねの第三点は、修学旅行についてであります。
明治維新に始まる近代日本の成り立ちを知る上において、また日本列島の生い立ちを知る上において山口県は恰好な県であります。明治維新に関する史跡は、萩市をはじめ県下各地に豊富にありますし、 自然が3億年にわたって造り上げた秋吉台からは、地球の歴史そして日本列島の生い立ちを学ぶことができます。従って、中学校・高校において特別活動として学校教育の一環に位置付けられている修学旅行の行き先として、 山口県は最も相応しい県の一つだと思われますが、実際はそうなっていません。
財団法人日本修学旅行協会が、平成23年度に実施された中学校の修学旅行に関して実態調査を行っておりますが、それによりますと、都道府県別旅行先順位は、 山口県は第18位で、構成比は0.6%であります。因みに、第1位は京都府で構成比は20.7%、第2位は奈良県で構成比は16.3%です。高校については、平成22年度の修学旅行に関して調査し、 見学先上位20位迄を公表しておりますが、そこには山口県の観光地は一つもなく、また、県の観光客動態調査でもそうした実態は十分に明らかにされていません。高校の修学旅行で特徴的なのは、 見学先上位10位迄に、首里城やひめゆりの塔など沖縄の見学地が6カ所含まれていることです。平和教育と今日主流になりつつある体験学習を含んだ修学旅行の適地として沖縄が選ばれるケースが多いようです。
中学生、高校生の多くが修学旅行で沖縄に行き、沖縄の自然や風土に触れると同時に、戦争の悲惨さ平和の尊さを学ぶことは意義あることで、それはそれでいいことだと思います。 ただ同様に、全国の中高生に山口県に来て明治維新の史跡に触れ、秋吉台・秋芳洞を訪ねてほしい、そして近代日本を築いた先人たちや日本列島形成に至る壮大な地球のドラマに思いを馳せ、立派な日本人に育つ糧にしてほしいと願う次第です。
明治維新の史跡と言えば、萩の松陰神社に在る松下村塾が代表的ですが、下関の桜山神社招魂場も感銘深いものがあります。維新の戦いに命を捧げた396柱の志士たちの御霊が、 偉大な指導者吉田松陰先生から奇兵隊小者弥吉といった名もない者にいたるまで、同じ墓標で等しく整然と祀られている様は、士農工商の身分制を超えた四民平等の近代日本への理念が、 維新の戦いには息づいていたことを今日に伝えています。また、平和教育ということでは徳山大津島の回天基地があり、日本の代表的な木の名橋である岩国の錦帯橋、大内文化を今日に伝える山口の瑠璃光寺五重塔など、 修学旅行で訪ねれば子供たちが喜び感動するであろうと思われるところが本県には多々あり、最近の修学旅行の概ね6割を占める体験学習型も、新たな人気の産業観光も、優れた魅力的なプランを提供することが可能とみております。
そこでお尋ねです。以上申し上げましたことから、当然に本県の観光力増強に向けた大事な課題として、加えて全国の青少年のための教育的貢献という観点から、 山口県は県観光客動態調査による正確な実態把握に努めた上で、修学旅行の誘致にもっと力を入れて取り組むべきだと考えますが、ご所見をお伺いいたします。
【回答】◎知事職務代理者副知事(藤部秀則君)
合志議員の観光力の増強に関する御質問のうち、私からは、秋吉台・秋芳洞の位置づけについてのお尋ねにお答えいたします。
本県は、観光地が各地域に分散し、名所旧跡の見学観光が多い中で、日帰り・通過型観光へのシフトが進んできております。
このため、県といたしましては、自然や歴史文化を初め食や温泉など、県内各地域の魅力ある多様な観光資源を組み合わせ、それらを十分に生かした広域観光エリアの形成や、テーマツーリズムの推進等により、宿泊滞在型観光への転換を図っていくことが重要と考えております。
お示しの、全国有数の観光地であります秋吉台・秋芳洞につきましても、こうした全県的な観光戦略の展開を図る中で、その再生や魅力向上等を図っていく必要があります。
