平成24年11月定例県議会【産業政策】(3)林業再生への取り組みについて

(3)林業再生への取り組みについて

産業政策についての質問の第三は、林業再生への取り組みについてであります。
先月11月13日、NHKクローズアップ現代で放送された「眠れる日本の宝の山―林業再生への挑戦」は、大変示唆の富む内容の番組でした。
見られた方もあると思いますが、私なりに我が国の林業を考える上において大事なポイントと感じたところを、先ず紹介したいと思います。

政府肝いりの林業再生プランが施行されたが、この国を挙げた取り組みが逆にせっかく切り出した木材の価格暴落を引き起こした。消費者側のニーズを把握しないまま、供給側の事情で生産を拡大した故の悲劇だった。
戦後の一斉植林が収穫期を迎え、産業として自立できるかの正念場を迎えている日本林業。潜在市場規模は数十兆円とも言われながら、外材に後れをとってきた。
今回明らかになった課題は、川上から川下まで情報を繋ぐ「コネクター」不足と体制の不備。
林業を基幹産業に生まれ変わらせんことに成功したヨーロッパ。
ITで新たな需要を掘り起こし、自動車産業に匹敵する雇用の創出を実現しています。
国の再生プランがモデルの1つに掲げたのがドイツの林業です。
森林面積は日本の半分ながら木材生産量は3倍。
この10年で林業を経済をけん引する先端産業に生まれ変わらせてきました。
そのキーマンともいえる存在が森林官と呼ばれる専門家です。
政府の認定を受け、一定面積の森ごとに全国に配置されています。
(森林官が)手に持つのはIT端末
木材1本1本の長さや太さ品質など、すべての情報をその場で打ち込んでいきます。
このデーターをもとにインターネットで各地の製材業者らと随時、入札などを行うなど、木材取り引き全般を大幅にスピードアップしました。
森林官 ゲオルグ・シューマンさん
「木材の需要を把握し、それに応じた伐採、生産を進めるのが私たち森林官の仕事です。」
木材は生産地の近くにある製材所に最短経路で運び込まれます。製材加工の現場は徹底的な自動化と規格化を進めています。
これで品質の向上とコストの低減を同時に達成。
分刻みのスケジュールで木材が到着するラインは先端工業並みの精密さです。
ドイツでは、木材の伐採から製材所などの第1次加工、さらにそれを利用するハウスメーカーや家具メーカー、バイオマス企業など木材に関わるあるゆる事業者が地域の中に複合しています。

国産材生産の現場では技術や設備への投資が後手に回り、輸入される外材に比べて、乾燥や加工の精度にばらつきがあります。

梶山恵司(富士通総研 上席主任研究員)コメント
(ドイツの林業のように)システムがきちんとできて、マーケティングができるということは、その前提として、要するに木材を伐採して出す林業用の道が整備されているということが大事です。
地産地消、林業はおのずからできるはずなんです。
丸太というのは重くてかさばるわけですから、できるだけ地域で加工するというのが鉄則です。
ヨーロッパの場合ですと、大体半径50キロ圏内が製材工場の立地となります。

岡山県西粟倉村 森の学校 代表取締役 牧大介
総面積の95%を森林が占める山あいの村
牧さんが目指したのは生産から1次加工、2次加工そして販売まで一貫して村で手がける総合的な木材産業でした。
牧さんは、最大の問題は村の木材生産が買い手の望む品質レベルを実現できていないことだと考えました。
牧さんは水分を抜く乾燥機や精度の高い工作機械を国の再生プランにもとづく助成などを利用し、はじめて村に導入しました。
さらに重要なのはニーズの把握です。
牧さんたちは市場を知るため販路の開拓をみずから行なうようにしました。
牧さんから伝えられた市場ニーズをもとに適切な木を計画的に伐採。
無駄な切り捨てや売れ残りを出すこともなくなり今年、生産量3割のアップを実現しました。

梶山研究員コメント
今、日本全国でこういう取り組みが始まっておりまして、具体的な事例も出てきているんですが、まだ点なんです。
これを面レベルにしていかなければなりませんし、できれば県単位でこういうふうにして行きたいというのが、今の基本的な構想です。
戦後、苦労して植えた木が、今ようやく本格的に利用できる段階になっています。でも、今手をつけなければ、これは将来的にはごみになってしまいます。
宝の山にするか、それともむだにしてしまうか、今、その瀬戸際です。
これをきちんと将来につなげることができれば、本当に地域は再生していくことができるということです。
今、その瀬戸際にいるということを、われわれは認識しなければならないです。

以上、少し長くなりましたが番組内容を紹介致しましたのは、山本知事に是非、山口県の林業を基幹産業にする取り組みに挑戦していただきたいとの思いからでして、この番組がその可能性や取り組むべき方向、課題を明確に示していると見たからです。
山本知事は本県産業の再生と強化に取り組もうとしておられるわけですが、産業再生のターゲットとすべきは林業ではないでしょうか。
そして、このことにはしっかり腰を据えて取り組んでいただきたいと考えます。先ほど、私は産業戦略本部の役割は、先ず実践だと申し上げましたが、林業再生への取り組みについては県域全体としてのシステム改革、構造改革が必要と思われますことから、産学公連携のプロジェクトチームを設けて、数年かかってもいいからドイツ等国内外の林業先進地視察等も行い、国の政策との整合性も図りながら本県の実情も踏まえて議論と検討を行い、本県林業を基幹産業にするためのしっかりしたプラン作成に取り組むことを提案するものです。
先ほど紹介したことですが、ドイツは10年かけて林業を経済をけん引する先端産業に生まれ変わらせました。
林業再生には、それくらいの時間はいるものと思われます。よって、本県の林業再生プランも、それくらいのスパンで構想されていいと考えます。
林業を基幹産業、先端産業に生まれ変わらせる取り組みは、日本全国の各地域に希望と光明を与えるものであり、かって内閣官房で地域活性化統合事務局長をしておられた山本知事に、是非このテーマに取り組んでいただきたいと期待するものであります。
つきましては、産業政策として林業再生にはどう取り組まれるお考えなのか、ご所見をお伺いいたします。

【回答】◎農林水産部長(北野常盤君)
林業再生についてのお尋ねにお答えします。
県土の七割を占める森林は、本県の豊かで貴重な財産であり、お示しのように、これらを有効に活用するためには、林業の再生が重要であると考えています。
このため、九月定例会において、味な都・やまぐちを核とする農林水産業再生に向けた検討方向をお示しし、幅広く意見をお聞きした上で、「産業戦略本部」において、その内容を明らかにすることとしたところです。
林業再生の方向としましては、まず、優良県産木材や加工品をやまぐちブランドとして育成するとともに、民間分野や公共分野での県産木材の利用拡大など、市町、工務店、素材生産業者などと協働して、安定した需要を確保してまいります。
また、需要に即した県産木材の生産拡大を図るため、専門的な技能者を有し、新規就業者の受け皿ともなる森林組合など林業認定事業体を育成するとともに、林内路網の整備、高性能林業機械の導入などによる搬出間伐の推進や、再生可能エネルギーとしても重要な森林バイオマスの利用拡大に努めてまいります。
県としましては、こうした木材の生産から、加工、利用までの連携した施策を一層強化し、市町、関係団体などと一体となって、産業政策として重要な本県林業の再生に取り組んでまいります。

2012年11月30日

平成24年11月定例県議会【産業政策】(4)観光力強化について

(4)観光力強化について

産業政策についての質問の第4は、観光力の強化についてであります。
先月11月12日の記者会見で、山本知事は「輝く、夢あふれる山口県」の実現に向け、「『5つの全力』関連要望」として、「産業力・観光力の増強」「人財力の育成」「安心・安全力の確保」「県民くらし満足度向上」に関する15項目を国に要望したことを発表されました。その中で最重要課題と形容詞をつけて「産業力・観光力の増強」を挙げておられます。
観光は、広い意味で産業の中に含めていいと思われるものを、敢えて「産業力・観光力の増強」と表現しておられるところに、山本知事が、特に観光に力を入れて取り組もうとしておられることが伝わってまいります。

さて、日本では、明治維新以降、産業を興して国を富ますことを最優先とし、国を挙げてさまざまな工業を興し「産業力」を高め豊かな国を実現してきました。その際、「産業力」を高める施策の実施や検討のために、国や地方自治体・経済団体の統計データが長年にわたり整備蓄積されてきていることはご案内の通りであります。そして、そうした「産業力」を数値化した統計資料は、多くの国民の納得のいく精度の高い政策の実現に役立てられてきましたし、国だけでなく、山口県の産業政策についても、いろいろな角度から議論し検討することを可能にしています。

ところが、「観光力」はいかがでしょうか。
何をもって、観光の「力」とされているのでしょうか。

平成15年2003年小泉内閣が観光立国への取り組みを重要政策と掲げ、外国人観光客数を2010年までに1000万人に増やす目標が掲げられたことは記憶に新しいところです。そして、平成18年2006年に、昭和38年に制定された旧「観光基本法」の全部を改正し、「観光立国推進基本法」が国会の全員一致で採択され、平成19年2007年1月1日に施行されました。それを受けて、平成20年2008年10月1日に国の観光庁が設置されました。
観光庁設置の大きな目的について、ホームページに掲げてあります。
「観光は、わが国の経済、人々の雇用、地域の活性化に大きな影響を及ぼすものであり、21世紀のリーディング産業となるものです。中でも訪日外国人旅行者の増加は、国際相互理解の増進のほか、我が国における旅行消費の拡大、関連産業の振興や雇用の拡大による地域の活性化といった大きな経済効果をもたらすものです。したがって、自然環境、歴史、文化等観光資源を創造し、再発見し、整備し、これを内外に発信することによって、我が国が観光立国を目指していくことが重要となっています」
ここに示されている「観光を21世紀のリーディング産業にしていく」という観光庁設置の目的は、観光が持つ多様で大きな可能性に着目したもので、成熟した日本の経済社会の将来を展望する時、望ましい方向と思われます。私は、そういう意味で、山本知事の「観光力」増強の取り組みに、大いに共感するものであります。

そこで大事と思われるのが、その観光の「力」をどのように数値化して表現するか、納得のいく数値で県民に示すかということではないでしょうか。提示される観光の「力」を示す数値をもって、他の観光地との比較や経年での変化をとらえ、検討してこそ、有効な観光政策が実現できると考えます。

山口県では、前知事のもとで平成21年2009年10月から推進している「山口県年間観光客数3千万人構想実現アクションプラン」があります。成果については、報告書等で示されている通りです。
しかし、そこで扱われているいくつかの数値、観光客の動向に関する数値の意味と実態には、客観的な評価の観点から疑問が持たれています。包括的な体系が構築されていない、基準が統一化されていないため地域間比較が不可能で、標本数が少なく分析に必要な精度が確保できないなど、いくつかの問題点があるからです。

観光庁においては、観光地の開発や活性化、外国人観光客誘致のプロモーションが活発に行なわれています。しかし、その一方で、政策の基本となる観光統計の整備も実施しています。観光庁設置後、承認統計として「宿泊旅行統計調査」と「旅行・観光消費動向調査」が実施されています。

そこでお尋ねです。今後、山口県が観光力の増強を実現するためには、観光に関する客観的で有効な統計数値の把握が重要であり、これを効果的に活用し、より実態に則した政策が立案・実行・検証され、より質の高い観光政策の実現と各地域における魅力ある観光地づくりが推進される必要があると考えますが、ご所見をお伺いいたします。

【回答】◎地域振興部長(渡邉繁樹君)
観光力強化についてお答えします。
観光政策の推進に当たっては、お示しのとおり、客観的で信頼性の高い統計データをもとに、的確に実態を把握し、マーケティングや観光戦略の企画・立案を効果的に進めていくことが重要です。
このため、本県においては、昭和四十四年から、市町の協力を得て、県内の観光地や宿泊施設を対象とした観光客動態調査を実施しており、その調査結果や、国が平成十九年以降順次整備をしてきた宿泊旅行統計などのデータも活用しながら、県内への観光客・宿泊客の実態把握や施策の検証等を行ってまいりました。
しかし、こうした国や県の観光統計については、それぞれ調査項目や方法などが異なっているほか、県の調査については、県独自のものであり、全国的な比較が難しいこと、また、国の調査については、市町ごとの実態や出発地別の分析が困難などの課題を抱えております。
このため、今後、年間宿泊観光客四百万人の実現に向けた戦略の検討に当たり、県の観光客動態調査について、市町ごとの調査方法の標準化を図るなど、その精度の向上を図りつつ、国の統計数値との関連を整理し、的確でわかりやすい統計となるよう改善を行いたいと考えております。
その上で、実態に即した目標の設定や、効果的な誘客対策、観光地の魅力向上など、各地域との連携による、より戦略的な観光政策の企画・立案を行い、観光力の強化を図ってまいります。

2012年11月30日

平成24年9月定例県議会(1)岩国基地問題について

(1)岩国基地問題について

岩国基地が県民の理解と支持のもと、我が国の安全とアジア地域の平和のために、必要な機能を確保し安定的に運用されるようにしていくことは、山口県政が果たすべき大事な役割であります。
そのためには基地問題への県の対応が、根拠のないイメージ的な不安に基づく世論に同調するものであってはならないと考えます。
そうした観点から、この度は「岩国基地問題について」ということで、このことに関し政策判断する上で考慮すべき数点につき、私の考えを申し上げ、県の所見をお伺いいたします。

(1)日米同盟について
日本とアメリカは、国の基本的な在り様が対照的な国です。日本は国の成り立ちが神話にまでさかのぼる自然国家ですが、アメリカは、1776年7月4日、独立宣言の日が建国の日とされる人造国家であります。
文化、文明の面では、アメリカは西洋・欧米圏に属し、江戸期までの日本は東洋・アジア圏に属していました。
国旗も、日本は日の丸で朝昇る太陽を表し、アメリカは星条旗で夜の星になっているのも対照的です。
この対照的な二つの国が真正面から衝突したのが先の大戦でした。昭和天皇は、訪米された時の御挨拶で「私の深く悲しみとするあの不幸な戦争」と申されましたが、まさしく日本民族にとって悲劇の戦いでした。
しかし戦後、日本とアメリカは一転、お互いに戦った悲劇の歴史を乗り越えて、良好な同盟関係を築き上げてきました。そこに、私は21世紀の地球社会の希望を見るものであります。
いろいろな意味で対照的な国であり、且つ世界の大国である日本とアメリカが、相提携し補完し合って同盟国としての関係を深めていくことが、世界の平和の基礎になると思うからです。
違いが多いアメリカではなく、同じアジア同士である中国との関係を強めてアメリカに対抗していこうという方向は、新たにアジアと欧米の対立の構図を生みだすのみで、世界の平和に資することにはならないと考えます。
以上申し上げましたことから訴えたいことは、日米双方共に政治に携わる者は、国政のみならず地方政治家も含め、日米同盟関係をより良いものにしていくために努力していくことが、重要な責務として求められているということであります。
そこで第一のお尋ねです。知事は、日米同盟の意義をどう認識しておられるのか、ご所見をお伺いいたします。

