この度、県の財政運営について質問することにしたのは、素朴な疑問と一つの思いからです。素朴な疑問とは、平成29年度から33年度までの5年間で、1350億円もの財源不足が見込まれているという事態に対してです。一つの思いとは、年が明けたら2期目に挑戦する村岡県政が、決して縮み志向に陥ってはならないという思いです。
1350億円もの財源不足に対する疑問は、その根拠が明らかでないからです。本県の財政に関する数値を見ますと、示されている巨額の財源不足を生ずるような要因は、見当たりません。
本県の一般会計の決算は、昭和40年度以降で赤字になったのは昭和51年度だけで、ほかの年度は全て黒字決算です。 また、平成19年に成立した「地方公共団体の財政の健全化に関する法律」、所謂「健全化法」が定めた財政指標である「健全化判断比率」は、平成21年度以降の決算で山口県の状況を見ますと、早期健全化基準を毎年下回っており、県財政の健全性は保たれています。
県債償還に充てる公債費から新規県債の発行額を引いたプライマリーバランスは、決算ベースで見ると県が公共事業等の財源として発行した一般分においては、平成15年度から黒字となっていますし、地方交付税の振替措置として発行された臨時財政対策債等の特別分を含めた県債全体においては、平成24年度以降は黒字となっており、平成28年度は、228億の黒字であります。
県税収入を決算の収入済額で見ますと、平成22年度が1462億円であったのが、その後、年々増加して、平成27年度、28年度は1700億円台となっています。世界経済は、来年以降も堅調で拡大基調が続く見通しですので、大きな政治的、経済的な波乱がない限り、県税収入の大幅な落ち込みはないものと思われます。
主要な一般財源の一つである地方交付税の交付額を見ますと、平成21年度以降、本県の基準財政需要額を満たすために必要な額が、ほぼ交付されています。総務省は、8月末に平成30年度の地方財政についての考え方を明らかにし、「平成29年度地方財政計画の水準を下回らないよう実質的に同水準を確保」する旨、表明しています。従って、来年度以降も、国の地方交付税に関する大きな政策変更がない限り、地方交付税による収入は、現行水準が確保されるものと思われます。
本県は、平成20年から24年にかけて「新・県政集中改革」ということで、財源不足対策と行財政運営の基盤づくりに取り組んでいますが、この時は、平成16年度からの「三位一体の改革」により、地方交付税の大幅な減額が行われたこと、また平成20年秋のリーマンショックに端を発した世界的な金融危機による景気の後退の影響で、県税収入が減少したことなど、財源不足の要因が明らかでした。しかし、今回対応しようとしている財源不足については、その背景となる要因が、明らかでありません。
そこでお尋ねです。県は、本年度当初に、副知事を本部長とする行財政改革統括本部を設け、5年後の平成33年度を目標年度として、1350億円もの巨額の財源不足を解消し、収支均衡した自立・安定的な行財政基盤の確立を図ることを目指して、行財政改革を推進しています。この取り組みが所期の目的を達するためには、県職員の協力と県民の理解が不可欠であります。ついては、そのために資することを願い、先ず3点お伺いいたします。
第一点は、本年度当初、向こう5年間での財源不足額を1350億円と見込んだ根拠についてであります。
第二点は、現時点においても同様の財源不足の見通しを持っているのか、お伺いいたします。
第三点は、この度の行財政改革の目的である収支均衡した自立・安定的な行財政基盤の確立を実現するための課題についての認識と、その課題解決のための基本的方針についてであります。
次に、行財政構造改革の推進についてお伺いいたします。この改革の取り組みは、本県の財政が、恒常的に歳出が歳入水準を上回る硬直化した構造になっているとの認識に立ち、その構造を改めて財源不足を生じない安定した財政基盤の確立を図ろうとするものであると考えられます。
その歳出構造の改革は、総人件費の縮減、公共投資等の適正化、公債費の平準化、全事業の徹底した見直し、公の施設の見直しの5つの柱から成り立っていますが、そのうち総人件費の縮減、公共投資等の適正化、全事業の徹底した見直しに関して思うところを述べ、所見を伺いたいと思います。
先ず、総人件費の縮減についてであります。この取り組みは、一般行政、教育、警察含めて600人以上の定員削減が、その内容であります。平成28年4月1日現在の、県職員数は、18995人です。総務省が地方公共団体の職員数の‟あるべき水準”を検討するための参考指標として作成した定員回帰指標を用いて本県の職員数を算定いたしますと18615人となりまして、本県の職員数は、それを380人上回っています。
