令和元年11月定例県議会【2.国の政策に対する検証と発言】

「国の政策に対する検証と発言」

長年、地方政治に携わってきてつくづく思うことは、「日本は、中央集権が強い国だな。」ということであります。私たちの地域や暮らしにかかわることも、その根幹には国の政策、法律、制度があり、具体的な実施の細則や基準も国が示します。医療・福祉・子育て・教育・農林漁業・商工業・公共事業、防災等々地域と暮らしにかかわる全ての面においてそうであります。そして、そうした政策の形成は、霞が関と永田町、正確に言えば、国の省庁と国会によって行われます。しかし、政策を企画立案する霞が関の役人も、立法措置を行う国会議員も、常日頃は地方の現場にいません。

そこで、我々地方政治に携わる者は、国の政策を地方の現場にあって検証し、それが地方の実情に適合したものになるよう発言し働きかけていくという役割を果たしていかなければなりません。特に、こうした役割は、国と市町村との間に位置する県政において大きいのではないでしょうか。そういう意味において、県議は、県と我がまちのパイプ役であると同時に、国とのパイプ役になって私たちの地域と暮らしの課題に取り組んでいかなければならないと思っています。

そして又、県行政を担う県職員も同様の意識を持つべきではないでしょうか。どうしても行政職の場合は、定められた法令等に基づいて職務を執行するということで手一杯で、それをよりよい方向に改めるというところまでは、なかなか思いが及ばないかもしれません。しかし、本県の職員は、山口県から国の政策をよりよいものにしていくとの気概と姿勢を持ってほしいと思います。

そこでお尋ねです。県は、地域と暮らしにかかわる国の政策に関しては、ただ国の定めに沿って事務事業を行うだけではなく、それが実情に適合したよりよい政策になるよう検証し、国に対して発言していくべきだと考えますが、このことにつきご所見をお伺いいたします。

令和元年11月定例県議会【3.山口発政策モデルの形成】

「山口発政策モデルの形成」

次に、令和の国づくりへの貢献ということで、本県が、国もしくは全国の都道府県に働きかけて全国規模で実現してほしいと思う政策、即ち山口発の地域と暮らしにかかわる政策モデルの形成について、一般論ではなく具体的なテーマを取り上げてお伺いいたします。

先般、私は山口市である母親の訴えを聴きました。「娘は、広島市に住んでいて主人と二人の核家族なので、里帰り出産ということで山口の実家に帰り、防府の県総合医療センターで出産した。生まれた子供の首が座るころまでということで、出産後3か月ほどは、家におらせたいと思っていたが、生後2か月から始まる予防接種を受けるためには、その前に広島に帰した方がいいのだろうか悩んでいる。山口市で予防接種を受けることもできるが、住所が県外ということで手続きが面倒だし、一旦は接種料金を現金払いしなければならない。県外での里帰り出産は、よくあること。少子化対策で、子どもが多く生まれるようにというのであれば、県外でも、乳幼児の予防接種を簡単に受けることができるよう、こういうことから改善してほしい。」。おおよそ、そういった内容の訴えでした。

私は、「もっともだ。」と思い、先ずは現在、予防接種がどう行われているのか知ろうと県や市の担当を訪ね、説明を受けました。そして、次のようなことがわかりました。

その1、予防接種は、市町の事務であり、住所がある市町のルールに従って行われる。

その2、予防接種は、予防であり、病気の治療ではないので医療保険の適用はない。

その3、予防接種の料金は、市町と医療機関との委託契約によって決まり、全国統一の料金は、設定されていない。従って、予防接種の料金は、基本的に各市町別々で異なる。

その4、山口県は平成15年に県下の市町が県医師会と委託契約を締結し、予防接種の広域化を実現した。以降、県内住所の乳幼児であれば、県内どこの市町であっても委託されている医療機関で、母子健康手帳と予診票を持っていけば、県内統一の標準料金で予防接種を受けることができる。

その5、予防接種には、定期予防接種と任意予防接種の二通りがあり、乳幼児の定期予防接種は県内の市町では無料化されている。従って、県内住所の乳幼児が、県内の医療機関で定期予防接種を受ける場合は、窓口負担はない。但し、住所が県外の乳幼児について、いったん窓口で接種料金を払う場合は、それが後日償還されることになっている。