(2)日中関係について
次は、日中関係についてであります。アジアの隣国であり、歴史的にも文化的にもつながりの深い中国との善隣友好関係を大事にしていくことは当然のことであります。ただ、「備えあれば憂いなし」を期して、中国とは付き合っていくことが肝要であると考えます。
中国共産党政権によるチベット併合は百万人を超える人々が犠牲になったと見られており、第二次世界大戦後の世界で起きた最大の悲劇のひとつです。その悲劇の経緯を事実に即してたどっていくとき、そういう事態を招いた要因が、チベット自身にもあることが分かってまいります。
チベットにおいてチベット仏教の法王と世俗的な国王を兼ねる地位がダライ・ラマであります。現在のダライ・ラマは14世ですが、その前のダライ・ラマ13世の時代1920年代に、チベットは軍隊の近代化に取り組み軍事力の強化を図ろうとしました。ところが、この動きに仏教界は、「世俗の軍隊を強化するとはとんでもない。非暴力を旨とする仏教の原理とは相いれない。」と主張して猛然と反対します。こうした仏教界の反対は、その実、新軍隊の維持費のために仏教僧院にも課税されることを嫌ったためだと見られておりますが、ダライ・ラマ13世は、度重なる僧院の反対圧力に嫌気がさしてしまい、それまで進めてきた軍の近代化を断念してしまいます。
この結果、中共軍のチベットへの侵入が始まった1949年当時のチベットの軍隊の兵力は、兵員は将校と兵士合わせて8500名、各種大砲50門、曲射砲250門、機関銃200挺といった状態で、中国の武力併合を阻止する力は無きに等しい有様でした。
中共軍の侵略がはじまった当初、チベット政府は、イギリス・アメリカ・インド等に、中国に対しチベットへの侵略の中止を勧告するよう要請しますが断られてしまいます。また、国連に訴えますが、国連総会はチベット問題を審議に取り上げませんでした。
その時の心境をダライ・ラマ14世は、自叙伝「チベットわが祖国」に、次のように記しています。
「私たちに対する悲しむべき打撃は、国連総会がチベット問題を考慮、審議しないという決定をしたニュースであった。この知らせは私たちを仰天させた。私たちは、正義の根源として国際連合を信頼していた。」
「今や、私たちの友人たちは、正義のための嘆願提出に、私たちを助けようとさえしなかった。中国軍の大軍の中に、私たちは見捨てられたと感じた。」
平和憲法と称される我が国の現憲法の前文には、「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した。」との文言がありますが、そのような決意に国の運命を託することができないことは、チベットがたどった悲劇が如実に物語っています。
将来、アメリカの力が相対的に弱まり、日米同盟が脆弱化して力の空白が生じた場合、海軍も含め強大化された中国の軍事力の鉾先が、「日本解放」の名のもと日本に向けられ、チベットの悲劇が我が国で繰り返されないとも限りません。
そういう事態を招かないためには、力の空白を生じさせない不断の備えが大事であり、日米同盟はその基盤となるものであります。
徒に、中国を敵視、危険視することはあってはなりませんが、建設的な日中関係も日米同盟がしっかりしていて力の空白を生じさせない備えの上に成り立つものであることを強調しておきたいと思います。
以上、日中関係については通告していましたが、私の考えを述べるにとどめまして、

(3)在日米軍基地について
私たちは、我が国に外国の軍隊米軍がいる、そのための米軍基地があるということをどう受け止めるべきなのでしょうか。
在日米軍基地の存在そのものを問題視して撤退を求める主張があります。
一つは、在日米軍を占領軍の延長と見る見方から。
もう一つは、米軍基地を、アメリカの帝国主義的世界侵略の軍事拠点とみなす見方から。
私は、こうした見方はいずれも現実に即していないと見ております。
在日米軍基地は、ご案内のように安保条約第6条「日本国の安全に寄与し、並びに極東における国際の平和及び安全の維持に寄与するため、アメリカ合衆国は、その陸軍、空軍及び海軍が日本国において施設及び区域を使用することを許される。」との規定に基づく施設でありますが、同条約はさらに第10条の後段において「この条約が十年間効力を存続した後は、いずれの締約国も、他方の締約国に対しこの条約を終了させる意思を通告することができ、その場合には、この条約は、そのような通告が行なわれた後一年で終了する。」と規定しております。
現在の安保条約は、昭和35年に改定されたものでありますので、それから十年を経過した昭和45年以降は、日本がアメリカに安保条約の終了を通告すれば、一年以内に在日米軍は撤退しなければならない定めになっているのです。
しかし、それから40年以上経過しておりますが、その間一度も「安保条約の終了を通告しよう。」との声は、我が国で挙がったことはありません。
日本国民の大多数は、安保条約が我が国の安全のために必要と認めている訳でして、そのことに基づいて駐留する在日米軍を占領軍の延長の如く見る見方は、妥当でないと思う次第です。
また在日米軍基地を、アメリカ帝国主義の侵略拠点とする見方は、反米の立場からのひとつのイデオロギー的な解釈であって、私はこれに同調することはできません。
今日、世界の国々の中で卓絶した経済力と軍事力をもつアメリカは、アメリカ自身及びアメリカを中心とする世界的秩序への脅威に対して、世界の何処であろうとも即応対処できる能力を軍事的に維持するとの方針のもと、世界的規模で米軍再編を進めており、その中で在日米軍基地は、一層その重要度を増す方向にあります。
このことを、アメリカの侵略意思とみなすか、平和への意思とみなすかは観点の違いであります。ただ、平和的秩序を最終的に担保する軍事力が、国連の下に置かれるようになるまでの間は、世界各地に在外基地をもち全世界規模で対応能力をもつ米軍の軍事力を世界の平和をあらしめる力として行く方向が、現実的な次善の策であると考えます。
岩国基地を含む在日米軍基地は、そういう方向の中において、特に我が国を含むアジア・太平洋地域の平和と安全のために重要な位置を占めております。
そこでお尋ねです。知事は、岩国基地を含む在日米軍基地の存在をどのようにお考えなのかお伺いいたします。

(4)基地機能の強化について
岩国基地が沖合移設されるにあたって、県は岩国市とともに国に対して「基地機能の拡大強化にならないようにされたい。」と要請されています。
この要請内容が、文字通り適用されるとしたら、おかしなことになります。我が国を取り巻く軍事環境の変化に応じて、岩国基地の基地機能の強化を図ることができないからです。
北朝鮮の核開発や弾道ミサイルの増強は、我が国の安全への深刻な脅威になっています。また、中国では、国防費が速いペースで増大しており、公表されている分だけでも過去5年間で2倍に、過去24年間では30倍の規模になっていて、軍事力の増強、兵備の高性能化が、国の重要課題として強力に推進されています。
こうした事態に対応して、抑止力としての軍事機能の強化を図ることは当然考慮されるべきことであって、その一環としての岩国基地機能の強化は、この要請によって排除されてはならないと私は考えます。
このことに関して本県がとってきた対応は、まことに賢明でした。防衛は国の専管事項であるとして基地の軍事機能の領域には直接コミットせず、「基地機能の強化」については、基地機能の変化により航空機騒音や安全性等の面で、基地周辺住民の生活環境が現状より悪化する状態が生ずるかどうかを判断基準にしてきました。
要約すれば、「基地周辺住民の生活環境を、現状より悪化させる基地機能の強化は、容認できない。」ということで、これが本県の岩国基地問題に対する基本的な対応方針でした。
私は、この対応方針については理解し、支持するものであります。
そこでお尋ねです。「基地機能の強化」についての判断基準は、これまでの考え方を踏襲するのか、ご所見をお伺いいたします。

(5)オスプレイについてであります。
オスプレイは、アメリカ国防省が25年もの長い歳月と莫大な経費を投じて開発したヘリと固定翼機を兼ねる輸送用軍用機であります。海兵隊用のMV-22,空軍特殊作戦用のCV-22、海軍向けのHV-22の三種類があり、沖縄普天間基地に配備されようとしているのは、海兵隊用MV-22オスプレイであります。
MV-22オスプレイは、普天間基地に現在配備されている輸送用ヘリCH-46の後継機として配備される予定ですが、これと比較して最大速度は2倍、搭載能力は3倍、行動半径は4倍となります。こうしたオスプレイの優れた機能は、緊急時における海兵隊の機動展開・即応力を大幅に向上させるもので、在日米軍の抑止力の強化に資すると見られています。
ただ、このオスプレイの配備には、試作機段階から事故が相次いだことがあり、関係自治体ではこれを危険視して強く反対する声があります。しかし、我が国は、このオスプレイの配備を拒否することはできません。オスプレイの配備は、安保条約に基づく在日米軍基地の部隊装備に関する機種変更であり、日本政府の了解を必要とする事項ではないからです。
運用上の安全確保については日米合同委員会で協議されましたが、ここでの合意事項を米軍が順守する限りにおいては、訓練飛行も含めその運用を我が国は受け入れざるを得ません。
配備が予定されているのは沖縄の普天間基地ですが、その本格配備前に準備飛行目的で岩国基地に、7月23日、オスプレイ12機が陸揚げされました。
山口県議会は、6月定例議会で、モロッコでの墜落事故の原因究明や安全性の再確認、配備先関係自治体の理解などの条件整備を行う前の先行搬入は認められないとする意見書を決議しましたが、効を奏しませんでした。
日本政府は、岩国基地に搬入されても安全性が確認されるまでは訓練飛行も含め一切我が国でのオスプレイの飛行はないとしていましたが、9月19日、墜落事故は、「人的要因が大きく、機体自体に問題はない。」とした防衛省の事故原因調査報告書と日米合同委員会での運用上の安全確保についての合意を受けて、「オスプレイについて、国内運用の安全性が十分確認された。」として運用開始を認める方針を表明しました。
オスプレイが先行搬入され、本格配備前の準備飛行の基地となった岩国基地がある山口県としては、こうした事態にどう対応していくべきなのでしょうか。
私は、オスプレイのことに関しても、これまでの本県の岩国基地問題に対しての基本スタンスである「基地周辺住民の生活環境を、現状より悪化させることは容認できない。」とする方針に基づいて対応するのが望ましいと考えます。
ただ、これまでのオスプレイに関しての本県の対応は、厚木基地艦載機移駐受け入れ判断の場合に比して、量を測って数値化するという定量的な分析がないまま、どちらかというとマスコミ報道で喚起された不安感がベースにある世論に影響された対応になっているように思われます。
航空機の安全性を示す指標として一般的なのは事故率であります。事故率とは、10万飛行時間において損害の大きい機体破損や乗員の死亡等「クラスA飛行事故」が起きた数を指します。これで見ますと、普天間配備予定のMV-22オスプレイの事故率は1.93でして、米海兵隊が保有するヘリを含む航空機の平均事故率2.45よりも低い数値になっています。
この1.93という事故率には、今年の4月に起きたモロッコでの事故も含まれています。尚、今年の6月に、南部フロリダ州で起きた事故は海軍用CV-22が起こしたもので、MV-22の事故率には含まれていません。
因みに、岩国基地に配備されているハリアーの事故率は、6.76であります。定量的に見れば、MV-22オスプレイの安全性は、従前の海兵隊保有航空機に比して向上していると言えます。
オスプレイに関する政治・行政上の対応は、こうしたことも踏まえた上のものであることが求められます。
そこでお尋ねです。MV-22オスプレイの岩国基地への駐機及び岩国基地をベースとした準備飛行は、日米合同委員会での合意が順守されたとしても、県として容認できるかどうかの判断基準である「基地周辺住民の生活環境の悪化」が生ずるとみておられるのかどうか、ご所見をお伺いいたします。
また、もし「生活環境の悪化が生ずる」と見做されるのであれば、そのことに関する定量的な説明を併せお伺いいたします。

(6)沖縄の負担軽減についてであります。
日米同盟は、日本の平和と安全の基軸となるものであり、将来にわたって堅持されていくべきものですが、そのための最大の懸案は、在日米軍基地が面積にして7割以上集中している沖縄の負担を軽減することであります。
岩国基地が、厚木基地の空母艦載機部隊と沖縄普天間基地の空中給油機KC-130を受け入れることになったのは、沖縄に関する特別行動委員会(SACO)合意や米軍再編に係る日米合意の結果でありまして、米軍再編の機会をとらえて厚木航空基地を中心とする「米軍機の騒音問題」と「沖縄の負担軽減」の解決を図ろうとする日本政府の狙いを、岩国基地は沖合移設に伴い双方とも引き受けようとしています。
厚木基地の艦載機部隊の岩国基地への移駐は、米軍再編に関する日米協議の大きな成果とされていますが、このことも沖縄の負担軽減につながることがなければ、単に厚木の騒音を岩国に移すだけのことに終わります。それでは、本県や岩国市が反対の声が未だ根強くある中で、艦載機受け入れを容認し協力することの意味は失われてしまいます。
そういうことからして私は、県や岩国市が、艦載機部隊の受け入れと普天間基地の返還はパッケージであり、普天間基地返還の見通しが立たないまま、艦載機部隊の移駐を先行して受け入れることは認められないとしていることは、理解でき、そうした方針を支持するものであります。
ただ、これからはこれまでの経緯や実情を無視した暴論と言われるかもしれませんが、私の考えを申し上げたいと思います。
私は、岩国基地への厚木基地空母艦載機の移駐は中止を求めていいと考えております。
米軍再編の中での空母艦載機の岩国移駐に関する日米合意は、米軍機による騒音訴訟の解決を迫られていた日本政府の要請を米側が受け入れたものでした。
米側にとっては、第七艦隊の空母の母港がある横須賀に近い厚木基地に艦載機が駐機できる方が望ましいとの判断は、現在も変わっていないと思われます。
岩国基地のことに関心をもって色々調べていくうちに見えて来たことは、空母艦載機の岩国移駐は、米軍の要請によるものではなく日本政府の強い意思により推し進められてきたということです。
日本政府には、多額の国の予算を投入して基地の沖合移設を実現するのだから、そして沖合に移設すれば米軍機の騒音は軽減するのだから、空母艦載機を岩国には受け入れてもらおうとの強い思いがあったのではないでしょうか。
米軍機の騒音問題は、夜間も含めた艦載機の離発着訓練の場所を確保できれば解決することで、それが実現すれば米軍側には、敢えて艦載機を厚木から岩国に移駐しなければならない理由はありません。
これまでは日米同盟を大事に思う立場から、米軍再編に関する日米合意事項である艦載機の岩国移駐には本県も協力すべきものと考えていました。しかし、現在考えが変わりまして、それは日米同盟の強化とは関係ないことで日本政府のこだわりにすぎず、むしろ岩国基地は、沖縄の負担軽減につながる方向で必要な基地機能を引き受けることにした方がいいと思うに至りました。
その方向で考えられることの一つは、空中給油機KC-130に加えて普天間基地に配備が予定されているMV-22オスプレイ数機の配備を、岩国基地が受け入れることです。そのことは、国に対し空母艦載機の岩国移駐を中止するよう求めることと引き換えであっていいと考えます。
オスプレイに関する日米合意では、負担軽減の観点から沖縄以外での運用も検討するとされたところです。
MV-22オスプレイの配備がスムーズに進捗することは、安保条約に基づく日米同盟関係が揺るぎないものとなり、我が国の防衛力を強化する上からも大事なことであります。そのため、その負担を岩国基地が沖縄普天間基地と分かち合うことは意義ある国の安全への貢献であると考えます。
繰り返しになりますが、厚木基地の騒音問題は、空母艦載機の離発着訓練場を別途確保することが出来れば解決します。そうなれば、空母艦載機を岩国へ移駐する理由はなくなります。
日本政府が、基地の沖合移設と引き換えに岩国基地を艦載機の離発着訓練の場所とすることを考えているとすれば、撤回を求めるべきです。
基地の沖合移設は、米軍機が市街地上空を飛行することによる危険を回避し、騒音等を軽減することにより、岩国基地が基地周辺住民を始めとする県民の理解と支持を得て、将来にわたり安定的に運用されるようになることを目的としたものであり、そのことが我が国を含むアジア・太平洋地域の平和と安全のために重 要との判断のもと取り組まれた国策事業であると考えます。
岩国の米軍基地は、元来沖縄に駐留する米軍海兵隊の航空基地であります。その基地機能が、将来にわたり安定的に確保されるようになったことで、沖合移設の目的は充分達せられているのです。
そこでお尋ねです。以上申し上げましたことから、沖合移設された岩国基地が受け入れるべきは、厚木基地の空母艦載機ではなく、沖縄の負担軽減につながる方向で必要な基地機能であると考えますが、このことにつきご所見をお伺いいたします。

