「病児保育について」答弁
ア 病児保育施設の拡充について
合志議員の御質問のうち、私からは、病児保育施設の拡充についてのお尋ねにお答えします。
子育てしながら働く家庭においては、子どもが病気になったときの対応が大きな課題となっており、病気の子どもを一時的に預かる病児保育は、仕事と子育ての両立を図る上で大変重要です。
このため、県では、これまで市町と連携して、病児保育施設の設置を促進してきたところであり、現在、県内では、 12市町で32か所設置をされ、利用者数も近年大幅に増加しています。
また、居住地以外の勤務地で預けたいという利用者のニーズ等を踏まえ、利便性の向上を図るため、県内全域で広域的に利用できる仕組みの構築に取り組んでおり、全市町で協定を締結した上で、この4月から開始する予定としています。
こうした中、女性の就業率向上や利用の広域化により、病児保育に対するニーズがさらに増大することが見込まれるため、私は、今後、病児保育施設の拡充に向けた取組を一層推進する必要があると考えています。
具体的には、病児保育施設の計画的な設置を促進するため、施設整備費や運営費の支援を、引き続き行うほか、季節により利用の変動が大きい、病児保育の安定的な運営の確保に向けて、国に対し、運営費に係る国庫補助の拡充について今後とも要望してまいります。
また、広域利用の仕組みを実効あるものとするため、来年度、新たにSNSを活用したネット予約サービスの導入に向けた実証事業を行うこととしており、全市町が参画する検討会議で検証し、利用者の利便性の向上や利用促進につなげてまいります。
さらに、現在、市町で策定を進めている、再来年度から5年間の次期「子ども・子育て支援事業計画」において、期間中に必要となる病児保育のサービス量について、詳細な需要調査等を通じてニーズを的確に把握し、計画に反映させるよう、市町に対し、会議等を通じて働きかけてまいります。
私は、今後とも、こうした取組を通じ、市町や関係団体と連携して、安心して子育てをしながら働けるよう、病児保育施設の拡充に積極的に取り組んでまいります。
その他の御質問につきましては、関係参与員よりお答え申し上げます。
イ 保育所における体調不良児への対応について
次に、病児保育についてのお尋ねのうち、保育所における体調不良児への対応についてです。
保育所は、乳幼児が生活時間の大半を過ごす場であり、その健康の保持や増進、安全の確保を図ることが大変重要となっています。
このため、県では、今年度から実施している、病児保育従事者を対象とする病気のケアや感染症対策等の専門研修に、保育所の保育士も参加させることにより、病児や体調不良児への対応のスキルアップを図っているところです。
また、保育所に看護師等を配置することにより、専門性を生かした対応が可能となるよう、非常勤職員を雇用する経費への補助も行っています。
お尋ねの体調不良児は、保育中の急な発熱等により何らかの疾病が疑われる状態となったもので、国の保育所保育指針においては、保育所は、保護者に連絡するとともに、嘱託医と相談するなど適切に対応する必要があるとされています。
このため、体調不良児の症状により預かることが難しい場合は、保護者が迎えに来て、医療機関や病児保育、自宅等で受け入れることを基本としており、それまでの間の保育所での預かりは緊急一時的に対応しているものです。
こうしたことから、県では、保育所において、お示しの病児保育専門の保育士を配置し、体調不良児に対応することまでは考えていませんが、体調を崩した場合には、緊急的な対応も必要となることから、引き続き、研修の実施等を通じて乳幼児の健康管理が適切に行われるよう支援してまいります。
「地域子育て支援拠点施設の在り方について」答弁
働き方改革と子育て支援についての3点のお尋ねにお答えします。
まず、地域子育て支援拠点施設の在り方についてです。
核家族化や地域のつながりの希薄化により、子育ての不安感や負担感が増加する中、子育て中の親子が気軽に集い、相互の交流や育児の相談ができる地域子育て支援拠点は、安心して子育てを行う上で大変重要な役割を果たしています。
このため、県では、市町と連携し、地域子育て支援拠点の設置を促進してきたところであり、現在、県内では、保育所や空き店舗等において、150か所が設置されています。
そのうち、今年度から、研修等により相談機能を強化した拠点を「まちかどネウボラ」に認定し、市町保健師や関係機関等と連携しながら、身近な場所で、日常的な育児相談に加え、妊娠・出産等の相談もできる体制づくりを進めています。
