令和2年6月定例県議会【2.地域医療構想の見直しについて】

2.地域医療構想の見直しについて

現在、我が国の医療行政はコロナ対策で手いっぱいの感がありますが、団塊の世代がすべて後期高齢者になる2025年、さらにはその15年後の2040年を見据えての医療提供体制を構築しようとする地域医療構想が、平成27年度から推進されてきていまして、コロナ対応が生ずるまでは、この構想の実現が、国においても全国の都道府県においても医療行政の中心課題でした。

地域医療構想は、当面は2025年に向けて、地域ごとに効率的で不足のない医療提供体制を構築することを目的としていまして、具体的には、一般病床及び療養病床を、高度急性期機能、急性期機能、回復期機能、慢性期機能の4機能別病床に分類し、2025年における医療需要及び必要病床数を国が示した考え方に基づいて推計し、二次医療圏を単位として目指すべき医療提供体制の実現を図ろうとするものです。

全国の都道府県は、平成28年度中にそれぞれの都道府県ごとの地域医療構想を策定し終えていまして、山口県は同年7月に策定し公表しました。この本県の地域医療構想では、2025年に必要病床数として推計されている15889床は、平成27年当時の県下医療機関の病床数の総計22273床より6384床も少なくなっています。その理由は、2025年の必要病床数の推計は、国が示した考え方に則って為されているからです。例えば、療養病床入院患者のうち、軽症の患者の70%は在宅医療等で対応する患者数として推計するとした考え方で推計することが求められています。こうした2025年時点において実現したい医療提供の在り方を想定して推計された必要病床数と現時点における医療提供の現状における病床数との乖離が、本県においては6000床余あるということであります。

思いますに地域医療構想は、医療資源を効率の面から最適化を図ることを通して医療需要に応えていこうという考え方がベースにあり、全国で13万病床の削減が可能との推計が示されていて、医療費抑制の意図も見え隠れしてい るように思われます。

こうした地域医療構想の実現に、この度の新型コロナウィルス感染症をめぐる一連の対応は、大きな疑問を投げかけています。日本医師会の横倉義武会長は、コロナ対応で、病床不足になりながらも、持ちこたえることができた背景には、地域医療構想の実現に向けての病床の再編・統合が拙速に進んでいなかったことがあるとの認識を示しています。また、コロナ患者を受け入れる病床を数床準備された山口市のある病院の先生は、「医療において、経済効率重視でいいのだろうか。命にかかわることは余裕を持ってやるべきで、セーフティネットとしてのキャパは必要です。」と強調しておられましたが、同感です。

そこでお尋ねです。平成28年度に策定された山口県地域医療構想は、この度の新型コロナウィルス感染症への対応を踏まえ、抜本的に見直しをする必要があると考えますが、このことにつきご所見をお伺いいたします。

令和2年6月定例県議会【1.(1)医療用物資の提供と備蓄について】

1.新型コロナウイルス感染症対策について

5月の下旬から6月の初旬にかけて山口市内の病院10か所を訪ね、新型コロナウィルスの感染防止に取り組む医療現場の率直な声を聴きました。そして、1.病院が、通常のルートで医療用物資の確保が出来なくなったとき、必要な医療物資を提供できる備蓄体制の構築、2.熱がある人を地域集約的に診る拠点となる発熱外来の設置、3.医師が必要と判断したらスムーズ且つスピーディに実施できるPCR検査体制の確立、4.感染した患者に対応する医療従事者が、安心して仕事できる医療環境(不安がられず宿泊・休息できる場所の確保等)の整備などのことを、共通する声として承りました。いずれも予想される新型コロナウィルスの第2波、第3波に備えてやっておくべき大事なことであると思われます。

また、その他伺った様々な声の中で対応を考慮すべきと思ったことが、2点あります。その一つは、病院や介護施設などの面会禁止に関してです。もう一つは、病院経営への支援についてです。

今議会に提案されている補正予算の内容は、基本的にそうした声に応える内容になっていると評価いたしますが、本予算成立に伴うコロナ対策の諸事業実施が、より実情に即した行き届いたものになることを願い、以下、医療現場の声を踏まえて質問いたします。

(1)医療用物資の提供と備蓄

この度、新型コロナウィルス感染症への対応において医療現場が最も困ったことは感染防止のための医療用物資、マスク、ガウン、フェイスシールドなどの確保が困難になったことです。このため、私が訪ねた病院の多くは、これまでは1日1枚使用していたサージカルマスクを、1週間1枚の使用にするとか、ゴミ袋で臨時のガウンをつくるとかして当面をしのいでいる様子でした。ただ、手術はしっかりした感染防護が求められるので、緊急性のある手術以外は、当面実施を見送る措置がなされていました。医療用物資の不足により、コロナ対応のみならず通常の地域医療も充分提供し得ない状況に多くの医療機関が陥っていました。