【回答】◎知事(山本繁太郎君)
合志議員の御質問のうち、私からは、日米同盟と在日米軍基地に関するお尋ねにまとめてお答えいたします。
国が、安全保障の基本方針等を示すものとして、平成二十二年に閣議決定いたしました防衛計画の大綱によりますと、我が国の平和と安全を確保するためには、今後とも日米同盟は必要不可欠であり、多国間の安全保障協力やグローバルな安全保障課題への対応を我が国が効果的に進める上でも重要であるとされているところであり、県といたしましては、国のこのような外交・防衛政策については、これを尊重し、協力すべきであると考えております。
また、岩国基地を含む在日米軍基地は、日米同盟が我が国の防衛やアジア太平洋地域の平和と安全に寄与する抑止力として十分に機能するために、我が国とその周辺において米軍が迅速かつ機動的に対応できる態勢が平時からとられている必要があると国が判断し、米軍の駐留のために提供しているものであります。
いずれにしても、日米同盟や基地の存在、米軍の駐留そのものについては、地方公共団体の長である私としては、その是非を論ずる立場にはないものと考えております。
その一方、騒音問題や航空機事故の危険性、米軍人などによる事件・事故など、基地の存在に起因するさまざまな問題については、県民の安全で平穏な生活を確保する立場から、国に対し、言うべきことは明確に言うという姿勢で対処してまいります。
その他の御質問につきましては、関係参与員よりお答え申し上げます。

【回答】◎総務部理事(小松一彦君)
岩国基地問題についてのお尋ねのうち、まず、基地機能の強化の判断基準についてお答えします。
県としては、岩国基地への部隊配備等の問題に対し、「今以上の基地機能の強化は認められない」「NLPの実施は認められない」「地元の意向を尊重する」という三つの基本姿勢で対処しているところであります。
このうち、基地機能の強化については、県として、基地の軍事的な機能を判断する立場にないことから、引き続き、基地機能の変更によって、騒音や安全性の面で基地周辺住民の生活環境が悪化する状態が生じるかどうかを判断基準とすることとしております。
次に、オスプレイについてのお尋ねです。
本県では、岩国基地の今以上の機能強化は認められないということを基地問題に対する基本姿勢の一つとしており、基地機能の変更による周辺住民の生活環境への影響をその判断基準としているところです。
このたびのオスプレイの陸揚げ、機体整備、準備飛行等の実施はもとより、沖縄への配備後に一カ月に二、三日間行われるとされている岩国基地への短期展開についても、航空機や部隊が岩国基地に恒常的に配備されるものではないことから、一時的な運用の範囲内であると整理しております。
したがって、これらの一時的な運用は、基地機能の変更に該当しないため、基地周辺住民の生活環境に係る定量的な検討は行っておりません。
しかしながら、本年四月及び六月にオスプレイの墜落事故が続けて発生していることから、県民の安全で平穏な生活を確保する立場にある県としては、真に安全性が確保されない限り、オスプレイの陸揚げや飛行に反対であると国に伝えてきたところであり、オスプレイの飛行運用を開始させるとした先般の政府決定においても、事故の再発防止策に具体性がないなど、内容が不十分であることから、いまだ県民の懸念が払拭されていないと考えております。
次に、沖縄の負担軽減についてのお尋ねです。
沖縄の負担軽減については、本県としては、本土の地方自治体において、沖縄の負担をできるだけ受け入れていく姿勢が必要と考えており、全国知事会においても「沖縄県に米軍基地が過度に集中しており、負担の軽減が必要であることを理解する」との声明が取りまとめられているところであります。
こうした認識のもと、本県ではこれまで、平成八年のSACO合意に基づき、沖縄の負担軽減の観点から、全国に先駆けて、普天間基地のKC130空中給油機十二機の岩国基地への受け入れを容認しております。
一方、厚木基地からの空母艦載機の移駐については、当初、騒音の単なるたらい回しであるとして反対しておりましたが、国から、米軍再編の目的は抑止力の維持と、沖縄を中心とする地元負担の軽減であり、個別の再編案は、全体として統一的なパッケージであると説明を受けてきたことから、これに協力する姿勢で対応しているところであります。
いずれにしても、沖縄の負担軽減については、どこまでも外交・防衛政策を所管する国が、その責任において、安全保障上の必要性を踏まえ、日米間で協議の上、進められるべき問題であると考えております。

(再質問)
県民が不安に思うから、県民の不安は払しょくされていないと言うだけでは、県としての役割を果たしているとは言えないと思います。
県民の不安解消の責任は、国とともに県も共有していると考えるからです。
平成11年に成立した地方分権一括法による地方自治法の大改正は、国と自治体は「対等」の原則を定め、機関委任事務の廃止等、我が国の地方自治法制を一新しました。
地方分権が進展し、国と自治体との関係が対等とされたことは歓迎すべきことであると考えますが、そのことに応じて自治体も、特に国の存立に係る防衛について、国と共に責任と課題を共有する姿勢が求められると考えます。
そういう姿勢が伴わないまま、地方分権だけが進んでいって、果たして国の将来は大丈夫なのか、危惧の念が生じます。
防衛は国の専管事項であるとしても、地方自治体の協力は不可欠です。役割の違いはあれ、防衛も国と地方との共同作業で成り立つものだからです。
国の存立があって地方がある、地方栄えて国栄える、政治・行政の面でも国と地方とは役割の違いはあっても不可分一体であることは、国の官僚として一身を捧げ、古い言い方かもしれませんが「お国のために奉公」してこられた山本繁太郎知事が、最も身を持って感じておられることであると思います。
また地方分権の意義を、最もよく理解しておられるのも山本新知事であると考えます。
その山本知事が、防衛のことに関して国と共に責任と課題を共有するとの姿勢を、全国に先駆けて明確にされることを期待します。
在日米軍基地が在ることによって生じている問題も、全国の自治体の首長が、そういう姿勢で協力しなければ解決しないと思うからです。
厚木基地の騒音問題を解決するために、空母艦載機の離発着訓練場所として、現在、鹿児島県種子島の西方12kmの海上にある無人島馬毛島が有力な候補地になっているようですが、このことが我が国の防衛上 重要であることを踏まえ、鹿児島県知事には是非その実現にご尽力いただきたいと願っています。
そうなれば、山口県は岩国市の理解を得て、岩国基地に艦載機ではなく、オスプレイのことも含め沖縄の負担軽減という方向で必要な基地機能の受け入れに協力するという展開があってもいいと考えます。
要は地方分権が進行する中、国の防衛には広域自治体であると都道府県を含む地方自治体も、責任と課題を国とともに共有して協力すべきであると考えますが、このことにつき知事のご所見をお伺いいたします。

【回答】◎総務部理事(小松一彦君)
再質問にお答えいたします。
地方分権が進行する中で、国の防衛には地方自治体も責任と課題を国とともに共有して協力すべきだという御質問でございます。
安全保障政策は、我が国の独立と平和を守るための国家存立の基盤でありまして、どこまでも国の専管事項であると考えております。
その一方で、国と県との間では、それぞれの立場を尊重し、その信頼関係の上に立って、国は国民の安全、そして、地方は、地域住民の安心・安全を両立させるために協力して取り組んでいく必要があると認識しております。

(再々質問)
オスプレイの安全性に関し、再々質問をいたします。
私は、MV-22オスプレイは安全だと見ております。それは、絶対安全だという意味ではなく、運用される上において求められる安全上の水準を確保しているという意味においてであります。
私たちが日常生活で使っているものも、絶対安全のものはありません。如何なるものも、いくらかのリスク、危険性を包含しております。ただ、そのリスク、危険性が確率上、無視してもかまわない程度のものが、安全と見做されて使われているというのが実情であります。
私が、MV-22オスプレイを安全と見做すのは、一つは、先ほど触れましたように事故率が1.93と低く、定量的に見れば安全水準は確保されており、すでに運用されている海兵隊の航空機に比して安全性は向上していると見られること、もう一つは、オスプレイの安全に最も真剣なのは米軍それ自体であって、安全上の問題があれば運用されるはずがないと思われるからです。
オスプレイは、イラク戦、アフガン作戦には実戦配備されて運用されており、また、議会や政府の要人を運ぶ輸送手段としても活用されています。
要は、安全かどうかの問題は、安全と見做し得る安全上の水準を確保しているかどうかということであります。
オスプレイは、福田岩国市長が懸念したように、試作機段階の事故の映像を繰り返し放映して不安をあおるようなマスコミ報道によって、危険のイメージ、世論が作り上げられてしまった感があります。
しかし防衛に関する政治・行政上の判断は、こうしたイメージ、世論に影響されるものであってはならず、合理的な根拠に基づくものでなければなりません。
そこでお尋ねです。知事が、MV-22オスプレイは安全性が確保されていないと見做されるのは、如何なることに基づいてなのか、また、どういうことが明らかになれば安全と見做し得るとお考えなのか、ご所見をお伺いいたします。

◎総務部理事(小松一彦君)
再々質問にお答えいたします。
オスプレイの安全性が確保されていないとみなし得るのはどのようなことに基づいておるのかということ。さらには、どういうことが明らかになれば安全とみなし得るのかという御質問でございます。
本年四月にはモロッコで、また六月にはフロリダで墜落事故という重大な事故が続けて二件発生したことにより、オスプレイの安全性に対して大きな懸念が生じております。
それに対して政府が日米合同委員会で確認した事故の再発防止策は、人為的ミスが起きた原因が不明のまま、指揮監督や訓練を徹底することが中心となっており、具体性がないこと。また、オスプレイの運用にかかわる日米合同委員会合意も過去の合意内容を再確認したにすぎないものも含まれるなど、その内容が不十分であることから、県としては、県民の懸念が十分に払拭されるには至っていないと考えているものであります。
県としては、五項目の要請の中で、地元自治体等が納得できる説明を求めており、ただいま申し上げましたような点について、国から納得できる説明がなされる必要があると考えております。

補足 (導入)
新政クラブの合志です。
先ず、山本知事、知事選ご当選、そして知事ご就任おめでとうございます。
山本知事誕生を強力に推進された方が、「山本繁太郎さんは、日本一の知事になる人だ。」と強調されていました。私もそう思います。
21世紀の日本の地域モデルを山口から創っていく。そして、山口から日本をよくする。
そういう方向での山本繁太郎新知事の、これからのご奮闘に期待し、通告に従い一般質問を行います。
尚、通告しておりました日中関係についての質問は、私の意見の開陳にとどめることにしましたので、あらかじめお断りしておきます。

2012年9月30日

平成24年6月定例県議会【地域活性化への取り組みについて】(1)中心商店街活性化対策

(1)中心商店街活性化対策

この30年ぐらいで日本中から小さな商店街が消えていくのがよく分かりました。『男はつらいよ』シリーズの終盤の地方ロケでは、風景が寂しくならないように、シャッターを閉めた店に頼んで開けてもらわねばならなかったのですから。
今なら寅さんのロケは大変でしょうね。似合わないなあ、寅さんに新幹線、高速道路、巨大ショッピングセンターは。全然ね。
商店街は、地域に暮らす人と人とが触れ合う場所ですよね。それは日本の文化のかなり大事な部分を占めていた。