こうした中、仕事と子育ての両立や再就職の希望など就労に関する悩みを持つ母親が増えており、拠点においても、就労に関する相談等が寄せられていると聞いています。
こうしたことから、お示しの「就労版ネウボラ」については、一定のニーズはあるものと考えますが、現状では、地域子育て支援拠点については、就労相談等への対応を想定した事業とはなっていないところです。
このため、県としては、今後、子育て中の母親への就労支援を行う山口しごとセンターのコーディネーターやハローワークとも連携しながら、地域子育て支援拠点における就労相談等への対応の必要性について、市町や関係団体と検討してまいりたいと考えています。
「働き方改革と子育て支援」
3. パーキングパーミット
パーキングパーミットについての質問は、働いている、いないにかかわらず妊娠された女性一般に係ることですが、その制度が、望ましい仕組みになっていくことは、当然に、妊娠しても可能な限り働こうとしておられる女性への支援にもつながっていくことであると考えて行うものです。
パーキングパーミット制度は、平成18年に佐賀県で導入されて以降、多くの府県において導入されていまして、山口県は、全国の都道府県の中では15番目になりますが、平成22年8月に導入しています。
この制度は、公共施設や店舗などに設置されている身障者用駐車場を適正に利用いただくため、障害のある方や高齢の方などで歩行や乗降が困難な方に、県が、県内共通の利用証を交付して、必要な駐車スペースを確保できるようにするものでして、その利用証が交付される対象に、妊産婦さんも含まれています。ただ、妊産婦さんの場合、問題なのは妊娠7か月以降とされていることです。
男性である私には、勿論「つわり」の経験などありませんが、妊娠期の女性にとって「つわり」は、精神的にも肉体的にも辛いもののようで、それを乗り越えていく上において、周りの人たちのサポートや配慮が、大きな支えになり必要と思われます。
ところが、妊産婦さんが、そうした「つわり」に苦しんでいてサポートを必要としている時期には、パーキングパーミット制度の恩恵を受けることはできません。理由は、「つわり」のピークは、妊娠3か月頃で、安定期と言われている、妊娠6か月頃までに、概ねおさまると見られているのに、妊産婦さんがこの制度の利用証の交付対象になるのは、妊娠7か月以降とされているからです。しかも、交付申請の手続きをしなければ、利用証の交付はありません。
このことに関して、産婦人科の医師はどうお考えなのか見解を伺ったところ、次のような回答がありましたので、ご参考までに紹介いたします。
つわりは、個人差があり、平均的には妊娠12週前後で収束すると言われますが、人によっては妊娠後半期にまで症状がある方もおられます。
また、つわりは、重症度によっては、極度の脱水、神経症状、血圧低下、見当識障害、逆流性食道炎、等々を引き起こします。およそ買い物をして遠くに停めた車まで荷物を運ぶのは、しんどいと想像できます。
更に、昨今の不妊事情においては、妊婦の高齢化があり、やっとの思いで授かった胎児、しかし母胎の年齢、体力は確実に高齢化しており妊娠継続そのものが妊娠初期から若い方に比して非常に辛い場面も多々あります。ダイナミックに身体が変化します、つわりだけではなく、全身の倦怠感もかなりなものがあります。
また、妊娠初期は流産の危険性もあり、これまた不妊治療後の妊娠においては出血や腹痛の出現率が高頻度です。妊婦の不安もマックスです。
妊娠そのものが、「病気ではない」の押しつけが、この時代の妊婦さんに対して非情と思います。病気ではないから妊娠する前と同じく働け、動け、責任を果たせ、生活をしろ、つわりは当たり前、気の持ちよう、少々辛くてもよく動いた方が安産、全て妊婦さんを苦しめています。
確かに、妊娠週数が進み、7か月過ぎてきますと物理的に腹部の重量が増し、骨盤への負担もあり、移動自体がおっくうになります。それまでは、物理的な負担はまだ軽いかもしれません。ですが、妊娠と気づくのはおおむね妊娠3か月で、産前休に入るまでが、車を必要とする時期ならば、その間の妊娠4~6か月を無視するのではなく、妊娠7か月から発行とするのではなく、一律交付、必要ならば使ってくれ、のほうが、「声なきがんばりやさん」を救う手段と思います。
