不妊治療について【部長答弁】
次に、不妊治療についての2点のお尋ねにお答えします。
まず、体外受精に対する助成措置についてです。
体外受精については、令和4年4月から保険適用とされるとともに、国の助成制度が廃止され、これに伴い、治療の内容によっては、保険適用前と比べ、自己負担額が増加するケースも生じたところです。
このため、国において、保険適用範囲の拡大や自己負担額の軽減を図る制度が創設されるよう、現在、政府要望や全国知事会等を通じ、国へ要望を行っているところです。
次に、人工授精に対する助成額の上限についてです。
一般不妊治療に係る助成は、初診から検査、タイミング法や排卵誘発法などの一連の治療を対象にしており、そのトータルの医療費を考慮して、助成額の上限を設定しています。
一方で、人工授精への助成については、一般不妊治療の助成に加え、さらに必要な費用に対し、助成しているものです。
現行の人工授精に対する助成額については、保険適用前は3万円であったものを、3割の自己負担額を考慮して9千円とし、保険適用前後で同程度の助成となるよう制度設計したものであり、上限額の見直しは考えておりません。
1. 20代・30代の若い世代の所得向上について
我が国の出生率の急速な低下の背景には、「晩婚化」の進行があります。「晩婚化」は、二つの面で出生率の低下をもたらしています。一つは、結婚が遅れるという「晩婚化」が、結婚しないという「非婚化」に結びつき、生涯未婚率(50歳の時点で一度も結婚したことがない人の割合)の大幅な増加につながっているという面からです。生涯未婚率は、男性の場合、1990年は5.6%であったのが、2020年には28.3%と5倍も上昇しており、女性は1990年4.3%であったのが2020年には17.8%と4倍になっていまして、こうした非婚化の動きが、出生率に重大な影響を与えています。
もう一つは、「晩婚化」は、必然的に「晩産化」となり、「晩産化」は「少産化・非産化」に向かうという面からです。母親の第1子出生時の平均年齢の推移をみますと、1975年は25.7歳だったのが、2021年は30.9歳と5歳も高齢化しており、1970年代半ば以降我が国では晩婚化が急速に進行していることがわかります。ことに、30代後半以降になると、女性の妊娠確率の低下と高齢出産を忌避する傾向によって少産化・非産化の可能性が高まります。この結果、我が国では1990年代から、第2子や第3子を持たない「少産化」や、子どもを持たない「非産化」が進み、出生率が低下していきました。
こうしたことから明らかになってくるのは、出生率の向上のためには20代・30代の若い世代が、結婚や出産を選択する社会にしていかなければならないということであります。そして、そのためには若い世代の所得の向上と経済的安定を図るとともに、結婚・出産への支援を充実して、若い世代が結婚・出産のライフプランを描けるようにしていかなければなりません。
では、国はそのことに向けてどういう政策課題に取り組むべきなのでしょうか。ハッキリしていることは、非正規雇用の若年労働者の所得向上と収入安定を図っていくことが重要であるということです。
我が国において、晩婚化・非婚化が増加していることの社会的背景として指摘されているのは、1990年代後半以降、不安定雇用の若者が増えたことであります。なぜそうなったのかと言えば、1985年に制定された労働者派遣法が、1999年の改正で原則自由化され派遣の対象業務の制限をなくしたことが大きく影響していることは明らかです。このことにより、若い世代においても非正規雇用の労働者が増加していきました。
総務省の「平成29年就業構造基本調査」を基に作成された資料によれば、30歳から34歳の間の男性で結婚している割合は、正規雇用の場合は59%ですが非正規雇用の場合は22%となっていまして、正規と非正規を比べて結婚に関してもその格差の大きいことに愕然とします。我が国では、非正規雇用の若年労働者の多くは、結婚・出産のライフプランが描けない経済的状況の中におかれているわけで、この状況を改めることなくして出生率の向上は望むべくもありません。
そこでお尋ねです。我が国の出生率を上げていくためには、非正規雇用で働いている20代・30代の若者たちの所得向上と収入安定を図り、彼らが結婚・出産のライフプランを描けるようにしていくことが重要です。ついては、そのことに向けて労働政策に取り組むよう国に対して求めるべきと考えますが、ご所見をお伺いいたします。
→(部長答弁)
2. 普遍性のある育児休業制度について
