「公共交通政策について」
1. 県の役割について
平成25年に制定された交通政策基本法は、第9条において、「地方公共団体は、基本理念にのっとり、交通に関し、国との適切な役割分担を踏まえて、その地方公共団体の区域の自然的経済的諸条件に応じた施策を策定し、及び実施する責務を有する。」と定めています。都道府県の責務、市町村の責務とせず、地方公共団体の責務という表現にすることで、国は、交通に関する施策の策定及びその実施は、都道府県と市町村が、お互いに連携して当該区域における交通政策の進展を促そうとしているようです。
そうとは云え、実際上は直接住民生活にかかわっている市町が、域内における交通政策、特に通勤、通学その他不特定多数の様々な人たちが移動手段として利用する公共交通に関する施策の大部分を担っています。それに対し県は、公共交通にかかわっている市町や民間事業者に対して、国の支援策の仲介、広域調整、補完的支援などの役割を、これまでは主に果たしてきていまして、どちらかと云えば受け身的な役割に終始してきたように思われます。
しかし、今後の公共交通の望ましい在り方を展望するとき、県が主導的役割を果たすべきと思われることがあります。これからの県政が目指すべき方向の一つは、マイカーがなくてもシームレスな公共交通ネットワークが整っていて自由な移動が高齢者や障碍者を含めて誰にでも確保されている地域社会の形成であります。また、そうした公共交通のネットワークは、観光振興においても重要で国内一般の観光客のみならず、インバウンドの訪日外国人にとっても利用しやすい仕組みにしていくことが望まれます。更には、公共交通機関としてのバス等の運行において定時性が確保されるよう道路の整備を、県に期待する声もあります。そのような利便性・信頼性の高い、そしてネットワークとしてつながっている全県的な公共交通の形成に向けては、当然に県が主導的な役割を果たしていくことが求められます。
そこでお尋ねです。県は、本県における公共交通に関する施策の策定及び実施において、今後どういう役割を果たしていかれるのか、ご所見をお伺いいたします。
「公共交通政策について」
2. 地域公共交通網形成計画の策定
国が、現在公共交通に関して推進している主要な施策に一つに、地域公共交通網形成計画の策定があります。これは、平成26年に成立した改正地域公共交通活性化再生法において打ち出された施策で、まちづくりと連携した、面的な公共交通ネットワークを再構築するための計画を、地方公共団体が、地域の実情に応じて作成するものです。
本年10月末現在で、433件の計画が策定されていまして、その多くは市町による策定です。都道府県も市町村と共同して計画を作成できるとされていまして、青森、奈良、愛媛、佐賀の4県は、県としての計画を策定しています。また、複数の市町にわたる圏域の公共交通網計画の作成に府県が参画関与しているケースが18件あります。本県では、県下13市の中で萩市と柳井市を除く11市において策定されており、萩市は現在策定の作業中で柳井市は来年度から策定に取り組むとのことですので、近年中に県下全域をカバーした市圏域別地域公共交通網形成計画が策定され、出揃うことになります。そこで、県の公共交通政策において問われるのは、全県的な視野からの地域公共交通網形成計画は必要ないのかということであります。
都道府県において地域公共交通網形成計画を策定しているのは、先ほど述べましたように未だ4県ですが、私は、県域として公共交通ネットワークをどう構築していくかは、県の将来をデザインする上で重要な課題であることから、公共交通に係る県の施策の基本方針を確定して、そのことに基づく県としての地域公共交通網形成計画の策定に取り組むべきだと考えます。
そこでお尋ねです。県下の各市が策定した地域公共交通網計画をベースにした上で、県の公共交通に係る施策の方針に基づき広域調整を行い、本県の地域公共交通網形成計画の策定に取り組むべきだと考えますが、ご所見をお伺いいたします。
「公共交通政策について」
3. バス交通の確保維持改善
県内の公共交通を構成しているバス・鉄道・タクシーは、いずれもが県民への移動手段の提供という点で重要な役割を果たしています。従って、これら交通機関への支援は、県民の移動手段の確保への支援という観点から、その妥当性の検討は行われるべきと考え、今回は、そのことに関しバス交通についてお伺いいたします。