このため、県におきましては、これまでも、JR西日本との連携による広域観光キャンペーンの展開や、地域資源を生かした地旅づくり等を通じ、また本年度からは、広域観光力強化事業により、秋吉台・秋芳洞の観光地としての魅力向上に向けた取り組みを積極的に支援してきたところであります。
一方、地元美祢市におきましても、総合観光振興計画を策定され、現在、観光振興条例の制定によるおもてなしの強化や、体験型エコツアーの充実など、計画的、重点的な取り組みが進められております。
こうしたことから、県といたしましては、今後とも、各地域で積極的に進められている地元の主体的な取り組みを支援しながら、全県的な立場に立って、全国に向けた観光情報の発信や広域観光ルートの形成、旅行業者等へのセールス活動等を展開するなど、戦略的、効果的な誘客対策の強化に取り組んでまいりたいと考えております。
県といたしましては、地元市町等と連携を図りつつ、秋吉台・秋芳洞を初めとした本県の多彩な観光資源の魅力を生かし、それらを相乗的に活用しながら、宿泊観光客五百万人の実現に向けた取り組みを積極的に展開してまいります。
その他の御質問につきましては、関係参与員よりお答えを申し上げます。
【回答】◎総合企画部長(藤井哲男君)
観光力の増強についての御質問のうち、ジオパークに関するお尋ねにお答えします。
秋吉台は、カルスト地形や鍾乳洞など、日本列島の生い立ちを知る上で貴重な地質構造を今日に残す、学術的価値が高い自然の景勝地であり、美祢地域のジオパークの認定は、お示しのように、本県観光力の増強につながるものと考えておりますことから、県としても、これまで、美祢市ジオパーク推進協議会への参画や、認定に係る政府要望を行うなど、美祢市の取り組みを支援してきたところであります。
美祢市では、このたびの認定見送りを受け、再申請を目指すため、組織体制の強化を図るとともに、日本ジオパーク委員会から示された課題の解決に向け、中核的人材の確保育成や、山口大学との連携強化などの取り組みを進めることとされたところです。
県といたしましても、再申請に向けた美祢市の取り組みを総合的に支援していくため、関係部局で構成する山口県美祢ジオパーク支援会議を設置するとともに、県と美祢市、合同でプロジェクトチームを立ち上げ、ハード・ソフト両面にわたる取り組みを協働して進め、県として必要な役割を担ってまいります。
【回答】◎商工労働部長(木村進君)
観光力の増強に関する御質問のうち、修学旅行についてのお尋ねにお答えします。
修学旅行の誘致は、大型の誘客だけではなく、将来的なリピーターの確保や本県観光の認知度、イメージの向上にもつながることから、自然や歴史文化、産業資産など、豊富な学習資源を有する本県におきましては、重要かつ効果的な観光戦略の一つと考えております。
しかしながら、修学旅行先は、近年多様化しつつあるものの、依然として、人気の高い関東、関西地方に集中し、さらに航空機を利用した沖縄や北海道方面のニーズが高まっていることから、本県の魅力を生かした誘客対策の強化が強く求められているところです。
このため、県においては、特に近年、農業や漁業、生活体験など、本格的な参加・体験型の学習ニーズが高まっていること等を踏まえ、平成二十二年に、体験型旅行誘致推進会議を設立し、こうした体験型旅行を大きなセールスポイントとして、旅行業者や学校関係者への誘致活動を積極的に展開してきているところです。
この結果、体験型修学旅行については、昨年度、周防大島町を中心に、二十六校、約四千五百名の受け入れを行ったところであり、県としては、引き続き、地元市町等と連携を図りながら、誘致活動の強化や受け入れ先の拡大、体験プログラムの一層の充実等に取り組んでまいりたいと考えております。
また、今後はさらに、お示しの県観光客動態調査による修学旅行の実態把握等に努めるとともに、学校側のニーズを踏まえながら、県ならではの歴史文化や産業、自然資源等を活用したテーマ型の学習素材の開発やモデルコースの充実等を図るなど、戦略的な誘致活動を展開してまいりたいと考えております。