2000年代後半以降、我が国では共働き世帯が急速に増大し、2020年には全体の7割近くの1240万世帯に達し、今や我が国では、共働き世帯が主流になっています。共働きの増大は、我が国のみならず、スウェーデンなど欧米諸国において共通して見られる動きですが、こうした共働きの増大は、各国の出生率にどういう影響を及ぼしてきたのでしょうか。
私たちは、共働き世帯は経済基盤が安定するので、生む子供が増えて、出生率が向上するのではないかと期待しますが、共働き世帯に関する実証研究によると、「女性の就業によって、出産が抑制される」という分析結果がこれまで多く示されています。確かに、就業している女性にとって出産・育児は、離職期間の収入減や就業中断によるキャリアアップ機会の喪失、また出産、育児、再就職という環境変化への対応に伴う身体的・精神的負担の増大があり、そうしたマイナスを解消する支援策が講じられない限り、女性の就業の増大は、出生率を低下させる方向に働くと考えられます。
このことに関して、主要国(スウェーデン・フランス・ドイツ・イギリス・アメリカそして日本)における女性労働参加率と合計特殊出生率の推移を示した資料を見ますと、1970年頃は概ね2の近辺の水準にあった出生率(日本の1970年の出生率は、2.13)が、女性労働参加率が高まるにつれ、そのマイナス効果によるものと思われますがいったん下がっています。ただ、その後2017年時点では日本以外の各国は、1.8あたりまで合計特殊出生率が回復しています。共働きが主流のこれら主要国の中で、なぜ日本だけが出生率の回復を成し得ず今日に至っているのでしょうか。
指摘されているのは、仕事と育児の両立支援策の柱である育児休業制度(以下育休制度)において、日本の場合は普遍性がないことです。
日本の育休制度では、その対象は、雇用保険制度の対象者であって、出産時も就業が継続していることが必要であり、「自営業者」や「無職の専業主婦」はもちろんのこと、出産のため退職した「出産退職」の女性は、正規・非正規を問わず含まれていません。このため、2021年の「出生動向基本調査」によれば女性の5割程度が育休制度の対象外になっていまして、日本の育休制度は普遍性がないと言われる所以です。
これに対し、スウェーデン、フランス、ドイツなど出生率が回復している国の育休制度は、すべての親を対象にしていて、企業の正規雇用者のみならず、非正規雇用や自営業者、無職、学生なども対象にしており、養子縁組の親の場合も含まれていて普遍性のある制度となっています。
共働きが主流の我が国において、女性の5割が両立支援の柱である育休制度の対象外であるという現状を放置したまま、出生率の向上を図っていくことは困難であります。財源確保の課題があるとは云え、育休制度を普遍性ある制度にしていくことは、「一億人国家シナリオ」を実現していくために避けて通れない道であると考えます。
そこでお尋ねです。岸田政権が、これから進めようとする少子化対策である「こども未来戦略方針」を、真に実効性のある異次元の少子化対策にしていくためには、育休制度を普遍性のある制度にすることが、取り組むべき施策として盛り込まれる必要があります。つきましては、このことを国に提言すべきと考えますが、ご所見をお伺いいたします。
→(部長答弁)
2.普遍性のある育児休業制度について【再質問】
1回で終わるつもりでしたけど、育休制度と、それから不妊治療に対する答弁が、あまりにもゼロ回答みたいな感じで、2回目の質問に頼らざるを得なくなりました。
育休制度を普遍性のあるものにするように、国に対して提言したらどうかと、提言する考えありませんということなんだけれども、提言したらいいじゃないですか。まあそれが一つですね。
→(部長答弁)
合志議員の再質問にお答えをいたします。
お尋ねの育休制度を普遍性のある制度とするよう、国へ提言したらどうかということでございました。
繰り返しになりますけども、この件につきましては、国においても「未来戦略方針」において検討する方針が出されておりますことでございまして、社会保障制度として給付と負担の在り方も含めて国において検討されるべきものと考えておりますので、提言することは考えておりません。
3. 地方創生について
地方創生は、少子高齢化が進行する中で、東京圏への人口の過度な集中を是正し、地方において活力ある地域社会を実現していくための政策として、安倍政権のもと2014年から、国の重要政策として位置づけられ、担当大臣を置いてその取組が進められて来ました。