以上は、映画監督山田洋次さんの証言の一節で、2007年から8年にかけて朝日新聞に連星された「変転経済―証言でたどる同時代史」で語られています。
この山田監督の証言に共感する人たちは多いと思います。私もその1人で、特に町の顔とも言うべき「中心商店街の賑わいの回復」に係る政策に関心を向けて、いろいろ私なりに調べてまいりました。そのことを踏まえ、この度は「地域活性化への取り組み」ということで、先ず「中心商店街活性化対策」についてお伺いいたします。
最初に、先般県下の中心商店街を見て回って感じたことを申し上げます。
何とか現状維持で街の賑わいを保ち続けているのは、山口の中心商店街であります。
岩国、徳山の中心商店街は、いくらか空き店舗が目につきますが、賑わいの回復、商店街再活性化に向けて意欲的な取り組みがなされつつあり、それに期待したいと思います。
萩の中心商店街は、観光を取り入れた商店街づくりに活路を見出そうとしており、衰退傾向には一定の歯止めがかっているように思われます
防府、宇部、下関は、中心商店街を構成する各商店街において空き店舗が増え、シャッター通り化が進行していますが、その中で幾つか奮闘している商店街があり、その頑張りには頭が下がります。
柳井は、かって中心商店街のメインであった銀天街がなくなり、その跡はきれいに整備された道路になっていて驚きでした。
商店街の衰退は、山田監督の証言のように全国各地で起きていることですが、その背景を調べていきますと原因は明らかで二つに大別されます。その一つは都市の拡散であり、その二はモータリゼーション、車社会の進展であります。
モータリゼーションの進展は、大きな時代の変化であり社会現象であることから、その変化にどう的確に対応するかが課題でありますが、都市の拡散は、我が国の都市計画、土地利用についての政策的不備によって生じている現象であります。特に平成2年に日米構造協議の合意を受けて大店法による大型店出店規制が緩和されたこと、さらに平成10年には大店法そのものが廃止され、店舗面積等による出店規制や出店調整の制度がなくなったことは、その傾向を一層助長しました。その結果、全国各地で郊外に次々と大型商業施設が進出することとなり、既存商店街の衰退が加速化しシャッター通りが増えていったことはご案内の通りであります。
こうした事態に、地方から悲鳴にも似た声が上がり、対策を求める声が高まり、平成18年の「まちづくり三法の見直し」となります。
「まちづくり三法」は、元々平成10年に制定されたもので、中心市街地活性化法、改正都市計画法、大店立地法の三つをいいます。このうち、大店立地法は、それまで大店法がしていた店舗面積等による量的な出店規制をなくし、代わって生活環境への影響という面から規制する仕組みを定めたものです。経済的規制から環境規制へという立法措置は画期的だとの評価の声もありましたが、先ほど触れましたように結果的に大型商業施設の郊外立地を促すことになりました。
大店立地法は、謂わば大型商業施設の立地に関する規制緩和でアクセルの役割を果たすこととなりましたが、一方でブレーキの役割を期待されたのが、この時の改正都市計画法で、大型店の郊外立地を規制する必要があると市町村が判断した場合、従前の都市計画法による土地利用規制を更に強化できるようにしたものです。しかし、この改正措置は充分に機能しませんでした。
中心市街地活性化法は、市町村が中心商店街活性化に向けて「基本計画」を策定し、その計画を関係省庁・民間・地方公共団体が連携して推進する仕組みを定めたものであります。
この法の制定を受けて全国で約700の自治体が基本計画を策定しましたが、中心商店街の空洞化の進行を防ぐことはできませんでした。
このように見てきますと、「平成10年の『まちづくり三法』とは、何だったのか。」ということになります。商店街衰退の主たる原因である都市機能の拡散を助長する立法措置をしながら、商店街支援の施策を講じたとしてもうまくいくはずがありません。この「まちづくり三法」は惨憺たる結果に終わり、平成18年の見直しということになる次第であります。
平成18年の「まちづくり三法の見直し」では、これまでの都市機能の郊外化・拡散化の流れに歯止めをかけ、さらにこれを転換して、都市機能の集約を図りコンパクトなまちづくりを目指すという方向で、法・制度の整備改正が行われました。既に時期遅しなのか、どうにか間に合ったのか分かりませんが、ともかく商店街衰退の本質的原因を踏まえた対策が、法的にとられたことは評価していいと思います。
また、この見直しで、中心市街地活性化法の第三条に基本理念が新たに定められました。その前段を紹介致しますと、「中心市街地の活性化は、中心市街地が地域住民の生活と交流の場であることを踏まえつつ、地域における社会的、経済的及び文化的活動の拠点となるにふさわしい魅力ある市街地の形成を図ることを基本とする」と明記されており、商業機能の強化という観点だけではなく、広く地域住民の生活と交流の場として魅力的な市街地の形成を図ることが中心市街地の活性化につながるとの考えが示されております。私は、この基本理念は、中心市街地再生に向けて最も大事な考え方を明確にしたものとして評価したいと思います。
三法の見直しにより都道府県の役割が、都市計画の広域調整という面で強化されたことも留意しておきたい点です。
ところでこの度、中心商店街のことに取り組んでハッキリして来たことは、商店街のことに関し県が直接的に権限を持ち、県の施策としてやれることが、今日ほとんどないということでした。実際、商店街の関係者に聞きますと「相談や陳情のため市や国の機関の方に行くことはあっても、県の方に行くことはここ数年ないなあ。」という声が返って来ます。
しかし、そうとは云え県が心掛ける、また取り組むことによって中心商店街の活性化につながることは色々とあることも事実です。
そこで、この度は、「まちづくり三法の見直し」に沿う方向で、県に心掛けてほしいこと、取り組んでいただきたいことにつき数点私の考えを申し上げ、ご所見をお伺いいたしたいと思います。
先ず第一点は、中心市街地への都市機能の集積、所謂コンパクトなまちづくり、コンパクトシティという方向についてであります。
まちづくり三法の見直しでコンパクトシティという方向に沿って行われた都市計画法の重要な改正が二つあります。一つは床面積が1万㎡を超える大型小売店舗などの大規模集客施設の立地は、「商業」「近隣商業」「準工業」の3種の用途地域に限定し、それ以外の地域は原則不可としたことであります。
もう一つは、これまで開発許可が不要であった県や市などの公共施設や社会福祉施設、医療施設、学校等の公益施設も開発許可を要するように改正し、公共公益施設が地価の安い郊外へ安易に立地拡散しないようにしたことです。
そこでお尋ねいたします。これは山口市に限らず県下の市町すべての県公共施設等において共通して心掛けていただきたいことですが、県公共施設及び県関連施設また県が関与している公益施設等は、コンパクトなまちづくり、即ち中心市街地への都市機能の集積という方向に沿って、今後の建設や建て替えは行っていくべきであると考えます。つきましては、このことにつきご所見をお伺いいたします。

次に第二点は、良好で魅力的な中心市街地の形成についてであります。
中心商店街活性化対策ということで、中心商店街の商業機能の強化は、政治や行政の主たる政策課題ではないと考えます。それは、基本的に商業者に委ねられるべきことであります。
政策課題として取り組むべき柱のひとつは、先に述べましたように無秩序な都市の拡散を回避しコンパクトな都市構造にしていくことであります。さらに、そのことと併せ大事なもう一つの柱は、中心商店街を含む中心市街地を住みたくなる、そして行きたくなる魅力的な街並みの市街地にしていくことであります。そうした政策課題への取り組みが結果として中心商店街の賑わいの持続と将来への展望のベースになると考えます。
中心商店街の再活性化を主たる目的とする法律の題名が「中心市街地の活性化に関する法律」とされたことの含意は、そういうところにあると見ております。
中心市街地を良好な生活環境と魅力的な街並みの市街地にしていくという政策課題への取り組みにおいて、県は道路や河川等の整備事業を通して重要な役割を果たすことができます。
そこでお尋ねです。県も道路や河川等の整備事業を通して中心商店街の活性化につながる良好で魅力的な中心市街地の形成にしっかり取り組んでいくべきであると考えますが、ご所見をお伺いいたします。

第三点は、まちなか居住の推進についてであります。
平成18年に全面的に見直された中心市街地活性化法は、計画事項に「まちなか居住の推進」を新たに加えました。これは、中心市街地の活性化にはとにかく人に住んでいただくことが重要との考えからだと思われます。
この、「まちなか居住の推進」に向けて県は何が出来るかということでありますが、本年3月に県が策定した「山口県住生活基本計画」においては、「街なか居住の推進」について、次のように述べられています。

中心市街地活性化や定住人口を確保するため、民間オーナーとの連携によ  るファミリー向けや高齢者向けの賃貸住宅の供給や、民間住宅の借上げ等による市町営住宅の供給の促進など、商業のみならず居住や公共サービスのバランスがとれた市街地を形成する街なか居住を推進します。

この「街なか居住の推進」についての県の考えで不満に思われるのは、県営住宅のことに触れていないことです。
そこでお尋ねです。私は、県営住宅を新たに街なかに増設する必要はないと思いますが、既存の県営住宅を建て替えて更新する時は、「街なか居住の推進」に沿う取り組みとして中心市街地への立地が今後計画されていいと考えます。つきましては、このことにつきご所見をお伺いいたします。

第四点は、県の広域調整についてであります。
大型商業施設の商圏は、立地自治体だけではなく複数の市町に及ぶ広域なものでありますことから、市町が単独で用途地域の変更等で立地規制をしても、近隣の市町が受け入れれば、その影響は避けられません。
都市計画法では、市町村が都市計画決定を行う際は、都道府県知事と協議することが手続き上決められていて、都道府県知事が広域的観点から調整の役割を果たすことが期待されています。
よって、大型商業施設等の立地にかかわる市町村の都市計画決定に関しては、そうした広域調整が求められることになると思われますが、平成18年の都市計画法の改正では、その際「都道府県知事は必要があると認める時は、関係市町村に対し、資料の提出、意見の開陳、説明その他必要な協力を求めることができる。」として、都道府県が広域的な視点から望ましい立地に向けて、より円滑に調整できるよう仕組みを強化しました。
そこでお尋ねです。中心商店街に大きな影響を及ぼす大型商業施設の立地にかかわる都市計画の広域調整を、本県はどのように行ってきているのかご所見をお伺いいたします。

第五点は、二井県政と中心商店街対策についてであります。
「住み良さ日本一の元気県づくり」を目指して推進されて来た二井県政において中心商店街活性化対策は、政策的にどう位置付けられ取り組まれて来たのか、そしてこれまでの取り組みを通して今後の中心商店街活性化対策はどうあるべきとお考えなのか、ご所見をお伺いいたします。

【回答】◎総務部長(池内英之君)
中心商店街活性化対策に関連して、県の公共施設等については、中心市街地への都市機能の集積という方向に沿って、今後の建てかえ等を行うべきとのお尋ねです。
県の施設の整備に当たっては、行政サービスの適切な提供を基本に、施設の性格や利用者の利便性等を考慮し、適地を選定しているところです。
具体的には、多くの県民や事業者が利用する総合庁舎等については、交通事情など利用者の利便性を重視し、各地域の市街地に配置しており、一方、農林水産関係の出先機関など、現地性や地域性を踏まえて配置しているものもあります。
こうした中、お示しのとおり、平成十八年に、いわゆるまちづくり三法が改正され、コンパクトなまちづくりに向けて、中心市街地に都市機能の集約を図ることとされたところです。
県の施設は、目的や機能が多様であり、一律にすべての施設を中心市街地に配置することは困難ですが、今後、多くの県民が利用する施設の建てかえ等を行う場合には、法改正の趣旨を踏まえ、地元市町のまちづくりとの整合にも配慮しながら、適切な立地に努めていきたいと考えております。

【回答】◎土木建築部長(小口浩君)
中心商店街活性化対策のお尋ねのうち、三点についてお答えします。
まず、良好で魅力的な中心市街地の形成についてです。
中心市街地活性化の事業は、市町が策定する中心市街地活性化基本計画に沿って、空き店舗対策や道路整備などのハード・ソフト両面にわたるさまざまな事業により実施されます。
これらの事業については、市町や地域が中心となって取り組んでいくこととなり、県では、事業が円滑に進むよう、計画策定時から、国の支援措置等に関する情報提供や適切な助言を行っています。
また、お示しの県が行う道路や河川等の整備事業につきましては、まず、渋滞の解消や浸水被害の防止など、事業本来の必要性が高いことを前提とし、その上で、中心市街地の魅力の向上に大きな効果が期待できるものについて取り組んでいるところであり、こうした観点から個別に検討していくことになると考えております。
次に、街なか居住の推進についてです。
お示しの山口県住生活基本計画では、「中心市街地における定住人口の確保については、それぞれの市町において、民間賃貸住宅や市町営住宅の供給などにより対応していくもの」と位置づけておりますが、県としても協力し、推進すべき施策と認識しております。
こうした中、お尋ねの県営住宅の建てかえを敷地内で行わず別の場所とする場合においては、まずは入居者の意向を調査し、さらに立地条件や建てかえ計画戸数、費用対効果等を踏まえ、総合的に検討して、移転先を決定することとなります。
したがって、県営住宅の中心市街地への立地についても、今後建てかえ計画を進めるに当たり、これらの条件が整う団地があれば、市町と十分協議しながら検討してまいりたいと考えております。
次に、大型商業施設の立地にかかわる県の広域調整についてです。
大型商業施設の立地は、周辺の人口や交通量等を変化させ、近隣市町のまちづくりや道路などの都市基盤整備に影響を与えるおそれがあるため、お示しのように、平成十八年の都市計画法の改正により、県が広域的観点から調整を行うこととされました。
このため、県では、迅速かつ的確に広域調整を実施できるよう、判断基準や詳細な手続を定めた山口県広域調整ガイドラインを平成十九年十一月の法の施行にあわせて策定しました。このガイドラインに沿って、関係市町のまちづくりなどへの影響について意見照会や調整会議などを行い、必要に応じて、影響への対策について助言や要請を行うこととしております。
本県におけるこれまでの取り組み状況としましては、下関市、山陽小野田市の二つの案件について、意見照会や影響の評価などを適切に実施してきたところです。

【回答】◎商工労働部長(半田健二君)
中心商店街活性化対策についての二点のお尋ねにお答えします。
まず、政策的にどう位置づけて取り組んできたのかということでございます。
中心商店街は、地域コミュニティーの核であり、その活性化はにぎわいのある地域づくりに寄与することから、県においては、商業・商店街の振興を加速化プランの重点事業に位置づけ、商店街の活性化に向けた市町の取り組みを支援してきたところです。
具体的には、お示しの中心市街地活性化法に基づく基本計画の策定については、現在、岩国市と周南市が、国の認定に向けて取り組んでおり、県としては、商工会議所が中心となり設置された中心市街地活性化協議会に参画し、計画づくりに関する助言等を行っているところです。
一方、既に国の認定を受けております山口市と下関市においては、大規模小売店舗立地法の手続の省略が可能な特例区域の指定を行い、こうした要件緩和により、大規模小売店舗の中心市街地への立地を促進しているところでございます。
また、中心商店街の活性化を支援する取り組みについて、中小企業の創業や経営革新を促進するための「やまぐち地域中小企業育成基金」を活用し、やまぐち産業振興財団を通じて、空き店舗を利用したチャレンジショップ事業やテナントミックス事業への助成を行っております。
次に、今後の中心商店街活性化対策はどうあるべきかについてですが、県としては、まちづくりの主体的な役割を果たす市町が、中心市街地活性化基本計画の認定を受け、国の支援制度を活用して、まちづくりと一体となった商店街振興に取り組むべきであると考えております。
このため、今後とも、計画認定に向けて積極的に取り組む市町に対し、地域の実情等に即した情報提供や助言など適切な支援を行ってまいります。