従って、総務省が示した算定方式による職員数が、適正水準であるとすれば、定員削減の方向は妥当としても、600人以上の定員削減は、適正水準の職員数から更に220人以上削減することになり、県政の円滑な執行に支障が生じないか気になるところであります。
そこで、お尋ねいたします。総人件費の縮減に向けて職員定員を600人以上削減するとの方針は、県政の円滑な執行という観点からの考慮は充分なされたものであるのか、そうであるとすれば検討段階において、どのような議論、算定を経て導き出されたものであるのか、お伺いいたします。
ことに気になるのは、定員削減が一律に行われて、人手を必要とするところの業務の遂行に、支障や遅れを生じたりしないかということであります。例えば、農業関係では、ほ場整備の事業を加速化していくことが、本県農業を守っていく上において重要と思われますが、こうした事業は、地元関係者の様々な権利関係を調整しながら計画を策定し整備を進めていくものであることから、その事業量に応じた人員の確保が不可欠であります。ついては、定員削減の実施に当たっては、そのような人員の確保を必要とする各種県事業の執行に、支障や遅れが生ずることがないようにしていくことが求められると考えますが、このことにつき、併せご所見をお伺いいたします。
次に、公共投資等の適正化についてであります。これは普通建設事業に分類される公共事業等の県負担額を10%削減しようとするもので、そのことによる一般財源への効果は、計画期間の5年間で30億円と見積もられています。このことにより、その公共事業費が実際どれほど縮減されることになるのか明らかでありませんが、ここ20年間続いている公共事業費の削減が、向こう5年間更に進むことになります。
本県における道路・河川整備や土地改良事業などの公共事業費(県営建築事業費を除く)のピークは、平成9年度の1967億円であります。それが、今年平成29年度は、701億円でありますので、ピーク時約2000億円のほぼ3分の1近くまでそうした公共事業費は減っています。
産業・生活インフラである道路・河川、橋梁、港湾、学校、公共施設等の建設整備及び維持補修は、産業を振興し生活環境の向上を図っていく上において必要不可欠な公共事業であり、将来への投資であります。無駄な公共事業をなくしていくことは当然のことでありますが、今日の公共事業費の減りようは、必要な公共事業の実施を困難にしている感があります。
そこでお尋ねです。この度の行財政構造改革に伴う公共事業費の縮減は、村岡県政が目指す「活力みなぎる山口県」を実現するための産業・生活基盤の整備促進を制約することになりやしないか懸念されますが、このことにつきご所見をお伺いいたします。
次に、全事業の徹底した見直しについてであります。この事業見直しの取り組みは、本年9月の行財政改革統括本部の会議において、その時点での見直し状況が明らかにされていまして、1260に上る県事業のうち、その81.5%にあたる1027事業が見直しの対象になっており、うち休廃止対象事業が171事業あります。
見直しについては、改革の期間中に事業を休廃止するもの、事業を縮小するもの、事業の効率化を図るものの三つの方向性が示されていまして、その対象となった個別事業は、見直しの方向性に沿って、行財政改革統括本部の推進室が各部局と調整を行い、予算に確実に反映していくこととされています。
私は、こうした事業見直しの取り組みを評価するものであります。ただ思いますに、こうした取り組みは、改革期間中だけに集中するのではなく、これを制度化して、常時不断にやっていくようにすべきであると考えます。即ち、一定の年限を経た県事業は、全て見直しの対象にして、常に事業の新陳代謝がある県政にしていくことが、「活力みなぎる山口県」のあるべき姿の一つの実現になるのではないでしょうか。この度、統括本部が、「全事業の見直しについて」ということで示している趣旨、検証の視点、見直しの方向性は、そうした取り組みを実施する上において、踏まえるべき基本的事項を的確に打ち出しており、継承されるべき内容であると見ております。
そこでお尋ねです。この度の行財政構造改革に伴う県事業の見直しは、改革期間中だけではなく、常時不断に行われるようにしていくべきであると考えますが、このことにつきご所見をお伺いいたします。
