質問の第一は、基礎学力の向上についてであります。私は、冒頭に本県の学校教育を評価している旨申し上げましたが、先ずそのことに触れておきたいと思います。
ご案内のように我が国の学校教育は、教育課程の基準を大綱的に定めた学習指導要領に則って行われますが、その学習指導要領は、戦後9回目の改訂が行われまして、現在は、改訂された新学習指導要領に基づく学校教育への移行が進行中であります。小中学校につきましては平成29年3月に新学習指導要領が公表され、小学校は平成32年度から、中学校は平成33年度から全面実施の予定です。高校の新学習指導要領は、今年の3月に公表され、平成34年度から年次実施の予定であります。
そこで、既に公表されています小中学校の新学習指導要領を見ますと、前文において「社会に開かれた教育課程の実現」が重要となる旨述べられており、総則において、「家庭や地域社会との連携及び協働を深めること」が、学校運営上の留意事項として明記されています。学校運営上の留意事項は、新学習指導要領において新設された事項であります。
一方、本県は、平成25年度に策定した「山口県教育振興基本計画」において、「地域と学校が連携した子どもの育成」を、推進する施策の柱の一つに位置づけ、以来コミュニティ・スクール及び地域協育ネットの全県普及に取り組んできました。そして、今日、県下の小中学校においては100%の普及が実現されており、さらに高校においても平成32年度までに100%実現すべくその取り組みが進められています。
こうした本県の地域連携教育の取り組みは、新学習指導要領が目指す方向を、先取りして実現している点において、私は、評価に値するものであると思う次第であります。
では、学校教育の主要な目的である子どもたちの学力向上に向けた本県の取り組みは、どう推進されているのでしょうか。平成27年に改定された「山口県教育振興基本計画」は、「確かな学力育成プロジェクト」で、小中学校においては全国トップクラスの学力を目指すとし、全国学力・学習状況調査、所謂全国学力テストにおいて平均正答率が全国平均を3ポイント上回ることを推進指標としております。そして、学力向上推進リーダー・学力向上推進教員の配置による学力向上に向けた教育の支援体制の強化や学力定着状況を検証し改善する年2回のサイクルの確立など学力向上に向けた複合的・総合的な取り組みが推進されていまして、平成29年度の全国学力テストにおいては、「小学校は、区分によって差はあるものの、概ね全国平均と同程度である。中学校は、すべての区分で全国平均を、上回っている。」との結果になっています。小中併せた正答率は65.6%で全国都道府県におけるランキングは13位でありますので、学力向上に向けた本県の取り組みは、それなりに功を奏していると見ることも可能かと思われます。
こうした本県のこれまでの学校教育への取り組みを評価した上で、これから将来に向けた本県の学校教育の新たな課題として取り組んでほしいと思うことがあります。それは、「落ちこぼれゼロ」の学校教育の実現であります。
最近、学校教育に携わっている先生方から、「高校に入学しても、算数の三桁計算ができない子たちがいる。」といった話を、何度か耳にいたしました。そういった子どもたちは、小学校の段階から初歩的な算数についての理解、習熟が出来ていないまま学年進行が進み、中学を経て高校に進学しているケースが多いようです。昔から、人が世の中で生きていく上において身に付けておくべき基礎的な知識・技能として言われてきたのは、読み・書き・算盤でありますが、
そのことは、今日の世においても変わっていないと思われます。そのような基礎的な学力は、当然のこととして義務教育段階において全ての子どもたちが習熟し身に付けておくべきことでありますが、そうなっていない現状があります。
そうした現状に向き合い、義務教育課程の、ことに小学校段階において「落ちこぼれの子どもを出さない」教育の実現を目指すべきではないでしょうか。
勿論、教育課程から落ちこぼれる子どもが生ずる主な要因が子どもサイドにあり、学校教育での対応には限界があると思われるケースも多々あることでしょう。しかし今日の時代、そこをブレーク・スルーすることが、教育にも求められていると私は、見ております。
先日、BSテレビで「プライムニュース」を見ておりましたら、その日のテーマは、第4次産業革命に関することで、モノのインターネットといわれるIoTと人工知能AIをキーテクノロジーとする第4次産業革命が進行している現在、我が国の制度や仕組み、また企業は、どう変わっていくべきなのかということが論じられていました。そのことに関係する各方面の代表格の方が4人ほど出演して発言しておられましたが、その中で、私が「アッ、そういうことなのか。」と思ったのは、グーグルの元米国本社副社長兼日本法人社長であった村上憲郎(のりお)氏の発言でした。彼は、「第4次産業革命の重要なポイントは、産業の供給側が、消費者即ち需要側の志向性や思いを柔軟に受け止めることができる構造に変われるかどうかである。」との趣旨を語っていました。その背景には、これまでの大量生産方式では対応できなかった消費者の個々の需要(デマンド)への対応が、IoTやAIにより可能になってきているとの認識があるものと思われます。
こうしたことから思いますのは、産業社会の供給サイドが、第4次産業革命の進行に伴い、多様で細かな個々の需要に応えることができる一層柔軟な構造へと変わっていこうとしているように、教育の提供も、学ぶ側の多様な個々の特性と能力に応じて行われ、「落ちこぼれを出さない」方向に進んでいくことを、時代は求めているのではないかということであります。
以上申し上げましたことを踏まえ、基礎学力の向上についてということで3点お尋ねいたします。
第1点は、本県の義務教育課程における基礎学力の向上に向けた取り組みの基本的な方針について、ご所見をお伺いいたします。
第2点は、義務教育課程において「落ちこぼれゼロ」を実現していくことを、地域連携教育の推進、学力向上への取り組みに並ぶ本県の学校教育の目標に位置付け取り組んでいくべきであると考えますが、ご所見をお伺いいたします。
第3点は、義務教育課程における学力向上と落ちこぼれゼロを、双方ともに実現していこうとすれば、子どもたちの学力・能力・特性に応じたクラス編成と授業プログラム構成を図っていくことが有効であると考えますが、このことにつきご所見をお伺いいたします。