平成28年9月定例県議会【知事の政治姿勢について】

私は、村岡知事に、大きな期待を寄せております。是非、知事は5期やっていただきたい。そして、山口県を立派な県にし、その後は日本をよりよい国にするために働いていただきたい、そう願っております。
今回は、厳しい指摘も致しますが、そういう期待と願いを込めまして、「知事の政治姿勢について」ということで一般質問をいたします。

1.知事の立ち位置について
お尋ねの第一は、知事の立ち位置についてであります。
1991年の4月から12月にかけて全8回にわたり「NHKスペシャル}枠で物理学者アルベルト・アインシュタインをテーマにしたドキュメンタリー番組「アインシュタイン・ロマン」が、放送されました。その内容は、全6巻の本として出版されていますが、それを読みますと、「天動説と地動説」に関して、我々の一般通念を否定する記述があります。先ず、その部分を紹介いたします。

天動説の誤りをガリレオが命をかけて正しい地動説に置き換えようとした、という見方がある。しかし、これは現代の「科学史」という学問の分野では否定されている。つまり、天動説はそれ自体完結した一つの体系であって、その中にいる限り、間違っていない。地動説に比べて大変複雑な計算を必要とするが、惑星の運航を天動説でおおむね正しく予言することはできるからである。地動説の体系ももちろん正しい。しかもより単純な公式で宇宙を理解できる。つまり、ある集団にとって正しい理論から別の集団にとって正しい理論への交代、一つのゲームのルールから他のルールへの変更と考えるのが現代科学史の潮流である。こう記されています。

天動説も地動説も、共に正しい。ただ、地動説のほうが天動説に比べてより単純な公式で宇宙を理解することが出来ることから、宇宙理解において正しいとされる理論が、天動説から地動説に交代したのであるとの指摘です。
関連して、科学的に見た自然の実態ということについて、「雪の結晶」の研究で世界的に著名であった物理学者中谷宇吉郎の言葉を紹介します。彼は、その著「科学の方法」において、次のように述べています。

科学は自然の実態を探るとはいうものの、けっきょく広い意味での人間の利益に役立つように見た自然の姿が、すなわち科学の見た自然の姿なのである、と。

この見解からすれば、天動説より地動説のほうが、人間の利益に役立つので、地動説で見た宇宙の姿が、科学の見た宇宙の姿として受け入れられたということになります。
つまり、厳密な客観性が求められる自然科学の世界においても、様々な観点からの自然理解のうち、広い意味で人間の利益に役立つ見方が、科学が見た自然の姿として受け入れられ、正しいとされていくのであります。まして、このことは、社会科学の世界、特に政治の世界において一層顕著であると思われます。
こうした見方を踏まえ、私は、県政に関する正しい理解、認識とは、広く県民を利する政策形成や政策判断につながる理解であり認識であると考えます。そして、そのような理解、認識は、それをもたらす観点、立場、立ち位置と不可分であることから、どのような観点、立場、立ち位置からの県政に関する理解や認識が望ましく、広く県民を利する政策形成や政策判断につながるのかということが、問われることになります。
そこで第一のお尋ねです。知事は、県政に関しどのような観点、立場、立ち位置に基づき政策判断をしておられるのか、ご所見をお伺いいたします。

2016年11月28日

平成28年6月定例県議会【防災知識の普及について】

防災知識の普及

質問の第二は、防災知識の普及についてであります。
県が、県民向けに防災知識の普及のために作成したものとしては、「やまぐち防災ガイドブック」と「災害教訓事例集」があります。
そこで先ず、「やまぐち防災ガイドブック」についてのお尋ねですが、これは、何時作成され、何部発行され、どのように配布活用されているのか、お伺いいたします。
次に、今年の3月に作成された「災害教訓事例集」について、数点お尋ねいたします。
第1点は、ガイドブックと同様、事例集の配布活用についてであります。この災害教訓事例集は、最初に500部発行され、その後500部追加発行されて、現在まで計1000部発行されていますが、どのように配布活用されているのか、お伺いいたします。
第2点は、事例集の発行部数についてであります。今、述べましたように、この事例集は1000部発行されていますが、あまりに少ないと思います。
県のホームページに掲載してあるということですが、トップページにある訳ではないので、「災害教訓事例集」と入力して検索する必要があります。そして、検索してもファイルサイズが大きいということで、八つに分けて掲載してあります。
防災知識の普及ということを考えれば、この事例集が、防災に関心がある多くの県民の手許に、冊子の形で在ることが可能になるよう、更に必要な部数の発行を行なうべきだと考えますが、ご所見をお伺いいたします。
第3点は、事例集の内容についてであります。今回発行された事例集は、山口県における災害の事例集でありますが、日本の全国各地における災害事例も、学ぶべき教訓があると思われる代表的なものを、併せ掲載した内容の事例集にするのが望ましいと考えますが、ご所見をお伺いいたします。
第4点は、同じく事例集の内容と構成についてであります。山口県と全国各地の災害事例から導き出される共通の防災のための教訓を、台風、水害、地震、津波、土砂災害など、災害の種類別にコンパクトにまとめたものと、山口県の災害教訓事例、全国の災害教訓事例の三部構成から成る災害教訓事例集が、作成されれば、防災知識の普及に役立つ優れた教本になるものと思われます。ついては、この度作成された事例集を、今後、そういう内容構成の災害教訓事例集にしていくことを検討すべきだと考えますが、ご所見をお伺いいたします。

回答◎総務部長(渡邉繁樹君)
防災知識の普及についての数点のお尋ねにお答えします。
災害が発生した際に、県民一人一人が的確な行動をとれるよう、県では、防災シンポジウムや出前講座を実施するとともに、お示しのやまぐち防災ガイドブックや、災害教訓事例集を作成するなど、防災知識の普及啓発に取り組んでいるところです。
そこで、まず、防災ガイドブックの作成時期等についてのお尋ねです。
ガイドブックは、平成二十四年度に三千部、平成二十六年度には、災害対策基本法の改正等を受け、改訂版を千五百部作成しており、これまで、住民の防災訓練や自主防災組織の研修等において活用しています。
次に、災害教訓事例集の配布活用と、さらなる増刷についてです。
事例集については、多くの県民の方にごらんいただくため、県のホームページに掲載しているほか、冊子として五百部発行し、市町の防災担当課や教育委員会等に配布して、防災教育や研修等において活用されるよう働きかけているところです。
また、今年度は、五百部を追加発行し、新たに開催する県民向けの災害教訓伝承セミナーにおいて活用するとともに、防災に関心のある県民の方が閲覧できるよう、市町の図書館や大学・高等学校等へ配布することとしています。
今後においても、事例集の周知に努め、ホームページからの利用を促進するとともに、必要に応じて増刷を検討し、さらなる有効活用を図ってまいります。
次に、事例集に全国の事例を加え、三部構成にすべきとのお尋ねです。
事例集は、身近な地域で実際に発生した災害について、被害の状況や体験談などを紹介することで、災害が現実に身近なところで起きるということを実感し、災害に備えていただくために作成したものです。
このため、この事例集自体に全国の事例を加えることは、考えていませんが、防災ガイドブックを含めて、その構成や内容については、今後の改訂の際、活用状況等を踏まえ、市町・専門家等の意見を伺いながら検討してまいります。

