平成29年2月定例県議会【3.有機農産物の需要拡大と供給力強化】

お尋ねの第三は、有機農産物の需要拡大と供給力強化についてであります。

我が国における有機農産物の需給の現状は、極めて小さい規模にとどまっています。生産面積は緩やかに増加しているものの、我が国の耕地面積の0.6%にすぎません。有機食品の市場規模は、約1300億円で食品市場のシェアの1%を下回っています。因みに、欧米においては年々増加の傾向にあり、欧州が3.7兆円、米国が3.8兆円で、我が国と比べて市場規模が格段に大きく成長しています。

我が国の有機食品の市場規模が小さい理由を考えてみますと、その需要が、一般消費者まで広がっていないということが考えられます。有機農産物を買い求める消費者は、食の安全等にこだわりがある人たちが主で、店頭に、慣行栽培の農産物と有機栽培の農産物がある場合、一般消費者の多くは価格が安い慣行栽培の農産物を買い求めるケースがほとんどです。そうした現状の中で、農業者の多くは、慣行栽培と比べてより多くの手間と労力を要する有機栽培の農産物を、それに見合った価格評価をマーケットがしてくれる見通しがないまま、本格的に取り組めないというのが実情ではないでしょうか。

ただ、欧米ではオーガニックな食材ということで有機農産物の需要が増大しているという流れは、我が国にも及んでくるものと思われますし、健康志向が強まる時代トレンドの中で有機農産物の需要は、今後増大していくものと期待されます。

では、有機農業の拡大発展は、自然の流れに任せておけばいいのか。私は、そうではなく、有機農産物の普及が一定水準に達するまで、公的機関がその需要を創り出し拡大していく役割を積極的に担い、その生産農業者の収入が確保されるようにしていくことが必要であると思います。

そういう意味からして、2020年の東京オリンピック・パラリンピック競技大会は、我が国の有機農業がステップアップする絶好の機会であります。この大会開催の基本計画では、飲食に関する主要目標として「持続可能で環境に優しい食料を使用する取組を実行する」と明記されており、農産物の調達基準は、食材の安全確保等、三つの要件を満たしていることをベースにして、有機農業で生産された農産物が、推奨される事項として明示される見通しです。我が国で開催されるオリンピックという世界的なビッグイベントは、我が国の有機農業の現状では、とても賄いきれない多大な有機農産物の需要を創り出すことが予想されており、そのことへの対応という点からも農林水産省は現在、有機農産物の生産拡大に取り組もうとしております。

そこで、このことに関連して有機農産物の需要拡大と供給力強化についてお伺いいたします。

2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会においては、国内外のサプライヤーが大会の調達基準の要件を満たした食材を求めて活発な動きを展開するものと予想されるので、その機会をとらえて本県の食材を世界にアピールし販路を広げるきっかけにしていく取り組みが望まれます。ついては、推奨事項である有機農産物を、大会の調達基準要件を満たした形で最大限供給できるよう、本県の供給目標を定めて有機農産物の生産供給体制の強化に取り組むべきであると考えますが、ご所見をお伺いいたします。

また、2020年東京大会終了後は、県が市町と連携して例えば学校給食に、県産有機農産物の食材利用を促進する等、安定的な有機農産物の需要拡大に取り組むことを考慮すべきと考えますが、ご所見をお伺いいたします。

【回答】

有機農産物の需要拡大と供給力強化についてです。

お示しのとおり、我が国の有機農産物の需給は、極めて小規模にとどまっており、耕地面積の0.6%にすぎない現状にあります。

しかしながら、2020年の東京オリンピック・パラリンピックの開催により、有機農産物のニーズは高まり、本県の有機農産物の販路を広げるチャンスになると考えています。

①このため、需要の拡大が期待される有機農業で生産された農産物の増産をはじめ、農業生産工程管理であるJGAPの認証取得を進めるなど、大会の調達基準を満たす食材の需要に最大限対応できるよう、生産供給体制の強化に取り組んでまいります。

②次に、大会後の有機農業で生産された農産物の安定的な需要拡大については、有機農業生産組織と販売協力店等との連携を図り、適正表示の指導と併せ、取扱を促してまいります。

また、ご提案のありました学校給食での利用促進については、農業・畜産・環境問題など食育の観点からも有意義であると考えており、地域の特色を生かした取組に向け、関係者と協議し対応を検討してまいります。