答弁【1.交通政策における県の役割について】

「1.交通政策における県の役割について」【知事答弁】

合志議員の御質問のうち、私からは、交通政策における県の役割についてのお尋ねにお答えします。
まず、県全体として最適の交通ネットワークの形成に向けて、県には主導的な役割を果たすことが求められているのではないかとのお尋ねです。
県では、「やまぐち維新プラン」の重点施策に、「交流を活発化する交通ネットワークの機能強化」と「快適で住みやすい生活環境づくりの推進」を掲げ、交流の促進と生活交通の充実の両面から、総合的な交通政策を推進しています。
推進に当たっては、地域公共交通施策の中心的な役割を担う市町に対する助言や、全県的な共通課題である利便性の向上等に関する市町の取組への支援にとどまることなく、広域的な公共交通ネットワークの確保について、県としての主導的な役割を果たしているところです。
また、現在、県が交通政策において担っている役割についてですが、具体的には、交流促進の観点からは、地域外との交流を活発化させる基盤である公共交通の機能強化を進めるため、県内2空港の交流拠点化や新幹線の利便性向上、二次交通アクセスの充実等に取り組んでいます。
生活交通の充実の観点からは、地域間を結ぶ広域的な公共交通の確保に向けて、鉄道の運行本数の増加や利便性向上等についてJRに対して要望するとともに、複数市町にまたがる幹線バス路線に対して、運行経費の支援を行っています。
さらに、公共交通の利便性の向上を図るため、公共交通機関のバリアフリー化等を支援するとともに、中山間地域等における交通手段の確保のため、デマンド型乗合タクシーの運行等を支援しています。
私は、今後も、国や市町、交通事業者等との連携を密にし、交流の促進と、地域住民の生活交通の充実が図られるよう、交通政策における県の役割を果たしてまいります。
その他の御質問につきましては、関係参与員よりお答え申し上げます。

答弁【2.第2期総合戦略と交通政策について】

「2.第2期総合戦略と交通政策について」【部長答弁】

第2期総合戦略と交通政策についてのお尋ねにお答えします。
人口減少や少子高齢化が進行する中、中心市街地では空洞化が進み、県土の約7割を占める中山間地域においては、集落機能の維持や買い物、通院等の日常生活に支障を来す地域が生じるなど、大変厳しい状況にあります。
こうした中にあっても、県民誰もが住み慣れた地域の中で安心して暮らしていくためには、将来にわたって持続可能な地域社会を形成していく必要があります。
このため、現行の総合戦略においては、にぎわいや交流を生み出す「まち」の活性化や、活力ある中山間地域づくりの推進を掲げ、中心市街地活性化の促進や、交通結節点機能の強化、高速交通ネットワークの整備、生活交通の維持・活性化などに取り組んできたところです。
今後、県の第2期総合戦略を策定することとしていますが、こうした地域に活力を取り戻していくための取組は、継続して行っていく必要があることから、これまでの施策の成果や課題を検証した上で、取組の更なる充実・強化を図ってまいります。
国においても、第2期総合戦略策定に向けた方向性を示した基本方針の中で、「地域交通を取り巻く課題への対応」として、地域公共交通ネットワークの維持をはじめ、新たな交通サービスの提供や、持続可能で地域最適な地域交通の実現に向けた環境整備を推進することを掲げています。
県としては、こうした国の動向もしっかりと踏まえながら、国、市町と連携した交通政策の充実などによる都市再生、まちづくり、地域づくりが進められるよう、第2期総合戦略の策定に取り組んでまいります。

答弁【3.山口県総合交通計画の策定について】

「3.山口県総合交通計画の策定について」【部長答弁】

交通政策についての数点のお尋ねのうち、まず、山口県総合交通計画の策定についてお答えします。
県では、「やまぐち維新プラン」の重点施策に、「交流を活発化する交通ネットワークの機能強化」と「快適で住みやすい生活環境づくりの推進」を掲げ、計画的に交通政策を推進しているところです。
特に、広域的な交通ネットワークの確保については、鉄道の運行本数の増加や利便性の向上等をJRに要望するとともに、幹線バス路線について運行経費の支援を行い、県が主導的な役割を果たしているところです。
一方で、地域の交通政策の推進については、地域の実情を最も把握しており、まちづくりの主体でもある市町が主体的に取り組むことが基本であり、各市において、地域公共交通網形成計画の策定が進められ、計画に基づく事業が展開されています。
県では、各市の全ての計画策定協議会に委員として参画し、分散型都市構造という本県の特性も踏まえ、都市間の交通ネットワークの確保の観点から助言を行ってきたところであり、各市における計画は、隣接市町との交通ネットワークについても考慮し、策定されています。
こうしたことから、全県的な交通ネットワークの形成を目的に、山口県総合交通計画を策定することは考えておりませんが、引き続き、広域的な公共交通の確保・充実について、県の役割を果たしてまいります。