2012年6月30日

平成24年6月定例県議会【地域活性化への取り組みについて】(2)地方分権の推進

(2)地方分権の推進

地域活性化への取り組みについての質問の第二は、地方分権の推進についてであります。
私は、この度中心商店街のことに取り組んでみて見えて来たことがあります。それは、国がお金も権限も持ったまま、国が準備したメニューに沿ってやるところは支援しますよという、国による一元的管理の地域活性化のやり方は駄目だということです。そして、地域活性化は国より県が、市町村と連携して色々取り組めるようにした方がいいのではないかということであります。
平成18年に見直された中心市街地活性化法は、市町村が基本計画を策定して内閣総理大臣が認定する仕組みになっております。見直し以前は、国による基本計画の認定はありませんでした。それが一気に、内閣総理大臣による認定が制度化されたところに国が最大限力を入れて取り組みますよという意図が感じられます。確かに、総理認定となった計画は、国が集中的かつ効率的に支援を行うこととされています。しかし、果たしてそれでうまくいくのか疑問であります。
本県では、山口市及び下関市がこの基本計画の総理認定を受けております。このうち山口市は5年間の事業計画期間が今年度で終了しますので、再認定に向けての動きがあり、岩国市及び周南市においては計画申請の動きがあるようです。
山口市が総理認定を受けてやった計画事業を評価できるのは、まだ先のことになりますが、私が思っているのは、このような計画の策定とそれへの支援は、国が持っているお金と権限を県が持っていて、県と市町の関係でやっていった方が、ずっとうまくいくのではないかということです。県が国より市町に近いところにいて、市町の事情が分かっているからであります。
また全国各地、それぞれの地域に独自の歴史があり、事情があり、特性があって、その全てに通用する地域活性化のメニューを国が考えることは無理と思われるからです。
国は、以前の中心市街地活性化法では、基本計画が粗製乱造になったことを反省したようです。そして見直し後は、全国の市町村に対し国の基準に則って計画を策定し総理認定を得ることができれば、しっかり国が支援しますと宣言しました。そこには、ダメな地方を国が指導するという趣があります。しかし、それでは地域は活性化しません。地域の課題は、国ではなく地域で解決する。そのための自立的な仕組みを整えること、地域の地力を涵養すること、今日国が地域活性化のためになすべきことは、そういうことであります
現在の仕組みでは、本県の市町が基本計画を策定して総理認定を得ようとすれば、経済産業省の出先機関で広島市に在る中国経済産業局を通して国に申請することになります。このことで県を経由することはなく、また県が関与することもありません。
最近、国が打ち出してくる地域活性化の施策は、だいたい同様で、国と市町村、国と地方業界団体等との直接的な関係で実施する仕組みになっていて、国の出先機関が窓口・相談業務を担うということで、県の役割が希薄になっています。
平成20年6月県議会で、私は将来の分権型国家の在り方として道州制の他に30万ないし50万人規模の基礎的自治体としての都市と中央政府という2層構造の国の在り方が選択肢として考えられることを示して、2層構造の分権型国家についての知事の考えをお伺いしました。
その時二井知事は、「基礎的自治体としての都市で処理できない広域的なことを直ちに国がやるという2層構造では、国の権限が強すぎることになって、名ばかりの分権型国家になるのではないかと危惧する。やはり、道州制という方向が適切ではないかと考える。」と答弁をしておられます。
二井知事は、2層構造は、国の権限が強くなり名ばかりの分権型国家になるとの危惧を述べておられますが、今日の国による地域活性化の取り組みがうまく機能してない理由も、その仕組みが先ほど述べたように県抜きの2層構造でやろうとしているからではないかと私は見ております。
今日進行している地方分権は、本来地域のことは地域で解決する仕組みを整えて、地域の活性化につながるものであるはずべきなのに、必ずしもそうなっていない感があります。それは、行政事務の分権化は進んでいるものの、地方が政策面の自由度を増す自立に向けた分権化が進んでいないことと併せ、基礎的自治体として市を重視する一方、県の役割が希薄化して、結果的に2層構造となり国の直接関与が強くなっている面があることが原因しているのではないかと思われます。
現在国が進めている地方分権は、将来都道府県を廃して道州制に移行することを既定路線と見做し、都道府県の役割を減らし基礎的自治体と位置付ける市を重視して、そこに極力権限を移譲するという考えに立っているように思われます。
こうした考えに対し、私は一気に道州制への移行を目指して県の役割を少なくするのではなく、むしろ現在国が地域のことに関し持っている財源と権限を可能な限り県に移譲し、地域のことに関する県の役割を強くして、県と市町村でいろいろな地域の政策課題を解決できるようにすることが、地域活性化を大いに進める分権化の方向であると考えております。
それは、決して基礎的自治体として市を重視する地方分権の流れに逆行することではありません。そのことは当然の方向として尊重し、しっかり踏まえた上で、長い歴史があり国民になじんでいる都道府県制度が現にある限りにおいては、国の出先機関よりも、特に県域においては県が市町村と連携し、また県が市町村を補完して地域の課題に取り組む力を強めていった方がいいと考える次第であります。
以上、地域活性化と地方分権の推進について私の考えを申し述べましたが、そこでお尋ねです。地方分権が進むなか、地域活性化のために県の役割は、どうあるべきとお考えなのかご所見をお伺いいたします。

【回答】◎知事(二井関成君)
私からは、地方分権が進む中での地域活性化のための県の役割についてのお尋ねにお答えをいたします。
私は、住民に身近な行政は、より身近な自治体にゆだねることが、住民サービスの向上や地域の活性化につながると考えまして、知事就任以来、市町村重視の基本姿勢で県政運営に取り組んでまいりました。
特に、地方分権が本格化する中にありまして、基礎自治体である市町村が、分権の受け皿としてその力をつけることが重要と考えまして、その最も有効な手段である自主的・主体的な市町村合併の取り組みを支援をしてまいりました。また、市町の自主性・自立性を高めるため、まちづくりや農林関連など百九パッケージに及ぶ権限移譲も積極的に行い、加速化プランに掲げる数値目標を一年前倒しで達成したところであり、こうした取り組みの結果、市町の行財政基盤が強化をされ、政策・行政能力は確実に高まってきているものと考えております。
このように、市町が分権の受け皿としての力を着実に蓄えてきております中で、広域自治体である県といたしましては、どこまでも近接と補完の原理に沿って、市町村に対する補完・支援という基本的な役割を果たしつつ、今後は、近隣県との連携も強めながら、高度・広域的なインフラ整備や、産業活性化、防災、観光などの広域的な行政課題へも対応し、また、自立的で活力のある地域の実現に向けて、より広域的な視点に立った、地域活性化の取り組みを進めるという役割を強化していく必要があると考えております。
こうした中、地方分権の現状は、国と県との関係で見てみますと、さまざまな分野での二重行政や、お示しがありましたように、国から県を経由せず市町に交付される補助金の存在、義務づけ・枠づけ等の国の関与、遅々として進まない国の出先機関の事務移譲など、県の役割の発揮を妨げる多くの課題がありまして、私も合志議員と同様の問題意識を持っております。
したがいまして、私としては、このような県としての役割を果たす上で支障となっている多くの課題の解決に向けて、全国知事会等を通じて、国に対し、引き続き強く求めていかなければならないと考えております。そして、そのことにより、地域のことは地域で決めるという地方分権の本旨に沿って、県が、広域自治体としての役割をしっかりと果たし、市町とともに地域の活性化に取り組んでいくことが重要であると考えております。
その他の御質問につきましては、関係参与員よりお答えいたします。

2012年6月30日

平成24年6月定例県議会【地域活性化への取り組みについて】追加質問

私は、中心商店街が時代の変化に応じて変わっていくのは、当然のことだと思っております。先ほど柳井市のことを申し上げましたが、柳井市も駅通りはきれいに整備されていますし、白壁の町は魅力的な町並みになっていますし、区画整理事業された南町商店街は活気が感じられます。こうしたところが、これから柳井の中心商店街になっていくのかなという感も持ったんですが、それはそれであり得るべきことだと思っているわけであります。
ただ地域の中で、人々の暮らしと密着して形成されてきた中心商店街は、地域にしっかり根差して、人々の暮らしだけではなく、地域の歴史、文化を担っており、そうしたものを大事にしていくことが、長い目で見て、人々の暮らしのためにも、地域のためにも望ましいのではないかと思っている次第であります。
さて、それぞれ御答弁をいただきました。幾らかかみ合わないなと思うところもありますけれども、お礼と要望を申し上げておきたいと思います。
お礼は、一の坂川河川再生事業についてであります。山口市の中心市街地を流れている一の坂川は、道路で言えば県庁前を走る現国道九号から、山口市の中心部を東西に走る旧国道、現県道宮野大歳線の間、橋で言えば伊勢橋から亀山橋の間は、御案内のように、春は桜、初夏は蛍、秋はアートふる等のメーンステージとなり、四季を通じて市街地ににぎわいをもたらす魅力的なたたずまいを構成し、山口市を代表する顔になっております。
この区間の一の坂川がそうした場所になったのは、県が市と連携して、河川整備においてホタル護岸と近自然で親水性に配慮した工事を行ってきたからであります。そうした一の坂川の河川整備を山口市の中心商店街に沿って延長する事業が、今年度に完了します。事業計画区間は、道路で言えば、ほぼ現県道宮野大歳線から駅通りの道路までの間、橋で言えば亀山橋から千歳橋までの間で、事業名は一の坂川河川再生事業となっております。
平成七年にスタートしたこの事業は、二井知事が知事に就任されたのが平成八年でありますので、ほぼ二井県政とともに歩み、二井県政の総仕上げの年に完成する事業ということになります。
この事業により、一の坂川の中心商店街に沿った区間がホタル護岸で親水性のある河川として整備され、さらに商店街側に当たる左岸に道路が整備されたことは、近接する商店街を含む市街地をさらに魅力的な町並みとする可能性を大きく高めるものであります。
二井知事におかれては、公共事業は抑制基調となり、公共事業費が半減するという中にあっても、この河川整備事業の予算は確保し、事業を継続していただきました。おかげでこの事業が完成の見通しとなりましたことに感謝し、私がお礼を申し上げるのがふさわしいかどうかわかりませんが、この事業の意義を知る山口市民の一人として、お礼を申し上げたいと思います。
そして、その上で要望でございますが、さらにこの中心商店街に沿っての河川整備事業を延長してほしいということであります。現計画は、道路で言えば、駅通りのところまで、橋で言えば千歳橋のところまででありまして、中心商店街の半分のところで中途半端に終わっています。これはまことに残念なことで、残り半分、商店街で言えば道場門前商店街に沿った区間、橋で言えば千歳橋から山口中央郵便局横のえびす橋までの間も、特に一の坂川左岸道路整備の事業をやることで、この一の坂川河川再生事業は完成と言えると思う次第であります。
そして、そこまでやることが、県下でどうにか唯一にぎわいを保ち続けている山口中心商店街が、将来にわたってあり続けていくことができるために、また将来に向けて明るい展望を切り開いていくために必要と見ている次第であります。
そこで要望であります。一の坂川の千歳橋からえびす橋までの間の左岸道路整備事業を、今後山口市と連携してお取り組みいただきますよう要望いたします。
先ほど御答弁もあったところでありますが、河川整備事業においては、防災面からの河川整備が主になると思われますが、あわせてよりよい市街地を形成するための河川整備も重要と考えます。つきましては、このことにもしっかり取り組んでいかれますよう重ねて要望いたします。
少し時間が残っておりますので、二井知事に申し上げておきたいと思います。
平成八年、二井知事が知事選に出馬されまして、当選されました年は暑い夏であり、また多くの人たちが知事選に燃えた年でもありました。知事の御人徳だと思うんですが、命をかけてでも応援するという人たちもおりまして、そういう人の中で実際、二井知事が当選を果たされた後、急に亡くなられた方もありました。そういう方々も含めて、二井県政十六年間は、二井知事、よくやっていただいたと評価いただける二井県政であったと言えると思う次第であります。
正直、こういうことももっとやってほしかったなということがあるのもありますけれども、トータルとして見た場合、二井県政はよくやっていただいた、立派な知事であったと言えると思っております。十六年間の二井知事の県知事としての職務執行に敬意を表し、そして功績をたたえ、その労をねぎらいたいと思います。
まだ任期が少し残っておりますが、二井知事、よくやっていただきました。ありがとうございました。
以上で終わります。(拍手)