2016年6月29日

平成28年6月定例県議会【林業振興について】(3)バイオマス発電について

3. バイオマス発電について
林業振興についてのお尋ねの第3点は、バイオマス発電についてであります。
「木質バイオマス発電は、停滞する林業と地域の抱える問題を一挙に解決する『魔法の杖』ではない。」
NPO法人バイオマス産業社会ネットワーク理事長 泊(とまり)みゆきさんは、バイオマス白書2014の「はじめに」においてそう指摘し、「結局、地道な人工林の団地化、路網整備、用材のマーケティング強化等により製材業を育てながらでなければ、製材業の副産物・廃棄物利用である、木質バイオマス利用はおぼつかない。」と、述べています。
我が国において、バイオマス発電が本格化したのは、2012年7月より再生可能エネルギーで発電した電気を長期間買い取る固定価格買取制度(FIT)の運用が開始されてからであります。この制度の実現は、2011年の福島第一原発の過酷事故を経て、我が国におけるエネルギー政策が、電源構成において原発依存を減らし、再生可能エネルギーによる発電の構成割合を高めていく方向にシフトしたことが後押ししたものと思われます。
この制度により電力会社は、太陽光、風力、バイオマス、水力等の再生可能エネルギーで発電された電気を、10年間若しくは20年間固定した価格で買い取ることになりますが、その固定価格は、再生可能エネルギーで発電する事業者が、一定の利潤を得ることができるとみなされる水準に設定されています。そうすることで再生エネ発電に、多くの事業者の参入があり、再生エネ発電が増加していくことを促そうという意図が、この制度には込められています。
これを木質バイオマス発電において見ますと、発電のための燃料源となる木質バイオマスを三種類に分けて、1kWhごとの価格設定がなされています。先ず、建設廃材などの「リサイクル材」は、1kWh 13円です。次に、木材加工の工程から出てくる端材、おかくず、樹皮など残材を総称した「一般木材」が、1kWh24円です。そして、利用されずに林地に放置されている間伐材や主伐残材などの「未利用木材」が、1kWh32円です。価格の固定期間は、いずれも20年間であります。
こうした価格設定は、再生可能エネルギー特措法の、第3条2項において、買取価格は、「適正な利潤」と「当該供給に係る費用その他の事情を勘案して」定める、としたことによるものと思われます。
このように、バイオマス発電の売電価格(=買取価格)は、決まっていますが、発電の燃料源となる木質バイオマスの価格は、法定されている訳ではありません。これは、バイオマス発電の事業者と、木質バイオマスの供給者との契約により定まるもので、地域により価格差があります。
このことを未利用木材において見ますと、現時点での素材の売り渡し価格は、本県では、トン当たり5000円をわずかに超える額のようであります。隣の島根県では6000円前後、宮崎県は7500円程、高知県は8000円程とうかがっています。
農林中金総合研究所の理事研究員である渡部喜智氏の「木質バイオマス発電の特性・特徴と課題」と題する論文を読みますと、木質バイオマス発電に係わるそれぞれの段階の事業者にとって、経済的インセンティブとなる収益分配を行うことの重要性を指摘した上で、素材生産業者からチップ加工業者への売渡単価を、トン当たり7350円(発電所出力5700kw)としています。
これと比較しますと、バイオマス発電のために供給される未利用木材の素材価格は、本県は安すぎるし、高知県は高いということになります。
申すまでもなく、バイオマス発電が推進される背景には、そのことが林業振興、そして林業とかかわりの深い中山間地域の活性化につながるという期待があります。その期待にバイオマス発電の事業が応えるためには、木質バイオマスの中でも、特に未利用木材の素材価格が、その生産に携わった関係者に利潤をもたらす水準であることが求められます。
そこで、お尋ねです。バイオマス発電の燃料源となる未利用木材の素材価格は、当事者の自由な取引契約で決まりますが、その際、林業振興の観点から妥当と思われる水準の価格を、県が参考資料として示すことは検討されていいのではないかと考えます。ついては、このことにつきご所見をお伺いいたします。
次は、森林素材の生産供給体制の強化についてお尋ねいたします。
ご案内のように、防府市にあるエア・ウォーターの工場内に、エア・ウォーターと中国電力が共同で、木質バイオマス・石炭混焼発電所の建設を計画中でして、2019年度からの運用開始を予定しております。
この発電所では、県が、環境影響評価方法書における知事意見で、石炭と混焼する県内産の木質バイオマスの比率を可能な限り引き上げるように述べた経緯もあって、県産森林バイオマスは、年間4万トン以上使用する計画になっています。2015年に発電のための燃料源となった県産森林バイオマスの県内合計量は、2万5千トンですので、防府の混焼発電所が本格稼働すれば、ここだけで現在の県内の森林バイオマス総使用量を大幅に上回る量の森林バイオマスが必要となります。従って、その森林バイオマスの安定的な供給確保が、大きな課題となることが予想されます。
森林バイオマスの必要量確保が困難になった時、考えられる対策は、未利用木材などの素材買取価格をアップすることであります。このことで、未利用木材の素材が必要量確保されたとしても、その影響で製材業が、建築用材として確保すべき素材の収集が困難になれば本末転倒ともいうべき事態で、それは林業全体の在り方として望ましいことではありません。
こうした問題の根本的な解決には、素材の生産供給体制の強化を図ることが重要であると考えます。ついては、このことにつきご所見をお伺いいたします。
次に、新たにバイオマス発電に取り組もうとする事業者への対応についてであります。
木質バイオマス発電は、大量の森林バイオマスを燃料源として使用することから、ひとつは森林素材の生産供給能力の面から、もう一つは将来を見据えての森林資源の保全育成の面から、自ずと木質バイオマス発電の、地域的な許容限度というものが想定されるものと思われます。
そこでお尋ねです。今後、県内において新たに固定価格買取制度を利用して木質バイオマス発電に取り組もうという意欲を持った事業者が出てきた場合、県に対し意見の聴取機会があると思いますが、どういう方針で対応されるのか、ご所見をお伺いいたします。
バイオマス発電についてのお尋ねの最後は、それを推進していく上での基本的な考え方についてであります。
私は、固定価格買取制度に基づくバイオマス発電については、その制度設計の考え方に問題があるのではないかと見ております。
バイオマス発電推進の意義としては、エネルギー政策の面からは、再生可能エネルギーによる発電割合を高め、CO2の排出削減に資するということがあります。バイオマス発電も、発電方式は、石炭や石油などを燃料源とする火力発電と同じなのですが、木質バイオマスを燃料源とした場合は、燃焼によりCO2が発生しても、それは元々大気中にあって光合成で樹木に吸収されたCO2が、大気中に放出され循環するのであって、地球全体のCO2濃度には影響を与えません。このことをカーボンニュートラルといいますが、木質バイオマス発電は、そのカーボンニュートラルの発電と見做されています。さらに、バイオマス発電により石炭などの化石燃料による火力発電が減れば、その分CO2排出の削減に寄与することになります。
バイオマス発電推進の意義を、産業面からいえば、これまで述べましたように林業振興に資するであろうということであります。
木材が有する価値を順番に述べますと、先ず、建築用材や様々な木製品の素材としての価値があります。次に、紙パルプなど木質製品などの原料としての価値があります。次に、燃焼による熱源としての価値があり、最後に燃焼による電源としての価値があります。
本来ならば、木材を燃焼させて発生した熱エネルギーを電気エネルギーに変えて利用しようとする木質バイオマス発電は、木材が有する価値のロスの度合いが大きく、木材利用としては最後に残るものと言えます。それを、林業振興という面からも大規模に進めようとするのは、我が国においては木材の絶対的な需要不足という現実があるからだと思われます。
2010年における我が国の森林の年間成長量は、74百万㎥と推算されています。一方、同年の我が国における国産材の需要は、20百万㎥を割り込んでいます。国産材の年間需要は、森林の年間成長量の3分の1以下だということであります。こうしたことから、バイオマス発電には、木材需要の新たな開拓という面もあり、未利用木材ということで、たとえ建築用材の素材となる木材が使用されても、森林資源全体からすれば影響は少なく、むしろそのことで林業が経済的に潤うことになればいいという考え方が、現行のバイオマス発電の制度設計にはあるように思われます。私が、問題だと思うのはその点です。
なぜなら、どんなに豊かな森林資源があっても、それを伐採して搬出する素材の生産供給能力が伴っていなければ、その考え方は、実際上、功を奏せず、既存の林業秩序を歪めてしまうことが懸念されるからです。
はっきりしていることは、基盤整備等により林業の生産性が向上し、林業としての地力があってこそ、バイオマス発電も可能になるということです。即ち、林業の発展があってバイオマス発電があり得るのであって、その逆ではない、冒頭紹介しましたように、バイオマス発電は、林業振興の魔法の杖ではないのであります。
本県では、現在のミツウロコ岩国発電所が、平成18年に全国初で専焼による木質バイオマス発電を始めており、全国に先駆けています。ついては今後、地域モデルとなるバイオマス発電の推進を、県に期待するものです
そこでお尋ねです。バイオマス発電は、製材業を含む林業の川上から川下までの全体的な発展振興の取り組みの中に位置付けて推進されるべきものと考えますが、ご所見をお伺いいたします。

