平成27年2月定例県議会【地域医療について】(1)医療連携について

【質問】地域医療について

医療は、これから統合の時代に向かうと言われています。ここで云う医療の統合は、二つのことを意味しています。ひとつは、医療機関の統合です。もう一つは、医療と介護、福祉の統合です。医療機関の統合は、複数の医療機関をひとつに統合するケースと、医療機関の機能別統合と二通り考えられます。医療と介護・福祉の統合は、医療の領域が、治病から生活を支える包括ケアとしての医療に拡大していくことを意味しています。
こうした医療の統合を促す時代背景としては、今後高齢化が一層進展し、医療・介護需要の増加が予想されることがあります。特に団塊の世代が全て後期高齢者となる2025年以降においても、医療費・介護費の増大を抑制しつつ、介護を含む包括ケアとしての良質の地域医療を確保していくためには、医療資源の最適配分を実現していくことが求められ、そのことが将来を見通して医療提供体制を計画する上において主要課題となっております。
現在、厚労省が進めている病床機能報告制度と地域包括ケアシステムの構築という二つの取り組みは、そうした課題認識に基づくものであり、医療の統合という時代の流れに沿うものであると思われます。そこで、この度は本県の地域医療についてということで、医療の統合という方向を見据えつつ、数点お伺いいたします。