2012年6月30日

平成24年2月定例県議会(1)東日本大震災復興支援について

(1)東日本大震災復興支援について

「東日本大震災復興支援、この言葉を見て『そうだ、やるぞ!』という気になった。この大災害時に、国体に打ち込んでいていいのかとの思いが払しょくされ、全力で取り組めるようになった。そして優勝することができた。国体で優勝できた最大の理由は、東日本大震災復興、この言葉が冠せられたことにある。」
昨年11月、「国体感謝の集い」が、湯田温泉のホテルで開催された時、武道競技を優勝に導いた指導者の方が、熱っぽく思いを込めて、そう語っておられました。
2万名もの多くの尊い人命が失われた未曾有の大災害、東日本大震災の勃発からおおよそ半年後に開催された昨年の山口国体は、東日本大震災復興の一語を冠することによって意義ある大会となり、本県は悲願の天皇杯獲得、総合優勝を果たし大成功裏に終了することができました。
先ずもって改めて、二井知事をはじめ関係者の皆さまのご尽力に感謝と敬意を表し、その労をねぎらいたいと思います。
そして、東日本大震災復興支援の旗印を高く掲げた本県が、国体終了後は具体的な復興支援においてその先頭に立ち貢献することを願い、この度は、本県の東日本大震災復興支援の取り組みについてお伺いいたします。
私は、先般二月中旬、宮城県庁や南三陸町役場等を訪ねてきましたが、現在被災地が復興支援ということで切実に求めていることは、災害廃棄物の広域処理の受け入れと人的支援の二つであることがよくわかりました。そこで、この二つのことについてお尋ねいたします。
先ずその一、災害廃棄物の広域処理受け入れについてであります。
ご案内のように東日本大震災は、日本における観測史上最大のマグニチュード9を記録した大地震と、それにより発生した波の高さ最大15m、遡上高最大40.5mと見られる大津波が、東日本太平洋沿岸部を襲い、特に東北地方の沿岸部には潰滅的な被害をもたらしました。加えて、この津波により全電源喪失状態となり原発事故としては最悪のレベル7となった福島第一原発事故が、更にこの震災の被害を深刻なものにしております。
言うまでもなく、この災害は被災地だけの災害ではなく日本の災害であります。そうした認識に立ち、かって私たちの父祖の世代が廃墟となった戦後の日本を復興したように、今度は今の時代に生きる我々が、震災からの新たな日本復興を実現していかなければなりません。
私は、この震災からの復興に向けて二つの「合う」が、今日の日本国民に求められていると思っています。その二つの「合う」とは、「足らざるを補い合う」と「負担を分かち合う」です。
そして、災害廃棄物の広域処理もこの二つの「合う」の精神で、本県も含め全国の自治体で受け入れが進むことを願っています。
災害廃棄物の広域処理が求められる背景には、特に津波の被害により、あまりにも膨大な災害廃棄物が生じているという実情があります。
被災三県のうち福島県の廃棄物は全部県内処理の方針ですので触れませんが、宮城県は約1569万トンで通常処理量の約19年分、岩手県は約476万トンで通常処理量の約11年分の災害廃棄物が発生していると推計されています。
宮城、岩手両県とも、県内各所に第二次仮置き場を設置して、そこで廃棄物の分別、破砕等の中間処理、焼却等も行い、可能な限り県内処理をしていく方針ですが、処理計画期限である平成26年3月までに、これを完了するには、処理能力を超えた分、宮城県では約344万トン、岩手県では約57万トンを、広域処理分として県外で受け入れてくれることを求めています。
この災害廃棄物広域処理に係る主な動きを、時系列に見ていきますと、先ず震災発生からおよそ1ヶ月後の昨年4月8日、環境省は全国の自治体に対して受け入れ可能性調査を実施しております。これへの回答では、572自治体、本県では10自治体が受け入れの意向を明らかにしております。
次に8月11日、環境省は「災害廃棄物の広域処理に係るガイドライン」を示し、8月18日には「がれき処理の特別措置法」も成立し、その推進を期します。その一方、8月30日には福島第一原発事故で放出された放射性物質により汚染された廃棄物や土壌等の処理に関する基準等を定めた「放射性物質汚染対処特別措置法」が成立します。
こうしたことを受けて、全国の自治体は改めて災害廃棄物の受け入れの可否を検討することになります。
そうした中、9月28日東京都は岩手県宮古市の災害廃棄物の受け入れを発表しました。
そして、10月11日環境省は、改めて全国の自治体に対して受け入れ処理可能量等に係る再調査を実施しました。
これに対し、本県は10月21日、県内の市町の回答を環境省に報告し、受け入れ意向のある自治体はない旨を伝えました。
全国の自治体の動向は、11月2日に公表され、受け入れ意向の自治体等は、4月調査の572から54へと10分の1以下に激減しております。しかも、その受け入れ意向の54自治体等も、ほとんどは受け入れを検討中ということで、実際受け入れが実現したのは、東京都と山形県、それに青森県の三つにとどまっています。
現時点で見られる追加の動きとしては、静岡県の島田市が受け入れに向けて試験焼却を実施しており、他に秋田、群馬、埼玉、神奈川、富山、石川、大阪の7府県が、受け入れに向けての具体的な検討を行っているようであります。兵庫県より西では、昨年11月に佐賀県武雄市の桶渡市長が、受け入れ表明を致しましたが、その後強い反対にあい、これを撤回しておりまして、それ以降、検討を行っている自治体はないようであります。
こうした現状から、これまで広域処理で受け入れを予定された量は約83万トンで、政府想定の2割にとどまっています。
災害廃棄物の広域処理受け入れが進まない背景には、言うまでもなく、放射能汚染への過剰な不安感、警戒感があります。
こうした住民の不安感、警戒感にどう立ち向かうのか、対照的な二つの事例があります。
昨年夏、京都の夏の風物詩として全国的に知られている大文字焼きは、被災地陸前高田市の高田松原の松の薪に、震災の遺族の思いが記されたもの400本を、鎮魂の思いを籠めて8月16日送り火に加えて焼くことを企画しましたが、放射能汚染を心配する世論を無視できないということで最終的には断念、集められた薪は、京都ではなく陸前高田市で8月8日迎え火として焼かれました。
一方、正月の初詣客数は明治神宮に次ぐ全国第二位を誇り、「成田山」と呼ばれ親しまれていて全国的にも著名な真言宗の寺院、千葉県成田市にある成田山新勝寺は、同様陸前高田市から、震災で犠牲になられた方々への供養のためにと送られて来た松の木を、9月25日に行われた伝統行事「お焚き上げ」で、祈願成就のための護摩木と一緒に焚き上げました。この計画が明らかになると、成田山にも「放射能汚染の可能性のあるマツをなぜ持ち込むのか。」等の抗議の声が寄せられましたが、同寺院は、放射能検査を2回行い、検出されないことを確認した上で、「問題なし。」と判断して実施致しました。
災害廃棄物の広域処理分受け入れ要請への対応として、本県も含め全国の自治体が見習うべきは、成田山新勝寺の事例なのではないでしょうか。
私は、災害廃棄物受け入れ問題で問われているのは、日本国民の意識というより、我が国の政治、行政の責任ある立場にある者のリーダーシップであると見ております。
一般国民が、災害廃棄物の放射能汚染に不安感を持ち、それを拒否したく思うのは、ある意味自然な反応で、そのことを問題視することはできません。
ただ、政治や行政の責任ある立場のある者は、漠然とした不安感等に支配されてはならず、災害廃棄物の放射能が、地域や暮らしの安全、体の健康にとって心配ないレベルであることが明確であれば、その受け入れに向けてリーダーシップを発揮すべきであります。そうした姿勢は、強い反対や批判、様々な困難に遭遇することが予想されますが、それらを乗り越えていくリーダーシップこそ、本当の意味でのリーダーシップであります。
そうしたリーダーシップが、我が国には今日の時代どれほど在るのか、そのことを、災害廃棄物の広域処理問題は問うています。
この問いに応え得る真のリーダーシップが、数多く存していれば、今日我が国は様々の困難な課題に直面しておりますが、将来に希望を持つことができます。そうしたリーダーシップが僅かであれば、今後日本が沈んでいくのは避けられないでしょう。そうならないために、二井知事に起ち上がってほしい、そういう思いで私は、この質問を行っています。
以上申し上げましたことに対しては、気持ちは分かるが、そんなこと言っても、県は災害廃棄物を受け入れる施設を持っていないので、県の判断で、その受け入れを行うことはできない。災害廃棄物は一般廃棄物扱いであり、一般廃棄物の処理は市町の事務で、その受け入れが出来る施設を持っているのは市町である。県としては、国の要請を市町に伝え、後は市町の対応を見守るしかない、との反論が返って来ることが予想されますので、そのことにお答えしておきたいと思います。
確かに、県は廃棄物の施設を持っていません。しかし、県が主体的に関与している廃棄物の最終処分場があります。それは、宇部港東見初広域最終処分場です。県は、この処分場の護岸建設を港湾整備事業の一環として行っております。最終処分場としての供用開始は、平成20年からで、県内全域から産業廃棄物を、宇部市から一般廃棄物を受け入れております。この施設の運営主体は、山口県環境保全事業団でありますが、県はこの事業団の出資者であり、関係する市や経済団体と共にそれらのまとめ役的立場で、事業団の設立から運営まで深くかかわっております。この事業団の常勤の理事長は県のOBで、4人いる副理事長の一人は県の環境生活部の審議監です。
この処分場は、現に宇部市が一般廃棄物を搬入していることから、一般廃棄物扱いになる災害廃棄物を受け入れることは、宇部市の了解があれば、事業団の判断で可能であります。その事業団の判断において、重要なのが、県の考えであります。
こういうことからして、私は災害廃棄物の受け入れについて、県は県下市町の動向を見守るだけではなく、県自身も整備・運営にかかわってきた東見初最終処分場での受け入れに向けて主体的に取り組むべきだと考えます。
ついては、災害廃棄物の広域処理受け入れへの協力要請に、本県は、どのように応えていくお考えなのかご所見をお伺いいたします。

【回答】◎知事(二井関成君)
私からは、災害廃棄物の広域処理受け入れについてのお尋ねにお答えいたします。
昨年の東日本大震災による被害は、まさに未曾有の規模でありますことから、私は、復興に向けて我が国の総力を結集して取り組んでいかなければならないと考え、震災発生後、これまで被災地への職員派遣や避難者の受け入れなど、人的・物的両面からできる限りの支援を行ってまいりました。
現在、被災地の早期復旧・復興の支障となっている、大量に発生した災害廃棄物の広域処理につきましても、国を挙げて協力していくことが基本であります。
私は、被災地や、広域処理の先駆けとなった東京都に廃棄物担当の技術職員を派遣をし、被災地における廃棄物の保管や受け入れ処理の状況を調査させるなど、広域処理について現状把握に努めているところであります。
しかしながら、災害廃棄物の中には放射性物質に汚染されたものもあり、そのことが広域処理の大きな妨げになっております。
したがいまして、国におきましては、「広域処理の推進に係るガイドライン」を策定し、安全性の考え方を示されたところではありますが、現状では、国は十分な説明責任を果しているとは言いがたく、国民の不安はいまだ払拭されるには至っておらないと思っております。
具体的に申し上げますと、従来、廃棄物の放射能濃度がキログラム当たり百ベクレル以下でなければ処理することができなかったものが、新しい基準が施行された一月以降は、八千ベクレル以下であれば埋め立て処分してもよいとされるなど、安全性の根拠がわかりにくいものとなっているところであります。
また、災害廃棄物は、一般廃棄物であり、その処理は市町の所管でありますが、仮に本県で受け入れることを想定した場合は、市町のごみ焼却施設や最終処分場の処理能力に余力がないため、通常のごみ処理に支障を来すというおそれもあるわけであります。
さらに、本県では、循環型社会形成の先導的仕組みとして、他県にはない、ごみ焼却灰のセメント原料化リサイクルシステムを構築をしておりますから、民間事業者との調整も必要になってまいります。
また、お尋ねのありました東見初最終処分場への災害廃棄物の受け入れにつきましても、廃棄物処理法等に基づくさまざまな承認等が必要になってまいりますし、この処分場は、海を埋め立てる方式でありますから、現在、全国で、この方式の処分場で受け入れた事例もなく、国が示したガイドラインにおいても安全性の考え方がこれについては示されていないところであります。
このように、県内へ災害廃棄物を受け入れるに当たっては、多くの課題がありますが、私は、被災地の復旧・復興のため、国民全体で負担を分かち合うべきであるという基本的な考え方に立ち、まずは国に対して積極的に地域に出向き、広域処理の安全性や処理への協力について、丁寧かつ明確に説明し、責任を持って国民の理解を得るように要請してまいりたいと考えております。
また、国は、先般、受け入れにより増設が必要となる最終処分場への財政支援等、新たな支援策を示されましたが、今後、その活用の可能性等も含め、広域処理に当たっての課題について市町や関係団体等と情報交換を行うなどの取り組みを進めてまいりたいと考えております。
そのほかの御質問につきましては、関係参与員よりお答えいたします。

2012年3月1日

平成24年2月定例県議会(2)人的支援について

(2)人的支援について

宮城県の南三陸町は、東日本大震災で津波による被害の程度が最も大きかった町です。
人口が、1万7千名余の町で死者・行方不明者793人、被災家屋は、流失・全壊・半壊以上が全家屋の6割に及び、最多時には、住民の半数以上が避難生活を余儀なくされました。
平地にあった建物は、住宅や民間施設だけではなく、町役場、警察署、公立病院等の公的施設も含め壊滅し、町職員も36名が犠牲になっています。その中には、津波に飲み込まれる直前まで避難を促す放送をし続けた女性職員もいました。
私は、この南三陸町を2月14日に、昨年の4月と10月に続いて3度目になりますが訪ねまして、復興に向けての取り組み状況や課題等について伺ってまいりました。
町役場では、総務課長や復興企画課長に対応いただきましたが、最も強調しておられたのは、用地関係の行政職員の人的応援が欲しいということでした。
南三陸町は、住まいや公共施設の高台移転を骨子とする復興10カ年計画を策定し、「復旧しながら復興する。」との考えで、復旧と復興を同時並行で進めており、通常年間予算70億円から80億円の町が、平成24年度は当初予算が350億円を超え、これまでの5年分に相当する予算規模を1年で執行することになる見通しであります。
多くの職員を津波で失った上に、復興に向けて膨大な仕事に取り組んでいかねばならない、南三陸町が人的支援を何にも増して強く求めている所以であります。
こうしたことは、南三陸町のみならず被災地の多くの自治体にとって共通する切実な課題です。
災害発生時の緊急対応としての人的支援が一段落した今日、次には、復興に向けての人的支援が求められています。
昨年12月20日、全国知事会は、被災三県の知事からの要請を受けて、各都道府県知事あてで、平成24年度における被災三県への復旧・復興のための職員派遣を依頼しております。
また、同12月26日、国土交通省 中国地方整備局長は、山口県知事あてで、特に土地区画整理事業及び防災集団移転促進事業に関し、当該分野における人的支援の積極的検討と、派遣可能人員等についての回答を依頼しております。
こうした人的支援の要請に、本県も可能な限り応えていくべきであると考えます。つきましては以下、人的支援について3点お尋ねいたします。
第一点は、東日本大震災発生後、今日までの本県の人的支援の実績についてお伺いいたします。
第二点は、被災地復興に向けた、これからの本県の人的支援の方針についてであります。国土交通省 中国整備局からの依頼にどう回答したのかも含めお伺いいたします。
第三点は、民間のマンパワーを活用する対策の提言についてであります。
災害時の自治体間の職員派遣は、今回の震災対応も含め地方自治法252条の17「職員の派遣」についての規定に基づいて行われています。
この制度は、これまでそれなりに有効に機能してきたと思われますが、今後の震災からの復興に向けての職員派遣は長期間にわたることが予想されますことから、この制度による人的支援には限界があるものと思われます。
自治体には、職員定数の縛りがあり、復興期間だけの職員採用ということも難しいと思われるからです。
一方、被災地自治体は復興に向けて、特に土地関係の専門的なマンパワーを通常時に増して数多く必要としております。
こうしたマンパワーの需給のギャップを解消する対策として、民間の力を活用する方策が考案されて然るべきと思われます。
私なりに常識的に思いつくことは、民間で土地関係の仕事をしている人達で震災復興のために働こうという方々のために、公共事業の用地関係の仕事をする際、修得しておくべき事項を教育する機関を設立して、そこから被災地へ人材を供給するということです。そこで学び、復興のために働いたことは、復興後、民間で土地関係の仕事をしていく上で役立つと思われますし、公務員の場合のように、長期派遣が終わった後の処遇の問題は生じません。
いずれにせよ被災地自治体が、復興に向けて必要なマンパワーを確保するには、地方自治法による職員派遣制度では限界があり、それを補完する民間のマンパワー活用の対策が不可欠と思われます。
つきましては、被災地復興に向けたマンパワー確保の対策として、行政の専門職員と同じように土地区画整理事業等の仕事に従事できる民間人の養成と活用を、国に提言すべきと考えますがご所見をお伺いいたします。