私は、2014年10月、当時自民党幹事長だった石破茂さんが、初代の地方創生担当大臣に就任されてから1か月余り経過した頃ですが、地方創生の事務局になっている内閣官房の「まち・ひと・しごと創生本部事務局」を訪ねたことがあります。その時、応対してくれた事務局の方は、地方創生の取組方針をペーパーにまとめたものを示して説明してくれたのですが、意外だったのは、その中に地方分権に関することがなかったことでした。そこで、そのことを指摘して理由を聞いたら、「地方分権を担当するところは別にあって、そちらでやります。」とのことでした。また、地方創生に向けての取組も、これまで言われてきたことの延長線上のように思われ、やや期待外れの感を持ちました。そこで思ったことは、安倍政権の地方創生への取り組みは、地方創生担当の大臣を置いて、地方創生を国の重要政策として位置づけたことに意義があり、地方創生の旗印は掲げられ、意気込みはあるものの、地方の力が発揮されるようになるための骨太の政策は伴っていないなということでした。その後の地方創生の事業推進を見ますと、それはそれなりに効果があった面もあると思いますが、基本的に補助金行政の域を脱していません。
2014年夏の骨太方針で、1億人の人口維持の国家目標が示され、その年の秋に地方創生が国の重要政策の柱として位置づけられたことから察するに、地方創生は、「一億人国家シナリオ」を実現するための国家戦略、ことに東京圏への人口の一極集中を是正する役割を担う戦略としての構想されたものと思われます。出生率が低い東京圏への人口の集中は、どうしても国全体の出生率を下げていく方に働くことから、これの是正は、「一億国家シナリオ」において重要な課題です。
そうした位置づけ、役割を担って地方創生の取組が開始された年の翌年の2015年以降も、7年連続して出生率の低下が続いていて、地方創生の推進が必ずしも出生率の向上に結び付いていない現状があります。その理由は、地方創生が、個々の補助政策メニューの提供の域にとどまっていることにあるのではないでしょうか。
これからの地方創生は、これまでの取組に加えて、地方が力をつけて自律的に魅力と活力に満ちた地域社会を実現していくための基盤となる国の仕組みの構築という方向に向かわなければなりません。私は、その基盤となる国の仕組みは、明治以来の中央集権型統治の国家社会から転換して、自律分散型統治の国家社会にしていくことで築かれるのではないかと考えています。
そこでお尋ねです。本当の意味での地方創生を実現していくためには、財源と権限において国と地方との関係をどうしていくのが最も望ましいのかという地方分権に係る課題にも併せて取り組んでいく必要があると考えます。ついては、このことを国に求めるべきと考えますが、ご所見をお伺いいたします。
また、明治以来の中央集権型統治を改めて、自律分散型統治の国家社会にしていくことが、地方創生の上からも望ましいこれからの国づくりの方向であると考えますが、このことにつきご所見をお伺いいたします。
→(知事答弁)
4. 不妊治療について
我が国では、不妊を心配し治療を受ける夫婦が増えています。実際に不妊の検査や治療を受けた夫婦は全体で18.2%、つまり5.5組に1組の割合になっています。不妊治療の実施件数も年々増加していまして、日本産科婦人科学会の調査によると、2018年の体外受精による出生児数は5万6979人にのぼり、年間出生数としては16人に1人に相当しています。
不妊治療には、妊娠しやすい性行為の時期を指導するタイミング療法、妊娠しやすい時期に精子を直接子宮内に注入する人工授精、卵子を採って体外で受精させた受精卵を着床しやすい時期に子宮に戻す体外受精の3通りがあります。
一般的に不妊治療は、タイミング療法にはじまり人工授精に進み、それでも妊娠しない場合は体外受精へとステップアップしていくケースが多いようです。ただ、1年以上自然妊娠しなかったカップルが、タイミング療法により妊娠する確率は約5%、人工授精の場合も約10%までといわれています。3通りの不妊治療の中で最も妊娠確率が高いのは体外受精です。ちなみに、2018年に全国592施設で行われた体外受精の妊娠確率は31.9%でした。このように、体外受精は妊娠確率が高い不妊治療法なのですが、問題はその治療費が高額なことです。公表されている調査結果によれば1回あたりの治療費は、タイミング療法は数千円~2万円程度、人工授精は平均で約3万円程ですが、体外受精は平均約50万円です。そこで、有効な少子化対策の施策の一つとして、体外受精に対する助成を手厚くすることが考えられます。