(1) 医療連携について
山口市には、総合病院と称する病院が三つあります。綜合病院山口赤十字病院、済生会山口総合病院、小郡第一総合病院の三つであります。総合病院とは、許可病床数が100床以上で主要な診療科が最低でも内科、外科、産婦人科、眼科、耳鼻咽喉科の5科ある病院のことを言いますが、医療法上の規定は平成8年の改正で廃止されています。
従って、何か病気の症状があった時、「病院にかかるんだったら、総合病院がいい。」という会話が、私たちの日常生活の中でよくありますが、現在は医療法に基づく総合病院というものはなく、ただ一般的に多数の診療科を有していて、二次救急以上に対応する救急病院としての機能がある地域医療を担う中心的な病院のことを通称的に総合病院と言っています。そして、こうした意味で一般市民から総合病院と呼ばれている病院のほとんどは、最近、急性期病院と言われています。
急性期病院という言葉は、地域医療を論ずる際、頻繁に使われているにもかかわらず、医療法上の規定はなく、定義も明確でありませんが、要は慢性期病院との対比で使われている病院の呼称で、緊急の対応を要する生命にかかわる若しくは悪化の恐れがある病気やけがに対して手術等の高度な医療を行う病院を指しているようで、一般的に患者7人に対して看護師1人という看護体制がとられています。
今日は、この急性期病院が実際上、地域医療の中核的担い手になっておりますが、この急性期病院に従前の総合病院のような手術等の治療を受けた後、日常生活に復帰可能になるまでの入院を期待することは出来ません。急性期病院の役割は、生命にかかわる若しくは病状悪化の恐れがある病気やケガに対して緊急的な手術等の医療措置を行なうことであって、その処置により病状が安定するまでが医療上の守備範囲であります。従って回復期、療養期(慢性期)の医療は、別の医療施設あるいは在宅でということになり、急性期病院での平均在院日数は2週間ほどで、原則術後、病状が安定したとみなされれば、日常生活に復帰できるまでの回復には達していなくても、急性期病院での治療は終わったということで、退院もしくは転院ということになります。
私は、最近様々な医療関係者に、「一つの病院で、手術から回復、療養まで出来ませんか。」ということを聞きましたが、帰ってくる答えは同様で、「今の医療制度のもとでは、出来ない。」と云うことでした。今日の我が国の医療制度は、様々な観点からの批判はあるものの、基本的には高齢化が急激に進展して医療需要の増大が予想される中、医療費の増大を抑制しつつ、良質の医療提供を持続的に実現していくための仕組みと考えられることから、地域医療もこの医療制度に則ってやっていくしか道はありません。その医療制度を制度設計する上でのコンセプトは、医療機能の分化と連携であり、あらゆる医療機能をフルセットした総合病院は、現在の医療制度の中では経営存立が困難であることがわかってまいりました。とすれば、そのような医療制度のもと、住民の視点からのよりよい地域医療とは、機能別に分化された病院・診療所間の医療連携が、患者にとって恰も一つの病院のごとくスムースに的確、適切に行われようになることであり、そのことが冒頭申し上げた医療の統合という大きな時代の流れに沿う現実的な対応であると思われます。
そこで先ず最初に、医療連携について、国の動向等も踏まえつつ三つのことについてお伺いいたします。第一は、地域医療連携に向けての県の取り組み姿勢についてであります。
平成25年5月に策定された「山口県保健医療計画」では、地域医療連携の推進という節で、各地域において医療連携体制構築に向けた協議会を設置して、地域の医療関係者による自主的な医療連携体制の構築を進める旨、記されていまして、実際県下八つの医療圏ごとに協議会が設置されているところでございます。ただ、医療連携体制の構築が進むためには、県が各地域の医療関係者の自主的な取り組みを尊重するという姿勢で調整役に終始するだけではなく、地域ごとに目指すべき医療連携の具体案を持って、その実現に向けて強力な指導性を発揮するという姿勢が必要と考えますが、ご所見をお伺いいたします。
第二は、医療機能の分化と連携についてであります。
私は先程、我が国の医療制度の制度設計上のコンセプトは「医療機能の分化と連携である。」と申し上げましたが、村岡県政推進の指針となるチャレンジプランも「医療機能の分化・連携の推進」を、重点施策53として位置づけています。そして、そこに示されている施策の方向は、国が創設した病床機能報告制度に基づき平成27年度以降都道府県が策定に取り組むことになる地域医療構想(ビジョン)の基本図を先取りしたものであると思われます。
病床機能報告制度は昨年秋に施行されたもので、第一段階として医療機関に対し、その有する病床において担っている医療機能の現状と今後の方向を、病棟単位で、都道府県に報告することを求めています。第二段階では、都道府県が、その病床機能についての医療機関からの報告結果を踏まえて地域医療構想(ビジョン)の策定に取り組みます。この地域医療構想においては、団塊の世代が全て後期高齢者となる2025年に照準を当て、その時点での医療需要とそれに応える医療提供体制を実現するための施策を、二次医療圏等ごとに策定し、その内容は医療計画に新たに盛り込まれることになります。
この報告制度で注目すべきは、病床が担う医療機能を、高度急性期機能、急性期機能、回復期機能、慢性期機能の四つに分けて報告を求めていることです。これまでの病床区分は、一般病床と療養病床の2区分でした。それが、4区分になる訳で、今後我が国の医療制度は、医療機能の分化と連携を基本に、医療提供体制を構築していこうとしていることが窺えます。
以上申し上げましたことを踏まえ、医療機能の分化と連携について2点お伺いいたします。第一点は、本県の地域医療を充実向上させていくために、医療機能の分化と連携に、どのように取り組まれていくのか、基本的なお考えをお伺いいたします。
第二点は、医療機能の分化と連携には、縦の関係と横の関係と二通りあるとの観点からお伺いいたします。
医療機能を、高度急性期、急性期、回復期、慢性期の四つに分けて医療連携を実現していくのは、縦の関係における分化と連携です。一方、特に急性期の医療機能は、脳外科関係、循環器関係、消化器関係、産婦人科関係、整形外科関係あるいはガン診療関係等に分けることが出来ます。これまで急性期病院は、総合病院と云うことでこれらの医療機能を概ねフルセットで担ってきた訳ですが、それをこれからは急性期の医療機能の分化と統合を促し、各急性期病院を特徴化して、その連携を図っていくという横の関係における医療機能の分化と連携が考えられます。
そこでお尋ねいたします。医療機能の分化と連携は、縦の関係と横の関係の双方において実現していくべきと考えますが、ご所見をお伺いいたします。
医療連携についてのお尋ねの第三は、地域連携クリティカルパスについてであります。この地域連携クリティカルパスは、地域における医療連携を充実していくための具体的な手法でして、治療経過や治療方針などの患者情報を地域の医療機関が共有し、適切な医療を提供するための診療計画であります。
私は、ここに山口地域脳卒中地域連携診療計画書を持っていますが、これがその地域連携クリティカルパスに相当するものであります。これを見ますと、急性期病院、回復期病院、維持期は入院と在宅に分けて、経過、目標、治療等を記入するようになっています。このような連携クリティカルパスは、疾患ごとに作成されると承知しておりますが、医療機関の現場の声として、書式の統一を図ることが望まれています。現状は、この連携クリティカルパスの書式が、急性期病院ごとにバラバラであることから、複数の急性期の病院から患者さんを受けるリハビリ・回復期の病院等は、急性期病院ごとに異なった連携クリティカルパスに対応しなければならないからです。
そこでお尋ねです。連携クリティカルパスの書式の統一は、その導入目的からして当然のことで、こういうことこそ医療行政に携わる者が果たすべき役割だと考えます。ついては、県は地域連携クリティカルパスの書式の統一に取り組むべきだと考えますが、ご所見をお伺いいたします。

