(2)酒米の産地拡大について
「米が足りない。」、酒造りの現場では、そういう状況が続いています。特に本県の日本酒業界は、全国の中でも元気で伸びており、勢いがありますので、酒米の需要が急増しており、それに見合った生産量が確保されず、酒米の不足が顕著になってきております。
そのため、山口県酒造組合は、去る4月30日、村岡知事に対して、「山田錦」や「西都の雫」などの酒米の生産拡大を要望いたしました。これに対し、村岡知事は、県としても積極的に取り組む考えを示し、早速にこの6月県議会に提案された補正予算で、「やまぐちの酒米緊急生産拡大支援事業」を、措置されたところであります。私は、こうした知事の迅速な対応を評価するものですが、酒米に関しては、もっと大胆な産地拡大の取り組みを行うべきと考えています。
酒米は、正式には酒造好適米と呼ばれ、日本酒を醸造する原料で、主に麹米として使われる米であります。この酒造好適米の代表的な品種が山田錦で、本県では、この山田錦と、山口県が独自に開発した品種である西都の雫が、主に生産されています。酒米には、麹米に加える掛け米も含める場合もあり、掛け米には酒造好適米だけではなく一般の食用米も使われますが、この質問では、酒米といえば酒造好適米のことであることをお断りしておきます。
では、そういう意味での酒米が、本県ではどれほど不足しているのでしょうか。県酒造組合は、基本的に全農県本部に酒米の希望数量を示し、全農県本部から生産された酒米の供給を受けていますので、その関係での平成25年度の生産実績と、平成26年度以降の希望見込数量を対比して見てみますと、山田錦の場合、平成25年度生産実績2062俵に対し、平成26年度の希望見込数量は、3878俵で、生産実績のほぼ2倍であります。さらに平成28年度希望申込数量は5083俵でありますので、生産実績の2.5倍であります。西都の滴の場合は、平成25年度生産実績は1908俵ですが、平成26年度の希望見込数量は4097俵で、これも二倍強であります。従って、端的に申し上げれば、県酒造組合の今年度の酒米の需要に応えるためには、山田錦も西都の雫もその生産量を昨年に比して倍増する必要があり、将来的には更なる生産増量が望まれているということであります。
ただ、ここで留意しておかなければならないことは、純米吟醸酒では全国首位の獺祭の蔵元旭酒造が使用している山田錦は、今お示しした数字には含まれていないということです。旭酒造は、全国から山田錦を確保しており、本県でも全農県本部を経由せず、直接契約で生産者から購入しています。その旭酒造の平成26年現在の生産能力は1万6000石(1石は、一升瓶100本)で、フル稼働すれば年間7万俵の山田錦が、必要になるようでして、平成25年には4万1000俵確保して生産したものの、獺祭の品薄状態は続いているようです。そこで、旭酒造は、生産能力を現在の3倍強の5万石にまで増強するための整備を行なっておりまして来年春完成の予定です。こうした生産能力の増強が図られた後、旭酒造にとって最大の課題は、獺祭の生産目標に必要なマックスで年間20万俵と見込まれる数量の山田錦を安定的に確保することであります。
旭酒造が獺祭の生産に使用する酒米は山田錦のみというこだわりは、獺祭が獺祭であるための根幹的な要素であることから、このことが変わるということはないと思われます。一方、そのこだわりの山田錦を確保する上において、旭酒造は、県産ということにはこだわっておらず、全国から求めています。ただ、今後生産能力の増強に伴う山田錦の需要増に対して、山口県が安定的に山田錦を供給することが出来るようになれば、それは旭酒造にとっても望ましいことであり、有り難いことであろうと思われます。
本県は、昨年10月に「やまぐち農林水産業再生・強化行動計画」を策定し、その中で「需要に即した品目の生産拡大」ということで、結びつき米、大豆、はだか麦、主要野菜(たまねぎ、キャベツなど)等、目標項目の品目の平成28年生産目標数量を示し、その実現に取り組むこととしています。私は、その「需要に即した品目の生産拡大」の行動計画の中に、酒米の生産拡大を新たに加え、県酒造組合の要望に応えることと併せ、旭酒造の山田錦需要増にも対応する酒米の産地拡大に向けた行動計画を早急に策定して取り組むべきだと考えます。
それでは以下、酒米の産地拡大に向けて本県が取り組むべきと思う施策について申し述べ、県のご所見をお伺いいたします。
第一は、唯今述べたことであります。「需要に即した品目の生産拡大」の行動計画の中に、酒米の生産拡大を新たに加えるべきと考えますが、ご所見をお伺いいたします。