【回答】◎総務部長(平尾幸雄君)
東日本大震災復興支援についてのお尋ねのうち、人的支援についてお答えいたします。
まず、本県の人的支援の実績につきましては、発災直後の避難所の運営支援を初め、これまで福島県を中心に、被災三県に対して、各種技術職員や事務職員を実人員で四百人、延べ人員で約五千百人・日を派遣しております。
次に、今後の人的支援についてでありますが、県としては被災県のニーズに対応した即戦力となる人材を一人でも多く派遣したいと考えており、全国知事会等の要請にこたえるため、他県に先駆けまして、派遣可能な職員を庁内から公募するとともに、職員の職務経験が生かせるよう、受け入れ県と配属先の調整等を行ってまいりました。
この結果、来年度は福島県に十名、岩手県へ四名、宮城県へ二名の合計十六名の職員を一年間派遣することとしており、このうちお尋ねの中国地方整備局の要請に対しましては、土地区画整理事業の支援要員として、土木技術職員一名を岩手県宮古市に派遣することとしております。
次に、民間のマンパワーの活用についてでありますが、現在、被災自治体では、復興に向け増加する業務に対応するため、任期のある職員の採用や民間委託など、さまざまな取り組みがなされているところです。
したがって、お示しのような民間人の活用も含めた復興業務に当たる人材確保の方策につきましては、先般、国に設置された復興庁や復興局が被災自治体と連携し、そのニーズを踏まえながら検討されるべき課題であると考えており、本県として国に提言することは考えておりませんが、今後とも被災地復興に向けた人的支援の要請に対しては可能な限り対応してまいります。

2012年3月1日

平成24年2月定例県議会 再質問

災害廃棄物の広域処理受け入れについて再度お伺いいたします。
国が放射能汚染の安全性についての説明が十分でないということを知事、答弁の中で申されましたけど、私は、国が示しましたガイドラインを見まして、国はきちんと安全性の基準を示していると認識しております、理解しております。
それは、どういうことかと申しますと、これまでいわゆる放射性廃棄物として扱う基準としてキロ当たり百ベクレル、これを超えたものはそういうものとして扱うという、これまでの基準がある。
一方、今回は、八千ベクレル以下だったら埋め立て処分とか、そういうことが可能だというふうに国が示しているのは、これまで国が放射性廃棄物を扱う場合示してきた基準と食い違うのではないかという御指摘かと思うんですが、この百ベクレルという数値は、いわゆるクリアランスレベル、放射性物質として、汚染物質として扱う必要がなくて、もう一般のものとして扱って、そして出回っても何ら問題ないレベルというのが、いわゆる百ベクレル以下とされてるものでありますよね。
だから、今回のガイドラインを見ますと、いわゆる廃棄物の中で再生利用するものはこの百ベクレル以下のものにするという基準が示されておりますですね。
それから、埋め立て処分等するものにつきましては、八千ベクレル以下ということでありますが、何でこの八千ベクレルというのが設定されたのかという説明を見ますと、ベクレルというのは、放射性物質のほうから放射線が発される量をはかったものでありますが、それが人体等が受ける場合の人体等に与える影響をあらわした単位としてはシーベルトというのがありますですね。
それで、いわゆる八千ベクレル以下の廃棄物であれば、それのいろんな処理の作業等行ったとしても、一ミリシーベルトを超えることがないということで設定してるんだというふうに示されてありますですね。
この一ミリシーベルトというのは、いわゆる放射能についての考え方いろいろあるんでしょうけれども、この自然界にも放射能、放射線はあるわけでありまして、大体、日本人が年間で浴びている放射線の量が平均して一・五ミリシーベルトというふうに大体言われておりますですね。それ以下である一ミリシーベルト年間を超えないレベルだということで八千ベクレルというのが示されているということで、私は、国が示してる、国は安全性の基準はきちんと示しているというふうに理解しているわけでありまして、むしろ責任ある立場にある人たちがそこをきちんと説明することが十分じゃないということなのではないかと思っております。
一方、宮城県の村井知事は、県外の自治体が受け入れ基準を決めるなら、その基準に合ったものを受け入れてもらったらいいということも表明しておりますですよね。現に、山形県は、受け入れしています山形県は、四千ベクレル以下という基準を設定して受け入れをやっているわけでありますね。
でも先ほど知事は、東京の環境局に人を派遣していろいろと調べたということであったわけでありますが、被災地に派遣して、そして、どういう災害廃棄物であれば、そして、どういう方法であれば、そして、どの程度の量であれば受け入れが可能なのかどうかということの検討を実地調査も含めてやってみる必要があるんではないかと思うんですね。そういうお考えがあるのかどうか。そのことをお伺いいたしたいと思います。
もうすぐ三月十一日がやってまいります。いろんなことが、東日本大震災のことに関して報道される中で、心に響いたことの一つは、瀬戸内寂聴さんが、被災地でいろいろ説法をしておられる中で、「代受苦」と、かわりに苦しみを受けるということでありますけど、亡くなられた方々、被災された方々は、かわって苦しみを受けておられる。その苦しみというのは、被災してない我々のある意味想像を超えたものがあるのではないかなと思っております。
参考資料で、南三陸町の復興の計画と、あるいは震災被害が、津波の被害がどれほど大変だったのかというのをわかってもらうための資料をお配りしたわけでありますが、御承知のとおり、南三陸町は十五メートルほどの津波に襲われて、だけど庁舎は十二メートルで、町長さんは防災管理棟、これも高さが十二メートルで、防災管理棟にある無線機のアンテナにつかまってやっと助かったわけですよね。
ところが、きのうのニュースで、亡くなられた職員の遺族から、町長の指示が適切でなかったということで、その町長さん自身が訴えられてるということが報道されてまして、そのことに関してのマスコミのインタビューに非常に悲しそうな、つらそうな顔で答えておられたのを見て、本当に大変なことがあるんだなということを思うわけでありますね。
そういう被災地が今、手を差し伸べてほしいと切実に求めていることの一つが、この災害廃棄物の受け入れであります。
インターネットの書き込みにこういう言葉があったんだそうです。「瓦れきを受け入れないで東日本頑張れと言ってほしくない」と。確かに放射能についての不安感があるんであれば、政治、行政の責任において、そういう心配はないと判断できる基準を山口県なら山口県みずから決めて、そして、それに合ったものを受け入れていくということも検討されていいと、私は思います。
そういう意味で改めて被災地に実際、派遣して、どういう災害廃棄物であれば、どういう方法で、どの程度であれば本県が受け入れが可能なのか。そういうことの検討調査に取り組むべきと思いますが、このことにつきまして再度お伺いいたします。

【回答】◎知事(二井関成君)
再質問にお答えいたします。
ただいま国の安全基準について説明がありました。その安全基準そのものは、私も私なりに理解はいたしますけれども、その安全をいかに住民の皆さんの安心に結びつけていくのかということが非常に難しいところであります。
したがいまして、私は先ほど答弁申し上げましたように、まだまだ国のほうの我々が納得できる説明が十分になされてないというふうにも思いますから、国のほうから、ぜひ山口県に来ていただいて、私どもも関係市町に集まっていただいて、そういう説明会ができるような場を設けたいと思っておりますから、そこで十分情報交換をしながら、県としてどのようにしたらいいのかということを考えていきたいと思います。そして、その中で、具体的にどういうケースだったら受け入れられるのかということも考える必要性の中で現地に行く必要があれば調査に入りたいと。
既に私どもも昨年の八月にも石巻等にも行ったりとか、あるいは東京都のほうにも行って、いろいろ状況は把握をしておりますけれども、改めて必要があれば調査に行きたいというふうに考えているところであります。
以上でございます。

2012年3月1日

平成23年11月定例県議会 TPPと本県農業について

(1)TPPと本県農業について

県政に携わる者の大事な役割は、地方の現場の視点から、地域と暮らしにかかわりの深い国の政策を検証し、それがより良いものになるよう発言し、行動していくことであります。
そういう考えに立って、この度は「TPPと本県農業について」ということで質問いたします。
ご案内のように、TPPに関しては、これに参加すれば日本の農業は壊滅し、諸制度はアメリカ化されて、日本は崩壊するとのTPP亡国論と、TPPに参加することによって日本はアジア・太平洋地域の成長を取り込み、経済的繁栄の道が拓けるとのTPP成長論があり、この二つの主張は激しく対立していて、未だ、我が国はTPPに関し国論は一つに収斂していない状況にあります。
そうした中、野田総理は、ホノルルAPEC首脳会合出席の前日、11月11日に記者会見し、TPP交渉参加に向けて関係国と協議に入ることを表明しました。事実上、TPP参加の方向を明確にしたものと言えます。
私は、我が国がTPPに参加することについては慎重論であり、どちらかと言えば反対の考えを持っていました。
しかし、TPP交渉参加の方向が明確になった今日、最終的にTPPに参加するかどうかは不確定とはいえ、その可能性は大きいと見なければなりません。よって、そうした現実を踏まえ、県としても、その場合に備えて特に影響が大きいと見られる農業分野において今から必要な施策を講じていくことが求められます。

そのことにつき、以下7項目、県のご所見をお伺いいたします。

質問の第一は、TPP交渉参加についてであります。尚、ここではTPP関係国との協議も、実質的な交渉参加と見做してお尋ねしていることをお断りしておきます。
さて。私は、TPP交渉に参加するに当たって、我が国は、二つの原則的立場を堅持すべきであると考えています。
一つは、これまで貿易に関する国際会議の場で、我が国が主張してきた「多様な農業の共存」という理念を守る立場であります。
TPPは、「例外なき関税撤廃」を原則としており、センシティブ品目ということで配慮を例外的に認める品目についても、一定の猶予期間を経て、全て関税をなくすことを目標としております。
しかし、人口増大による世界的な食糧不足が将来予測される今日、それぞれの国々が、適宜必要な農業生産基盤を確保しておくことは、食糧危機を回避する上からも重要なことであり、「例外なき関税撤廃」の原則は、「多様な農業の共存」という理念が求める実際上の要請に対して、運用上柔軟に対応することを認めるものであっていいと考えます。

その二は、食とくらしの安心、安全を守る立場です。
TPP関係省庁がまとめた「TPP協定交渉の概括的現状」という資料を見ますと、輸入食品の安全性や食品の安全基準については、「現在のところ、牛肉の輸入規制、食品添加物、残留農薬基準や遺伝子組み換え食品の表示ルール等、個別の食品安全基準の緩和は議論されていませんが、今後、提起される可能性も排除されません。」と報告されています。
我が国は、流通する食品の残留農薬に関する制度を、2006年にネガティブリスト制度から、ポジティブリスト制度に切り替えました。ネガティブリスト制度では、指定された農薬だけが規制され、それ以外の農薬は、いわば野放し状態であったものを、ポジティブリスト制度では、指定された農薬は勿論、それ以外の農薬にも全て残留基準の規制が適用されます。
こうした食品安全基準に関する規制の緩和が、TPP交渉では議論される可能性があることを、この資料は示唆していますが、その際、食とくらしの安心、安全を守る立場を堅持して交渉の望むべきであることは当然であります。
そこでお尋ねです。以上TPP交渉参加にあたって、我が国が守るべき原則的立場について私の考えを申し上げましたが、知事は、本県の農業及び県民の食とくらしの安心、安全を守る立場にあるものとして、我が国のTPP交渉参加に対し、どういうことを望んでおられるのかご所見をお伺いいたします。また、そのお考えを、どのようにして国にお伝えになるのか併せお伺いいたします。第二の質問は、農業の6次産業化への取り組みについてであります。
山口市阿東徳佐にある農事組合法人Kは、今年の秋、山口県農業振興賞を受賞いたしました。法人設立は平成19年で、農地面積は37ha、3分の2は、米をつくり、他に大豆、麦、玉ねぎ、白菜、キャベツなどの生産に取り組んでいます。
法人構成員は9名で、年間粗収入は、補助金も含めて約5000万円です。作り手がいなくなった近隣集落の農地も、順次引き受けてきており、徳佐の地域農業を守る中核営農組織の一つとして、着実な歩みと続けております。
私は、先般11月中旬、この法人Kを訪ねました。訪ねた目的は、TPPについてどういう思いを持っておられるか、率直な生の声を聞きたいと思ったからです。また、農事組合法人の実態もよく知りたいとの思いもありました。
この法人の方々が、先ず語っておられたのは、法人が出来て、この地域と農業が守られていく基盤が出来たことの意義でした。また、法人が、コメ、大豆、麦、野菜の生産を、集積した農地を最大限活用する年間計画を立てて行うようになり、村の人たちには、時給ということではあるが周年働ける農事作業があって、賃金が支払われるので、法人化が農家の所得向上につながったことを強調しておられました。
自慢は、「うちのコメは魚沼より、うまい。」ということ、法人の事務所は、メンバーの納屋で、そうしたハード面には極力お金をかけず、将来の投資に備えて利益を蓄積する堅実な農業経営を、K法人は続けております。
以上、K農業法人を紹介したのは、現民主党政権が、農業政策の主要な柱に位置付けた「農業の6次産業化(これは、農業生産の1次と加工の2次と流通サービスの3次を足す若しくは掛けると6次になることからつくられた造語で、農業を生産のみならず、加工、流通サービスも含めたものにしていくことを云う)」を実現していくためには、こうした農業法人において6次産業化への取り組みがなされるようになることが大事で、そのためには、どういう政策が必要か、という視点から6次産業化の政策は検討されるべきと思うからです。
現民主党政権は、昨年3月に策定した新たな「食料・農業・農村基本計画」において、「戸別所得補償制度の本格実施」「農山漁村の6次産業化」「食の安全と消費者の信頼の確保」の三つを、新たな農政の柱と位置づけました。
そして、昨年11月には六次産業化法、正式な法律名は「地域資源を活用した農林漁業者等による新事業の創出等及び地域の農林水産物の利用促進に関する法律」ですが、これを国会で成立させ、12月に公布しました。
さらに、政府は今年の10月25日に、TPP参加に対応する施策として「わが国の食と農林漁業の再生のための基本方針・行動計画」を策定しましたが、ここで繰り返し強調されているのも、6次産業化であります。
6次産業化の理論的裏付けになっていると思われるものの一つは、平成17年に行われた国内の飲食費のフローについてのトータルな調査分析です。この調査では、食材として供給された食用農水産物10兆6千億円が、加工・流通を経て最終消費額は73兆6千億円となることが分析結果として示されています。
1次の生産物価格総額が、2次の加工、3次の流通を経て、最終消費額においては7倍強に拡大しています。そこで、1次生産の農業から、2次加工、3次流通の付加価値を取り込む農業に進化して、農業所得の向上確保を図る、これが、農業の6次産業化推進政策の背景にある考えであるといえます。
私は、こうした農業の6次産業化の推進は、我が国の農政の方向として正しく、大いに力を入れていくべきだと考えるものでして、現政権が6次産業化に着目して、農業政策の柱に据えたことは評価するものであります。
ただ問題は、6次産業化を実際担うのは農業法人であろうと思いますが、6次産業化に取り組む農業法人の在り方や、現在ある平均的な農業法人が、6次産業化していくための道筋が、具体的に示されていないということであります。
そこで、私が訴えたいことは、国に頼ることなく、国の政策を待つことなく、本県農業の課題として、TPP参加の可能性等将来を見通した上で、本県農業の6次産業化に取り組んでほしいということであります。そして、私が訪ねたような農業法人が、6次産業化できる具体的な道筋と法人経営の在り方を追求してほしいと思います。
ご承知の方も多いと思いますが、本県には、昭和60年頃から農業の6次産業化に着目し、それを実践して成功している農業法人があります。同じく、阿東徳佐にある船方農場が、それです。
農業の6次産業化を、最初に提唱したとされる今村奈良臣東大名誉教授が、その着想を得たのは、昭和63年、船方農場が、朝日農業賞を受賞した際、同教授が、審査員として船方農場を視察したことがヒントになったのではないかという見方もあるほどです。
昭和60年代から、農業の6次産業化を唱え、悪戦苦闘しながら、それを実践して、1次の農業生産業、2次の加工業、3次のサービス業を、それぞれ独立の事業体としつつ、グループとして統括する形態にして事業経営を軌道に乗せ、現在更に発展を続けている船方農場の歩みは、農業の6次産業化を考える上で、多くの参考事例に満ちています。
私は、先般、船方グループの坂本代表から、同グループの、これまでの6次産業化への取り組みと成果につき説明を受け、その感を深くしました。
そこでお尋ねです。私は、本県の先進事例も参考にしつつ、本県農業の6次産業化に取り組むべきと考えますが、県のご所見をお伺いいたします。