以上のような見解も踏まえ、お尋ねいたします。私は、本県が、女性の妊娠・出産・子育てへのサポートにおいて日本一環境が整った県になることを期待するものです。ついては、パーキングパーミット制度の利用証の妊産婦さんへの交付は、妊娠7か月以降とされている制限をなくし、妊娠された方へ母子健康手帳が交付されるときに、同時に交付するようにすべきだと考えますが、このことにつきご所見を、お伺いいたします。
「働き方改革と子育て支援」
2. 病児保育
次に、病児保育についてお伺いいたします。子育てと仕事の両立ということで喫緊の課題は、病児保育の拡充であります。3歳未満児のお子さんを保育施設に預けて働いている母親たちが、最も苦慮するのは、子どもが38度以上の発熱がある場合は、直ちに引き取りにいかなければならないことです。職場において担っている仕事の責任上、すぐに職場を離れることはできない。一方、一刻でも早く子供を引き取りにいかなければ、保育施設に迷惑をかけるし、子どもの病状も心配で、その対応も急がねばならない、ということで板挟みになり苦慮する子育て中のお母さま方が、今日結構多いのではないでしょうか。そして、今後、働き方改革の進行に伴い、子育てしながら働くお母さまたちの割合は、一層増加していくことが予想されます。従って、唯今紹介したようなケースで本当に困られる母親たちが、益々増えていくものと思われ、このことへ対応する施策の実施が急がれます。
そこで、病児保育についてお尋ねいたします。
先ず、病児保育施設の拡充についての県の取組方針についてであります。平成31年度県予算においては、病児保育推進事業に、1億7千万円余の予算措置がなされており、病児保育実施個所が、現在、県下12市町32か所であるのを、次年度は、13市町35か所まで増やすとされております。また、病児保育は市町の事業であるため、居住地以外の市町での利用が制限されていたり、利用料に格差が生じていた問題点を解消して、次年度からは、居住地にかかわらず、県内の希望する場所で病児保育施設が利用できる広域利用が可能になる見通しです。更に、利用者の利便性の向上や、子育てと就労等を両立できる環境づくりに向けて、病児保育サービスのICT化の実証事業が予算措置されています。
このように、本県が病児保育施設の拡充に取り組んでいることは認め、そのことを評価するものですが、現状は、まだまだ絶対量が少なく、今後大幅に拡充していく必要があると思う次第です。ついては、病児保育施設の今後の拡充に向けた取組み方針について、ご所見をお伺いいたします。
次に、保育所における体調不良児の対応についてであります。病児保育施設には、病児対応型、病後児対応型、体調不良児対応型の3通りがありますが、この中で、体調不良児対応型の保育施設については、各保育園に完備するようになるといいとの声が、病児保育に携わっている現場の方々の声としてあります。体調不良児対応型の対象児童は、主に保育中に発熱するなど体調不良になった児童であって、保護者が迎えに来るまでの間、緊急的な対応を必要とする児童であります。
私は、先に、働き方改革の進行に伴い、地域子育て支援拠点施設は、子育て中のお母さま方の就労へのニーズや悩みにも対応する拠点へと進化する必要がある旨、申しあげましたが、保育施設においては、病児保育施設を全体的に増やしていく方向の中で、ことに体調不良児への対応は、全ての保育施設でできるようにしていくことが、今日の時代的要請であり、保育現場の声に応えることになるのではないでしょうか。
ただ、問題なのは、体調不良時対応型保育施設に関して国が設けている実施要件が、看護師等を常時1名以上配置することとハードルが高いことです。この要件を全ての保育施設が満たすようにしていくことは、実際上不可能と思われます。そこで考えられるのは、病児保育専門の保育士を研修等を通して育成し、各保育施設が体調不良児に対応できるようにしていくという方向です。体調不良児を隔離保護する場所の整備と病児保育専門の保育士の配置ということであれば、各保育施設において実現可能ではないでしょうか。
そこでお尋ねです。体調不良児への対応は、各保育施設が行うことが出来るようにしていく方向で、施策の推進を図っていくべきであると考えますが、このことにつき、ご所見をお伺いいたします。
「働き方改革と子育て支援」
安倍政権が、「一億総活躍社会の実現に向けて」と銘打って強力に推進している働き方改革は、我が国が直面している少子高齢化の進行を見据えて、国の産業を支える労働力の確保を、労働慣行や雇用形態を見直すことを通して図っていこうとする施策であるということが出来ます。