その6、他の都道府県でも予防接種の広域化は図られているようであるが、標準料金の設定は、それぞれ別で統一されていない。

その7、県外に住所がある者が、山口県内の医療機関で予防接種を受けるためには、住所地の市町が発行した医療機関への依頼書が必要な場合もある。その依頼書の発行は、交付申請を受けて行われるので、その手続きをしなければならない。

その8、乳幼児の場合は、感染症にかかると重篤になる可能性が高いので、予防接種が可能な時期になったら、早めの接種が望ましい。定期予防接種が始まる標準時期は、生後2か月からである。

以上、私なりの把握を列記しましたが、要は、県内住所の乳幼児の定期予防接種は、委託された医療機関であれば、県内どこの市町であっても簡単に窓口負担なしで受けることができるのに、里帰り出産などで乳幼児が県外住所の場合、定期予防接種を本県の医療機関で受けようとすれば、依頼書の申請・発行の手続きが必要な場合もあり、接種の際は、後で償還されるものの、一旦は、接種料金を窓口で支払わなければならないこともあり、それには医療保険の適用はないということであります。

ご案内のように。安倍政権は、平成28年6月に閣議決定した「ニッポン一億総活躍プラン」の中で、少子高齢化という日本の構造的問題に、内閣一丸となって真正面から立ち向かうと宣言し、あらゆる政策手段を尽くすとの決意を表明しています。そして、希望出生率1.8の目標実現に向けて10か年計画を策定し、12項目について課題と対応の方向や施策を示しています。その中で、「子育て中の親の孤立感・負担感が大きいことが妊娠・出産・子育ての制約になっている。」ことへの対応として、「家族において世代間で助け合いながら子や孫を育てることができ、子育てしやすい環境づくりとして、三世代の同居・近居を推進する。」としていますが、私は、加えて、里帰り出産や出産後安定するまでの一定期間、親のもとで子育てしやすい環境を整えることも必要と考えます。そして、そのための具体的な施策として、乳幼児の定期予防接種は、その広域化を日本全国に広げ、県外であろうと住所地の市町と同様に乳幼児の定期予防接種が出来るよう、全国統一の仕組みにするのが望ましいと思います。

そこで、令和の国づくりに貢献する山口発政策モデル形成への取り組みということでお尋ねいたします。乳幼児の定期予防接種は、県外であろうと日本全国どこの医療機関であっても、住所地の市町と同様に母子健康手帳と予診票があれば、窓口負担なしに受けることが出来るよう全国統一の仕組みづくりに向けて、国への働きかけや都道府県の合意形成に、本県が主導して取り組むことを期待するものですが、このことにつきご所見をお伺いいたします。

令和元年11月定例県議会【4.国づくりの方向と県の施策】

「国づくりの方向と県の施策」

令和へ御代替わりして半年余、「日本は、これからどういう方向に向かって国づくりを進めていくべきなのだろうか。」ということに、ずっと関心を向けてきました。そして、私なりに一つの結論に達しました。それは、「誠実に働き、国民としての義務を果たしていけば、老後を含めてよりよい人生が保障される国」を目指して、国づくりは進めていくべきだということです。

我が国の現状は、誠実に働き、納税や医療保険・年金等の義務をしっかり果たしても報われない社会になっています。「これを改めなければ、日本の将来はない。」、そういう思いが湧いてきて日本の現状に危機感を覚えます。

誠実に働き、国民としての義務を果たしてきても報われず不遇な生活をしている人たちが多いのは、国民年金で老後を暮している人たちです。ご案内のように我が国の年金制度は、国民年金と厚生年金の二つの枠組みで成り立っていますが、問題なのは給付される年金の格差が大きいことです。国民年金の保険料は所得の多少にかかわらず定額で、毎年見直しが行われますが今年度は16410円です。一方、厚生年金の保険料は、平均給与月額が相当する標準報酬月額に18.3%の保険料率を掛けた額です。ただ、厚生年金の場合は、保険料の半分は雇用主が負担します。従って、国民年金の定額に相当する額を厚生年金加入者が負担して納付した場合、実際はその倍額が納付されることになります。負担する保険料は、ほぼ同額なのに、実際納付される額には倍の差があり、年金給付の際に大きな格差が生じます。

