2.林地台帳の整備について
お尋ねの第2点は、林地台帳の整備についてであります。
先月5月13日、国会において森林法の一部を改正する法案が可決成立し、市町村は平成30年度末までに林地台帳及びそれに付帯する地図を整備し公表することとなりました。
これまで山林の土地に関する情報は、法務局、地方公共団体、森林組合等がそれぞれの役割に応じて保有しているものの、地番、面積、境界などの情報が統一されていませんでした。それが、市町村が林地台帳を備えることで、統一的基準に基づき山林の土地情報が整備され公表されるようになります。このことで、森林整備に係る基礎的情報が統一され、共有可能になることの意義は、林業振興の上からも大きいものがあります。
ことに山林の地籍調査が進捗率44%と全国的に遅れていることに加えて、相続未了地等が増大していることから、森林整備を進めるため所有者や土地境界等を特定する作業に大きな時間とコストがかかっている現況を改め、また、そうした状況の更なる悪化を食い止める役割が、この度の林地台帳の制度創設には期待されています。
既に述べましたように、そうした林地台帳及び付帯する地図を整備するのは市町村の事務ですが、都道府県は、それを支援する役割を求められています。具体的には、地域森林計画対象林において都道府県が作成している森林簿や森林計画図と、法務局の登記情報等を用いて、都道府県は、登記情報等から計画対象民有林に係る所有者情報の抽出や地図の作成を行い、それを順次、市町村に林地台帳のベースとなるデータとして提供する役割が想定されています。
そこで、本県において県が市町に提供する林地台帳のデータベースを作成するにあたり、課題と思われることにつき、お伺いいたします。
その1は、森林簿の土地情報と登記簿の土地情報の照合と統一についてであります。本県では地籍調査が行なわれていない山林が4割ほどあり、そこにおいては山林の公図がないため、地番の位置や区画が特定できていません。そのため、県が所有する森林簿に記載されている地番や面積の土地情報と、法務局が所有する山林の登記情報が、符合しない場合が多々あり、このような土地情報の統一が、取り組むべき課題としてあると思われます。
そこで、お尋ねです。県は、林地台帳のデータベースを市町に提供するに当たり、県の森林簿と法務局の登記簿を照合して統一した土地情報にすることに取り組む必要があると考えますが、ご所見をお伺いいたします。
その2は、山林の境界情報の提供についてであります。土地の厳密かつ正確な境界の公的な確定は地籍調査を待つほかありませんが、その進捗は遅々たるものであることから、地籍調査が行なわれていない山林の境界の明確化をどう図っていくかが、林地台帳及び付帯する地図の整備において大きな課題です。
私たちが、林地台帳及び付帯する地図の作成において留意しておくべきことは、最初から完璧な情報であることを前提にしていない、ということであります。林地台帳制度の情報は、記載され、公表されることで、土地所有者など関係者からの修正の申し出等を受けることを通して、より精度の高いものにしていくことが意図されています。
従って、地籍調査が行なわれていない山林の境界に関して、県が市町に提供するデータは、森林計画図をベースにして境界明確化の参考になる資料や知見などを踏また上で、推定された境界情報であっていいと考えます。つきましては、このことにつきご所見をお伺いいたします。
その3は、林地台帳の整備に取り組む人と財源についてであります。
林地台帳を作成する市町においても、それを支援する県においても平成30年度末までに整備作業を終えるためには、相応のマンパワーの確保と財源措置が必要と考えますが、このことにつきご所見をお伺いいたします。
回答◎農林水産部長(河村邦彦君)
次に、林地台帳の整備についての数点のお尋ねです。
林地台帳については、都道府県が登記簿情報等から民有林に係る所有者情報の抽出や地図の作成を行い、市町村に林地台帳のベースとなるデータを提供するという国の案をもとに、現在、国と地方の協議の場において検討が行われているところです。
このことに関する県の対応について、まず、地籍調査が未了の山林で、県の森林簿と法務局の登記簿の土地情報が符合しない場合、県が照合・統一した土地情報にすべき、並びに、地籍調査が未了の山林における境界は、県が所有する森林計画図をベースにしたものでよいのではないかとのお尋ねです。
お示しの御意見は、林地台帳の整備を推進していく上で、意義のある内容と受けとめておりますが、地籍調査が未了の山林では、県による照合や統一した情報の作成は現実的には困難であることや、森林計画図をベースにすると、不明確な情報提供となるなどの課題があると考えています。
県としては、今後、本県の実情に応じた、適切な林地台帳の整備・運用が図られるよう、しっかりと国に働きかけてまいりたいと考えております。