令和4年度からタイミング療法だけではなく人工授精も体外受精も保険適用になったことは歓迎すべきことでありますが、本県の不妊治療に対する助成の在り方は、形だけで心がこもっていない感があります。その内容を見ますと、先ずタイミング療法は、元々保険適用があり夫婦一組に年間3万円を上限に助成がありました。それが現在も継続されています。人工授精は、夫婦一組につき年間3万円を上限に助成がありましたが、令和4年度以降は保険適用になり治療費負担が3割になったことを受けて助成の上限は年間9千円に減額されました。妊娠確率が低くて治療費負担も少ないタイミング療法への助成が、人工授精への場合より多額なのはどうしてなのでしょうか。さらに、私が疑問に思うのは、高額で最も助成を必要としている体外受精の不妊治療に対しては、何の助成措置もないことです。
県としては、体外受精に対して保険適用以前は、その高額な治療費の負担を軽減するために国と県で助成していたが、保険適用になり治療費の自己負担が3割に軽減されたので助成の必要はなくなったと考えているのではないか察していますが、不妊治療の実情についての認識を欠いた措置と断ぜざるを得ません。
私は、体外受精の不妊治療をしている方の話を聞きましたが、体外受精が保険適用になったとは云え、体外受精の一連の治療に要する費用の自己負担額は、1回につき20万円程になり、6回までは保険適用が認められるが、経済的に余裕がない人たちは途中で断念せざるを得なくなると語っていました。こうした現状に手を差しのべていくことこそ、本当の少子化対策ではないでしょうか。
そこでお尋ねです。体外受精と比べて妊娠確率が低くて大幅に治療費も安いタイミング療法や人工授精に対しては保険適用後も助成措置があるのに、妊娠確率が高い体外受精に対しては、保険適用後もなお治療費に高額を要するにもかかわらず助成がない現状は改めなければなりません。「やまぐち未来維新プラン」には、一般不妊治療(タイミング療法等)・人工授精・特定不妊治療(体外受精等)まで、不妊治療の流れの全てをカバーする治療費助成を実施すると記されています。
つきましては、速やかに体外受精の不妊治療に対してもしっかりした助成措置を講ずるべきと考えますが、ご所見をお伺いいたします。また、人工授精に対する助成の上限も見直す必要があると考えますが、併せご所見をお伺いいたします。
→(部長答弁)
1 電力対策について
(1) 電気料金高騰の影響と対策について【知事答弁】
合志議員の御質問のうち、私からは、電気料金高騰の影響と対策についてのお尋ねにお答えします。
液化天然ガスや石炭の価格高騰による電気料金への影響について、本年1月分の関連指標は、対前年比で消費者物価指数が約2割、企業物価指数では約5割と急激に上昇しており、県民生活や企業経営に大きな影響を与えているものと考えています。
このため、県では、今年度、累次にわたり原油価格・物価高騰対策を実施し、県民や事業者への支援に取り組み、また、電気事業を所管する国に対しては、実質的な負担軽減につながる制度設計について、全国知事会を通じて要望してまいりました。
その結果、国の総合経済対策において、電気料金の激変緩和対策が実施され、今年1月使用分から料金引下げが行われており、一定の負担軽減が図られています。
こうした中、電気料金をはじめとする物価高騰は、今後もさらなる上昇や高止まりが懸念されていることから、私は、来年度予算においても引き続き、厳しい状況にある県民や事業者への影響緩和を図るための対策を講じてまいります。
具体的には、まず、県民が利用する施設等でのサービス継続を図るため、医療機関や社会福祉施設等の光熱費をはじめ、公共交通事業者の燃料費や、学校・保育所等の食材費に対する支援を実施します。
また、企業の事業継続に向けて、省エネ・業務効率化に資する設備導入補助や、経営診断等によるデジタル経営への転換支援、リスキリングによる人材育成支援などにより、生産性向上を図ります。
さらに、経営の安定に向けて、「原油価格・物価高騰対応資金」など資金面からの支援や、クラウドファンディングを活用した頑張るお店応援プロジェクト、運送料の値上げに対応したEC送料支援などにより消費需要を喚起します。
私は、電気料金等の物価高騰が県民生活や企業経営に与える影響を最小限に抑えることができるよう、国の対策に適切に呼応しながら、引き続き必要な対策を講じてまいります。
その他の御質問につきましては、関係参与員よりお答え申し上げます。
1 電力対策について
(2) 県の電力行政について【理事答弁】
県の電力行政についてのお尋ねにお答えいたします。
火力発電については、国の第6次エネルギー基本計画において、排出される二酸化炭素の回収・貯留等による脱炭素化や、お示しの石炭ガス化複合発電などの技術開発等を推進していくとされています。
