【明治維新150年に想う】
新たな変革の胎動を
今年は明治維新150年です。山口県は、この維新を主導した県でありますので、花博等これをを記念した企画の実現に力を入れていますが、明治維新とは何だったのかを振り返り、今日の時代における維新について考えてみたいと思います。
明治維新は、大化の改新や鎌倉幕府の成立などに匹敵する国家変革の歴史的出来事でしたが、その変革の内容は、封建的幕藩体制から近代的主権国家への転換であったと言えます。
幕末は、世界的に帝国主義の時代で、この時代の国際社会を構成する単位は主権国家でした。そのため、この時代の国家は、主権国家としての国の体制整備が求められ、それが出来ない国は、どこかの主権国家の支配下に置かれるという厳しい現実がありました。その結果、アジア・アフリカのほとんどの国々が、欧米列強の植民地となりその支配下に置かれました。
幕末維新は動乱の時代でしたが、我が国の先人たちは、欧米列強による植民地支配の脅威から日本の国を守るという一点では共通していて、様々な考えがあり激しくぶつかり合うも、攘夷から開国へ、そして主権国家の確立へと云う国の独立保持のための変革を見事成し遂げ、歴史的責任を果たしました。
では現在、明治維新150年を記念し称揚している我々が、維新の先人たちにならって取り組むべき課題は、何なのでしょうか。答えはハッキリしていて、それは少子高齢化への対応であると考えます。今日、我が国は将来に明るい展望を描くことが困難になっていますが、その最大の理由が少子高齢化の進行であります。特に最近強調されているのは、2025年問題でして、団塊の世代が全て後期高齢者になるこの年以降の医療・介護をどう確保するのかの対策が、既に大きな課題になっています。
では、どうすればいいのか。私は少子高齢化問題を解決する方向は明らかだと思っています。それは、高齢者を国の負担にするのではなく、国の宝として生かす施策を強力に遂行することであります。そのためには、高齢者でも働ける限りは働くことが出来るようにしていくことです。現在は、65歳以上が統計上高齢者になっていて65歳は一般的に退職の年齢ですが、人生100年時代と言われるようになってきている今日、65歳は、人生の第二ステージの出発点と考えることが出来ます。
ソーシャルビジネスの提唱者として、また多くの人たちを貧困や失業から解放する金融の手法を確立した功績でノーベル平和賞を受賞したバングラディシュ出身の経済学者、ムハマド・ユヌス氏は、「人間は決して引退しない。高齢者ではなく、人生の第二段階にいるというべきだ。人性の第二段階では家族を養うために心配をする必要がない。だから人生の第二段階こそ、最も自由で創造的な人生なのだ。自分ではなく、世界のために何かをすべきで、他の人のために生きることができる時期なのだ。」と訴え、若者とシニア世代がお互いに刺激しあい、パートナーとして共に働けば、高齢化社会を輝く社会にすることができると語っています。
私は、全く同感で高齢者が輝く地域社会のモデルを本県において実現していくことは、我が国の将来に明るい展望を切り開くことになり、今日の時代における維新の実現になると思います。明治維新の特徴は、地方からの変革でした。その変革を主導した山口県が、再び日本再興の役割を果たすようになってこそ、明治維新150年の記念行事も意義あるものになると思っています。