 

【回答】◎知事(村岡嗣政君)

合志議員の医療機能の分化・連携に関する御質問のうち、私からは、取り組みの基本的な考え方についてのお尋ねにお答えします。
高齢化が進行し、医療需要の増大が見込まれる中、効率的で質の高い医療提供体制を構築していくためには、限られた医療資源のもとで、医療機関の役割分担と相互連携を進めることが極めて重要です。
このため、私は、チャレンジプランの重点施策に医療機能の分化・連携の推進を掲げて、病床機能の明確化や、医療機関の連携の推進に取り組むこととし、その実現に向けて地域医療ビジョンを来年度から策定することとしています。
まず、病床機能の明確化につきましては、病床機能報告制度や、将来の医療需要等についての客観的なデータをもとに、二次医療圏ごとの医療機能別の必要病床数を明らかにし、その達成に向けて、病床機能の転換や集約化、機能の分化を進めてまいります。
次に、医療機関の連携の推進につきましては、発症初期からリハビリ、退院まで患者の状態に応じた切れ目のない入院医療が提供できるよう、高度急性期から慢性期に至るまでのネットワークを構築するとともに、退院後の生活を支える在宅医療を推進するため、かかりつけ医と後方支援病院の顔の見える関係づくりを進めてまいります。
こうした取り組みは、医療機関や患者、保険者等の共通認識のもと、進めていく必要がありますことから、県内八医療圏ごとに協議会を設けて、調整や具体的な施策の検討を行うとともに、地域医療介護総合確保基金を積極的に活用して、支援していくこととしています。
私は、今後とも、医療機能の分化・連携を推進をし、本県の地域医療を充実してまいります。
その他の御質問につきましては、関係参与員よりお答え申し上げます。

【回答】◎健康福祉部長(小松一彦君)

地域医療についての数点のお尋ねにお答えします。
まず、地域医療連携についてです。
限られた医療資源の中で、高齢化の進行に伴う医療需要の増大に対応するためには、地域の医療機関が連携し、地域全体で医療を提供する地域医療連携を進めていくことが重要です。
このため、県としては、医療関係者等の共通理解のもと、連携体制の構築に向けた取り組みが進められるよう、がん、脳卒中、急性心筋梗塞など疾病ごとに求められる医療機能と、その機能を担う医療機関を、医療計画において示したところです。
この計画の策定に当たっては、地域の医療機関に対し、連携体制づくりへの参画を促すとともに、必要な機能を担う医療機関の役割分担の調整等を行ったところです。
また、この計画に基づき、具体的な連携が進められるよう、複数の医療機関が診療計画を共有する地域連携クリティカルパスの導入、参加を呼びかけるとともに、かかりつけ医と中核病院が患者情報を共有する地域医療連携情報システムの構築に向けて、導入検討会議を開催するなど、取り組みの促進を図っているところです。

2015年3月5日