長時間労働の是正、同一労働・同一賃金の実現といった働き方改革が目指す方向に、女性が活躍しやすい環境整備、子育て・介護等と仕事の両立、高齢者の就業促進、障害者の就労支援などが、実行計画として位置付けられていることからもそのことがうかがえます。
そうした時代の趨勢を踏まえ、今回は、「働き方改革と子育て支援」ということで、3点質問いたします。
1. 地域子育て支援拠点施設の在り方
その1は、地域子育て支援拠点施設の在り方についてであります。子育て支援施設は、保育サービスそれ自体を提供する保育園などの施設と、家庭で子育てをしているお母さんたちに、気軽に集える交流の場を提供することで、子育て中のお母さんたちの孤立化回避や悩みの解消を図っていく地域子育て支援拠点施設の二通りがあります。厚労省の資料によれば、3歳未満児においては、母親の7割から8割が家庭で子育てしていると見られており、核家族が増加し、地域のつながりが希薄化している今日、子育て支援拠点施設は、保育施設と並んで子育て支援の重要な役割を担っています。
この地域子育て支援拠点施設は、保育園等の保育施設に併設されるセンター型と空き店舗や空き家等を利用して開設されたひろば型の二通りが主でして、現在は、これら二通りの拠点施設は、機能面においては共通しているということで一般型に再編分類され、全県で150か所あります。これは、平成27年度に策定された「やまぐち子ども・子育て応援プラン」が、計画期間である平成31年度までに実現するとした目標数値でして、これが既に達成され、更に、この拠点施設が、本県が、平成30年度から推進している「やまぐち版ネウボラ(ネウボラとはフィンランド語で『アドバイスの場所』を意味し、妊娠期から出産、子育てをサポートする仕組み・拠点のこと)」における「まちかどネウボラ」の拠点となり、その実施体制構築の速やかな進捗を可能にする下地になっていることを評価するものであります。
私は先日、山口市内にありまして、その「まちかどネウボラ」としても認定されている子育て支援の拠点施設を訪ねました。そして、そこのスタッフの方から課題と感じていることについて率直な思いを伺いましたところ、次のような趣旨のことを語られました。
これまでは、ここに来られる母親の悩みの多くは、子育てに関することであったが、最近は、子育てしながら働けるだろうか、再就職できるだろうかという子育てと就労の悩みを同時に抱えるお母さん方がふえてきている。働き方改革の進行に伴い、その傾向は、益々強まっていくように思う。
ついては、地域子育て支援拠点の事業として、子育て中のお母さん方に、就労に関して基礎的な情報や知識についての講座を開いたりする等ことが出来るようになるといいと思っている。
以上のような内容のことを、そのスタッフの方は述べられたのですが、私は、働き方改革が進行する中における、地域子育て支援拠点事業の新たな課題を、正しく的確に指摘しておられると思う次第です。
そこでお尋ねです。本県は、子育ての悩みに応える面での地域子育て支援拠点事業は、まちかどネウボラの実行体制の構築も順調に進んでおり手厚いものがあると評価しますが、働き方改革が進行する中、更に、子育て中の母親の就労に関するニーズや悩みにも応えることが出来る地域子育て支援拠点事業への進化を図っていくべきだと考えますし、就労版ネウボラというものが構想されてもいいと思う次第です。ついては、こうしたことにつきどうお考えなのか、ご所見をお伺いいたします。
「公共交通政策について」
1. 県の役割について
平成25年に制定された交通政策基本法は、第9条において、「地方公共団体は、基本理念にのっとり、交通に関し、国との適切な役割分担を踏まえて、その地方公共団体の区域の自然的経済的諸条件に応じた施策を策定し、及び実施する責務を有する。」と定めています。都道府県の責務、市町村の責務とせず、地方公共団体の責務という表現にすることで、国は、交通に関する施策の策定及びその実施は、都道府県と市町村が、お互いに連携して当該区域における交通政策の進展を促そうとしているようです。
そうとは云え、実際上は直接住民生活にかかわっている市町が、域内における交通政策、特に通勤、通学その他不特定多数の様々な人たちが移動手段として利用する公共交通に関する施策の大部分を担っています。それに対し県は、公共交通にかかわっている市町や民間事業者に対して、国の支援策の仲介、広域調整、補完的支援などの役割を、これまでは主に果たしてきていまして、どちらかと云えば受け身的な役割に終始してきたように思われます。