回答◎知事(村岡嗣政君)

合志議員の御質問のうち、私からは、バイオマス発電推進の基本的な考え方についてのお尋ねにお答えします。
本県は、県土の七割を森林が占め、また、植林した森林が利用期を迎えています。この森林資源を有効に利用し、人口減少や高齢化等が深刻な課題となっている農山村地域において、林業の振興による雇用の創出や地域の経済の活性化を図ることは、極めて重要です。
このため、県としては、これまでも、木材利用の大宗を占める住宅や公共施設等における県産木材の利用を促進してきたところです。これとあわせ、さらなる需要の拡大と、間伐材や伐採残渣などの未利用資源を有効に活用するために、バイオマス発電で大量に利用するシステムを構築し、林業全体の付加価値を高め、森林所有者等の所得向上につなげていくこととしています。
私は、こうした基本的な方針のもと、施業の集約化、路網の整備、高性能林業機械の導入等による県産木材生産の低コスト化と生産量の増大を図るとともに、木材加工施設の整備への支援など製材業の体質強化や、森林バイオマスセンターの整備等による森林バイオマスの供給力の強化など、お示しの製材業を含む川上から川下までの全体的な取り組みを進めているところです。
なお、平成二十四年の固定価格買取制度の運用開始後、全国的な傾向として、燃料としての未利用木材の需要が拡大していることは承知をしていますが、本県における木材の供給量は十分に余力がありますとともに、建築用木材とバイオマス発電の燃料となる未利用木材の価格差は歴然としていることなどを踏まえれば、バイオマス発電燃料としての木材利用が、建材などの利用を圧迫するまでの事態は想定しがたいと考えています。
したがいまして、私は、チャレンジプランにおいて、林業の成長産業化に向けた挑戦を掲げているところであり、今後とも、関係団体等と密接に連携しながら、バイオマスを含めた木材需要の拡大と、森林資源の川上から川下までの総合的な取り組みを進め、林業の成長産業化と農山村地域の活性化を図ってまいります。
その他の御質問につきましては、関係参与員よりお答え申し上げます。