このことを、具体的に見てみましょう。向こう40年間、現在の経済状況も現行の年金制度の仕組みや定めも変わらないとの前提で年金関係の方に試算していただきました。その結果、A氏が、国民年金加入が義務付けられている20歳から60歳になるまでの満期40年間、一度も欠けることなく国民年金の定額の保険料16410円を毎月納付した場合、65歳から受け取る老齢基礎年金は、月額で約65000円です。一方、B氏は厚生年金に20歳から加入し60歳になるまでの40年間の月額給与が180000円だったとしますと、本人負担の月額保険料は16470円で、国民年金の定額とほとんど変わりませんので、A氏とほぼ同額の年金保険料を負担し納付することになります。ところが、B氏が65歳から受け取る年金月額は、老齢基礎年金65000円に老齢厚生年金51300円を合算した116300円です。納付した保険料は、国民年金のA氏とほぼ同額であっても給付される老齢年金は月額で51000円余多くなります。更に、夫婦の場合、国民年金であれば、夫婦はそれぞれが定額16410円を毎月納付することで、夫婦それぞれが老齢基礎年金の給付を受けることができます。一方、厚生年金の場合は、例えば夫が厚生年金の保険料を納付しておれば、そのことで被扶養配偶者である妻は国民年金の第3号被保険者となりまして、保険料を納付しなくても65歳から月額65000円の老齢基礎年金を受給できます。このことを敷衍しますと、B氏が負担する年金保険料が、A氏夫婦が納付する定額の国民年金保険料の合算額32820円に相当する場合、B氏夫婦は、A氏夫婦に比べて月額で102000円余多くの年金を受給できる計算になります。遺族年金でも、国民年金と厚生年金とでは歴然とした差がありますが、そのことは割愛します。

満期の40年間、同様に保険料を負担納付した場合、厚生年金の方は、どうにかそれなりの生活が維持できる年金の給付水準が確保されていますが、国民年金の方は、給付される年金額が生活維持すら困難と思われる水準に抑制されている現状をまず指摘しておきたいと思います。

次に、「真面目に国民年金を払ってきた人たちよりも、生活保護を受けている人たちのほうが、よほど恵まれている。」との声をよく耳にしますので、実際どうなのかを見てみたいと思います。

自営業で国民年金の保険料を20歳から60歳まで満期の40年間欠かさず納付した方が、65歳になって受け取ることができる年金月額は65000円です。では、同じく65歳で単身の生活保護基準額は、どうなっているのでしょうか。

山口市居住の場合、生活に必要な食費や光熱水費などの費用として生活扶助費は、月額約73000円です。家賃、地代などの費用に充てられる住宅扶助費は、月額31000円です。それから、教育費、介護費、医療費は、それぞれ扶助があって負担はありません。

国民年金の満額の年金月額65000円は、生活保護の生活扶助基準月額より少ないのですが、その国民年金で暮らしている人は、収入がそれだけであったとしても、健康保険料、介護保険料が年金支給額から天引きされ、病院で診療を受けた時や介護サービスを受けた時は、費用の一部を負担しなければなりません。私が知っているある国民年金の収入で暮らしている人は、大工だった方で、朝早くから夜遅くまで土日の休みなしで働いてきて年金給付が月額55000円ほど。それから医療や介護の保険料等を控除されて手取りが31000円ほどでした。この方は、奥様の国民年金での給付が保険料等控除後で月額55000円ほどあり、その他駐車場での収入があるので何とか生活できているが、旅行に行ったりする余裕はないとのことでした。夫婦とも80歳を過ぎているので近くにある特別養護老人ホームに入ることも考えようかということで介護保険のケアマネに相談したら、「あなたたちの収入では入れませんよ。」と言われたと笑いながら語っておられました。