しかし、今後の公共交通の望ましい在り方を展望するとき、県が主導的役割を果たすべきと思われることがあります。これからの県政が目指すべき方向の一つは、マイカーがなくてもシームレスな公共交通ネットワークが整っていて自由な移動が高齢者や障碍者を含めて誰にでも確保されている地域社会の形成であります。また、そうした公共交通のネットワークは、観光振興においても重要で国内一般の観光客のみならず、インバウンドの訪日外国人にとっても利用しやすい仕組みにしていくことが望まれます。更には、公共交通機関としてのバス等の運行において定時性が確保されるよう道路の整備を、県に期待する声もあります。そのような利便性・信頼性の高い、そしてネットワークとしてつながっている全県的な公共交通の形成に向けては、当然に県が主導的な役割を果たしていくことが求められます。
そこでお尋ねです。県は、本県における公共交通に関する施策の策定及び実施において、今後どういう役割を果たしていかれるのか、ご所見をお伺いいたします。
「公共交通政策について」
2. 地域公共交通網形成計画の策定
国が、現在公共交通に関して推進している主要な施策に一つに、地域公共交通網形成計画の策定があります。これは、平成26年に成立した改正地域公共交通活性化再生法において打ち出された施策で、まちづくりと連携した、面的な公共交通ネットワークを再構築するための計画を、地方公共団体が、地域の実情に応じて作成するものです。
本年10月末現在で、433件の計画が策定されていまして、その多くは市町による策定です。都道府県も市町村と共同して計画を作成できるとされていまして、青森、奈良、愛媛、佐賀の4県は、県としての計画を策定しています。また、複数の市町にわたる圏域の公共交通網計画の作成に府県が参画関与しているケースが18件あります。本県では、県下13市の中で萩市と柳井市を除く11市において策定されており、萩市は現在策定の作業中で柳井市は来年度から策定に取り組むとのことですので、近年中に県下全域をカバーした市圏域別地域公共交通網形成計画が策定され、出揃うことになります。そこで、県の公共交通政策において問われるのは、全県的な視野からの地域公共交通網形成計画は必要ないのかということであります。
都道府県において地域公共交通網形成計画を策定しているのは、先ほど述べましたように未だ4県ですが、私は、県域として公共交通ネットワークをどう構築していくかは、県の将来をデザインする上で重要な課題であることから、公共交通に係る県の施策の基本方針を確定して、そのことに基づく県としての地域公共交通網形成計画の策定に取り組むべきだと考えます。
そこでお尋ねです。県下の各市が策定した地域公共交通網計画をベースにした上で、県の公共交通に係る施策の方針に基づき広域調整を行い、本県の地域公共交通網形成計画の策定に取り組むべきだと考えますが、ご所見をお伺いいたします。
「公共交通政策について」
3. バス交通の確保維持改善
県内の公共交通を構成しているバス・鉄道・タクシーは、いずれもが県民への移動手段の提供という点で重要な役割を果たしています。従って、これら交通機関への支援は、県民の移動手段の確保への支援という観点から、その妥当性の検討は行われるべきと考え、今回は、そのことに関しバス交通についてお伺いいたします。
言うまでもなくバス交通は、今日も公共交通における根幹的な交通機関の一つであります。しかし、以前は公営事業として運行されていたバス交通の多くは、民間事業者への移譲や民営化が図られ、現在、本県における公営バスは、宇部市営バスのみであります。このように、今日の時代におけるバス交通の大部分は民間事業者によって担われていますが、バス事業の経営は、年々厳しさを増しており、バス路線の多くは、運行経費から運賃収入額を引いた欠損額に対する公的補助により、どうにか維持されているというのが実情であります。
バス事業では、バスが運行する道路を路線と云い、その路線上をどういうルートで走行するか定めたものを運行系統といいまして、正確に言いますと、バス事業への補助は、路線に対してではなく運行系統の欠損に対してであります。
平成29年における本県の運行系統の総数は846で、補助による内訳は、国・県補助の系統が43、県・市補助の系統が156、単市補助の系統が340となっており、補助なしの自主運行の系統は307で、系統全体に占める割合は36%であります。尚、同年の本県の地方バス路線維持費への補助額の内訳は、車両購入費への補助を除いて国が2億5千万円、県が4億3千万円、市町が総計して10億2千万円であります。こうしたバス交通の現状を、私たちは、どう受けとめ、今後のバス交通への公的補助の在り方を、どういう考えに基づいて方向付けしていくべきなのでしょうか。私は、国土交通省が平成22年6月に発表した「交通基本法の制定と関連施策の充実に向けた基本的な考え方」に示されている「移動権の保障」という考え方に基づくのがいいと思っています。
