「地方創生」、子育て支援について
三歳未満児のお母さんの七割から八割は、家庭で子供を育てています。そのようなお母さん方の子育てを支える環境を整えていくことは、子育て支援施策の大事な柱であります。
今日の社会は、核家族化の進行や地域社会のつながりの希薄化から、子育て中の母親が、孤立化して子育てに苦悩するケースが往々にしてあるようです。私は先日、保護者のない児童や虐待を受けている児童たちを受け入れている児童養護施設防府海北園を訪ねる機会がありましたが、そのとき、乳幼児への虐待は、母親によるものが一番多いとの話を、園の方から聞きました。
身寄りが誰もいない。主人も仕事で家にいない。そのため一日中一人家の中で赤ん坊と向き合っているという状況に置かれているお母さんは、赤ん坊はかわいいけれど、なかなか思うとおりにならないでストレスがたまり、つい虐待の衝動に駆られるということがあるようです。乳幼児の虐待は、母親によるものが多いという事実は、孤立化して子育てに苦悩しているお母さん方が多いということの裏返しなのではないでしょうか。
そうしたことをなくしていくためには、家で子育て中のお母さんの孤立化を防ぎ、その子育てを地域で支えていくという取り組みが必要であります。子育て支援の拠点施設は、その核となるものであり、保育機能を提供する保育園等と同等にその整備が図られるべきであると考えています。
今から十二、三年前、平成十三、四年ごろ、山口市にはさまざまな子育て中のお母さん方のグループができていました。それは、子育て中のお母さん同士がつながり支え合うよう、会があるといいと思って行動を起こしたお母さんたちがいて、公園の一角に「何月、何日、何時から、どこどこ公園に、子育て中のお母さん集まりましょう」と呼びかける紙を張ったりして、それを見たお母さん方が集まるというような形でできていったようであります。
私は、そのようなグループの一人のリーダー格の方から話を聞いたことがあるのですが、「子育て中の母親が、家の外で、子供と一緒に気兼ねなく過ごせるような場所が少ない。特別なものは要らない。ただ、子育て中の母親たちが、子供と一緒に、自由に気兼ねなく集い、気兼ねなく過ごせる空間があれば、それで十分なのです」といった趣旨のお話でした。
山口市では、そのようなお母さん方の活動の広がりと高まりが、平成十五年に、中心商店街の空き店舗を利用した子育て支援拠点施設「てとてと」の開設となりました。その後、この「てとてと」がモデル拠点となり、山口市では市内各地に、広場型子育て支援拠点施設ができています。
子育て中のお母さん方にとって、働きたい場合は保育園が必要であり、家で育てたい場合は支援施設がありがたい存在となります。よって、繰り返しになりますが、保育園などの保育機能を提供する施設の整備と、「てとてと」のような子育て支援の拠点施設の整備は、よりよい子育ての環境を整えていく上において、同等に重要であることを強調しておきたいと思います。
本県は、八月に「やまぐち子育て連盟」を設立して、社会全体で子供や子育て家庭を支えていく姿勢を明確にしたところでありますが、この連盟の設立宣言を見て気になることがあります。それは、少子化対策ということが余りにも前面に出過ぎて、このままでは山口県の人口が減って大変だから、この連盟を設立したという趣旨になっていることであります。
このことは、国が「地方創生」に真剣に取り組むようになった契機が、ことしの五月に日本創成会議――元岩手県知事で総務大臣も務めた増田寛也氏が座長でありますが、その日本創成会議が公表した将来の人口予測に関する報告書でありまして、それによると、このまま推移すれば八百九十六の市町村が人口減により消滅すると警告していることと関連しているように思われます。
しかし、別に少子化対策と大上段に振りかざさなくても、子供を生み育てやすい環境を整えていけば、若い世代はおのずと今日の出生率以上の子供を生み育てるようになり、「地方創生」が実現していくのではないでしょうか。