答弁【4.交通政策に取り組む体制の強化について】

「4.交通政策に取り組む体制の強化について」【部長答弁】

次に、交通政策に取り組む体制の強化についてです。
県の交通政策課では、鉄道、海運、バス、航空その他交通運輸に係る施策の企画及び調整に関することを所管しており、公共交通の維持・確保や利便性の向上等について、適切に取組を進めているところです。
また、部局横断的な取組については、中心市街地活性化や、中山間地域対策等、交通に関する関連分野ごとに、部局をまたがるワーキンググループや会議において、課題への対応や事業の調整などを進めています。
今後も、引き続き、このような現行体制において、総合的に交通政策を推進してまいります。

答弁【5.先進地視察について】

「5.先進地視察について」【部長答弁】

次に、先進地視察についてです。
先ほど答弁しましたように、県としては、お示しのような山口県総合交通計画を策定することは考えていないところです。
このため、計画策定のための委員会の設置や先進地視察が必要な状況にはありませんが、公共交通に関する施策を適切に実施していくための情報収集や先進事例の調査については、引き続き取り組んでいきます。

答弁【6.MaaS(マース)について】

「6.MaaS(マース)について」【部長答弁】

次に、MaaS(マース)についてです。
MaaSは、利用者にとっての最適な経路を提示するのみならず、複数の交通手段やその他のサービスも一括して提供する仕組みであり、交通手段の選択肢の拡大や、ワンストップでのシームレスなサービスの提供等、利便性の向上が図られるものと期待されています。
現在、全国各地で、地域の交通課題の解決に向けたMaaSのモデル構築のための実証事業が実施されており、今後、国において、事業化に向けた課題、地域経済への影響、運賃等に関する制度的課題の整理が進められることになっています。
県としては、こうした各地の実証事業の結果や、国における制度的課題の整理の状況等を注視しながら、県内における活用の可能性について検討してまいります。

令和元年9月定例県議会【交通政策について】

「交通政策について」

今日の交通政策は、交通需要に応えることに加えて、まちづくりとの関連においてその施策の推進が図られるようになってきました。所謂「交通まちづくり」が、交通政策の主要な課題となり、交通施策の目指す基本的方向となってきています。
「交通まちづくり」という言葉が知られるようになったのは、1990年代後半からのようですが、交通という視点からまちづくりに携わってきた人たちの議論を踏まえ、日本学術会議の協力学術研究団体である交通工学研究会は、交通まちづくりを「まちづくりの目標に貢献する交通計画を、計画立案し、施策展開し、点検・評価し、見直し・改善して、繰り返し実施していくプロセス」と定義しています。
全国の市町等の自治体が、この定義にあるように、まちづくりの目標に貢献する交通計画の策定と施策の推進に取組むための法的整備を、近年国は行っています。
平成26年に成立した改正地域公共交通活性化再生法と改正都市再生特別措置法がそれに相当するもので、コンパクトなまちづくりに向けて都市計画と公共交通が連携一体化して取組んでいくための法的な枠組みが制度化されました。具体的には、市町等の各自治体が、改正地域公共交通活性化再生法では地域公共交通網形成計画を、改正都市再生特別措置法では公共交通と連携した立地適正化計画を策定することが求められるようになり、交通まちづくりが、法的に制度化され推進されるようになってきました。
交通まちづくりに加えて、我が国が、これからの交通政策において力を入れて取り組むべきもう一つの課題は、軌道系交通へのシフトであります。過度な自動車依存社会からの脱却を図っていくこと、また環境負荷の少ない交通機関を選択して地球温暖化対策にも資していくことが、交通のトータルな在り方に対する時代の要請となってきています。鉄道や路面電車などの軌道系交通の比率を、交通全体の中において高めていく、そういう意味においての軌道系交通へのシフトを進めていくことが、今日求められています。
自動車交通から軌道系交通へのシフトを実現していくためには、利用者から交通手段として選ばれるよう機能や快適性の向上を図っていくことと併せて、軌道系交通とバスや自家用車等とのスムースな連携を交通システムとして可能にしていく必要があります。そうした要請に応える軌道系交通として普及が期待されているのが、近年、我が国でも少しずつ導入に拡がりを見せつつあるLRTであります。
LRTは、Light Rail Transitの略で、低床式車輛の活用や軌道・電停の改良による乗降の容易性、定時制、速達性、快適性などの面で優れた特徴を有する次世代の軌道系交通システムのことです。ヨーロッパでは、モータリゼーションが進展する中で衰退した鉄道や路面電車などの軌道系交通が、LRTという形で復活、再整備され、都市の再生に成功しています。我が国では、富山市のライトレールが日本初のLRTとして注目を集めましたが、既存の路面電車がある都市では、それのLRT化が進行しつつあります。また、新たに交通インフラとしてLRTを導入する動きも全国各地に広がりつつありまして、栃木県の宇都宮市では、2022年開業予定です。
エネルギー効率がよく人と環境にやさしい交通システムとしてのLRTは、今日の時代の要請にこたえるものであります。LRTが、各自治体において交通まちづくりの中軸となる公共交通の中に位置付けられ、その整備が図られるよう制度環境を整え、充実していく取組みが、我が国の交通政策に望まれています。
以上、交通政策についての私なりの理解を申し上げましたが、そのことを踏まえ、本県が進めるべき交通政策に関し数点お伺いいたします。