回答◎農林水産部長(河村邦彦君)
次に、バイオマス発電に関する三点のお尋ねです。
まず、未利用木材の素材価格についてです。
未利用木材の素材の売り渡し価格については、木材供給者と発電事業者の事業者間の自由な取引により形成されるものであり、一定の水準を県が示すことは適当でないと考えます。
次に、素材生産供給体制の強化についてです。
素材の供給体制については、今後の需給動向を見きわめながら、計画的な体制の整備を図ることが必要です。
このため、県下二十一カ所に、効率的な素材生産システムのモデルとなる森林整備加速化団地を設定し、路網の整備や高性能林業機械の導入を集中的に実施する取り組みを進めているところですが、今年度から、新たにクラウドシステム等ICTを活用した、需要に適切に対応できる供給システムとして県産原木流通システムを整備し、効率的な供給体制の構築にも取り組むこととしています。
また、バイオマス発電の燃料となる間伐材や伐採残渣などについては、森林バイオマスセンターを現在の三カ所から四カ所にふやすなど、その供給体制の強化も図ることとしており、全体として十分な供給体制が構築できると考えています。
次に、バイオマス発電に取り組む事業者への対応についてです。
平成二十四年の固定価格買取制度の運用開始後、全国的に多数の木質バイオマス発電所の建設が計画されていることから、国は平成二十七年七月から、未利用木材等を燃料として同制度の適用を受ける発電施設の事業者に対して、ヒアリングを実施しています。
このヒアリングでは、燃料となる未利用木材が安定的に供給されること等を確認し、その際、お示しのように、都道府県からも意見を求めるとされています。
今後、本県において、新たに未利用木材等を燃料とする発電所の建設が検討される場合は、当該発電所の立地圏域において供給可能な資源量や、稼働・計画中の発電所への影響を適切に評価して対応したいと考えています。

2016年6月29日

平成28年6月定例県議会【林業振興について】(2)林地台帳の整備について

2.林地台帳の整備について
お尋ねの第2点は、林地台帳の整備についてであります。
先月5月13日、国会において森林法の一部を改正する法案が可決成立し、市町村は平成30年度末までに林地台帳及びそれに付帯する地図を整備し公表することとなりました。
これまで山林の土地に関する情報は、法務局、地方公共団体、森林組合等がそれぞれの役割に応じて保有しているものの、地番、面積、境界などの情報が統一されていませんでした。それが、市町村が林地台帳を備えることで、統一的基準に基づき山林の土地情報が整備され公表されるようになります。このことで、森林整備に係る基礎的情報が統一され、共有可能になることの意義は、林業振興の上からも大きいものがあります。
ことに山林の地籍調査が進捗率44%と全国的に遅れていることに加えて、相続未了地等が増大していることから、森林整備を進めるため所有者や土地境界等を特定する作業に大きな時間とコストがかかっている現況を改め、また、そうした状況の更なる悪化を食い止める役割が、この度の林地台帳の制度創設には期待されています。
既に述べましたように、そうした林地台帳及び付帯する地図を整備するのは市町村の事務ですが、都道府県は、それを支援する役割を求められています。具体的には、地域森林計画対象林において都道府県が作成している森林簿や森林計画図と、法務局の登記情報等を用いて、都道府県は、登記情報等から計画対象民有林に係る所有者情報の抽出や地図の作成を行い、それを順次、市町村に林地台帳のベースとなるデータとして提供する役割が想定されています。
そこで、本県において県が市町に提供する林地台帳のデータベースを作成するにあたり、課題と思われることにつき、お伺いいたします。
その1は、森林簿の土地情報と登記簿の土地情報の照合と統一についてであります。本県では地籍調査が行なわれていない山林が4割ほどあり、そこにおいては山林の公図がないため、地番の位置や区画が特定できていません。そのため、県が所有する森林簿に記載されている地番や面積の土地情報と、法務局が所有する山林の登記情報が、符合しない場合が多々あり、このような土地情報の統一が、取り組むべき課題としてあると思われます。
そこで、お尋ねです。県は、林地台帳のデータベースを市町に提供するに当たり、県の森林簿と法務局の登記簿を照合して統一した土地情報にすることに取り組む必要があると考えますが、ご所見をお伺いいたします。
その2は、山林の境界情報の提供についてであります。土地の厳密かつ正確な境界の公的な確定は地籍調査を待つほかありませんが、その進捗は遅々たるものであることから、地籍調査が行なわれていない山林の境界の明確化をどう図っていくかが、林地台帳及び付帯する地図の整備において大きな課題です。
私たちが、林地台帳及び付帯する地図の作成において留意しておくべきことは、最初から完璧な情報であることを前提にしていない、ということであります。林地台帳制度の情報は、記載され、公表されることで、土地所有者など関係者からの修正の申し出等を受けることを通して、より精度の高いものにしていくことが意図されています。
従って、地籍調査が行なわれていない山林の境界に関して、県が市町に提供するデータは、森林計画図をベースにして境界明確化の参考になる資料や知見などを踏また上で、推定された境界情報であっていいと考えます。つきましては、このことにつきご所見をお伺いいたします。
その3は、林地台帳の整備に取り組む人と財源についてであります。
林地台帳を作成する市町においても、それを支援する県においても平成30年度末までに整備作業を終えるためには、相応のマンパワーの確保と財源措置が必要と考えますが、このことにつきご所見をお伺いいたします。

 

回答◎農林水産部長(河村邦彦君)

次に、林地台帳の整備についての数点のお尋ねです。
林地台帳については、都道府県が登記簿情報等から民有林に係る所有者情報の抽出や地図の作成を行い、市町村に林地台帳のベースとなるデータを提供するという国の案をもとに、現在、国と地方の協議の場において検討が行われているところです。
このことに関する県の対応について、まず、地籍調査が未了の山林で、県の森林簿と法務局の登記簿の土地情報が符合しない場合、県が照合・統一した土地情報にすべき、並びに、地籍調査が未了の山林における境界は、県が所有する森林計画図をベースにしたものでよいのではないかとのお尋ねです。
お示しの御意見は、林地台帳の整備を推進していく上で、意義のある内容と受けとめておりますが、地籍調査が未了の山林では、県による照合や統一した情報の作成は現実的には困難であることや、森林計画図をベースにすると、不明確な情報提供となるなどの課題があると考えています。
県としては、今後、本県の実情に応じた、適切な林地台帳の整備・運用が図られるよう、しっかりと国に働きかけてまいりたいと考えております。

2016年6月29日

平成28年6月定例県議会【林業振興について】(1)基盤整備について

林業振興について

我が国は、国土の7割が林野である森林大国であります。従って、その豊かな森林を資源として生かすことが出来れば、我が国は資源大国となります。森林の保全育成を適切に行いつつ、森林の資源としての価値を最大限生かすことが出来るようにしていくことは、我が国が、将来に向けて明るい展望を持つことを可能にするものであり、安倍政権が最重要政策課題として取り組んでいる地方創生を、実現していく道であります。
そういう思いから、私はこれまで幾度も森林整備や林業振興のことを議会で取り上げてきましたが、この度も今時点で課題と認識していることについて、3点ほどお伺いいたします。

