令和元年9月定例県議会【交通政策について】

「交通政策について」

今日の交通政策は、交通需要に応えることに加えて、まちづくりとの関連においてその施策の推進が図られるようになってきました。所謂「交通まちづくり」が、交通政策の主要な課題となり、交通施策の目指す基本的方向となってきています。
「交通まちづくり」という言葉が知られるようになったのは、1990年代後半からのようですが、交通という視点からまちづくりに携わってきた人たちの議論を踏まえ、日本学術会議の協力学術研究団体である交通工学研究会は、交通まちづくりを「まちづくりの目標に貢献する交通計画を、計画立案し、施策展開し、点検・評価し、見直し・改善して、繰り返し実施していくプロセス」と定義しています。
全国の市町等の自治体が、この定義にあるように、まちづくりの目標に貢献する交通計画の策定と施策の推進に取組むための法的整備を、近年国は行っています。
平成26年に成立した改正地域公共交通活性化再生法と改正都市再生特別措置法がそれに相当するもので、コンパクトなまちづくりに向けて都市計画と公共交通が連携一体化して取組んでいくための法的な枠組みが制度化されました。具体的には、市町等の各自治体が、改正地域公共交通活性化再生法では地域公共交通網形成計画を、改正都市再生特別措置法では公共交通と連携した立地適正化計画を策定することが求められるようになり、交通まちづくりが、法的に制度化され推進されるようになってきました。
交通まちづくりに加えて、我が国が、これからの交通政策において力を入れて取り組むべきもう一つの課題は、軌道系交通へのシフトであります。過度な自動車依存社会からの脱却を図っていくこと、また環境負荷の少ない交通機関を選択して地球温暖化対策にも資していくことが、交通のトータルな在り方に対する時代の要請となってきています。鉄道や路面電車などの軌道系交通の比率を、交通全体の中において高めていく、そういう意味においての軌道系交通へのシフトを進めていくことが、今日求められています。
自動車交通から軌道系交通へのシフトを実現していくためには、利用者から交通手段として選ばれるよう機能や快適性の向上を図っていくことと併せて、軌道系交通とバスや自家用車等とのスムースな連携を交通システムとして可能にしていく必要があります。そうした要請に応える軌道系交通として普及が期待されているのが、近年、我が国でも少しずつ導入に拡がりを見せつつあるLRTであります。
LRTは、Light Rail Transitの略で、低床式車輛の活用や軌道・電停の改良による乗降の容易性、定時制、速達性、快適性などの面で優れた特徴を有する次世代の軌道系交通システムのことです。ヨーロッパでは、モータリゼーションが進展する中で衰退した鉄道や路面電車などの軌道系交通が、LRTという形で復活、再整備され、都市の再生に成功しています。我が国では、富山市のライトレールが日本初のLRTとして注目を集めましたが、既存の路面電車がある都市では、それのLRT化が進行しつつあります。また、新たに交通インフラとしてLRTを導入する動きも全国各地に広がりつつありまして、栃木県の宇都宮市では、2022年開業予定です。
エネルギー効率がよく人と環境にやさしい交通システムとしてのLRTは、今日の時代の要請にこたえるものであります。LRTが、各自治体において交通まちづくりの中軸となる公共交通の中に位置付けられ、その整備が図られるよう制度環境を整え、充実していく取組みが、我が国の交通政策に望まれています。
以上、交通政策についての私なりの理解を申し上げましたが、そのことを踏まえ、本県が進めるべき交通政策に関し数点お伺いいたします。