一方で、原子力発電についても、運転時に温室効果ガスの排出がないことから、安全性の確保を大前提に、長期的なエネルギー需給構造の安定性に寄与するベースロード電源として、必要な規模を持続的に活用していくとされています。
このように次世代の高効率石炭火力発電や原子力発電は、国のエネルギー政策において、その役割や重要性がしっかりと位置付けられています。
こうした中、上関原発については、重要電源開発地点指定は引き続き有効であり、解除する考えはないとの見解が国から示されており、国のエネルギー政策上の位置付けは現在も変わっていないと認識しています。
また、原発立地によるまちづくりを進めたいという地元上関町の政策選択は、現在も変わりありません。
上関原発建設計画については、このように事情の変化がない中で、御提案のあった計画変更について県が役割を果たすことは考えておらず、県としては、これまで同様、地元上関町の政策選択や国のエネルギー政策を尊重するという立場で対応してまいります。
1. 電力対策について
(1) 電気料金高騰の影響と対策
電気料金の高騰が、県民生活と県内企業の経営を直撃しています。平成28年に電力小売が全面的に自由化されまして7年が経過しようとしていますが、中国エリアにおける令和4年10月の販売電力量において新電力の占める割合は1割前後にとどまり、中国電力が一般家庭向けの低圧電力においては87%、企業等向けの高圧・特別高圧電力においては91%を占めています。従いまして、中国電力のデータに基づいて電気料金高騰の実情を先ず明らかにしたいと思います。
先ず、1月当たり260kWh使用の一般家庭(4人家族で非オール電化の家庭想定)をモデルケースとした場合、販売電力量の68%を占めている自由料金で見ますと、令和4年1月は、月額7542円であったのが1年後の本年1月は11058円となり47%値上がりしています。一方、燃料費調整による上限が設けられているため電気料金の値上げに制限がある規制料金の場合は、同様モデルケースの一般家庭で令和4年1月は7589円であったのが、本年の1月は8029円で値上率は6%程に留まっています。
中国電力は、本年4月からの新料金では一般家庭向けの低圧電力の料金は、自由化料金も規制料金もほぼ同一水準にする方向で料金設定を行っているため、自由化料金はわずかですが値下げとなり、規制料金は30%程の値上げとなる見通しです。このため、モデルケースの一般家庭の本年4月の電気料金は、いずれも10400円前後となり昨年1月から3000円程値上がりしたことになりますが、同ケースで令和3年1月の料金は6406円ですのでそれと比すれば4000円強の値上がりです。ただ、昨年10月に閣議決定された「電気・ガス価格激変緩和対策」により、令和5年1月から9月までの使用分において低圧の電気料金は、1kWh7円、9月分は3.5円差し引かれることになりますので、モデルケースの一般家庭においては1820円の値引きとなるものの、年金生活者や子育て世代で家計のやりくりに苦慮している家庭等にとっては、生活が苦しくなる厳しい電気料金の値上げであることに変わりはありません。
次に、企業等の産業用高圧電力使用の場合、6KV高圧電力で契約電力1000kW、月間電力量280千kWhのモデルケースでは、令和4年1月は電気料金が516万円であったのが、本年4月からの新料金では976万円となる予定です。ただ、高圧電力の場合も本年1月から9月までの使用分の料金については、国の価格激変緩和対策により1kWh当たり3.5円、9月分は1.8円差し引かれますので、そのことを考慮しましても878万円となり、令和4年1月に比して70%の値上げであります。こうした電気料金の高騰は、企業の経営努力の範囲を超えていて事業継続の見通しが立たなくなると、企業経営者から悲鳴に近い訴えの声を聴いています。
電気料金高騰の要因は、燃料価格の上昇と高止まりで、その背景の一つにはロシアのウクライナ侵略を受けて、世界で液化天然ガス(LNG)や石炭といった資源を確保する動きが活発化していることがあるようです。その収束の見通しは不透明でありますが、そうした状況の中において、県民生活と企業経営を、どう守っていくのか政治の責任が問われています。
そこでお尋ねです。先ず、県は、電気料金高騰の県民生活や企業経営への影響をどう見ているのかお伺いいたします。次に、県民の生活を守り企業の事業継続を図っていくために電気料金高騰への対策が求められていますが、このことにどう取り組むのかご所見をお伺いいたします。
→(知事答弁)
1.電力対策について
(2)県の電力行政
私は、主たる役割が上関原発建設計画に係ることである県の電力行政の現状を終わらせる決断の時を、本県は迎えていると考えています。