1. 基盤整備について
先ず第一点は、林業の基盤整備についてであります。
先日私は、ある林業事業者を訪ねまして「林業振興のため、何が最も必要と思われますか。」とお聞きしましたところ、「基盤整備です。」との答えが返ってきました。
林業にとっての基盤整備とは、森林施業のための路網整備であります。路網は、林道、林業専用道、森林作業道の三つに大別できますが、森林施業のためにその三つが効率的につながる路網ネットワークの整備が重要であります。
当然、今日までそうした路網の整備は行なわれてきていますが、改めて今日そのことが求められる所以は、何なのでしょうか。二つのことが考えられます。一つは、林業の生産性向上を図るために、高性能林業機械等の導入を可能にする路網の整備が求められているということであります。
もう一つは、長期的、広域的な視点からの、効率的な森林施業のため路網整備の必要性であります。
そこでお尋ねです。林業振興の基盤となる路網の整備に、県は今後どういう方針、計画のもと取り組んでいかれるのかご所見をお伺いいたします。また、関連してのお尋ねですが、特に森林作業道の整備については、補助要件の緩和と手続きの簡素化を求める声が強くありますが、このことにつき併せご所見をお伺いいたします。

20160600

回答◎農林水産部長(河村邦彦君)
林業振興に関する数点のお尋ねにお答えします。
まず、基盤整備についてです。
人工林の多くが利用期を迎える中で、林業の生産性の向上や長期的視点に立った適切な森林整備を効率的に進めるためには、お示しのとおり、林道や森林作業道などの林内路網の整備を進め、ネットワーク化を図ることが重要です。
このため、県では、やまぐち農林水産業活力創出行動計画に、生産性の高い素材生産システムの構築に向けた路網の整備目標を掲げているところであり、将来の森林経営を見据えた林内路網の整備を計画的に推進することとしています。
特に、県下二十一カ所の森林整備加速化団地において、比較的安価に開設できる林業専用道や森林作業道の整備を重点的に推進し、路網の高密度化を図り、高性能林業機械を活用した木材生産の低コスト化を進めてまいります。
また、新たに策定した森林作業道作設指針に基づき、加速化団地の取り組みも踏まえながら、地形や傾斜に応じた効率的な作業システムを構築するとともに、その成果を県下各地に波及させ、路網ネットワークの拡大を図ってまいります。
次に、お尋ねの森林作業道は、木材を切り出すために不可欠な路網であり、地形等により開設経費が異なることから、全国一律の単価適用などの補助要件の緩和や、ふくそうする事業計画など事務手続の簡素化について、引き続き、国に要望してまいります。

2016年6月29日

平成28年2月定例県議会【大学と地域振興】(1)大学の知的資源を生かす仕組みづくりについて

大学と地域振興

­大学は今日、私立のみならず国立・公立大学を含め激しい競争の中にあります。その背景には、少子高齢化の進展により、将来的に学生数の減少が予想される中、大学の存続もしくは廃止を、国の判断ではなく、大学間の競争による自然淘汰のメカニズムに委ねるとの意図のもと、大学改革の施策が推進されているという現実があります。 本県では、国立山口大学が平成16年に、山口県立大学が平成18年に法人化されていますが、こうした国立・公立大学の法人化は、そのような方向での大学に関する制度改革の第一歩であったと言えます。 法人化が、大学経営にどう影響を及ぼしているかを山口大学において見ますと、特に顕著なのは大学運営のための交付金、即ち運営費交付金の減額で、法人化された平成16年から年々減額されており、平成27年までの11年間で、19億円の減となっております。 法人化により、大学は大学経営の自由度が増したことを生かして、大学運営の効率化を図り、外部資金の導入に務めるとともに、時代の社会的要請に応える大学としての機能の強化と特徴化に取り組むことが求められており、そういう意味での不断の自律的な改革の継続が要請されています。国立大学だからと言って安定的に大学運営費が交付され、大学の存続が保証される時代は終わったのであります。 国立大学の改革は、法人制度の「始動期」として平成16年度から21年度までの第1期中期目標期間、法人化の長所を生かして改革を本格化させる期間と位置づけられた平成22年度から27年度までの第2期中期目標期間を経て、平成28年度からは第3期中期目標期間に移行することになります。 文部科学省は昨年6月に、第3期中期目標期間における国立大学改革の方針を、「国立大学法人等の組織及び業務全般の見直しについて」という通知で示し、その中で、世界最高水準の教育研究の展開、全国的な教育研究の展開、地域活性化の中核的役割等の機能強化に向けて、各国立大学が自らの特色を明示し、重視する取り組みを明確にするよう求めています。 この通知は、「国立大学改革プラン」や中央教育審議会、科学技術・学術審議会における各種提言等を踏まえたものですが、私が注目するのは、これら国立大学改革についての文部科学省通知及び各種提言等のいずれもが、共通して「大学の地域貢献」を、重要な柱として位置づけていることであります。 私は、そうした地域貢献を重視する方向での大学改革の取り組みを、県も積極的に支援していくことが県勢振興に繋がるとの観点から、「大学と地域振興」ということで、3点お伺いいたします。

