「防災情報について」
(1)具体的・個別的防災情報提供システムの構築について
次に、防災情報についてお伺いいたします。その一は、具体的・個別的防災情報提供システムの構築についてであります。
総務省消防庁によりますと、今年7月の西日本豪雨で広域に出された避難指示・勧告の対象は最大計860万人を超えたが、自治体が指定する避難所に来たのは3万人以下で、別の安全な場所に逃げた人もいたとみられるが、避難者が少なかったことが、被害拡大の一因になったと分析されています。
では、避難行動が適確に行われるようにするには、どうすればいいのか。私は、防災情報の提供を、より具体的、個別的なものにしていくことだと思っています。私たちは、広域に住民一般に対して発されるマスの情報(ここでのマスとは、マスメディアのマスで、大量、多数もしくは不特定多数の大衆の意)では、それを自分にとって身近なリアルなものとして受け止めない傾向があります。しかし、行政機関が提供する防災情報は、どうしても基本的にマスの情報となります。そこで、行政機関が発する防災情報を、個々の住民に対して、住民の身近なところに関する具体的、個別的な防災情報に加工して提供する仕組みをつくることが必要ではないでしょうか。
現在、国の機関では、国土交通省が、ホームページにハザードマップポータルサイトを開設していまして、私たちは、このサイトを通して自分の身近なところは勿論のこと、全国のどの地点であろうとも知りたい地点の災害リスクの表示を見ることが出来ます。また、気象庁は、天気予報の情報の他、「土砂災害」「浸水」に関するメッシュ情報や時系列情報を、さらには「洪水警報の危険度分布」ということで、全国の中小河川の洪水災害リスクを、地図上の河川の色分けにより知ることが出来るウェブをホームページに公開しています。
地方自治体では、都道府県は、ホームページで雨量情報、水位情報、洪水予想、土砂災害情報などの防災・災害情報を、公表していますし、市町は、洪水や土砂災害に関するハザードマップを作り、印刷物として住民に配布すると共に、ホームページでも見れるようにしています。
このように、今日私たちは、インターネットを通して多くの防災情報を得ることが出来るのですが、問題は、必要な防災情報にたどり着くには、ある程度パソコンやスマホの扱いに習熟している必要があり、結構手間を要することです。従って、そうした防災情報を、住民各自にとって身近な情報に加工して提供する、しかも、簡単なアクセスで住民がその情報を得ることが出来るような仕組みの構築が望まれると思う次第です。
考えられるのは、警察への緊急通報ダイヤルの110番や救急ダイヤルの119番に準ずる防災ダイヤルの創設です。番号は、語呂合わせがよくて、覚えやすい三桁の番号にするのがいいと思いますが、その番号で電話して、住所を言えば、その時点におけるその場所の災害リスク等の防災情報が、音声で伝えられるという仕組みです。
私は、現在、国土交通省、気象庁、都道府県、市町等が、インターネットのホームページで提供している防災情報を統合して、音声認識とAIによる情報処理機能を組み合わせれば、そのようなシステムをつくることは、充分可能だと見ています。
本県では、7月の豪雨による土砂災害では、三人の方が亡くなられましたが、そのお一人岩国市周東町獺越の宮本智さんは、7月7日の午前零時頃、市外にすむ次男の方が心配して電話されると、「雨も峠を越えたみたいだし、大丈夫。」と答えて家に残られたそうです。ところがその後、雨は再び激しくなり、自宅は大量の土砂に流され犠牲となられました。もし、防災ダイヤルというものがあり、それを通して、「また、大雨が降ることが予想され、土砂災害が発生する危険があるので避難されたほうがいい。」との情報が伝わり、宮本さんが、それを受け入れておられれば無事で、尊い命が失われずに済んだかもしれません。
そこでお尋ねです。私は、県民が簡単にアクセス出来て、身近なところの具体的、個別的な防災情報を得ることが出来る防災情報提供システムの構築に、本県が、市町や大学等と連携して取組むことを期待するものですが、このことにつきご所見をお伺いいたします。
(2)河川の危険個所の情報開示について
河川の危険個所の情報開示についてお伺いいたします。この件は、平成27年9月県議会に次いで、2度目の質問になります。
河川の危険個所は、河川に設置されている水位局が計測する水位から、その河川の氾濫の危険性を判断するための基準地点のことです。水位局が流量を監視している区間は、おおよそ5kmから10kmほどでして、その間で河川の増水があった場合、最も越水氾濫の危険性が高いと見做されるところが基準地点とされ危険個所として特定されます。例えば、山口市では仁保川の御堀橋水位局において氾濫危険水位に達したということが、大雨時期になるとよく報道されることがありますが、その場合、水位局がある御堀橋のところが危険なのではなく、その水位局が監視している流域区間の中で、真っ先に越水氾濫が生ずるのではないかと見なされているところ、即ち危険個所において河川氾濫の危険が迫っているということであります。
そのような河川の危険個所の情報を開示しておくことは、関係流域の住民の自発的な避難行動に資することになるので、当然そうすべきだと考えていますが、現状においてはそうなっていません。従って、例示しました御堀橋水位局で氾濫危険水位に達したと計測された場合、では流域のどこの箇所が最も危ないのか、即ち危険個所はどこなのかは、住民は知りませんし、知ることもできません。それを知っているのは、県や市の防災担当者だけです。
国土交通省は、過去に経験したことがない大雨等が頻発する今日の状況を、災害の「新たなステージ」としてとらえ、平成27年1月に「新たなステージに対応した防災・減災のあり方」を公表しました。そして、その中で「このような事態においても命を守るためには、避難勧告等の発令を待つのではなく、住民自らが、周囲で生じている状況、行政機関等から提供される降雨や河川水位等の時系列の情報等の状況情報から判断して、主体的に避難することが不可欠である。」と指摘しています。全くこの指摘の通りで、河川の危険個所は、住民が主体的に避難行動をとることが出来るよう行政機関から提供されるべき防災情報の一つか考え、平成27年9月の県議会で、その情報開示を求めて質問した次第です。
その時の答弁は、「今後、国や市町と協議しながら慎重に検討する。」とのことでした。
国の方は、国土交通省が、洪水浸水想定区域図・洪水ハザードマップの公表に関する説明(ホームページでは平成28年1月更新)で、「洪水時の被害を最小限にするためには、平時より水害リスクを認識したうえで、氾濫時における危険個所や避難場所について正確な情報を知っていただくことが何より重要です。」と、述べていますので、危険個所の情報開示は、当然視しているのではないかと思われます。
市町では、山口市の防災担当者に尋ねましたら、「河川の危険個所については、県も公表していないことから、市の関係課のみ情報を共有している。」とのことでした。
そこで、改めてお伺いいたします。私は、河川の危険個所は、住民が主体的な避難行動を取る上での重要な情報であり、情報開示すべきであると考えます。つきましては、このことに関してこれまでの検討経過とご所見をお伺いいたします。