そのことに関する記述を紹介しますと、次の通りです。
交通基本法の根幹に据えるべきは「移動権」だと思います。先ず、私たち
ひとりひとりが健康で文化的な最低限度の生活を営むために必要な移動権を
保障されるようにしていくことが、交通基本法の原点であるべきです。とり
わけ、お年寄りや体の不自由な方々にとって、移動権は極めて重要です。
どのような地域で暮らしていても、すべての人々にとってまちにでやすい
環境を整え、移動権を保障していくべきです。
こうした考え方に立てば、バス交通によってしか移動手段が確保されない地域の人々のために、公的補助によりバスの運行を維持していくことは、交通政策として当然の施策になります。
マイカーの利用が出来ない人たちの多くは、通学、通勤、通院、買い物等の日常生活における移動手段としてバス交通を利用していて重要な生活基盤になっています。また、観光面を含め交流人口の増加による地域活性化のインフラとして公共交通のネットワークは重要ですが、バス交通はその主要な担い手であります。
以上、バス交通について思うところを申し上げましたが、そのことを踏まえ、本県のバス交通について以下3点お伺いいたします。
第一点は、本県におけるバス交通についての認識と、今後のバス交通の確保・維持・改善に向けた取組みの基本的方針についてお伺いいたします。
第二点は、過疎地域におけるバス運行の確保についてであります。
過疎地ほど、バスの運行を必要としていると思われますが、乗車人数が、国・県・市の補助基準を満たさなくなったということで、それが廃止になる系統が、少しずつ増えています。本県の平成25年のバス運行系統総数は、911であったのが、平成29年には846となっており、55の系統においてバスの運行が廃止されています。
私は、移動権の保障という考え方から、過疎地等において移動手段がバスしかないという人たちがいる限り、曜日指定のバス運行の可能性なども検討して、可能な限りバス運行を確保維持していくようにすべきだと考えますが、ご所見をお伺いいたします。
第三点は、交通ICカードの導入促進についてであります。利便性の高いバス交通ネットワークを形成しバリアフリー化していくことが、県民や観光等による来訪者のバス利用の増進につながるものと思われます。ついては、そのことに向けた施策の一環として、交通ICカードの導入普及を促進していくべきであると考えますが、このことにどう取り組んでいかれるのか、ご所見をお伺いいたします。
「公共交通政策について」
4.高齢者の移動手段の確保
私が住んでいる山口市は、いい街です。転勤族で数年山口市に住まれた方で、山口の街が気に入って、定年後山口に住むことにしたという方は、結構おられます。そのように山口市は、いい街なのですが、問題は、車が運転できなくなると、一気に不便な街になることです。従って、山口市に住む不安の一つは、年取って車の運転が出来なくなった時に、移動手段をどうするかということであります。
昨日、中島議員が明らかにされたことですが、昨年の3月から、75歳以上の高齢者は、自動車の免許更新をする時、認知機能検査を受けることになりまして、この制度開始から1年間で、本県において28,717人が、この検査を受け、そのうち704人の方が認知症のおそれありと分類されています。その中で、最終的に認知症と診断され免許取り消しとなった方は3人ですが、207人の方が免許証の自主返納をしておられます。そして、それ以外の方は、多分免許更新の手続きをされなかったのではないかと推測されます。こうしたことからも車の運転が出来なくなる高齢者が年々増えていくわけで、そうした高齢者の移動手段を、どう確保していくかは、全国に比べ約10年早く高齢化が進んでいる本県にとって、看過できない政策課題であります。