第二は、酒米の作付面積の拡大目標についてであります。本県における酒米の作付面積は、本年度約180haであると推定されます。内訳は、全農県本部関係分が約100haで、酒造蔵元等が直接契約栽培している分が約80haであります。そこで、これからの酒米の作付面積の拡大についてですが、私は、先ず現状の180haを500haまで出来るだけ早期に拡大することに取り組み、当面する酒米の需要にこたえるべきだと考えます。そして、次のステップでは、酒米の需要の動向に即しつつ、1000haまで酒米の産地拡大に取り組んだらいいのではないでしょうか。そこでお尋ねです。県は、酒米の作付面積の拡大目標につき、どうお考えなのかご所見をお伺いいたします。
第三は、酒米の栽培技術の指導体制の強化についてであります。酒米は、食用の一般米とくらべて、栽培管理により細心の配慮と手間を要するようです。従って、酒米の産地を拡大するためには、酒米に初めて取り組む生産者に対して、行き届いた栽培技術の指導と、生育状況に応じたアドバイス等が適宜行われるよう、酒米の栽培技術の指導体制の強化が必要と思われます。ついては、このことにつき、どう取り組まれるのかご所見をお伺いいたします。
第四は、酒米生産に係る、農業用の機械や施設の整備についてであります。
山田錦を生産しておられる方から聞いたことですが、山田錦は、脱粒性といって実った籾が落ちやすい性質があるので、収穫作業もゆっくり丁寧に時間をかけて行う必要がある、そのためコンバインも通常より大型のものが必要となるとのことでした。また、収穫した籾を乾燥する作業も、山田錦の場合は、一般米より胴割れを起こしやすい性質があるので、同様に時間をかけてゆっくり丁寧に行う必要があり、乾燥調製施設は、通常の米とは別に整備することが求められるとのことでした。
このような酒米の生産に取り組むことに伴い、備えることが求められる農業機械や施設の整備に対する助成制度を、酒米の産地拡大に向けた施策の一つとして検討する必要があるのではないでしょうか。本県は、既に需要対応型産地育成事業ということで、麦や大豆、園芸品目等の生産拡大に向けて必要な機械や施設の整備に対する助成制度を設けています。ついては、酒米の需要に対応するということで、酒米の生産拡大につながる農業機械や施設の整備に対する助成制度を同様に設けるべきだと考えますが、ご所見をお伺いいたします。
第五は、リスク軽減対策についてであります。酒米の産地が拡大するためには、経営上酒米の生産に取り組むことはメリットがあると判断する農家や農業法人が増加する必要があります。逆に、酒米の生産は経営上リスクが高いということであれば、どんなに県が酒米の産地拡大の旗を振っても進展しないでしょう。そこで、酒米の産地拡大のためには、酒米の生産リスクを軽減する対策が講じられることが望まれます。
では酒米には、どういう生産リスクがあるのでしょうか。山田錦に関しては、先ず稲の背丈が一般の食用米より高く、倒伏しやすいということがあります。また収穫の時期が遅く、本県では10月10日ごろになるので、それだけ台風などの被害に見舞われるリスクが高いと言えます。加えて、せっかく収穫しても規格外になる割合が、通常米よりも多いようです。品質が保持された酒米は高値ですが、規格外となると通常米よりも安くなり、そのことが経営上のリスクとなります。
そこで、酒米の産地拡大のためには、特に初めて酒米の生産に取り組む農家や農業法人に対して、その栽培技術等に習熟するまでの一定期間、一般の食用米を生産した場合と同等の収入を保証する等のリスク軽減策を講ずることが有効であると考えますが、このことにつきご所見をお伺いいたします。
第六は、西都の雫についてであります。西都の雫は、本県が長年かけて開発したもので、山田錦にくらべて稲の背丈が20cmほど短く、その分だけ倒伏に耐える性質が強化された品種の酒米であります。酒米としての品質においても山田錦と比べて遜色はないようで、「五橋」の酒井酒造は、西都の雫を使った大吟醸酒でここ数年連続して全国新酒鑑評会で金賞を受賞しています。この西都の雫の生産は、これまで下関市の豊田の生産者が主に担って来られたようですが、酒米の需要増に応えるためには、これから全県的に産地を拡大していくことも必要ではないかと思われます。ついては、西都の雫の産地拡大に、今後どう取り組むお考えなのか、ご所見をお伺いいたします。
以上、酒米の産地拡大に関して6点ほどお伺いいたしましたが、要は、酒米の需要が急増している今日の状況を絶好の機会と受け止め、酒米の生産量、品質、生産技術において日本一の県を目指して、大胆に酒米の産地拡大に取り組んでほしいということであります。前向きのご答弁を期待しております。
【回答】(3)食品産業の育成支援についてと合わせて回答