現在は、医療用物資の不足は緩和されてきているとは云え、解消はされておらず、医療機関が通常の市場ルートで求めようとすると、例えばマスクが以前は1枚5円程であったのが50円する等、品薄感が続く中で大幅な高値での購入になるようです。そのため、各医療機関は、病院経営との兼ね合いの中で苦慮しています。そうした今日の状況の中で、私が訪ねたある認知症の患者を受け入れている病院の方は、次のようなことを述べておられました。「私たちは、コロナウィルス対策をしっかりやっていますが、万が一院内感染が生じた場合、必要な医療用物資が確実に提供されることになっていれば、少し安心です。」と。同様の思いの医療機関や介護施設は多いのではないでしょうか。

そこで、医療用物資の提供と備蓄について3点お尋ねいたします。
第1点は、本県の医療機関における現時点での医療用物資の確保状況について、県の把握をお伺いいたします。

第2点は、今日、本県の医療機関において医療用物資の不足が生じた場合には、どう対応する仕組みになっているのか、またその際の県の役割についてお伺いいたします。

第3点は、県内の医療機関に、医療用物資を緊急に提供する必要が生じた場合、こうした事態に直ちに応えることが出来るよう医療用物資の備蓄が図られていることが望ましいと思われます。ついては、医療用物資の備蓄に関し県のご所見をお伺いいたします。

令和2年6月定例県議会【1.(2)地域外来・検査センターについて】

1.新型コロナウイルス感染症対策について

(2)地域外来・検査センターについて

この度、地域外来・検査センタ―の設置の事業が、予算措置されたことは、医療関係者の声に応えるもので期待が持たれます。

私が訪ねた病院で発熱外来設置を望む声が多かったのは、発熱がある患者の場合、その度にコロナ感染リスクがあることを想定して防護措置を講じて対応しなければならず、そのことが病院にとっては加重負担になっているのが、発熱外来の地域拠点が設置されればその負担が軽減されるのではないかとの期待からだと思われます。

山口県で、発熱外来の地域拠点を設置しているのは、下関市と山陽小野田市でして私はその両方を視察いたしました。両市とも地元医師会の協力を得て開設していますが、意外だったのは受診者が少ないことです。下関市は1日平均7.8人でそれなりに受診があると見ることもできますが多いというほどではありません。山陽小野田市の場合は、受診者がゼロかあっても1人という日がほとんどで1日平均は0.4人です。

下関市と山陽小野田市が発熱外来を設置した理由は、医療の側からすると感染の可能性がある受診者を集約して診察することにより、一般開業医等診療機関への感染リスクの拡大を回避するためです。また、市民の側からすると発熱した場合、最終的な受診の受け皿があることが必要と判断されたことです。

従って、地域外来・検査センターの設置が、地域における発熱外来の拠点としてどれほど機能するかは未知数と思われますが、その役割も含めてコロナ対応の地域拠点として整備されることが期待されます。

また、この地域外来・検査センターは、「医師が必要と判断したらスムーズ且つスピーディに実施できるPCR検査体制の確立」に繋がることが期待されています。

厚労省は、本年2月27日に都道府県や保健所設置市宛て発した新型コロナウィルス感染症の行政検査に関する事務連絡において、「医師が総合的に判断した結果、新型コロナウィルス感染症と疑う者」は、積極的にPCR検査を行うようお願いしました。しかし、私が訪ねた病院ではそのようになっていなかったようで、「保健所と相談しても中々PCR検査をやってもらえない。医師が検査をやった方がいいと判断したら、スムースにそしてスピーディにPCR検査ができる仕組みにすべきではないか。」との訴えを、共通の声として聴きました。

PCR検査は、行政検査でありますので保健所の業務であり、検査を行うかどうかの最終判断は保健所が行います。そこで、県下の各保健所は県が対応できるPCR検査能力の現状や、検査の必要性、緊急性などを考慮した上でPCR検査を行ってきたものと思われます。結果として、本県では新型コロナウィルスの感染者は37人にとどまり、感染拡大は防ぐことができていますので、PCR検査を含めて保健所のこれまでの対応は総体として是認されていいものと考えますし、保健所の関係者が、その総力を挙げて感染拡大の抑止を成し遂げてこられたことには、感謝の意を表したいと思います。

ただ、そうとは云え医師がPCR検査を行った方がいいと判断しても、それが出来ないという事態は改善されるのが望ましいことは言うまでもありません。それが、この度地域外来・検査センターが整備されることに伴い、保健所を介さずとも医師の判断でPCR検査ができるようになることは、医療関係者の声に応える前進であり、歓迎すべきことであります。

そこで、地域外来・検査センターについてお尋ねです。

第1点は、このセンターは、県下に何か所設置するのか、また設置に際しての地域区分の基準は何なのか、全県での設置完了の見通し及び開設の時期は何時ごろなのかお伺いいたします。

第2点は、このセンターの運営主体はどうなるのか、伺います。

第3点は、確認の意味でお尋ねするのですが、この施設は、地域における発熱外来の拠点施設と理解していいのかお伺いいたします。

第4点は、この検査センターでは、PCR検査の検体採取を行うものと思われますが、その後スムーズ且つスピーディにPCR検査が行われるためには県の検査能力の増強が図られる必要があります。ついては、その点どうなのか、また必要に応じてこの検査センターは民間の検査機関へPCR検査の依頼も可能なのか、併せお伺いします。

