【質問】(3)消防力の強化
質問の三は、消防力の強化についてであります。
大規模化、激甚化する新しいステージの自然災害から、人命・財産を守るために、そのことに対応した消防力の強化を実現していくことは重要な政策課題であります。
現在、消防力の強化に向けた動きは大きく三つあります。第一は、消防の広域化であります。第二は、消防救急無線のデジタル化の推進です。第三は、消防指令業務の共同運用であります。
第一の消防の広域化は、消防力の強化に向けた施策の中心的な柱でありまして、平成6年からその推進が図られてきています。特に平成18年には、消防組織法が改正され、都道府県が消防広域化の推進計画の策定に取り組むことを努力義務として定める等、都道府県の関与が強められました。そして、平成24年度までを目途に広域化の実現を図ろうとしましたが、平成18年の消防組織法改正後、今日までに広域化が実現したのは、全国で39地域に留まり、なかなか進展していないと云うのが現状であります。
そうした状況を踏まえて国は、平成25年4月には、消防の広域化に関する基本指針を一部改正し、消防の広域化の推進期限を平成30年4月1日まで延長したところであります。そして、本年4月には、消防庁次長通知を発し、消防の広域化推進期限(平成30年4月1日)に向け、広域化の推進に一層取り組むよう都道府県知事に要請し、都道府県内の市町村の消防の現状及び将来の見通しをあらためて再検証することを求めました。
そこでお尋ねです。山口県は、平成20年5月、4消防本部からスタートし、将来的には1消防本部の枠組みを目指すこととした「山口県消防広域化推進計画」を策定しましたが、その後の本県における消防広域化の進捗状況と、今後の見通しについて先ずお伺いいたします。次に、推進計画策定当初、将来的には1消防本部の枠組みを目指すとした本県の消防広域化の方針に変わりはないのか、ご所見をお伺いいたします。
第二の、消防救急無線のデジタル化については、電波法関係の基準改正により平成28年5月までに、全てアナログ方式からデジタル方式に移行すること
が求められています。
つきましては、本県における消防救急無線のデジタル化の推進状況及び今後の見通しをお伺いたしますとともに、消防救急無線のデジタル化により消防力がどう強化されるのか、併せお伺いいたします。
第三の、消防指令業務の共同運用は、複数の消防本部が、共同で1つの指令センターを設置し、共同して消防指令業務を運用するものです。
本県では、下関市と美祢市が平成25年10月10日に、両市による消防指令業務の共同運用を開始しております。私は、先月3日、下関市の新しい消防庁舎内に開設された下関市・美祢市消防指令センターを訪ね、消防指令業務の共同運用のメリットや課題等につき、関係者の方々から説明を受けてまいりました。
また、8月31日には、千葉県庁に消防課を訪ねて、千葉県における消防指令業務の共同運用実現に至る経緯を中心に説明を受け、その後「ちば消防共同指令センター」を視察してきました。
千葉県は、県を北東部・南部ブロックと北西部ブロックの二つに分け、平成25年度には、北東部・南部ブロックの20消防本部の指令業務を共同運用する「ちば消防共同指令センター」を千葉市に、北西部ブロックの6消防本部の指令業務を共同運用する「千葉北西部消防指令センター」を、松戸市に開設しております。北西部ブロックは、5消防本部が、まだ共同運用に参加していませんが、平成32年度までには参加する予定で、そうなりますと千葉県の人口は約600万人ですが、人口約300万人の二つのブロックにそれぞれ設けられた消防共同指令センター、即ち二つの消防共同指令センターで、県下全域の消防指令業務がカバーされることになります。
千葉県は、消防指令業務の共同運用のメリットを4つあげています。
その1は、単独で整備した場合に比較し、高機能化できる上、経費の節減が図れる。
その2は、専従の通信員の確保や通信員の節減が期待でき、効率的である。
その3は、大規模広域災害時において、情報の共有化が行なわれることで、規模の拡大や不測の事態に迅速に対応でき、また、応援体制がスムーズにできる。
その4は、119番の受信能力向上、効率的部隊運用確立による消防力強化が図れる。以上の、4つであります。
その1に云う、高機能化とは、119番通報を受信した場合、位置情報通知
システムにより、発信者の位置を瞬時に特定できるようになり、出動に要する時間の短縮が図れる、また、車両動態・位置情報管理システムによる消防部隊の集中管理が可能となる等、消防機能が高度化され強化されることであります。
それから、経費の節減が図れると云うのは、「ちば消防共同指令センタ―」の場合は、共同運用に参加している20の消防本部がそれぞれ単独で指令施設の整備を行えば、合算で約61億2千万円要したのが、共同の指令センタ―にしたことにより約45億8千万円で済み、約22億9千万円の経費節減が図れた等のことを指しています。
消防指令業務の共同運用のメリットについては、下関市・美祢市消防指令センターにおいても、ほぼ同様の内容の説明を受けたところであります。
課題としてあるのは、特に下関市・美祢市消防指令センターで伺ったことですが、指令センターの管制員が、土地勘のないところからの119番通報を受けた場合、向かうべき場所の正確な確認に時間を要するケースがあると云うことでした。119番の通報を受けて、現場に到着するまでの平均時間は、現時点では「ちばの共同指令センター」も、下関・美祢の指令センターも短縮するまでには至っていないと云うのが実情のようで、共同運用のシステムに習熟していけば、短縮されるようになるのでしょうが、その点は、今後の課題のようであります。
確かに、そのような克服すべき課題があるとしても、私は、消防指令業務の共同運用は、トータルとして消防力の強化が図られることになることから、是非とも全県的に推進すべき政策課題であると考えるものです。また、県も市町も財政運営が厳しい中で、将来を見通して必要な消防施設の整備を効率的に行っていくことと併せ、消防職員の効率的な運用により消防職員の増員を抑制しつつ消防力の強化を図ることが求められております。