言うまでもなくバス交通は、今日も公共交通における根幹的な交通機関の一つであります。しかし、以前は公営事業として運行されていたバス交通の多くは、民間事業者への移譲や民営化が図られ、現在、本県における公営バスは、宇部市営バスのみであります。このように、今日の時代におけるバス交通の大部分は民間事業者によって担われていますが、バス事業の経営は、年々厳しさを増しており、バス路線の多くは、運行経費から運賃収入額を引いた欠損額に対する公的補助により、どうにか維持されているというのが実情であります。
バス事業では、バスが運行する道路を路線と云い、その路線上をどういうルートで走行するか定めたものを運行系統といいまして、正確に言いますと、バス事業への補助は、路線に対してではなく運行系統の欠損に対してであります。
平成29年における本県の運行系統の総数は846で、補助による内訳は、国・県補助の系統が43、県・市補助の系統が156、単市補助の系統が340となっており、補助なしの自主運行の系統は307で、系統全体に占める割合は36%であります。尚、同年の本県の地方バス路線維持費への補助額の内訳は、車両購入費への補助を除いて国が2億5千万円、県が4億3千万円、市町が総計して10億2千万円であります。こうしたバス交通の現状を、私たちは、どう受けとめ、今後のバス交通への公的補助の在り方を、どういう考えに基づいて方向付けしていくべきなのでしょうか。私は、国土交通省が平成22年6月に発表した「交通基本法の制定と関連施策の充実に向けた基本的な考え方」に示されている「移動権の保障」という考え方に基づくのがいいと思っています。
そのことに関する記述を紹介しますと、次の通りです。
交通基本法の根幹に据えるべきは「移動権」だと思います。先ず、私たち
ひとりひとりが健康で文化的な最低限度の生活を営むために必要な移動権を
保障されるようにしていくことが、交通基本法の原点であるべきです。とり
わけ、お年寄りや体の不自由な方々にとって、移動権は極めて重要です。
どのような地域で暮らしていても、すべての人々にとってまちにでやすい
環境を整え、移動権を保障していくべきです。
こうした考え方に立てば、バス交通によってしか移動手段が確保されない地域の人々のために、公的補助によりバスの運行を維持していくことは、交通政策として当然の施策になります。
マイカーの利用が出来ない人たちの多くは、通学、通勤、通院、買い物等の日常生活における移動手段としてバス交通を利用していて重要な生活基盤になっています。また、観光面を含め交流人口の増加による地域活性化のインフラとして公共交通のネットワークは重要ですが、バス交通はその主要な担い手であります。
以上、バス交通について思うところを申し上げましたが、そのことを踏まえ、本県のバス交通について以下3点お伺いいたします。
第一点は、本県におけるバス交通についての認識と、今後のバス交通の確保・維持・改善に向けた取組みの基本的方針についてお伺いいたします。
第二点は、過疎地域におけるバス運行の確保についてであります。
過疎地ほど、バスの運行を必要としていると思われますが、乗車人数が、国・県・市の補助基準を満たさなくなったということで、それが廃止になる系統が、少しずつ増えています。本県の平成25年のバス運行系統総数は、911であったのが、平成29年には846となっており、55の系統においてバスの運行が廃止されています。
私は、移動権の保障という考え方から、過疎地等において移動手段がバスしかないという人たちがいる限り、曜日指定のバス運行の可能性なども検討して、可能な限りバス運行を確保維持していくようにすべきだと考えますが、ご所見をお伺いいたします。
第三点は、交通ICカードの導入促進についてであります。利便性の高いバス交通ネットワークを形成しバリアフリー化していくことが、県民や観光等による来訪者のバス利用の増進につながるものと思われます。ついては、そのことに向けた施策の一環として、交通ICカードの導入普及を促進していくべきであると考えますが、このことにどう取り組んでいかれるのか、ご所見をお伺いいたします。
「公共交通政策について」
4.高齢者の移動手段の確保
私が住んでいる山口市は、いい街です。転勤族で数年山口市に住まれた方で、山口の街が気に入って、定年後山口に住むことにしたという方は、結構おられます。そのように山口市は、いい街なのですが、問題は、車が運転できなくなると、一気に不便な街になることです。従って、山口市に住む不安の一つは、年取って車の運転が出来なくなった時に、移動手段をどうするかということであります。
