「4.交通政策に取り組む体制の強化について」
現在、県の交通政策課は、地域交通班と空港利用促進班の二つの班があって交通に関する業務を行っています。地域交通班の主な事務は、鉄道・バス・船舶等に関することで、今年度の主な事業は、錦川鉄道への助成、地方バス路線運行維持対策事業、離島航路対策事業等が予算措置されています。空港利用促進班は、文字通り本県の二つの空港、山口宇部空港と岩国空港の利便性向上・利用促進等に関することが、主な事務であり、また事業であります。これら二つの班には、それぞれ4人ずつ職員が配置されており、課長、副課長が課としての全体業務を統括しています。
こうした課の体制は、日常的な交通業務の中において、県が担うことを求められる事務・事業に対応したものと云うことはできると思います。しかし、県の交通政策が、その域にとどまっていては県の発展は展望できません。県の将来の姿は、どのような交通ネットワークが形成されるかと密接不可分の関係にあるからです。従って、今後、県の交通政策課は、全県的な観点から将来に向けて必要な交通施策を企画立案し、実現していく中枢機能をもった課として体制強化を図る必要があると思います。また今日、交通政策は、まちづくりや都市計画との連携、若しくは一体的施策の推進が求められることから、交通政策をトータルに進めていくための部課横断的な組織を設置して体制を強化するというやり方も考えられます。
そこでお尋ねです。ただ今申し上げましたことも含め、県として交通政策に取り組む体制の強化が必要と考えますが、このことにつきご所見をお伺いいたします。
「5.先進地視察について」
私は、先に全県的な交通ビジョンとしての山口県総合交通計画の策定を提案しましたが、それは、県と市町が共同して創り上げ、共有し、共にその実現を目指すものでなければならない旨申し上げました。そうした趣旨から、県、市町の交通政策担当者を中心メンバーとし、交通政策、まちづくり、都市計画等の有識者を加えた山口県総合交通計画の策定委員会の設置を、併せ提案したいと思います。この策定委員会の有識者は、広く県内外に優れた人材を求め、交通政策に係る世界的知見が反映され、生かされる委員会にしなければなりません。そして、この策定委員会は、しっかり時間とお金をかけて、交通政策の先進地、特に欧州の先進地を実地に視察することを勧めたいと思います。
私が、交通政策に関心を向ける契機になったのは、ある大学教授の交通政策レポートを読んだことでした。ご参考までに、そのレポートの一部を紹介いたします。
欧州を旅行すると、なぜ都市や商店街が繁華し、なぜ限界集落問題が小さいのか、その理由が良く理解できます。
地方都市の活性化は、実は、都市に暮らす人々の移動の動線を設計し、もって都市全体の活性化を支える商店街を成り立たせることができることを、国内外の多くの成功例が証明しております。市民が集まる活気ある街づくりを行うか否かは都市交通政策の巧拙によって決まる、ということを成功例は、証明しています。
旧東ドイツ各都市のインフラ整備では、路面電車の活用、バスのネットワーク、長距離にはドイツ鉄道とアウトバーンなど、バランスのあるものになりました。旧西ドイツに学び、ライプツッヒ、ドレスデン、エアフルトなど、日本人に馴染みの都市を訪れても、素晴らしい都市が再生して、活気を見せています。駅構内には、スーパーマーケットや商店が入り、駅の近隣に商店街が生まれ、人々が集まる商店街が都市の中心地になっています。すべて設計されたものです。
このレポートの筆者は、そう指摘して、街の再生に成功した特にドイツやフランスの先進都市の交通政策を、実地に視察して学ぶべきではないかと訴えています。私は、全く同感です。都市の再生と交通政策の関係は、具体的かつ多面的・多角的に見ていく必要があると思いますが、中でもLRTが、都市の再生にどうつながったのかはよく調査し、LRTを、本県の各都市において整備することの妥当性、可能性、有効性などについても、しっかり見極めてほしいと思っています。また、必要とあれば、交通政策担当の職員を、先進地に一定期間派遣することも考えられていいのではないでしょうか。
そこでお尋ねです。県の交通ビジョンとなる山口県総合交通計画を策定するための委員会を、県や市町の交通政策担当者を中心メンバーとして設置し、欧州などの交通政策の先進地と目される都市の視察を実施すべきと考えますが、このことにつきご所見をお伺いいたします。
「6.MaaS(マース)について」
MaaSは、「モビリティー・アズ・ア・サービス」の頭文字をとった略語で、新たな次世代移動サービスのことです。鉄道・バス・タクシー・ライドシェアなど複数の乗り物の予約や決済をアプリで済ませ、使いたいときに使うことを可能にしたこのサービスが、現在、世界で急拡大しています。
国土交通政策研究所報は、「MaaSとは、ICTを活用して交通をクラウド化し、公共交通か否か、またその運営主体にかかわらず、マイカー以外のすべての交通手段によるモビリティー(移動)を1つのサービスとしてとらえ、シームレスにつなぐ新たな『移動』の概念である。利用者はスマートフォンのアプリを用いて、交通手段やルートを検索、利用し、運賃等の決済を行う例が多い。」と記述しています。また、日経新聞が、今年の7月3日号にMaaSの発祥地であり先進地である北欧フィンランドを訪ねての取材記事を掲載していまして、それを読みますと、このサービスが世界的に拡大しつつある理由がわかります。
こうした交通サービスに関する世界的動向は、交通政策が、まちづくりや都市計画との一体化から、さらに交通に関する情報通信の統合に向かうことを示しています。その土台となる情報通信インフラの整備やルールづくりのために法制度を整えることは、国が早急に取り組むべきことですが、そうした時代の流れを先取りして、県において、あるいは県下の市町や事業者においてやれることは、積極的にやっていこうという姿勢は、持ってほしいものです。
我が国ではMaaSを、新たなモビリティサービスの一環と位置付け、経済産業省・国土交通省が、新しいモビリティサービスの社会実装に挑戦する地域等を応援するプロジェクト「スマートモビリティチャレンジ」を開始し、本年の4月から5月にかけて全国公募を行いました。そして、6月に28の支援対象地域・事業を選定しましたが、その中に本県の地域・事業が含まれていないのは残念です。
そこでお尋ねです。私はMaaSを含む新たなモビリティサービスの本県への導入については、積極的に支援し、推進していく姿勢を県は持つべきだと考えますが、ご所見をお伺いいたします。
「交通政策について(要望)」
交通政策において県として主導的役割を果たしていくということは、はっきり表明されまして、そのことは確認しておきたいと思います。
一方、山口県総合交通計画の策定は、考えていないということでありましたが、そういうこともぜひ検討していただきたいと思う次第であります。
一つご参考までに紹介しておきたいと思います。今年の5月27日の読売新聞一面の政治コラム編集手帳は、AIがいずれは政治の世界でも存在感を増していくかもしれないと述べて、次のように記しています。
長野県が2040年を展望した政策研究にAIを活用した。大学や企業と協力して人口や税収などの指標を分析した。2万通りの将来像を予測し、観光や交通政策がカギを握ると結論づけたそうだ。
このコラムは、地域の活性化にこの提言をどう活かすかは、次は政治の力量が問われようと続けています。
こうした指摘を待つまでもなく、本県における交通政策を今後どう構築していくかは、村岡知事の力量が問われるところでもあります。
村岡知事にはぜひ、豊かで住みよい山口県の実現に向けて交通政策にしっかり取り組まれるよう改めて強く要望して、今回の一般質問を終わります。