広域的な視点から、消防通信指令施設の効率的な整備を図り、指令業務に専従する消防職員を節減して、その分を現場実働の消防部隊に充当することができる消防指令業務の共同運用は、そうした時代の要請に応える施策であります。
私は、消防指令業務の共同運用は、消防の広域化そのものではありませんが、消防活動の中枢をなす指令業務の広域化が図られることから、広い意味での消防の広域化であると見做すものです。以前、県が4消防本部体制からスタートして将来的には1消防本部の枠組みを目指す方向で、本県における消防の広域化を推進しようとした時、反対された市長さん達も、消防の通信指令を県域一つにすると云うことには賛成だとの感触を私は得ています。
消防の通信指令を県域一つにすると云うことは、本県の場合は、現在の12消防本部体制はそのままにして、指令業務を1つの指令センターで共同運用するということであります。
本来ならば、この取り組みを県が指導的役割を発揮して、県の消防長会の協力と県下の市町長の理解を得て、千葉県のように消防救急無線のデジタル化に合わせて実現を図ればよかったと思います。県は、国からの指導もあり、そのことを県消防長会に投げかけはしたものの、消防は市町の事業であり、市町の自主性を尊重すべきということで、積極的な推進を図らなかった感があります。
千葉県では、消防救急無線のデジタル化は、県域一体整備を図り、並行して消防指令業務の共同運用を行なう指令センターを整備しましたが、本県では、12消防本部が、それぞれ独自に消防救急無線のデジタル化を行ない、消防指令業務の共同運用は、下関市・美祢市間で実現したにとどまっています。
これまでの経緯はそういうことでありますが、本県における消防指令業務の共同運用を、全県的に実現しようとすれば、現実的対応としては、消防本部の通信指令台の更新が、概ね10年で行われることから、各消防本部の理解を得て、更新計画の調整に協力をいただき、今後10年以内を目途に取り組んでいくことが考えられます。
今後10年以内と言っても、指令業務の共同運用を全県的に実現しようとすれば、先ず、そのことについて県下の市町の理解を得なければなりませんし、その上で、県全域一つの共同運用とするのか、県域をいくつかのブロックに分けて共同運用を行うのか等の基本的な枠組みについて合意を得なければなりません。そういうことには、当然数年は要すると思われますので、私は、今から取り組みを開始しても、決して早すぎることはないと考えるものです。特に、全県的な方針は早く確定して、県下全域の消防関係者が、その方針を共有するようになることが望ましいと考えます。
加えて指摘しておきたいことは、消防指令業務の共同運用を全県的に実現していくためには、県が積極的に推進し、指導・調整の役割をしっかり果たしていくことが求められということであります。
以上、申し上げましたことを踏まえお尋ねいたします。
県は、消防指令業務の共同運用を、県全域で今後10年以内を目途に実現するとの方針を確定し、取り組みを開始すべきであると考えますが、このことにつきご所見をお伺いいたします。
【回答】◎総務部長(渡邉繁樹君)
消防力の強化についての三点の御質問にお答えします。
まず、消防の広域化についてですが、県としても、消防力の強化を図る上で、消防の広域化は最も重要な課題であると認識しています。
平成二十年五月には、県内四消防本部からスタートし、将来的に一本部を目指す山口県消防広域化推進計画を策定しましたが、平成二十三年六月に、市長会の意見等を踏まえ、より現実的な組み合わせとして、宇部・山陽小野田地区と周南地区の二地域において広域化を推進する十本部案に修正し、これまで取り組んできたところです。
そのうち、宇部・山陽小野田地区では、平成二十四年四月に広域化が実現していますが、周南地区では引き続き、関係市町において、広域化に向けた研究・協議に努めていくこととされています。
消防広域化の効果に鑑みると、御指摘の全県一本部体制が理想ではありますが、これまでの経緯や現状等を踏まえると、現時点では実現が極めて困難であり、現計画の達成を県の方針として、関係市町に対し、強く働きかけてまいります。
次に、消防救急無線のデジタル化についてですが、平成十八年度に県、市長会等からなる検討委員会で策定した基本計画に即して、整備が進められてきたところであり、現在、七本部において運用が開始され、残る五本部も、移行期限である来年五月までに完了する予定です。
消防救急無線のデジタル化により、大容量のデータ伝達が可能となることから、例えば、消防・救急車両の位置や画像情報を活用した車両の効果的運用、支援情報の高度化や情報伝達の確実性が図られるなど、さらに消防力が強化されると考えています。
次に、消防指令業務の共同運用についてですが、お示しのとおり、指令業務の共同運用は、消防職員の効率的な運用や、通信設備の高機能化、消防本部相互の応援の円滑化などのメリットも大きく、消防力の強化につながります。
このため、県では、消防の広域化を推進する一方、広域化が困難な場合の選択肢として、デジタル化に伴う指令台の更新にあわせた導入について、市町に働きかけてきたところです。
一方、共同運用には、消防本部相互をつなぐ新たな中継局に要する多大な経費や、派遣元以外の管轄区域にふなれであるなどの課題もあり、お示しのとおり、下関市消防局と美祢市消防本部の一地域での導入にとどまっています。
県としては、こうした現状や、指令センターの更新時期にも配慮しつつ、市町及び消防本部に対し、先行事例のメリットやその課題もお示ししながら、指令業務の共同運用が進むよう、引き続き粘り強く働きかけていくこととしています。
今後とも、県民の安心・安全を確保し、昨今の大規模化・多様化する災害に的確に対応していくため、消防力の強化に努めてまいります。