一方、生活保護の方の場合、特養のような介護保険施設利用の必要が生じた場合、利用料は介護扶助ということで公費で充当されるため支払い能力を心配する必要がありません。介護保険施設や介護サービスの利用は、主にケアマネジャー等が作成するケアプランに基づくものですが、そのケアプランを作成する際、生活保護の方の場合は支払い能力を心配する必要はありませんが、国民年金で暮らしている方の場合は、そのことを考慮してケアプランを立てなければなりません。結果として、介護保険料を月々払っている国民年金の方は、収入で支払える範囲という制約を受けるため、その負担もない生活保護の方よりも、介護保険施設の利用や介護サービスを受けることが困難になっています。同様なことは、医療の場合も、あるいはアパートを借りたりする場合もあります。

こうしたことを知るにつれて、「真面目に国民年金を払ってきた人たちよりも、生活保護を受けている人たちのほうが、よほど恵まれている。」との声は、あながち否定できない我が国の現実であることを確認しました。

国民年金の方は、主に自営業であり、その他民間労働者であっても厚生年金適用の要件を満たさない非正規労働者等の人たちです。厚生年金の方々は、正規雇用の民間労働者や公務員で、基本的には労務管理がしっかりしている企業や公共団体で働いていて、労働時間も定まっており土日祭日の休日も取れる職場環境での仕事です。一方、国民年金の方は、その多くが先ほど紹介した大工さんのように朝早くから夜遅くまで土日休日なしの仕事に明け暮れています。その上、税金や医療・介護保険などの支払い義務もしっかり果たしてきたとしても、老齢になったら受け取る年金は、厚生年金の方と大きな格差があり、その年金収入だけでの生活になれば、生活保護を受けている人たちの水準にも満たないというのは、あまりにも不合理であります。だからといって私は、生活保護の水準を下げるべきだとの考えには組みしません。ただ、国民年金の生活者が置かれている制度環境の現状は、改めなければならないと強く思う次第です。

日本国憲法は、第25条で「国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。」と宣言していますが、我が国の現状においてその権利を保証すべきは、先ず誠実に働き、国民としての義務を果たしてきた国民年金の生活者に対してではないでしょうか。そのための施策に、国は直ちに取り組むべきだと考えます。

ついては、その施策実現への貢献ということで、本県において国民年金で生活している人たちの正確な実情調査を実施し、そのことに基づいて国に対して政策提案を行い、以てよりよい令和の国づくりに向けた現状改革の先鞭をつけてほしいと期待するものですが、このことにつきご所見をお伺いいたします。

答弁【1.交通政策における県の役割について】

「1.交通政策における県の役割について」【知事答弁】

合志議員の御質問のうち、私からは、交通政策における県の役割についてのお尋ねにお答えします。
まず、県全体として最適の交通ネットワークの形成に向けて、県には主導的な役割を果たすことが求められているのではないかとのお尋ねです。
県では、「やまぐち維新プラン」の重点施策に、「交流を活発化する交通ネットワークの機能強化」と「快適で住みやすい生活環境づくりの推進」を掲げ、交流の促進と生活交通の充実の両面から、総合的な交通政策を推進しています。
推進に当たっては、地域公共交通施策の中心的な役割を担う市町に対する助言や、全県的な共通課題である利便性の向上等に関する市町の取組への支援にとどまることなく、広域的な公共交通ネットワークの確保について、県としての主導的な役割を果たしているところです。
また、現在、県が交通政策において担っている役割についてですが、具体的には、交流促進の観点からは、地域外との交流を活発化させる基盤である公共交通の機能強化を進めるため、県内2空港の交流拠点化や新幹線の利便性向上、二次交通アクセスの充実等に取り組んでいます。
生活交通の充実の観点からは、地域間を結ぶ広域的な公共交通の確保に向けて、鉄道の運行本数の増加や利便性向上等についてJRに対して要望するとともに、複数市町にまたがる幹線バス路線に対して、運行経費の支援を行っています。
さらに、公共交通の利便性の向上を図るため、公共交通機関のバリアフリー化等を支援するとともに、中山間地域等における交通手段の確保のため、デマンド型乗合タクシーの運行等を支援しています。
私は、今後も、国や市町、交通事業者等との連携を密にし、交流の促進と、地域住民の生活交通の充実が図られるよう、交通政策における県の役割を果たしてまいります。
その他の御質問につきましては、関係参与員よりお答え申し上げます。