昨日、中島議員が明らかにされたことですが、昨年の3月から、75歳以上の高齢者は、自動車の免許更新をする時、認知機能検査を受けることになりまして、この制度開始から1年間で、本県において28,717人が、この検査を受け、そのうち704人の方が認知症のおそれありと分類されています。その中で、最終的に認知症と診断され免許取り消しとなった方は3人ですが、207人の方が免許証の自主返納をしておられます。そして、それ以外の方は、多分免許更新の手続きをされなかったのではないかと推測されます。こうしたことからも車の運転が出来なくなる高齢者が年々増えていくわけで、そうした高齢者の移動手段を、どう確保していくかは、全国に比べ約10年早く高齢化が進んでいる本県にとって、看過できない政策課題であります。
マイカーを利用できなくなって最も助かるのは、家族等身内に気軽に車の乗せてくれる人があって、必要な移動が確保できることです。それがない場合は、バスやタクシー等の公共交通を利用するしかありません。ただ、バスは近くにバス停がないと利用が困難です。タクシーは、度々の利用は料金負担が過重になります。そこで、バスの場合は、路線バスを幹とすればその枝となるフィーダー交通としてのコミュニティバス等の運行によりバス利用区域を拡大する取り組みが為されています。それでもバス交通でカバーできない地域や身体的理由等でバス利用が困難な高齢者に対しては、山口市は、コミュニティタクシーやグループタクシーという仕組みを、創設しています。コミュニティタクシーは、高齢者だけではなく住民一般が利用できるもので、コミュニティバスのタクシー化であります。グループタクシーは、65歳以上の高齢者が対象で、タクシー料金割引の利用券を配布し、相乗りすれば人数分さらに割引料が増す仕組みになっています。山口市は、このようにしてタクシーの利用料金の軽減を図り、タクシーによる移動を支援しています。そうした自治体の公共交通による移動支援の施策に加えて、国が近年普及させようとしているのが、自家用有償旅客運送です。
自家用有償旅客運送は、自家用車すなわち白ナンバーの車による有償運送です。通常、有償運送が出来るのは緑ナンバーのバス、タクシー、トラックなど運送を業務としている車のみで、白ナンバーの車による有償運送は、認められていません。それを、既存のバス・タクシー事業者による輸送サービスの提供が困難な場合、地域の関係者の協議を経て、道路運送法の登録を受けたNPO法人等が自家用車で有償の運送を行うことを認めることにしたのが、自家用有償旅客運送です。その運送の対価は、タクシー運賃の概ね2分の1を目安とするとされていて、バス・タクシー等の公共交通でカバーできない公共交通空白地において移動手段確保の役割を担う、重要な制度として位置づけられています。
以上、申し上げましたことを踏まえお尋ねいたします。まず第一に、本県における高齢者の移動手段確保についての現状と課題及び県の役割について基本認識をお伺いいたします。
「公共交通政策について」
5.公共交通の担い手対策について
交通政策に係る主要な課題は、移動手段の確保からまちづくりに連動した交通ネットワークの形成、そしてシェアリングと情報技術の活用へと変遷してきているように思われますが、実は、これらはいずれも今日的な課題であり、交通政策の課題は、重層化してきています。
そうした中で、公共交通が直面している切実な喫緊の課題は、担い手不足であります。これへの対応策としては、先ず運転手等への処遇改善ということが考えられますが、そうしたことに加えて交通に関する制度の改革や技術の進展により、その解決を図ろうとする取組みが進行しています。
では、その解決の方向はどういうものなのでしょうか。制度の改革に関しては、公共交通を、シェアリングの方向で規制緩和していくことです。技術の進展は、車の自動運転の実現であります。いずれも政府が新成長戦略に位置付け、推進していこうとしていることです。
シェアリングは、物・サービス・場所などを、多くの人と共有して利用することで、今年の6月から施行された民泊新法は、旅館宿泊業に係る規制を、その方向で緩和したものと見なすことができます。