村岡知事は、御自身が子育て世代であることから、子育て支援についてすぐれた政策を打ち出されるであろうとの期待があり、既にその姿勢は示されているところでありますが、知事の思いが本格的に政策化されるのは、これからのように感じております。
それでは、子育て環境日本一の山口県の実現を目指して、村岡知事の手腕が発揮されることを期待し、以下子育て支援について三点お伺いいたします。
第一点は、知事は、どういう子育て環境の山口県を実現しようとお考えなのか、お伺いいたします。
第二点は、知事が、子育て支援で力を入れて取り組みたいと考えておられる政策はどういうものなのか、お伺いいたします。
第三点は、子育て支援拠点施設の整備についてであります。子育て支援拠点施設は、わかりやすく分ければ保育園等の施設併設型と、地域広場型と二通りあります。週のうち三日以上、大体午前九時から午後三時までの間、子育て中のお母さんが自由に集えるようにしている点は共通ですが、施設併設型は担当の保育士さんたちがお世話をされ、地域広場型は、子育て支援に熱意を持った地域の子育て経験の先輩ママや母子保健推進委員、民生委員等の方々がスタッフとなり運営しています。
どちらの型にも、それぞれよさと特徴があり、私は、県下各地域にこの二つの型の子育て支援拠点施設が、両方あるようにしていくことが、本県の子育て支援の環境を、日本一の理想的なものにすることにつながると見ております。
現状は、県下の百四十二ある子育て支援拠点施設のうち、百三十一は施設併設型で九二%を占めており、地域広場型は「てとてと」など十施設が山口市に、一施設が宇部市にあるのみで、他市町にはありません。それで私は、地域広場型子育て支援拠点施設が、山口市や宇部市以外の市町にも設置されることになるよう、県が積極的に役割を果たすべきであると考えますが、このことにつき御所見をお伺いいたします。
【回答】◎知事(村岡嗣政君)
合志議員の御質問のうち、私からは子育て支援についての二点のお尋ねにお答えします。
まず、山口県が目指す子育て環境についてです。
急速な少子化の進行は、地域活力の低下はもとより、社会保障制度の継続にも大きく影響を及ぼすことから、私の目指す「活力みなぎる山口県」の実現のためには、次代を担う子供たちの健やかな成長に向け、子育て支援・少子化対策を強化することが極めて重要であると考えています。
このため、私は、若い世代が希望をかなえ、安心して妊娠・出産・子育てができるよう、みんなで子育て応援山口県の実現に向け、社会全体で子供や子育て家庭を支える環境づくりを推進してまいります。
次に、力を入れて取り組む子育て支援の政策についてであります。
まず、全県的な組織として設立した「やまぐち子育て連盟」を中心に、地域や企業、関係団体等と連携して、子育て県民運動を強化するとともに、結婚から子育てまで一貫した相談を受ける「結婚・子育て応援デスク」の設置や周産期・小児医療体制の充実など、妊娠・出産・子育てに係る切れ目のない支援の充実を図ってまいります。
また、企業を巻き込んだ多子世帯の経済的負担の軽減や、保育施設、地域子育て支援拠点の整備など、多様なニーズに対する子育て支援を推進することとしています。
私は、市町や関係団体と連携し、機動的に、そしてまた切れ目のない施策を実施することによりまして、安心して子供を産み育てられる環境づくりに全力で取り組んでまいります。
その他の御質問につきましては、関係参与員よりお答え申し上げます。
【回答】◎健康福祉部長(小松一彦君)
子育て支援についてのお尋ねのうち、子育て支援拠点施設の整備についてお答えします。
地域子育て支援拠点は、保育士等が専門的な支援を行う保育所等の施設に併設されるものや、子育て経験者等がスタッフとして支援する、お示しの地域広場型の二通りがあり、子育て親子を応援する場として、実施主体である市町が、地域における住民ニーズに応じて設置しているところです。
地域広場型については、県としては、子育て親子の選択の幅が広がるよう、身近な場所で気軽に交流や相談ができるといった長所や運営事例を市町に対し紹介するとともに、研修の実施等により、運営に携わる人材の確保や質の向上に取り組み、普及に努めてまいります。