「2.第2期総合戦略と交通政策について」
村岡知事は、今議会冒頭の議案説明において、今後も地方創生に積極的に取り組んでいく旨表明され、現行の地方創生に向けた総合戦略である「山口県まち・ひと・しごと創生総合戦略」を検証し、第2期総合戦略を策定するとの方針を明らかにされました。私は、この次期総合戦略が、しっかりした交通政策を伴ったものになることを期待しております。
地方創生は、安倍政権が掲げる旗印であり、担当大臣を置いてそのことを重要視する姿勢を明確にしたことは評価できますが、そのことを別にすれば、基本的にやっていることは、従前の施策の延長であります。指摘したいことは、地方創生を重要視する姿勢は示されているが、それを具体化する骨太の政策が伴っていないということです。では、どういう骨太の政策が示されるべきなのでしょうか。その一つが、交通政策であることは確かです。
このことをご理解いただくために、少し長くなりますが、関西大学教授宇都宮浄人著「鉄道復権」の一節を紹介いたします。尚、この書の初版の発行は2012年です。
今日、欧州の地方都市に出かけると、日本の地方都市に比べ、中心市街地に活気が漲っていることに目を瞠らされる。
しかし、20世紀の半ばは、欧州の地方都市も衰退に苦しんでいた。欧州に自動車が普及したのは日本よりも早く、すでに1950年代から街中の交通渋滞が深刻化し、街の広場には排気ガスが充満するようになる。さらに、郊外型のショッピングセンターができ始めると、ますます人が中心市街地に寄り付かなくなり、その活気が失われていった。また、旧植民地や途上国からの移民が職を求めて欧州の都市部に住むようになったが、そうした所得の低い層が集まる地域の都市環境は悪化した。1970年代から80年代にかけては、欧州の経済停滞によって若者の失業が増加し、一方で早くも顕在化してきた高齢化問題もあって、都市の再生はとても難しい状況にあった。
こうした状況の中、都市再生の切り札として期待されたのが公共交通、なかでも鉄道である(注 この著書での鉄道は、路面電車なども含む鉄軌道の交通機関)。老若男女、幅広い層の市民を再び街中に呼び戻す手段として、鉄道が持つ公共財的な性格に注目が集まった。一定の人口集積がある都市では、路面電車を導入して、都市再生を図ろうとする動きが出始めたのである。
フランスやイギリスは、1950年代までにほとんどの路面電車を廃止してしまったが、20世紀末から続々と路面電車を復活させている。とりわけフランスの各都市では、都市圏交通計画のもと、路面電車を改良したLRT(フランス語ではトラム)を導入し、全面的な都市の再生を行ってきた。
以上で紹介は終わりますが、都市再生、まちづくり、地域づくりへの取組みは、しっかりした交通政策が伴ってこそ実効あるものになることは、明らかであります。
そこでお尋ねです。地方創生を実現し、人口減少・少子高齢化を克服していくためにも、先ほどから述べておりますように、骨太な交通政策をテコにした本県の都市再生、まちづくり、さらには地域づくりの取組の充実・強化が必要だと考えますが、今後、第2期総合戦略の策定にどのように取り組まれて行かれるのか、ご所見をお伺いいたします。