その2は、既存ダムの嵩上げですが、このことについては木屋川ダムの嵩上に関してお伺いいたします。
竹村氏の著書では、「ダムの嵩上げも、水力発電の潜在的な力を引き出す重要な手段である」と指摘して、「100mから110mに10%嵩上げすることにより、発電量は70%も伸びる。」と述べておられます。
本県では、木屋川ダムが平成41年の完成を目指してダムの嵩上げ工事を実施する予定になっていまして、この工事によるダムの嵩上げは10mであります。現在の木屋川ダムの堤高(ダムの高さ)は、41mですので、10mの嵩上げで伸びる発電量は、70%をはるかに上回ることは明らかであります。
従って私は、この嵩上げによって、木屋川発電所の発電量も大きく伸ばす計画になっているものと思っていましたが、そうではなく、この整備は、主に洪水予防のため治水容量を増やすためのものであることから、嵩上げした部分は水を貯めず常に空けておくことになり、嵩上げしても木屋川ダムの発電能力は変わらない旨の説明を受け、ある意味驚いた次第です。
木屋川水系では、治水事業として昭和30年に木屋川ダムが完成した以降も、度々洪水被害が発生しており、近年では平成22年7月に県西部が局地的な集中豪雨に見舞われたとき、木屋川の河川氾濫があり、浸水被害が生じたことは記憶に新しいところであります。
このように木屋川ダム完成以降も、数度にわたり洪水が発生している経緯からして、洪水調節機能強化のためのダム嵩上げ事業の実施は、当然優先的に行われるべき公共事業として理解し、速やかな事業の進捗と完成を願うものです。
ただ、私がこの事業に対して思うのは、ダムの嵩上げを利水面にも生かす、特に水力発電の能力向上に繋げるような運用を検討すべきではないかということであります。理由は簡単で、400億円もの巨額を投じて行われるこのダム嵩上げ事業は、洪水調節機能の向上と併せて、水力発電を大きく伸ばすことができるのに、それをしないのは勿体ないからです。
地球温暖化対策にも資するCO2を出さないクリーンで安定的な純国産エネルギーである水力発電を伸ばしていくことも、洪水調節機能の向上と同様に大事な将来の世代のための投資であります。また、先ほど紹介しましたように、国土交通省は「治水と発電の双方の能力を向上させる手法の検討」にも着手する旨、「ダム再生ビジョン」案に明記しています。
そこでお尋ねです。木屋川ダムの嵩上げは、洪水調節機能の向上と併せて、発電能力の向上を図るようなダムの運用を検討すべきと考えますが、ご所見をお伺いいたします。