答弁【2.第2期総合戦略と交通政策について】

「2.第2期総合戦略と交通政策について」【部長答弁】

第2期総合戦略と交通政策についてのお尋ねにお答えします。
人口減少や少子高齢化が進行する中、中心市街地では空洞化が進み、県土の約7割を占める中山間地域においては、集落機能の維持や買い物、通院等の日常生活に支障を来す地域が生じるなど、大変厳しい状況にあります。
こうした中にあっても、県民誰もが住み慣れた地域の中で安心して暮らしていくためには、将来にわたって持続可能な地域社会を形成していく必要があります。
このため、現行の総合戦略においては、にぎわいや交流を生み出す「まち」の活性化や、活力ある中山間地域づくりの推進を掲げ、中心市街地活性化の促進や、交通結節点機能の強化、高速交通ネットワークの整備、生活交通の維持・活性化などに取り組んできたところです。
今後、県の第2期総合戦略を策定することとしていますが、こうした地域に活力を取り戻していくための取組は、継続して行っていく必要があることから、これまでの施策の成果や課題を検証した上で、取組の更なる充実・強化を図ってまいります。
国においても、第2期総合戦略策定に向けた方向性を示した基本方針の中で、「地域交通を取り巻く課題への対応」として、地域公共交通ネットワークの維持をはじめ、新たな交通サービスの提供や、持続可能で地域最適な地域交通の実現に向けた環境整備を推進することを掲げています。
県としては、こうした国の動向もしっかりと踏まえながら、国、市町と連携した交通政策の充実などによる都市再生、まちづくり、地域づくりが進められるよう、第2期総合戦略の策定に取り組んでまいります。

答弁【3.山口県総合交通計画の策定について】

「3.山口県総合交通計画の策定について」【部長答弁】

交通政策についての数点のお尋ねのうち、まず、山口県総合交通計画の策定についてお答えします。
県では、「やまぐち維新プラン」の重点施策に、「交流を活発化する交通ネットワークの機能強化」と「快適で住みやすい生活環境づくりの推進」を掲げ、計画的に交通政策を推進しているところです。
特に、広域的な交通ネットワークの確保については、鉄道の運行本数の増加や利便性の向上等をJRに要望するとともに、幹線バス路線について運行経費の支援を行い、県が主導的な役割を果たしているところです。
一方で、地域の交通政策の推進については、地域の実情を最も把握しており、まちづくりの主体でもある市町が主体的に取り組むことが基本であり、各市において、地域公共交通網形成計画の策定が進められ、計画に基づく事業が展開されています。
県では、各市の全ての計画策定協議会に委員として参画し、分散型都市構造という本県の特性も踏まえ、都市間の交通ネットワークの確保の観点から助言を行ってきたところであり、各市における計画は、隣接市町との交通ネットワークについても考慮し、策定されています。
こうしたことから、全県的な交通ネットワークの形成を目的に、山口県総合交通計画を策定することは考えておりませんが、引き続き、広域的な公共交通の確保・充実について、県の役割を果たしてまいります。

答弁【4.交通政策に取り組む体制の強化について】

「4.交通政策に取り組む体制の強化について」【部長答弁】

次に、交通政策に取り組む体制の強化についてです。
県の交通政策課では、鉄道、海運、バス、航空その他交通運輸に係る施策の企画及び調整に関することを所管しており、公共交通の維持・確保や利便性の向上等について、適切に取組を進めているところです。
また、部局横断的な取組については、中心市街地活性化や、中山間地域対策等、交通に関する関連分野ごとに、部局をまたがるワーキンググループや会議において、課題への対応や事業の調整などを進めています。
今後も、引き続き、このような現行体制において、総合的に交通政策を推進してまいります。

答弁【5.先進地視察について】

「5.先進地視察について」【部長答弁】

次に、先進地視察についてです。
先ほど答弁しましたように、県としては、お示しのような山口県総合交通計画を策定することは考えていないところです。
このため、計画策定のための委員会の設置や先進地視察が必要な状況にはありませんが、公共交通に関する施策を適切に実施していくための情報収集や先進事例の調査については、引き続き取り組んでいきます。