マイカーを利用できなくなって最も助かるのは、家族等身内に気軽に車の乗せてくれる人があって、必要な移動が確保できることです。それがない場合は、バスやタクシー等の公共交通を利用するしかありません。ただ、バスは近くにバス停がないと利用が困難です。タクシーは、度々の利用は料金負担が過重になります。そこで、バスの場合は、路線バスを幹とすればその枝となるフィーダー交通としてのコミュニティバス等の運行によりバス利用区域を拡大する取り組みが為されています。それでもバス交通でカバーできない地域や身体的理由等でバス利用が困難な高齢者に対しては、山口市は、コミュニティタクシーやグループタクシーという仕組みを、創設しています。コミュニティタクシーは、高齢者だけではなく住民一般が利用できるもので、コミュニティバスのタクシー化であります。グループタクシーは、65歳以上の高齢者が対象で、タクシー料金割引の利用券を配布し、相乗りすれば人数分さらに割引料が増す仕組みになっています。山口市は、このようにしてタクシーの利用料金の軽減を図り、タクシーによる移動を支援しています。そうした自治体の公共交通による移動支援の施策に加えて、国が近年普及させようとしているのが、自家用有償旅客運送です。
自家用有償旅客運送は、自家用車すなわち白ナンバーの車による有償運送です。通常、有償運送が出来るのは緑ナンバーのバス、タクシー、トラックなど運送を業務としている車のみで、白ナンバーの車による有償運送は、認められていません。それを、既存のバス・タクシー事業者による輸送サービスの提供が困難な場合、地域の関係者の協議を経て、道路運送法の登録を受けたNPO法人等が自家用車で有償の運送を行うことを認めることにしたのが、自家用有償旅客運送です。その運送の対価は、タクシー運賃の概ね2分の1を目安とするとされていて、バス・タクシー等の公共交通でカバーできない公共交通空白地において移動手段確保の役割を担う、重要な制度として位置づけられています。
以上、申し上げましたことを踏まえお尋ねいたします。まず第一に、本県における高齢者の移動手段確保についての現状と課題及び県の役割について基本認識をお伺いいたします。
「公共交通政策について」
5.公共交通の担い手対策について
交通政策に係る主要な課題は、移動手段の確保からまちづくりに連動した交通ネットワークの形成、そしてシェアリングと情報技術の活用へと変遷してきているように思われますが、実は、これらはいずれも今日的な課題であり、交通政策の課題は、重層化してきています。
そうした中で、公共交通が直面している切実な喫緊の課題は、担い手不足であります。これへの対応策としては、先ず運転手等への処遇改善ということが考えられますが、そうしたことに加えて交通に関する制度の改革や技術の進展により、その解決を図ろうとする取組みが進行しています。
では、その解決の方向はどういうものなのでしょうか。制度の改革に関しては、公共交通を、シェアリングの方向で規制緩和していくことです。技術の進展は、車の自動運転の実現であります。いずれも政府が新成長戦略に位置付け、推進していこうとしていることです。
シェアリングは、物・サービス・場所などを、多くの人と共有して利用することで、今年の6月から施行された民泊新法は、旅館宿泊業に係る規制を、その方向で緩和したものと見なすことができます。
では、公共交通におけるシェアリングとは、具体的にはどういうことなのでしょうか。実は、先に述べた自家用有償旅客運送も、有償運送を白ナンバーの自家用車にも認めるという意味で、その方向での規制緩和と見做すことが出来ますが、典型的なのは、ウーバーと云って移動サービスの提供ができる一般の人の車とお客をスマホのアプリを使って繋ぐという配車サービスがあります。このサービスは、アメリカで始まり、現在は広く欧米に普及していますが、我が国では、有償運送には認められていません。理由としては、タクシーなどの運送事業者への影響が懸念されているからと思われます。運送事業者の存続を図ることは、地域における公共交通を持続的、安定的に確保していく上において大事でありますので、そうした規制を一概に批判することはできません。そこで、地域における持続的、安定的な公共交通の維持確保を前提にした上で、シェアリングという方向での規制緩和をどう図っていくのか、知恵を絞ることが求められています。また、宇部市で実証実験が行われることになった自動運転は、公共交通の担い手不足解消に向けた究極の解決策と目されています。シェアリングや自動運転が、本当に公共交通の担い手不足解消に繋がるのかついては、懸念もありますが、取組むべき一つの選択肢であることは確かです。
ついては、公共交通の担い手対策として具体化・実用化に向けた動きが進行している、シェアリングと自動運転に、本県が産学官連携して取組み、新たな公共交通のモデルを構築していくことを期待するものですが、このことにつきご所見をお伺いいたします。