1.大学の知的資源を生かす仕組みづくりについて

大学の地域貢献と言えば、これまでも行なわれてきていることであります。現に医療の分野では、大学附属病院が、先進的且つ中核的な地域医療機関としての役割を担っていますし、産業振興では、産学官連携ということでの取り組みが推進されています。また、県や市町の各種委員会や諮問会議に、学識経験者ということで大学の先生がメンバーとなり、地域課題の解決に向けた政策形成に寄与しておられることは、ご案内の通りであります。また、本県の医療、教育、行政、産業等の様々な各分野で活躍する人材の育成という面で、大学は大きな役割を果たしてきています。
このように、これまでも大学は地域貢献の役割をしっかり果たしてきている。それなのに改めて地域貢献が、これからの大学の在り方の重要な柱になっていることの意味は、何なのでしょうか。
はっきりしていることは、地方の人口減、衰退に歯止めをかけ、地方再生を実現していくことは、今日の国家的課題であり、そのために大学も、その知的資源を生かして地域課題の解決に貢献していくことが、これまで以上に求められており、そのことが大学への評価にもなるということであります。
こうした趨勢の中で、山口大学は、大学が地域のシンクタンクとして機能していくために地方創生に関するワンストップ相談窓口となる「地域未来創生センター」を、更には山口県が抱える今日的課題の解決に資するために「山口学研究センター」を開設して、地域貢献への取り組みを強化する学内体制を整えました。また、山口県立大学は、特に平成18年の法人化以来、「地域貢献型大学」になることを目指しており、平成25年度には、「知の融合と異世代交流による地域活力の創生」と題する事業が、文部科学省が推進する地(知)の拠点整備事業に採択されています。
このように大学が、地域貢献という方向で機能強化を図っていることは歓迎すべきことですが、問題は、そうした取り組みが実効ある成果を生みだし、持続していくために必要な財源が確保されるか、ということであります。
山口大学では、運営費交付金が年々減額されている中で「地域未来創生センター」や「山口学研究センター」の活動のために、どれほど財源措置が可能なのかが気になります。一方、山口県立大学の場合は、地(知)の拠点整備事業の採択を受けたことにより、平成25年度から年3000万円前後の補助が予算措置されていますが、これも最大5年間ということで平成29年度には終了します。従って、その後も同様に、地域貢献の事業を継続していくことができるのかどうかが問題になります。
大学の地域貢献への取り組みは、国が大学改革の方向として地域貢献を重視する考えを示したことへの対応という面もありますが、私は、こうした動きを、県も積極的に支援することを通して地域課題題を解決する力を強め、県勢振興につなげていくべきだと考えます。
本県は、昨年2月に山口大学との間で、「地方創生に係る包括連携に関する協定」を締結していますが、これは、両者の連携・協力関係を、包括的、一般的に確認した内容のものでありますので、今後はそれを、より具体的に踏み込んだものにしていく必要があります。
以上申し上げましたことを踏まえてお尋ねいたします。私は、県下の大学の地域貢献への取り組みを、県勢振興の観点から評価して、財源措置も含めて県が支援する仕組みを構築すべきだと考えますが、ご所見をお伺いいたします。また、地域振興に係る寄附講座も前向きに検討されていいと思います。これまで、本県が設けた寄附講座は、山口大学医学部に地域医療に関する講座がありましたが、そのほかに本県の産業振興のために学術的な研究体制を強化することが望ましいと思われる課題について、県が寄附講座を設けて研究を委託するということが検討されていいと考えますが、併せご所見をお伺いいたします。

平成28年2月定例県議会【大学と地域振興】(2)大学生の県内就職推進について

(2)大学生の県内就職推進について

村岡知事は、今議会に提案されました平成28年度山口県予算案において、本県の人口減少に真正面から向き合い、このことへの対策に重点的に取り組む姿勢を明確にされました。産業戦略推進の強化、結婚・出産・子育て支援の充実、UJIターンの促進やCOCプラス事業における大学との連携などにおいて、様々なきめ細かな施策が予算措置されており、人口減少克服にかける知事の並々ならぬ決意がうかがえます。
私は、これらの施策の中で、知事が議案説明において、「県外への人口流出を食い止めるため、産学官の連携により、県内大学等が地元就職率の向上に取り組む『COCプラス事業』とも連携を図り、若者の県内就職を促進する」と述べられたCOCプラス事業に関連して、大学生の県内就職推進についてお伺いいたします。
COCプラスのCOCとは、センター・オブ・コミュニティの略称で、大学が地域コミュニティにおける地(知)の拠点として地域課題の解決に取り組む事業のことを指しています。そして、COCプラスは、そのCOCの活動に加えて、大学生が地元に就職、定着することを促進して、若年層の流出を防ぎ、地方再生に資していくことを目的とするもので、地(知)の拠点大学による地方創生推進事業と称されています。
このCOCプラス事業は、謂わば文部科学省による地方創生事業の一環ともいえるもので平成27年度から予算措置され推進されています。事業を中心的に担っているのは大学ですが、地元の自治体や経済団体、企業等との連携が不可欠です。本県では、大学関係は山口大学、山口県立大学、徳山大学等の大学・短期大学9校に高専3校の12教育機関が、自治体では県を含む13市6町の全地方公共団体が、経済団体では経営者協会や商工会議所連合会等の8団体が、そして県内主要企業の多くが、この事業へ協働機関として参加しています。
この事業の期間は、平成27年度から31年度までの5年間で、本県では、この5年間で、県内大学・高専の地元就職率の10%向上を目指します。具体的には、平成26年度県内大学・高専の、地元就職率は33.07%でありましたが、これを43.2%までアップすることを目標としています。
この事業を推進するに当たり、県内企業の調査を行って明らかになったのは、山口県は、年間売り上げが100億円を超す企業が80社あり、他県に比して魅力ある企業が数多くあるということであります。従って、そうした地元企業が求める人材を育成する教育プログラムを大学は充実実践し、そのことで育った学生が、地元企業の魅力を知り、そこへの就職を希望するようになり、地元企業もそれを積極的に採用していくという好循環が生まれていくことになれば、5年間で地元就職率10%アップというのは、高いハードルではありますが、達成可能のように思われます。
知事は、「大学や企業の取組みと連携し、県内企業での大学生インターンシップを総合的に推進する」とも議案説明で表明し、次年度は「魅力再発見!やまぐちインターンシップ応援事業」ということで約2000万円の予算措置をするなど、COCプラス事業において県に求められる役割については、ほぼ満額の予算措置をされました。COCプラス事業を中心的に担っている大学関係者にとっては、誠に心強い限りと思われます。
私は、こうしたCOCプラス事業への取り組みを評価し、それが所期の目的を達することを期待するものです。ただ、このことに関連して思うのは、県内大学生の地元就職を促進するとともに、県外大学生の県内就職を促していくことも併せ重要であって、その双方の取り組みにより、若い世代の県内定着を実現していくことが、有効な人口減少対策になるということであります。
そこで求められるのは、若い世代を受け入れる雇用の場を創出する産業政策であります。このことに県は、産業戦略部を設けてしっかり取り組まれているところでありますが、私はその取組の中に是非、世界を市場とする基幹産業を、新たに育成し形成していくことを、明確に位置付けるべきだと考えています。そのことが、裾野の広い雇用の場の創出につながると思うからです。
そこでお尋ねいたします。大学生の県内就職を推進していくためには、COCプラス事業と連携して県内大学生の地元就職率向上を図るとともに、県外大学生の県内就職の促進にも取り組むべきだと考えますが、ご所見をお伺いいたします。
また、大学生の県内就職を推進して、若い世代の県内定着を実現していくためには、若い世代を受け入れる雇用の場を創出する産業政策が重要であります。この産業政策について、新たな基幹産業を育成し形成していく取り組みも含め、ご所見をお伺いいたします。