第5点は、このセンターは、新型コロナウィルス感染の流行や収束という状況変化に関わらず常時開設されるのか、お伺いいたします。

第6点は、このセンターは、設置された地域の実情に即しながらも、県下の各施設が、基本的な運営方針や業務のあり方については共通していることが望ましいと考えられますが、その点どうなのかお伺いいたします。

 

令和2年6月定例県議会【1.(3)医療従事者の宿泊場所の確保について】

1.新型コロナウイルス感染症対策について

(3)医療従事者の宿泊場所の確保について

感染症対応に係る医療従事者支援事業として、帰宅困難な医療従事者に対する入院医療機関の宿泊施設確保の取組みを支援する予算措置が、6120万円計上されていますのは、医療現場の実情に応えるものです。

また、私が訪ねた病院でのことですが、その病院で院内感染が発生してコロナ対応をしなければならなくなった時、家に帰れるかどうかを医師、看護師、事務スタッフ等全職員にアンケート調査をしたところ、7割は帰れるとの回答だったそうですが、3割は帰るのが困難との回答だったとのことでした。

こうしたことからも、コロナ対応に当たる医療従事者の宿舎確保は、しっかり対応すべき課題であることは明らかであります。

そこで、2点お尋ねいたします。

第1点は、新型コロナウィルス感染症対応で帰宅困難になった医療従事者に対する宿泊施設確保の支援の具体的内容についてです。

第2点は、新型コロナウィルスへの対応は、感染症患者を受け入れる医療機関だけではなく、院内感染が発生すれば、一般の病院や介護施設でも職員が当たることになります。その際、そうした病院や介護施設に対しても、宿舎確保の事業支援は同様に行われるべきと考えますが、ご所見をお伺いいたします。

 

令和2年6月定例県議会【1.(4)リモート面会について】

1.新型コロナウイルス感染症対策について

(4)リモート面会について

現在、入院病床がある病院は、院内感染の発生を防ぐためほとんどが面会禁止の措置をとっています。そのことは、長期入院の患者さんが多い慢性期病院でも例外ではありません。私が訪ねた或る慢性期の病院は、面会が禁止されているため、長いこと家族等の親しい人に会えないことによる精神的不安やストレスの蓄積が、入院患者の認知症が進むなどの病状悪化につながることを懸念しておられました。対策として患者個人がスマホを持っておればそれを使って対応していますが、スマホを持っている人はわずかで対象が限られるようです。そこで、病院に一室WIFI環境が整った部屋を設け、各病棟にはタブレットを置くことでリモート面会が実現できればと考えておられました。ただ、そのことを実現するための整備費用の捻出がとても難しいので、こういうことにも公的支援を是非お願いしたいとのことでした。

そこでお尋ねです。Withコロナ時代における病院の在り方として、WIFI環境等を整備してリモート面会を可能にしていくことは、入院中であっても患者のよりよい生活の質を確保していくことが求められる今日の医療機関にとって、取り組むべき新たな課題であります。ただ、現在多くに医療機関は、そうしたくても整備のための財源に余裕がないというのが実情だと思われます。ついては、多くの入院患者に恩恵が及ぶと思われるリモート面会を可能にする環境整備に公的な支援措置がなされることを期待するものですが、このことにつきご所見をお伺いいたします。

令和2年6月定例県議会【1.(5)病院経営への支援について】

1.新型コロナウイルス感染症対策について

(5)病院経営への支援について

新型コロナウィルスの国内感染は、多くの医療機関の病院経営を直撃しています。先ず第一に、感染リスクを懸念してのことと思われますが、病院に行くことが控えられて受診者が大幅に減少しています。第二に、手術を行う医療機関にあっては、感染リスクを回避するために緊急性のある手術以外は先延ばししているために、手術の実施件数が大幅に減っています。第三に、手術の件数が減ると診療報酬における加算要件を満たさなくなることによる収入減が懸念されています。

山口市において公的医療機関として地域医療を担う基幹病院になっている山口赤十字病院、済生会山口総合病院、小郡第一総合病院なども、いずれもこうした事態に直面し、これからの病院経営に不安があることを、私は訪ねて確認しました。また、当然のことですが同様の不安が、私が訪ねた民間の医療機関においても共有されていました。

思うに、こうした新型コロナウィルスがもたらした病院経営の不安は、全国の医療機関に共通する事態であることから、このことへの対策は、基本的に国において取り組まれるべきものと考えます。

今年の4月、国は緊急事態宣言を発することにより新型コロナウィルスの感染拡大を阻止し、医療崩壊を回避しました。このことは、私は大いに評価されていいと考えるものですが、現在は、病院経営の不安から地域医療が崩壊することを防ぐための施策が、国に求められています。

ついては、新型コロナウィルスの影響で病院経営の不安に陥っている多くの医療機関に対して、しっかりした経営支援の対策が講じられ不安解消が図られるよう、県は国に対して、地域医療の現場の実情を踏まえて働きかけを行うとともに、県としても為しうる支援の施策があれば、それを行うべきと考えますが、ご所見をお伺いいたします。