平成29年2月定例県議会【有機農業の推進】

有機農業の推進についてお伺いいたします。先ず、なぜ有機農業の推進なのか申し上げます。それは、有機農業は、これからの農業が目指すべき方向であると考えるからです。その思いを深くしたのが、先般2月18日、東京ビッグサイトで「日本の元気をとりもどす―有機農業・自然農法から広がるまちづくり」と銘打って開催されたシンポジウム自然農法全国大会でした。

この催しは、農林水産省が後援しており同省の農業環境対策課長が挨拶を兼ねて有機農業に関する現状と課題を説明した後、現場からの事例報告や提案等がありました。その中で、特に印象深かったのは昨年開催されたリオ・オリンピックで日本女子卓球を銅メダルに導いた村上監督の記念講演とその村上監督がアドバイザー役を務めていて「未来のアスリートを目指す子供達を、食の面から支えていこう」との目的で設立されたワンラブコーポレーションという会社社長の報告でした。

私は、このひと月、県内で有機農業に取り組んでいる人達、また農薬の仕事に携わっている方々、JA関係者などを訪ねて色々教えていただき、意見交換をしてきました。そしてその間、特に関心を向けたのが「食の安全」と農薬のことで、そのことに関する本も数冊読みました。要は、農薬は、農のクスリなのか、それとも毒なのかということですが、私なりの結論は、農薬は、文字通り農のクスリとみなした方が、農業上の多様な課題に柔軟に対応できていいのではないかということです。従って、正しく使うことが大事で、それを完全排除する必要はない。ただ、人間の場合も、薬を飲まないで健康に暮らせるのであれば、それが一番いいように、農薬を使用しないでやれるのであれば、それが農業の在り方としては望ましく、そういう意味において、化学合成の農薬や肥料を使わないことを基本とする有機農業は、これからの農業が目指すべき方向であると思う次第であります。

ご案内のように、農業は、時代の推移の中で求められる課題が変わり、それに応じて農業の在り方も変化し進化を続けています。戦後、我が国の農業に求められたのは食糧の増産で、農薬や化学肥料を活用した近代農法は農業の生産性を高め、このことに大きく貢献しました。

1970年代になると、我が国の農業は安全重視に大きく舵を切ります。その背景には農薬事故が相次いだこともありますが、特に影響が大きかったのは、残留農薬が生態系、環境に及ぼす深刻な被害を告発したレイチェル・カーソン女史著「沈黙の春」が喚起した世論の高まりでした。

安全重視の農業という方向は、二つの流れとなって今日に至っています。一つは、農薬の使用そのものをやめるという有機農業の流れです。化学合成の農薬は使用せず、自然が本来持つ力を活かした農業を、ということで日本有機農業研究会が、1971年に発足しております。

もう一つは、安全が確保される範囲内で農薬の使用を認めるという方向です。具体的には、毒性が低くて人や環境への影響が少ない安全性重視の農薬の開発や食品の残留農薬への規制強化などの取り組みです。我が国の農業は、基本的にこの方向で安全重視の要請に応えてきたと言えます。

ことに、平成18年にはポジティブリスト制度が導入され、国民の健康保護の観点から一定の基準量を超えて農薬が残留する食品の流通・販売は、すべて禁止されることになりました。その農薬の残留基準量は、ADIといって一日許容摂取量、即ち人間が生涯毎日その量を摂取しても、健康に影響がないと推定される量以下に設定されています。かくて、農薬の使用はあるものの、我が国において生産され流通する農産物の食の安全は確保されている、というのが我が国農政の基本的な立場であります。

農林水産省は、この基本的立場を堅持しつつ、今日、有機農業を環境保全型農業の中に位置づけ、その推進を図りつつあります。1980年代末頃から地球温暖化のリスクが一般に認知されるようになり、世界的な枠組みでの温暖化対策への取り組みが本格化する中、農業も、生産性の向上、安全性の重視に加えて環境保全型への転換が求められています。我が国の農政は、食の安全というより、そのような環境保全という時代のトレンドに沿うものとして有機農業を評価しその意義を認め推進しようとしているのであります。

農業において環境保全ということで求められることは大別して三つあります。その1は、環境負荷の低減、その2は、自然循環機能の増進、その3は、生物多様性への配慮であります。こうした環境保全型農業への転換は、今日の時代が求める農業進化の方向であると共に、我が国の農業それ自体を持続性あるものとし、食料の自給率向上に資する施策の方向であると思われます。農林水産省が、農業環境対策課を設け、有機農業担当を置き、有機農業を含む環境保全型農業を推進しようとしているのは、そういう認識に基づくものであると私は見ております。

【回答】

合志議員の御質問のうち、私からは、有機農業の推進についてのお尋ねにお答えします。

農林水産業は、食料の安定供給をはじめ、県土や自然環境の保全など多面的機能を有する産業であり、食の安全・安心や環境保全に十分配慮し、振興を図ることが重要です。

本県では、堆肥等の有機質資源の利用や化学農薬・化学肥料の削減により、環境負荷を低減する農業を推進しており、農薬などの削減割合に応じた段階的な取組を進めています。

その中で、化学農薬などを100%削減するエコやまぐち農産物「エコ100」や有機JASなどの有機農業は、最も環境負荷の低減効果が高い農法と位置付けています。

このため、私は、平成26年度に改定した「山口県有機農業推進計画」に基づき、農業者の主体的な取組を推進しており、その結果、有機農業の面積は平成27年度には前年度から21ha増加し83haとなり、その取組が着実に拡大しています。

今後においては、平成30年度目標の100haを早期に超えられるよう、生産・消費の両面から取組を強化する必要があると考えています。

まず、生産面では、有機農業は、病害虫の異常発生による収量の減少などのリスクがあることから、天敵を利用した害虫防除などの新たな技術開発をはじめ、先進事例の活用や農林事務所における相談活動など、技術的な指導・支援に努めてまいります。

また、消費の面では、地産・地消の取組の中で、有機農業の生産者と消費者の交流会や学校における食育との連携、有機JAS等の適正表示の普及などを通じ、有機農業で生産された農産物の需要拡大にも取り組むこととしています。

私は、今後とも、有機農業生産者で組織する団体や市町・JA等と連携しながら、食の安心・安全への県民・消費者のニーズを踏まえ、有機農業の推進に努めてまいります。

その他の御質問につきましては、関係参与員よりお答え申し上げます。