令和元年9月定例県議会【1.交通政策における県の役割について】

「1.交通政策における県の役割について」

国が制定した「交通まちづくり」に関する法制度においては、それを担う主体は基本的に市町村であります。地域公共交通網形成計画の作成は、市町村は単独で行うことができますが、都道府県は、当該区域内の市町村と共同することが求められています。また、都市計画と公共交通の連携・一体化を図る立地適正化計画の作成も、それを行うのは市町村であります。
国は、都道府県が主導して都道府県全体の広域的な交通計画を策定することは想定していないようです。あくまでも地域交通の担い手は市町村であるとの認識がベースにあり、地域交通における都道府県の役割として国が考えているのは、主に市町村間の調整、即ち広域調整と、市町村でできない領域の補完であると思われます。
私は、国の制度の中において地域交通に係る県の役割を果たしていくのは当然としても、その域にとどまっていていいのか疑問を持つものです。その理由は、三つあります。その1は、交通はネットワークであり、広域的に計画するのが望ましいということです。その2は、交通施策は、個別的部分的最適ではなく、全体最適を図るべきだからです。その3は、交通政策は、まちづくり、地域づくりと密接不可分であるからです。
そこでお尋ねです。村岡県政が掲げる県づくりの基本目標である「活力みなぎる山口県」の実現のためには、県全体として最適の交通ネットワークを形成していくことが不可欠です。ついては、そのことに向けて県は、市町と共同しつつも調整や補完の域にとどまることなく、主導的役割を果たしていくことが求められていると考えますが、このことにつきご所見をお伺いいたします。
また現在、県が交通政策において担っている役割はどういうものなのか、併せお伺いいたします。

令和元年9月定例県議会【2.第2期総合戦略と交通政策について】

「2.第2期総合戦略と交通政策について」

村岡知事は、今議会冒頭の議案説明において、今後も地方創生に積極的に取り組んでいく旨表明され、現行の地方創生に向けた総合戦略である「山口県まち・ひと・しごと創生総合戦略」を検証し、第2期総合戦略を策定するとの方針を明らかにされました。私は、この次期総合戦略が、しっかりした交通政策を伴ったものになることを期待しております。
地方創生は、安倍政権が掲げる旗印であり、担当大臣を置いてそのことを重要視する姿勢を明確にしたことは評価できますが、そのことを別にすれば、基本的にやっていることは、従前の施策の延長であります。指摘したいことは、地方創生を重要視する姿勢は示されているが、それを具体化する骨太の政策が伴っていないということです。では、どういう骨太の政策が示されるべきなのでしょうか。その一つが、交通政策であることは確かです。
このことをご理解いただくために、少し長くなりますが、関西大学教授宇都宮浄人著「鉄道復権」の一節を紹介いたします。尚、この書の初版の発行は2012年です。