答弁【6.MaaS(マース)について】

「6.MaaS(マース)について」【部長答弁】

次に、MaaS(マース)についてです。
MaaSは、利用者にとっての最適な経路を提示するのみならず、複数の交通手段やその他のサービスも一括して提供する仕組みであり、交通手段の選択肢の拡大や、ワンストップでのシームレスなサービスの提供等、利便性の向上が図られるものと期待されています。
現在、全国各地で、地域の交通課題の解決に向けたMaaSのモデル構築のための実証事業が実施されており、今後、国において、事業化に向けた課題、地域経済への影響、運賃等に関する制度的課題の整理が進められることになっています。
県としては、こうした各地の実証事業の結果や、国における制度的課題の整理の状況等を注視しながら、県内における活用の可能性について検討してまいります。

令和元年9月定例県議会【交通政策について】

「交通政策について」

今日の交通政策は、交通需要に応えることに加えて、まちづくりとの関連においてその施策の推進が図られるようになってきました。所謂「交通まちづくり」が、交通政策の主要な課題となり、交通施策の目指す基本的方向となってきています。
「交通まちづくり」という言葉が知られるようになったのは、1990年代後半からのようですが、交通という視点からまちづくりに携わってきた人たちの議論を踏まえ、日本学術会議の協力学術研究団体である交通工学研究会は、交通まちづくりを「まちづくりの目標に貢献する交通計画を、計画立案し、施策展開し、点検・評価し、見直し・改善して、繰り返し実施していくプロセス」と定義しています。
全国の市町等の自治体が、この定義にあるように、まちづくりの目標に貢献する交通計画の策定と施策の推進に取組むための法的整備を、近年国は行っています。
平成26年に成立した改正地域公共交通活性化再生法と改正都市再生特別措置法がそれに相当するもので、コンパクトなまちづくりに向けて都市計画と公共交通が連携一体化して取組んでいくための法的な枠組みが制度化されました。具体的には、市町等の各自治体が、改正地域公共交通活性化再生法では地域公共交通網形成計画を、改正都市再生特別措置法では公共交通と連携した立地適正化計画を策定することが求められるようになり、交通まちづくりが、法的に制度化され推進されるようになってきました。
交通まちづくりに加えて、我が国が、これからの交通政策において力を入れて取り組むべきもう一つの課題は、軌道系交通へのシフトであります。過度な自動車依存社会からの脱却を図っていくこと、また環境負荷の少ない交通機関を選択して地球温暖化対策にも資していくことが、交通のトータルな在り方に対する時代の要請となってきています。鉄道や路面電車などの軌道系交通の比率を、交通全体の中において高めていく、そういう意味においての軌道系交通へのシフトを進めていくことが、今日求められています。
自動車交通から軌道系交通へのシフトを実現していくためには、利用者から交通手段として選ばれるよう機能や快適性の向上を図っていくことと併せて、軌道系交通とバスや自家用車等とのスムースな連携を交通システムとして可能にしていく必要があります。そうした要請に応える軌道系交通として普及が期待されているのが、近年、我が国でも少しずつ導入に拡がりを見せつつあるLRTであります。
LRTは、Light Rail Transitの略で、低床式車輛の活用や軌道・電停の改良による乗降の容易性、定時制、速達性、快適性などの面で優れた特徴を有する次世代の軌道系交通システムのことです。ヨーロッパでは、モータリゼーションが進展する中で衰退した鉄道や路面電車などの軌道系交通が、LRTという形で復活、再整備され、都市の再生に成功しています。我が国では、富山市のライトレールが日本初のLRTとして注目を集めましたが、既存の路面電車がある都市では、それのLRT化が進行しつつあります。また、新たに交通インフラとしてLRTを導入する動きも全国各地に広がりつつありまして、栃木県の宇都宮市では、2022年開業予定です。
エネルギー効率がよく人と環境にやさしい交通システムとしてのLRTは、今日の時代の要請にこたえるものであります。LRTが、各自治体において交通まちづくりの中軸となる公共交通の中に位置付けられ、その整備が図られるよう制度環境を整え、充実していく取組みが、我が国の交通政策に望まれています。
以上、交通政策についての私なりの理解を申し上げましたが、そのことを踏まえ、本県が進めるべき交通政策に関し数点お伺いいたします。