では、公共交通におけるシェアリングとは、具体的にはどういうことなのでしょうか。実は、先に述べた自家用有償旅客運送も、有償運送を白ナンバーの自家用車にも認めるという意味で、その方向での規制緩和と見做すことが出来ますが、典型的なのは、ウーバーと云って移動サービスの提供ができる一般の人の車とお客をスマホのアプリを使って繋ぐという配車サービスがあります。このサービスは、アメリカで始まり、現在は広く欧米に普及していますが、我が国では、有償運送には認められていません。理由としては、タクシーなどの運送事業者への影響が懸念されているからと思われます。運送事業者の存続を図ることは、地域における公共交通を持続的、安定的に確保していく上において大事でありますので、そうした規制を一概に批判することはできません。そこで、地域における持続的、安定的な公共交通の維持確保を前提にした上で、シェアリングという方向での規制緩和をどう図っていくのか、知恵を絞ることが求められています。また、宇部市で実証実験が行われることになった自動運転は、公共交通の担い手不足解消に向けた究極の解決策と目されています。シェアリングや自動運転が、本当に公共交通の担い手不足解消に繋がるのかついては、懸念もありますが、取組むべき一つの選択肢であることは確かです。
ついては、公共交通の担い手対策として具体化・実用化に向けた動きが進行している、シェアリングと自動運転に、本県が産学官連携して取組み、新たな公共交通のモデルを構築していくことを期待するものですが、このことにつきご所見をお伺いいたします。
「公共交通政策について」答弁
◎知事(村岡嗣政君) 合志議員の御質問のうち、私からは公共交通政策に関する県の役割についてのお尋ねにお答えします。
地域公共交通に関する施策の推進については、地域の実情を最も把握しており、まちづくりの主体でもある市町が主体的に取り組むことが基本となります。
県としては、市町に対する指導・助言を行うとともに、広域的な公共交通の確保、維持や、全県的な共通課題である利便性の向上等の市町の取り組みを支援する役割を果たしていくこととしています。
こうした考えのもと、まず、広域的な公共交通の確保、維持を図るため、複数市町にまたがる幹線バス路線について、運行等に関する市町間の意見調整を行うとともに、国や市町と協調して運行経費に対する支援を行っているところです。
また、誰もが利用しやすい公共交通を実現するため、公共交通機関のバリアフリー化等、利便性の向上を支援するとともに、中山間地域等における交通手段の確保のため、デマンド型乗合タクシー等、地域の実情に応じた公共交通の導入、運行を支援しているところです。
さらに、公共交通は地域外との交流を活発化させる基盤でもあることから、その機能を強化するため、県内二空港の交流拠点化や新幹線の利便性向上、二次交通アクセスの充実等にも取り組んでいきます。
私は今後も、国や市町、交通事業者等との連携を密にし、地域住民の生活交通の確保・充実や地域外との交流の活発化が図られるよう、公共交通に関する県の役割を果たしてまいります。
その他の御質問につきましては、関係参与員よりお答え申し上げます。
◎観光スポーツ文化部長(正司尚義君) 公共交通政策についての数点のお尋ねのうち、まず地域公共交通網形成計画の策定についてお答えします。
地域公共交通網形成計画は、地域内の公共交通ネットワークの再構築を促進するものであり、まちづくりとの一体性が求められていることから、まちづくりの取り組みの主体である市町が、地域の特性に応じた計画を策定することが基本となります。
県では、これまで、各市における全ての計画策定協議会に委員として参画し、広域的な視点から指導・助言を行っており、各市における計画は隣接市町との広域移動も考慮して策定されているところです。
こうしたことから、県としては、県の計画の策定までは考えておりませんが、今後も各市の協議会において、計画の推進や検証等について、引き続き広域的な立場から適切な指導・助言を継続していくこととしています。
あわせて、国、県、市町、バス事業者で構成する山口県生活交通確保維持改善協議会において、複数市町にまたがるバス路線についての調整を行うこと等を通じて、広域的な視点からの公共交通の確保に取り組んでいきます。
次に、バス交通の確保維持改善についての三点のお尋ねにお答えします。
まず、本県におけるバス交通についての認識と今後のバス交通の確保、維持、改善に向けた取り組みの基本的方針についてです。
バス交通は、地域住民、特に自家用車を利用できない高齢者や学生、生徒、障害者等の日常生活に不可欠な交通手段として、また、地域外との交流を支える基盤として重要な役割を担っていると認識しています。
県としては、この認識のもと、誰もが利用しやすい交通手段としてのバス路線の確保、維持と、そのための利用促進、また、利用者の快適な移動のための利用環境の改善を図ることを基本方針として取り組んでいるところです。