平成28年2月定例県議会【大学と地域振興】(3)街なかキャンパスについて

(3)街なかキャンパスについて

今回の質問は、大学の地域貢献が主要テーマでありますが、実は大学は存在することそれ自体が地域貢献であります。大学の地域経済への貢献は大きなものがあるからです。従って、大学の地域貢献の第一は、魅力ある大学として存続し、発展していくことであります。
そういう観点から、現在進行している山口県立大学の移転計画は、見直しの必要があるのではないか。そして、その見直しの際は、「街なかキャンパス」の可能性を検討すべきではないか、というのが「街なかキャンパスについて」の質問趣旨です。
我が国は、2018年以降、18歳人口の減少期を迎えます。リクルート進学総研の試算では、その後、2025年までの8年間で、大学進学者は5万人減るであろうと予測しています。こうした将来予測の中、大学の生き残りをかけてのことと思われますが、1970年代頃に郊外へ移転した大学が、2000年代になると、次々と都心部へ回帰する動きを活発化させています。
最近では、青山学院大学が、神奈川県の相模原にあった文系学部全てを、2013年に渋谷の青山キャンパスに移転しました。
中央大学は、多摩キャンパスにある法学部など社会科学系3学部の都心回帰を図る考えを明らかにし、法学部は、2022年までに文京区の後楽園キャンパスに移すことを決定しました。他にも明治、同志社、立命館、東洋大など私立大学の都心回帰が相次いでいます。
このような大学の都心回帰は、今日の学生が、学ぶ環境の良さだけではなく、学生生活を楽しめる都会的要素のある立地環境の大学を志望するというトレンドに対応したものであると考えられます。そこには、少子化の進行により学生数が減少する中で、大学の存続を図っていくための経営判断があると思われますが、そうした大学経営についての考慮は、私立の大学だけではなく、法人化された国立や公立の大学においても同様に求められるものであります。
私は、そのような今日の学生のトレンドに対応した大学経営ということからすると、現在進行している山口県立大学の移転計画は、現計画のまま進めていいのか再検討する必要があると思う次第です。
山口県立大学は、これまでJR山口線の宮野駅近くで、山口市の中心市街地からはやや離れていますが、宮野地区の市街地とも云うべきところに立地していました。それが、移転計画が実現しますと、現在地から国道9号線を挟んで北側の山手に大学が立地することになります。宮野駅から現在よりも遠くなり、交通アクセスも悪くなりますし、周辺環境も寂しくなることが予想され、私は、この大学移転計画が、学生の目線からどれほど検討されたのか疑問に思います。
移転予定地には、既に平成8年に、新たに設置された看護学部の学科棟や講堂が建設され使用されていますし、栄養学科棟や学部共通棟は、平成28年度に建設が完了する予定ですので、これらを見直すことは出来ないとしても、移転工事未着手の国際文化学部や社会福祉学部の学部棟などについては、山口市の中心市街地や新山口駅周辺等に立地する街なかキャンパスの可能性が検討されていいのではないでしょうか。特に、大学の立地環境に学生が影響される度合いは、理系よりも文系の方が大きいようでありますので、私は、大学の将来を展望した場合、国際文化学部と社会福祉学部の街なかキャンパスは、真剣に検討されていいのではないかと思っています。
そこでお尋ねです。山口県立大学の移転計画は、街なかキャンパスの可能性も含めて再検討すべきであると考えますが、ご所見をお伺いいたします。

平成27年12月定例県議会【中小企業の経営支援について】(1) 制度融資の目的について

中小企業の経営支援について

我が国において、国たみを治める理想的な政治の在り方を示すものとして、仁徳天皇の「民のかまど」のお話があります。
古代日本、仁徳天皇の御世、天皇が難波高津宮(いまの大阪市内)という都の宮殿から庶民の町並みをご覧になると、夕食時なのに煙が上がっていない。そこで、「税が重すぎて、食事がろくにつくれないのだ。」と気づかれ、税を取ることを中止された。そのため、御自らの食事も粗末になり、宮殿の屋根の葺き替えも出来なくなり、雨漏りがするようになった。そして、やがてやっと、民のかまどから煙がいつも上がるようになるのをご覧になって初めて、税を元に戻され、御自らの食事も屋根の葺き替えも、次第に元通りにされたとの逸話は、政治の基本が、人々の暮らしを豊かにすることに在り、「民は歓喜(よろこび)楽しむ生活をしているかどうか」によって、政治の善し悪しを反省するという、我が国における政治の理想を端的に物語っているように思われます。
私は、この「民のかまど」のお話に思いをいたす中で、政治は何のためにあるのかということについて、一つの結論に達しました。「政治は家庭団欒のためにある。団欒の家庭が増える政治が良い政治である。」と。
今日の貨幣経済の世の中において、私たちは、貨幣即ちお金があれば、かって歴史上のどの王侯貴族も味わうことができなかった贅沢で、快適で、便利な生活を享受することができます。しかし、お金がなくなると、人としての尊厳を保って生きていくことすら困難な境遇に追い込まれてしまいます。その生きていく上において大事なお金を、多くの人たちは、企業で働いて給与という形で受け取っています。そして、その企業の99.9%が、本県においては中小企業であります。企業への就業人口の割合からみると、82%が、中小企業です。従って、県下の中小企業の経営を支援していくことは、常に、県民の暮らしを守ることに直結する重要な政策課題であります。そうした思いから、この度は、少しでも団欒の家庭が増えることを願いつつ、「中小企業の経営支援」についてということで質問いたします。
では、3点程お伺いいたします。