最後に、事務生産性の向上についてお伺いいたします。私は以前、県のある業務を受託している団体に、その受託業務の担当ということで雇用されている方から相談を受けたことがあります。その受託業務は、1年契約であって翌年もその団体が受託するかどうかわからないため、自分自身も翌年雇用が続くかどうか不安定だし、その業務のために必要な人員を確保しようとしても、毎年、毎年、雇用がどうなるかわからないようでは、しっかりした人を確保できない。せめて、3年から5年くらいは、安心して続けて働くことができるようにしていただけないでしょうか、というのがその相談の主な内容でした。
私は、もっともな話と思い、その業務を委託している関係の部で、複数年契約ができないのか検討してもらいましたら、地方自治法が定める会計年度独立の原則を逸脱することになり、出来ないとの結論でした。
その結論に到る間、検討されたのは県の長期継続契約に関する条例に該当するかどうかでした。地方自治法は、会計年度独立の原則ということで物品の借り入れや業務委託の契約は1年契約を基本としています。ただ、第234条の3において、電気、ガス、水道の供給若しくは電気通信役務の提供等の他政令で定めるものについては、例外的に1年を超える長期継続契約を締結できるとしております。
このことを受けて地方公共団体は、条例で長期契約の対象範囲をどうするか定めることになっていまして、総務省は、そのことに関する見解を、平成16年11月10日付の自治行政局長通知において財務会計制度に関する事項ということで示しています。本県は、その見解を踏まえ、平成17年3月に県条例を定めましたが、私に相談があった業務は、その県条例が認めている長期継続契約を締結することができる契約の対象とならないと見做されたのであります。
私には、その業務は、3年乃至5年の契約にしても何の問題はないと思われました。むしろ、業務を委託する県の担当部課は、毎年毎年、業務契約の事務をしなければならない手間が省けるし、受託する側は、安心して数年業務に従事できるということで、双方に良いのに、それができない。私は、そういう現状を知って、地方自治法の定めに基づく会計年度独立の原則は、運用面において大幅な緩和が図られるべきと思った次第です。
県の長期継続契約についての条例は、主に物品の借り入れと役務の提供に関しての定めになっていまして、役務の提供とは業務委託のことでありますので、この質問を行うにあたり業務委託契約についての現況を調べていただきました。その結果、平成28年度では、業務委託の契約総数が6163件で、そのうち1109件が長期継続契約でした。従って、8割以上の5054件の業務委託の多くは、年度替わりに際し契約更新の事務が行われたものと思われますが、多分その中には、長期継続契約にしても何ら支障のないものが相当数含まれているのではないかと、わたくしは推察しております。そして、そういう点に着目して業務委託契約の在り方を見直していくことも、歳出構造改革に資することになるのではないかと思う次第です。一つの事例からの思うところを申し上げましたが、同様なことが県行政において各方面で数多くあるのではないでしょうか。
そこで、私が訴えたいことは、この度の行財政構造改革は、県行政の事務生産性を上げる取り組みに大胆に挑戦してほしいということであります。私が、ここで事務効率とは言わずに事務生産性という言葉を使ったのは、ネットプロテクションズの執行役員である秋山氏が、「生産性向上と効率化とは、全く異なる。」と語っていることに同感するからであります。彼が言っていることを、私流に要約しますと「生産性の向上とは、ミッションの実現に貢献する度合いを高めること」であり、「効率化は、時間とコストの低減」です。そうした意味合いで、村岡県政のミッションである「活力みなぎる山口県」の実現に向けて、県行政の事務生産性の向上を図るべく、その在り方を大胆に見直すことに挑戦してほしいと思う次第です。
そうした挑戦は、安倍内閣が一億総活躍社会実現に向けた最大のチャレンジと位置付けて推進している「働き方改革」の施策の方向に沿うものと考えます。なぜなら、「働き方改革」のメインテーマの一つは、労働の生産性向上であるからです。
そこでお尋ねです。私は、この度の行財政構造改革の柱の一つとして、県行政の事務生産性の向上を新たに位置付けて取り組むべきであると考えますが、このことにつきご所見をお伺いいたします。
また、その一環として物品借り入れや業務委託に関する長期継続契約の対象範囲につき、大幅な拡大に取り組むべきであると考えますが、併せご所見をお伺いいたします。