今日、欧州の地方都市に出かけると、日本の地方都市に比べ、中心市街地に活気が漲っていることに目を瞠らされる。
しかし、20世紀の半ばは、欧州の地方都市も衰退に苦しんでいた。欧州に自動車が普及したのは日本よりも早く、すでに1950年代から街中の交通渋滞が深刻化し、街の広場には排気ガスが充満するようになる。さらに、郊外型のショッピングセンターができ始めると、ますます人が中心市街地に寄り付かなくなり、その活気が失われていった。また、旧植民地や途上国からの移民が職を求めて欧州の都市部に住むようになったが、そうした所得の低い層が集まる地域の都市環境は悪化した。1970年代から80年代にかけては、欧州の経済停滞によって若者の失業が増加し、一方で早くも顕在化してきた高齢化問題もあって、都市の再生はとても難しい状況にあった。
こうした状況の中、都市再生の切り札として期待されたのが公共交通、なかでも鉄道である(注 この著書での鉄道は、路面電車なども含む鉄軌道の交通機関)。老若男女、幅広い層の市民を再び街中に呼び戻す手段として、鉄道が持つ公共財的な性格に注目が集まった。一定の人口集積がある都市では、路面電車を導入して、都市再生を図ろうとする動きが出始めたのである。
フランスやイギリスは、1950年代までにほとんどの路面電車を廃止してしまったが、20世紀末から続々と路面電車を復活させている。とりわけフランスの各都市では、都市圏交通計画のもと、路面電車を改良したLRT(フランス語ではトラム)を導入し、全面的な都市の再生を行ってきた。

以上で紹介は終わりますが、都市再生、まちづくり、地域づくりへの取組みは、しっかりした交通政策が伴ってこそ実効あるものになることは、明らかであります。
そこでお尋ねです。地方創生を実現し、人口減少・少子高齢化を克服していくためにも、先ほどから述べておりますように、骨太な交通政策をテコにした本県の都市再生、まちづくり、さらには地域づくりの取組の充実・強化が必要だと考えますが、今後、第2期総合戦略の策定にどのように取り組まれて行かれるのか、ご所見をお伺いいたします。

令和元年9月定例県議会【3.山口県総合交通計画の策定について】

「3.山口県総合交通計画の策定について」

全県的な交通ネットワークの形成に、県は主導的役割を果たすべきである。また、本県の地方創生に向けた第2期総合戦略は、しっかりした交通政策を伴ったものにすべきである旨、申し上げましたが、そのためには、将来の実現を目指して取り組む全県的な交通ビジョンが必要です。しかも、そのビジョンは、県と市町が、共同して創り上げ、共有し、共にその実現を目指すものでなければなりません。そういう意味での、山口県総合交通計画の策定に取り組むことを提案したいと思います。
この計画は、国が都道府県に対して求めているものではありません。先に述べましたように、国は市町に対しては、地域公共交通網形成計画や立地適正化計画などの策定を求めていますが、都道府県に対しては、そうした定めはありません。しかし、交通はネットワークとして機能するものであり、全体最適が図られるべきことに留意すれば、先ず、県全体の大綱的な交通計画があって、それと整合する形で各市町の個別的交通計画が作成されるというのが、望ましいのではないでしょうか。
また、本県は、中小都市が県土に分散していることも、全県的な交通計画が求められる所以であります。このことを山口県の特性の一つとして、以前は分散型の都市構造と言っていましたが、現在は分散型の県域構造という表現に変わっているようです。分散型の県域構造と言うのは、事実に即した表現なのでしょうが、交通政策の企画検討は、山口県全体を一つの分散型の都市構造と見なして行う方が、より実効性のある施策の実現につながるように思われます。  都市計画と公共交通の一体化を図る立地適正化計画が目指す都市像は、多極ネットワーク型コンパクトシティですが、中小都市が分散する本県は、正しく多極分散型の県でして、それを一つの都市構造と見なして多極ネットワーク型コンパクトシティとしての山口県を実現する交通計画が構想されていいと考える次第です。
昭和62年に策定された「第4次県勢振興の長期展望」は、県内各地域がおおむね1時間で交流可能となるように「県土1時間構想」を打ち出しました。この構想は、その後の道路行政の指針となり、高速道路等の整備が推進されました。これを主導したのは、当時の平井知事でしたが、私は評価されていい施策であったと思っています。そして、今日の時代、本県において構想されるべきは、公共交通を軸とした全県的交通ネットワークの形成ではないでしょうか。私は、村岡知事には、是非そのことに取り組んでほしいと思っています。
そこでお尋ねです。私は、村岡知事が、本県独自の山口県地方創生骨太方針として山口県総合交通計画の策定に取り組まれることを期待するものですが、このことにつきご所見をお伺いいたします。