(1) 制度融資の目的について
県が、中小企業の経営支援のために行なう施策の重要な柱の一つは、制度融資であります。ここ10年程の制度融資の実績を見てわかることは、リーマンショックが、本県経済にも大きなマイナス影響を与えたということであります。そして、それを乗り切るために資金供給という面において、制度融資がしっかり機能し、県下の多くの中小企業を支えたことが窺えます。
特に経営安定資金は、リーマンショックが起きた平成20年度には、件数は486件で約98億円が、翌21年度には、1408件で約275億円が、平成22年度には、1745件で約309億円が融資されています。また、関連することと思われますが、信用保証協会が、金融機関に対して融資資金の返済を保証していて、その返済が不能となった分を代位弁済した額が過去最高の約112億円になったのも、リーマンショックが起きた平成20年でした。
制度融資の目的は、中小企業を育てる、支える、伸ばすの三つあると考えられますが、これまでの実績からして、支えると云う目的は充分果たして来ているように思われます。ただ、育てると伸ばすの目的で創設された制度融資の資金は、その利活用が今一歩の感があります。
資金需要がないところに融資を押し付ける必要はありませんが、私は、制度融資資金が、中小企業を育てるということでは創業や起業などの支援において、また中小企業の事業を伸ばすということでは新規事業展開や海外進出などの支援において、しっかり利活用され、本県の産業経済の発展に資するようになることを期待するものです。
ただ、そのためには単に資金を設けたと云うだけではなく、融資要件のさらなる改善を図りつつ、制度融資の窓口となる銀行等の金融機関や、制度融資を保証する信用保証協会と、積極的な対応を促す意味で、連携を一層緊密にしていくことも必要と思われます。
そこで、以上申し上げましたことを踏まえお尋ねいたします。県は、中小企業制度融資の目的と今後の在り方につき、どのように考えておられるのか、ご所見をお伺いいたします。

【回答】◎知事(村岡嗣政君)
合志議員の中小企業の経営支援に関する数点の御質問のうち、私からは、制度融資の目的についてのお尋ねにお答えします。
本県経済の持続的・自立的な発展を図っていくためには、中小企業が、その機動性や創造性を生かした意欲的な事業活動を展開をするとともに、経済環境の変化に対応して、経営体質を改善し、経営の安定・強化を図ることが重要です。
このため、県としては、制度融資を中小企業支援施策の大きな柱に位置づけ、民間金融機関等の補完的役割を担うものとして、低利・長期の資金を供給することにより、中小企業の金融の円滑化を図ることを目的に実施してきたところです。
こうした目的のもと、中小企業の創業や成長に必要な資金需要に対応するため、最優遇金利を設定した創業応援資金や、海外展開を目指す企業を支援する資金などを、今年度、新たに創設し、創業応援県やまぐちの実現など、チャレンジプランに掲げる施策に対応する金融支援の強化に努めています。引き続き、創業・新事業展開の支援や経営基盤の強化に資する資金の充実により、中小企業力の発展・強化を図ってまいります。
また、お示しの世界的な金融危機における景気後退や、円高などの影響を受けた中小企業に対して、これまでも、セーフティネット資金である経営安定資金等の融資枠や融資対象の拡充などにより、県内景気を下支えしてきたところであり、今後とも、セーフティネット資金等の融資枠の確保により、中小企業の経営の安定を図ってまいります。
県としましては、中小企業を取り巻く経営環境の変化や企業ニーズを的確に捉え、中小企業にとって、より利用しやすい制度となるよう、その見直しや融資枠の確保等に努めるとともに、金融機関や信用保証協会、商工会議所など中小企業支援機関との緊密な連携のもと、本県産業力の源泉である中小企業の持続的発展や成長に向けた金融支援に積極的に取り組んでまいります。
その他の御質問につきましては、関係参与員よりお答え申し上げます。

平成27年12月定例県議会【中小企業の経営支援について】(2)再生支援について

(2)再生支援について

県の制度融資は銀行等の金融機関を通して行われますが、原則として信用保証協会の保証が必要です。具体的には、本県の制度融資資金は21ありますが、そのうち17資金はすべて信用保証協会の保証が必要ですが、残りの4資金は、必要に応じて保証付となっています。従って、その融資を受けた事業者は、大方が金融機関に返済する元利金に加えて信用保証料を支払うことになります。この保証料は、原則として融資を受ける時に全額一括して支払うことになっています
ところがその後、企業経営が苦しくなり、元利の返済を当初の計画通り行なうことが、困難になることがあります。そうした場合、元金を据え置いて利息のみ当面返済するなどの返済条件の変更を、金融機関に求めることになります。それが認められれば、その企業は、当座の資金ショートを免れて助かることになりますが、そうした条件変更は、返済期限の延長を伴うことから、新たな信用保証料が生じ、追加の支払いが求められることになります。
私は、こうした返済の条件変更に伴う新たな追加の信用保証料については、軽減ないし免除の措置が取られると、助かる中小企業が数多くあるのではないかと見ております。
私が知っているある建設業関連の会社の経営者は、自分の給料は8万円にしたと語っていました。団塊の世代で年金がもらえるようになったので、それと併せてどうにかやっている。好きだったゴルフや飲み会も、年間ほんの数回にした。職員の給与もぎりぎり抑えて、会社の利益は、出来るだけ借金の返済に当てるようにしているとのことでした。
その社長にとって、減免があればと思うのは、新たに生じた信用保証料の追加支払いのことでした。ここ3年間で、90万円程支払っているようで、出来ればその分を、職員の処遇改善や借金の返済に充てることができればとの思いが湧いてくるようです。
順調だった会社経営が苦しくなったのは、先ず公共事業が半減したことの影響がありました。それでも頑張って来たのですが、リーマンショックによる景気減速の中で、ついに返済の条件変更を余儀なくされ、信用保証料の追加支払いが求められることになった次第であります。
この経営者と同様の境遇にあって、同じ思いを持ちながら事業再生に向けて苦闘している中小企業の経営者は、県下にも数多くおられるのではないでしょうか。
そこでお尋ねです。事業再生に向けて頑張っている県下の中小企業への有効な経営支援策の一つとして、私は、個々の事業者の経営努力では避けられない不可抗力的な経営環境の変化のために返済の条件変更を余儀なくされた中小企業に対しては、そのことに伴って生じる信用保証料を軽減ないし免除出来るよう、県は必要な措置を講ずることを検討すべきだと考えますが、ご所見をお伺いいたします。

【回答】◎商工労働部長(阿野徹生君)

中小企業の経営支援についての二点のお尋ねにお答えします。
まず、再生支援についてです。
制度融資においては、中小企業が民間金融機関から十分な融資を受けることが困難な場合に、信用保証協会が債務保証することにより、その信用力や担保力を補完し、金融の円滑化を図っています。
さらに、融資を受けた中小企業に対しては、経営基盤の強化を図ることを目的として、信用保証料の軽減措置を講じているところです。
お示しのように、返済期限の延長などの条件変更により、追加の保証料負担が生じた場合においても、追加負担に対して、当初の条件と同様の軽減措置を講じていること、また、追加の保証料にさらなる軽減・免除措置を行った場合は、条件変更の有無によって保証料負担の公平性を損なうおそれがあることなどにより、当初の軽減措置をさらに上回る軽減については困難であると考えております。