次に、過疎地域におけるバス運行の確保、維持についてです。
過疎地域におけるバス交通は、日常生活における重要な移動手段であることから、県では、お示しの曜日指定のバス運行など、地域の実情に応じた運行が可能な限り維持されるよう、今後も市町に対する必要な指導・助言と運行経費の支援に取り組んでいきます。
なお、やむを得ず路線の維持が困難となる場合においては、代替の交通手段となるデマンド型乗合タクシーの運行等に対する支援も行うこととしています。
次に、交通ICカードの導入促進についてです。
キャッシュレスで手軽にバスを利用できる交通ICカードは、地域住民や観光客等利用者の利便性を向上させるとともに、バスの利用促進にも有効と考えています。
このため、交通ICカードの導入に向けて、県とバス事業者等で構成する検討会において協議を行っているところであり、今後、この協議をさらに進めるとともに、必要な予算額の確保等について、引き続き国に要望していきます。
次に、高齢者の移動手段の確保についての三点のお尋ねにお答えします。
まず、現状と課題及び県の役割についての基本認識についてです。
高齢者は、ほかの年齢層と比べて運転免許の保有率が低く、自力での移動手段を持たない方の割合や、移動の際に公共交通を利用する方の割合が高い現状にあると認識しています。このため、高齢者が円滑に移動できるよう、バリアフリーにも配慮しながら、バスやタクシーなどの公共交通を確保し、充実させていくことが課題と考えています。
こうした高齢者の移動手段の確保については、一義的には地域の実情を最も把握している市町が主体的に取り組むことが基本であり、県としては、市町の取り組みが円滑に進むよう支援する役割を担うものと認識しています。
次に、市町の施策に対する支援についてです。
県としては、高齢者の移動手段がしっかりと確保されるよう、市町の開催する協議会に参画し、指導・助言を行うとともに、高齢者に配慮した公共交通であるデマンド型乗合タクシーやコミュニティーバスを市町が新たに導入する場合に、運行経費の補助を行うこととしています。
次に、自家用有償旅客運送の普及推進についてです。
自家用有償運送は、バス、タクシーなどの確保が困難な地域の移動手段として有効なことから、県では、これまでも市町に対して先進事例の情報提供等を行ってきており、現在、山口市を初めとする九市町において導入されています。
お示しの権限移譲については、地域で判断できる裁量の拡大という趣旨から、市町に対して行うことが基本とされていることから、県として移譲を受けることは考えておりませんが、引き続き市町と連携して自家用有償運送の普及を促進していきます。
次に、公共交通の担い手対策についてお答えします。
公共交通不便地域における移動手段の確保や公共交通の担い手不足等を解消する手法として、シェアリングや自動運転の実証実験が全国各地で行われているところです。
こうした中、シェアリングについては、バスやタクシーによる運行が困難な地域において、特区制度を活用して、自家用有償運送の規制緩和による実証実験が行われているところであり、引き続きこうした動向を注視していきます。
また、自動運転については、安全技術の確立と事故発生時の責任の所在に関する法整備等の課題があるものの、実用化に向けた取り組みが進んでいます。
お示しの宇部市において国が進めている実証実験については、地元企業、大学、国、県、市の産学官が連携して、地域実験協議会を設置しているところであり、今後、協議会において、実証とその結果の検証を進めていくこととしています。
「農業生産等における作業の軽減化について」
1.農作業の軽減化について
山口県の農業も高齢化、後継者不足の状況から、担い手の確保、農業法人化の促進と、これらへの農地利用集積がすすめられていますが、その中で課題もあります。
その一つは、これらの担い手、農業法人等が農作業労力をいかに確保するか、そのために農作業の軽減化をどのようにするかという方策を図ることが必要です。
農作業は圃場づくり、育苗、定植、田植、草刈、収穫等と多様ですが、中でも草刈作業は、長期間、多くの労力を要しこの作業の軽減化を図ることが重要です。
草刈作業は、耕作地の畦畔、用排水路、農道等において作業し、この軽減化にはいろいろな方策がありますが、最近、全国各地で草刈を要する法面に芝草の一種であるセンチピードグラスの種子を吹付し、この芝草によって法面を被覆することによって草刈作業の軽減をすすめているところが多くみられるようになりました。