これまで何度も議会において指摘してきたところでありますが、将来にわたって上関原発が建設されることはあり得ません。民主党の菅政権の時に閣議決定された「エネルギー基本計画」は、2020年までに我が国の総発電の50%以上をゼロ・エミッション電源にするため原子力の新増設を少なくとも14基以上とする内容で、その計画において建設が位置付けられていたのが上関原発でした。その後、東日本大震災が発生し福島第一原発が津波に襲われて陥った過酷事故は、偶然の結果が良い方向に向いたため東日本壊滅という最悪事態は回避することができましたが、国の存立自体を脅かすリスクを原発が内包していることが明らかとなりました。このため、原発新増設の計画は改められ、その後のエネルギー基本計画においては「原発への依存度は可能な限り低減していく」方針が明記されてきました。こうした国のエネルギー政策の延長線上に上関原発の建設はあり得ないことは明白です。
私は、昨年の2月県議会で、今後の我が国のエネルギー政策において原発が担う役割は補完的なものとの見方を示しました。現岸田政権は、原発推進に転じたかのように報じられていますが、その中身は既設原発の再稼働と運転期間の延長が主であって原発の補完的役割をやや強化して延長しようというものであります。従って、上関原発の建設は、岸田政権による原発推進の視野には入っていないと見て間違いないと思われます。
資源エネルギー庁の原子力国際戦略検討小委員会の委員を務めた経歴を持つ評論家市川真一氏は、原子力産業新聞に昨年11月、「原子力利用に一歩踏み出した岸田政権」と題して寄稿し、「政府、電力業界にとって残された課題は、福島第一原子力発電所の事故前に既に建設の初期段階にあった東京電力・東通1号機、建設準備中だった日本原電・敦賀3・4号機、東北電力・東通2号機、中国電力・上関1・2号機、九州電力・川内3号機、計7基について結論を出すことだろう。」と指摘しています。そして、「上関原発1・2号機、東通原発1・2号機の4基は、炉型が沸騰水型軽水炉(ABWR)で、福島第一とベースは同一の沸騰水型であることも論点になる可能性は否定できない。」と述べ、上関原発建設計画が国民の理解を得ることの困難さを示唆しています。
その上で、岸田総理が原子力の活用継続に一歩踏み込んだことを評価し、次のように結んでいます。「再生可能エネルギーと原子力、水素(アンモニア)を組み合わせ、且つ使用を避けられない化石燃料については、二酸化炭素回収・有効利用・貯留(CCUS)などの技術を活用してカーボンニュートラルを達成する・・・これが次世代の日本のエネルギー戦略の基本になる道筋がようやく見えてきたと言えるだろう。」と。
中国5県のエリアでこの道筋を展望した場合、上関に建設されるべきは原発ではなく将来アンモニア発電への移行も可能なCO2回収型の石炭ガス化複合発電(IGCC)もしくは同様CO2回収型の石炭ガス化燃料電池複合発電(IGFC)であると考えます。中国電力は、広島県大崎上島町の瀬戸内海の島でこのIGCC、IGFCの実用化に向けて実証実験を行っており、その成果を同じ瀬戸内海に面する上関で生かすことが望ましいと考えます。
中国エリアにおける原子力発電は、島根2号機の再稼働が認められ、既に建設が完成している島根3号機の営業運転が開始されれば充分で、あえて世論の強い反発を押し切ってまで上関原発を建設する選択は、もはやあり得ないと見ています。
上関にCO2回収型カーボンフリーのIGCC若しくはIGFCを建設した場合、将来的には水素のエネルギーキャリアであるアンモニアの混焼、更にはアンモニア専焼の発電への移行も想定されます。燃やしてもCO2を出さないことから脱炭素の切り札としての期待が高まっているアンモニア発電が、上関において実現すれば中国エリアにおける電力供給は、主に再生可能エネルギーと原子力そしてカーボンフリーの火力により行われることになり、カーボンニュートラルの達成に大きく近づくことになります。
本県は、瀬戸内コンビナートにおいて全国の1割の水素を生成する水素先進県であり、そのことを本県産業の強みとして活用する施策の推進を図っていますが、水素のエネルギーキャリアであるアンモニアによる発電への活用も検討されていいテーマであると考えます。
以上申し上げたことを踏まえ、お尋ねいたします。本県の電力行政は、上関原発建設計画を、CO2回収型の石炭ガス化複合発電(IGCC)若しくは石炭ガス化燃料電池複合発電(IGFC)に変更する方向でリーダーシップを発揮し役割を果たすべきと考えますが、ご所見をお伺いいたします。
→(理事答弁)