最後に、事務生産性の向上についてお伺いいたします。私は以前、県のある業務を受託している団体に、その受託業務の担当ということで雇用されている方から相談を受けたことがあります。その受託業務は、1年契約であって翌年もその団体が受託するかどうかわからないため、自分自身も翌年雇用が続くかどうか不安定だし、その業務のために必要な人員を確保しようとしても、毎年、毎年、雇用がどうなるかわからないようでは、しっかりした人を確保できない。せめて、3年から5年くらいは、安心して続けて働くことができるようにしていただけないでしょうか、というのがその相談の主な内容でした。
私は、もっともな話と思い、その業務を委託している関係の部で、複数年契約ができないのか検討してもらいましたら、地方自治法が定める会計年度独立の原則を逸脱することになり、出来ないとの結論でした。
その結論に到る間、検討されたのは県の長期継続契約に関する条例に該当するかどうかでした。地方自治法は、会計年度独立の原則ということで物品の借り入れや業務委託の契約は1年契約を基本としています。ただ、第234条の3において、電気、ガス、水道の供給若しくは電気通信役務の提供等の他政令で定めるものについては、例外的に1年を超える長期継続契約を締結できるとしております。
このことを受けて地方公共団体は、条例で長期契約の対象範囲をどうするか定めることになっていまして、総務省は、そのことに関する見解を、平成16年11月10日付の自治行政局長通知において財務会計制度に関する事項ということで示しています。本県は、その見解を踏まえ、平成17年3月に県条例を定めましたが、私に相談があった業務は、その県条例が認めている長期継続契約を締結することができる契約の対象とならないと見做されたのであります。
私には、その業務は、3年乃至5年の契約にしても何の問題はないと思われました。むしろ、業務を委託する県の担当部課は、毎年毎年、業務契約の事務をしなければならない手間が省けるし、受託する側は、安心して数年業務に従事できるということで、双方に良いのに、それができない。私は、そういう現状を知って、地方自治法の定めに基づく会計年度独立の原則は、運用面において大幅な緩和が図られるべきと思った次第です。
県の長期継続契約についての条例は、主に物品の借り入れと役務の提供に関しての定めになっていまして、役務の提供とは業務委託のことでありますので、この質問を行うにあたり業務委託契約についての現況を調べていただきました。その結果、平成28年度では、業務委託の契約総数が6163件で、そのうち1109件が長期継続契約でした。従って、8割以上の5054件の業務委託の多くは、年度替わりに際し契約更新の事務が行われたものと思われますが、多分その中には、長期継続契約にしても何ら支障のないものが相当数含まれているのではないかと、わたくしは推察しております。そして、そういう点に着目して業務委託契約の在り方を見直していくことも、歳出構造改革に資することになるのではないかと思う次第です。一つの事例からの思うところを申し上げましたが、同様なことが県行政において各方面で数多くあるのではないでしょうか。
そこで、私が訴えたいことは、この度の行財政構造改革は、県行政の事務生産性を上げる取り組みに大胆に挑戦してほしいということであります。私が、ここで事務効率とは言わずに事務生産性という言葉を使ったのは、ネットプロテクションズの執行役員である秋山氏が、「生産性向上と効率化とは、全く異なる。」と語っていることに同感するからであります。彼が言っていることを、私流に要約しますと「生産性の向上とは、ミッションの実現に貢献する度合いを高めること」であり、「効率化は、時間とコストの低減」です。そうした意味合いで、村岡県政のミッションである「活力みなぎる山口県」の実現に向けて、県行政の事務生産性の向上を図るべく、その在り方を大胆に見直すことに挑戦してほしいと思う次第です。
そうした挑戦は、安倍内閣が一億総活躍社会実現に向けた最大のチャレンジと位置付けて推進している「働き方改革」の施策の方向に沿うものと考えます。なぜなら、「働き方改革」のメインテーマの一つは、労働の生産性向上であるからです。
そこでお尋ねです。私は、この度の行財政構造改革の柱の一つとして、県行政の事務生産性の向上を新たに位置付けて取り組むべきであると考えますが、このことにつきご所見をお伺いいたします。
また、その一環として物品借り入れや業務委託に関する長期継続契約の対象範囲につき、大幅な拡大に取り組むべきであると考えますが、併せご所見をお伺いいたします。