このセンチピードグラスは、草丈が10~25cmと視界を妨げる程の高さにはならず、雑草の発生や侵入を抑制する特徴と、永続性を備えていることから、草刈作業の軽減にうってつけの芝生であります。
県下でも柳井地区で集落営農法人連合体が実施し、草刈作業軽減化の成果をあげています。
農業振興を図るうえで、農作業の軽減は貴重な労力を有効に活用するために必要であり、中でも農業に欠かせない草刈作業の負担軽減は特に重要で、こうした芝生による法面被覆の普及に力を入れるべきと考えます。
そこで、農作業の軽減化について県はどのようにお考えか、ご所見をお伺いします。
「農業生産等における作業の軽減化について」
2.川土手における草刈作業の軽減化について
草刈作業は農作業だけにとどまらず、地域住民が川土手の草刈作業に多くの労力を要しているところがあります。
例えば山口市仁保地区では、仁保川が北から南に流れていますが、この流域に沿ったある集落では、隣接耕作地に沿って、1,600mの川土手草刈作業をしています。
川土手の法面は4m以上の草刈幅があり、1回の草刈で川土手100mについて2時間以上の作業時間を要し、1,600mでは32時間以上、春から秋にかけて5回作業すると年間160時間以上の作業となります。
仁保地区では、仁保川の上流から下流にかけて同様の集落が多くあり、地区全体ではかなりの作業労力を要していることになります。
県下各地でも同様のことが多くあると見られることから、中小河川の管理者である県においても、適切な維持管理はもとより、その充実にも取り組む必要があります。
そこで、先の農作業の例で示しました、センチピードグラスを川土手に被覆することで、草刈作業が軽減化され、河川の維持管理の充実にも繋がると考えますが、ご所見をお伺いいたします。
「農業生産等における作業の軽減化について」
【再質問 - 要望】
稲作において米の品質を守るために大事なことに、カメムシの被害防止があります。このカメムシは草地に発生するため、水田の隣接地の草刈は、コメ作りにおいて不可欠の農作業であります。
実は、先に紹介しました仁保川流域川土手の草刈作業も、隣接する水田等耕作地の農業生産上の必要からなされているのであって、河川の環境美化は、その結果であります。
同様なことは全県的に数多くあり、関連する川土手の面積は相当なものになると思われますが、基本的に県管理地における農業被害の発生抑止は、県の責任おいてなすべきことではないでしょうか。
河川の安全管理を担う土木建築部と、農業振興のため農作業の軽減化を図る農林水産部が、よく協議提携して県としての責任を果たしていくよう要望いたしまして、今回の質問を終わります。
「農業生産等における作業の軽減化について」
答弁
◎農林水産部長(山根信之君) 農作業の軽減化についてのお尋ねにお答えします。
担い手の減少や高齢化が進行する本県において、農業の持続的な発展を図るためには、農地や機械を効率的に利用できる体制を整備するとともに、農作業の労力を軽減するなど、生産性を高めていくことが重要です。
このため、県では、集落営農法人やその連合体など、地域を支える経営体の育成を重点的に進めるとともに、共同利用機械の導入を支援し、田植えや収穫など、基幹作業の負担軽減を図ってきたところです。
こうした中、法人の経営環境が厳しさを増していることなどから、さらなる農地の集積を促し、AIやIoTなど先端技術の活用により、作業負担の軽減や収益力の向上につなげることとしており、長期間多くの労力を要する草刈り作業についても大幅な効率化を図ることが急務となっています。
このため、お示しのセンチピードグラスについては、のり面の多い中山間地域の農地の畦畔を中心として、圃場整備事業の実施にあわせ、関係者の同意が得られた地区において導入してきたところです。
また、草刈り作業の省力化につながるよう、リモコン式除草機等、スマート農機の導入にも積極的に取り組んでまいります。
◎土木建築部長(森若峰存君) 川土手における草刈り作業の軽減についてのお尋ねにお答えします。
お示しのセンチピードグラスは、本県では、農道や畦畔等ののり面部分での施工実績はありますが、河川の堤防のり面での使用については、コストや堤防への影響等、さまざまな課題があると認識しています。
このため、まずは試験的に施工することとしており、その結果を踏まえ慎重に対応を検討してまいります。