質問の第三は、有機農業についてであります。端的にお伺いいたします。
第一点は、有機農業の技術体系の確立についてお伺いいたします。
本県は、平成19年に「山口県有機農業推進計画」を策定し、平成23年度までに、普通作物で1体系、園芸作物で1体系の有機栽培の技術確立に取り組むこととしました。普通作物は米で、園芸作物はホウレンソウと承知しているところでありますが、計画期限である本年度において、その技術体系の確立はどうなっているのか、お伺いいたします。

第二点は、有機認定の農家数及び圃場面積についてであります。
平成22年度における山口県の有機認定の農家数は9戸、圃場面積は359aであります。これは、47都道府県の中で、いずれも少ない方から2位であります。最下位は、いずれも東京であります。全国平均を見ますと、農家数は85戸、圃場面積は19290aであります。山口県は、全国平均と比較しても、少ない方へ大きくかけ離れています。
こうした数値から見ますと、本県は、有機農業への取り組みに熱心でないとの見方が成り立ちますが、県は、有機認定の農家数及び圃場面積の現状を、どう受け止めているのか、お伺いいたします。

第三点は、今後の有機農業への取り組みについてであります。
農薬や化学肥料を使わない自然循環型の農法である有機農業は、健康な体をつくる安心・安全の農作物を求める消費者ニーズに答えるものであり、環境負荷が少なく、自然環境と調和した永続性のある農業であることから、大いにその普及が図られて然るべきと考えます。
国が、平成18年「有機農業の推進に関する法律」を制定したのを受けて、県は平成19年に「山口県有機農業推進計画」を策定し、その取り組みを進めてきたところでありますが、普及の実は上がっていない感があります。
ついては、今後本県は、有機農業の普及にどう取り組むお考えなのか、お伺いいたします。

質問の第四は、土地改良事業についてであります。
TPPを含む高いレベルの経済連携と農業再生を両立させるというのが、現政権の方針でありますが、農業再生ために強調されているのは、6次産業化であって、農業生産基盤の整備という観点からの具体的政策が伴っていないことは、残念であります。
TPP対応のために10月25日に決定された「農林漁業再生のための基本方針」を見ても、既に区画整備されている水田を、畦畔除去等により更に大区画化を進めるとのことは述べられていますが、水田の汎用化についての言及がないことは納得がいきません。米、野菜、畑作の計画的作付が可能になる水田の汎用化は、農業経営を強化する上において不可欠の生産基盤整備であるからです。
土地改良事業費は、国においても、県においても平成22年度から大幅に減っております。国の予算で見ますと、平成21年度は5772億円であったのが、平成22年度には半分以下の2129億円となっております。
本県予算では、平成21年度は144億円であったのが、翌22年度には、108億円と、3分の1近く減っております。
こうしたことの影響が、本県でも圃場整備事業に取り組んでいるところに及んでおり、当初計画通りの予算が確保できないため、事業の進捗が遅れて関係者が苦慮する事態が生じております。
以上、土地改良事業が現在置かれている状況の一端を申し上げましたが、本当に強い農業をつくるというのであれば、ソフト、ハード両面からの取り組みが必要であり、ハード面での主たる施策となるのが、農業生産基盤を整備する土地改良事業であります。
本県の、土地改良事業の整備目標は、「やまぐち食と緑のプラン21」に示されていまして、平成22年までに圃場整備率85%を達成することであります。

そこで、一点目のお尋ねですが、現時点での圃場整備率はどうなっているのか、お伺いいたします。
次に二点目は、本県の今後の土地改良事業の方針と計画についてお尋ねです。
今後、県は、水田の汎用化や水田区画の拡大等について具体的に整備目標を定めた土地改良事業の方針と計画を策定して、本県の農業生産基盤の整備を強力に進めるべきと考えますが、このことにつきご所見をお伺いいたします。

質問の第五は、自給率の向上についてであります。
平成5年に94歳で逝去するまで40年近く世界経済調査会の理事長職にあって、戦後歴代内閣の経済指南番と呼ばれた木内信胤氏の代表的な著作の一つに「当来の経済学」というのがあります。
私が、この本を買い求めたのは昭和55年で、30年ほど前、山口市議会議員になりたての頃ですが、以来折々にこの本を読んでは様々なことで示唆を受けてきました。
この本に、「国民が求める農政の目標は何か」という文章があります。農業のことを考える上で参考になる内容ですので、先ずその一部を紹介したいと思います。

「自給度は、あまり無理がなくて出来る範囲で、成るべく向上して欲しい。」
「少数の優秀な専業農家があることはもちろん非常に望ましいが、日本農業の担い手は兼業農家であっていい。」
「人間は天地の間に身を置き、天然自然の理に従って生きている。その事実をまともに表現しているのが農業だから、これに従事することによって人間は、自然自然に天然自然の道というものを会得して行く。」
「零細な兼業農家が、なお農業を棄てないのは、農業のこのような性質による。だからこれからの日本の農業は、今の兼業農家主体をさらに一歩進めて、〝老若男女を問わず、できるだけ多くの日本国民が、一生のうち、一年のうち、一週間のうち、いくらかは農事に携わる機会を持つ″ということになればいい。」

木内氏は、このような考え方を新しい意味での「国民皆農思想の登場」と呼び、「日本国民が真に求めている農政の目標」は、かくの如きものであるに違いない、との考えを表明しています。
私は、こうした考え方に共感し、日本農業の目標として、その方向に進むことを支持するものです。
国民の多くが、生活の一部に、土に親しむ農を取り込むようになることは、国民の暮らしの在り方が、より健康的なものとなり、国全体としても、健全で落ち着いた国になるように思われるからです。
そして、そうした意味での国民皆農が、我が国の農地を守り、農政の目標である食料自給率の向上にもつながるように思う次第です。
ご案内のように、現在の我が国農政の目標は、カロリーベースで食料自給率40%の現状にあるのを、50%までに引き上げようというものであります。
目下、そのことに向けて様々な諸施策が推進されていますが、私は、そういう施策の一つとして、家庭の食料自給率を高める施策を推進してほしいと思っております。各々の家庭が、少しでも農に携わるようになれば、自ずと家庭の食料自給率は高まるでしょうから、このことは、木内氏の言う国民皆農に通ずる施策の推進であるとも言えます。
先ほど紹介した船方グループ代表の坂本多旦(かずあき)氏は、自らの農業経営に打ち込む一方、農林水産省の農業・農村政策審議会委員として、多年国の農業政策の形成にかかわり、日本の農業はどうあるべきかの課題にも真剣に取り組んでこられました。そして最近、新たな農地利用体系の確立を提言した「日本農業の課題と対応策」というレジメをまとめられました。
このレジメは、農地を、自然的な環境や社会的な環境の視点から、経済的には成立しなくても政策として守るべき「環境農地」と、経営活動としては活用しにくいが兼業及び自給農業に向いている「自給農地」と、農地の面的な集積をはかり経営的に活用できる「経営農地」の三つに分けて、我が国の農業を組み立てていくことを提案しています。
坂本氏ならではの的確な提案で、早く国の農地政策として採用されたらいいと思いますが、この三つの農地の中で、農地を守るために支援と工夫を最も要するのは自給農地であります。自給農地の多くは中山間地であり、そこでの農業の担い手は、ほとんど兼業農家ですが、離農や耕作放棄地が増えていて、中山間地直接支払制度で何とか食い止めようとしているのが現状です。
そこで、坂本氏が想定するように中山間農地の農業の担い手として兼業農家の外に、自給農業を楽しむ一般市民が新たに加わるようにすることは、謂わば国民参加で中山間地の農地を守るようにして行くことであり、家庭の食料自給率を上げ、ひいては国の食料自給率を上げることにもなり、誠に望ましい方向だと思います。

そこでお尋ねです。以上申し上げてきましたことから、食料自給率の向上にもつながる施策として、中山間地の農地において、一般市民が自給農業を楽しむことができる環境の整備に取り組むことを提案したいと思いますが、ご所見をお伺いいたします。

質問の第六は、フードバレーの形成についてであります。
農業を成長産業にすることに、世界の中で最も成功している国はオランダであります。オランダは、農業立国の農業大国であり、米国に次ぐ世界第二位の食料輸出大国であります。そうしたオランダ農業の核になっているのが、ワーヘニンゲン大学を中心とするフードバレーの存在です。
フードバレーは、「農と食のシリコンバレー版」ともいうべきもので、「農と食と健康に関する科学と技術とビジネスの集積地」と理解していいと思います。
私は、このことを平成22年11月県議会で取り上げ、本県農業を成長産業にし、新しい産業集積を実現していくために、フードバレーの形成に取り組むことを提案いたしました。
これに対し、二井知事から「産学公が知恵や技術を持ち寄り、本県のポテンシャルを活かした魅力ある産業の形成を図っていくこと、いわゆるフードバレー的発想が重要であり、私もそのことが農林水産業の成長にもつながるものと考えております。」との答弁をいただきました。フードバレー的発想が重要であるとの認識を表明いただいたことで、この質問も意義があったと思っています。
さて現政権は、農業を6次産業化して成長産業にするとの戦略を打ち出しておりますが、それもフードバレーの形成があって、本格的なものになると思われます。
そこでこの度は、フードバレーの形成について、さらに一歩踏み込んだ具体的な提案をしたいと思います。
私は、本県で新たな産業集積の可能性がある地域は、新山口駅の南部に広がる一帯であるとみております。現在、新山口駅から国道2号線までは市街化しておりますが、国道2号線から南に阿知須のきらら浜に至る一帯は、農業地帯が広がっております。私は、この地域が本県におけるフードバレーの形成地としてふさわしいのではないかとみております。
この一帯は、近くに空港があり、新幹線の駅もあり、道路網も整っていて新たな産業の集積地としては高いポテンシャルを秘めております。
ここに如何なる新たな産業の集積を図っていくかに、大げさに言えばこれからの山口県の将来がかかっていると私は見ておりますが、穀倉地帯が広がるこの一帯は、例えば自動車産業等の製造業の集積地としては相応しくなく、フードバレーの形成地として適地であるとみている次第であります。
平成17年に、小郡町、阿知須町は合併により山口市となりましたので、この一帯はすべて山口市でありますが、山口市は今、商工会議所が中心になって、アクティブエイジングシティ構想の実現に取り組もうとしております。
アクティブエイジングとは、1999年からWHO(世界保健機構)により提唱された取り組みで、健康寿命を伸ばし、すべての人々が、年を重ねても生活の質が低下しないように、健康で安全に社会参加できるよう促すことです。
そういう方向で、山口市を世界一のアクティブエイジングシティにすることを目的に、山口アクティブエイジングシティ構想は策定され、その構想は、山口市の総合計画に盛り込む方向での検討と、もう一つは、この構想が、経団連の「未来都市モデルプロジェクト」に選定されており、日立製作所等経団連会員企業や山口大学、県立大学等を構成メンバーとする協議会で構想具体化の検討が始まろうとしております。
私は、この構想とフードバレーの形成ということはマッチングしており、新山口駅の南から阿知須きらら浜方面に広がる一帯にフードバレーを形成していくということは、農振地域の土地利用計画の見直し等も必要になってくることから、すぐすぐにというわけにはいきませんが、将来に向けて長期展望の中で実現すべきビジョンとして、県・市共同して本格的な検討を始めていいのではないかと思う次第です。
つきましては、以上申し上げましたことを踏まえ、改めて本県におけるフードバレーの形成につき、ご所見をお伺いいたします。

質問の第七は、志ある農業についてであります。
「安全な食べ物という農業の原点に戻ろう。」 秋川実さんが、そう決意して秋川牧園を創業したのは、今から約40年前の昭和47年のことでした。
当時は、昭和40年から始まった海外鶏いわゆる「青い目の鶏」の輸入攻勢で、国内に約千四百軒あった養鶏業者のほとんどが、廃業倒産か下請に追い込まれていました。
秋川さんが、専務理事をしていた養鶏農協も、御多分にもれず、懸命に防戦するも力尽き、昭和42年倒産、以来秋川さんは10年間、負債整理の茨のむしろに座することになります。秋川牧園創業は、そうしたさなかのことでありました。
「あれから40年」は、綾小路きみまろのブラックユーモアの常とう文句でありますが、あれから40年。創業以来、理想の農と食を追求し続けて秋川牧園は、現在年商は40億円を超え、農業の会社としては日本で初めて株式上場し、健康で安全な食べ物の提供を、生産者、消費者と共に実現するリーディング・モデルカンパニーとして、着実な発展を続けております。
以上、山口市仁保にあります会社、秋川牧園を紹介いたしましたのは、農業においても大事なのは、原点の思い、そういう意味での志なのだ、ということをこの会社の歩みから感じたからであります。
「食は、命なり。」「食正しければ、命正し。」と言われますが、正しい食事が、健康な人づくり、健康な地域づくり、健康な国づくりの基本で、そのことは健康な体をつくる食料の生産から始まります。
戦後、国民を飢えさせないために食料増産を課題としてきた日本農業の、これからの課題は国民の体を健康にする農業への進化であります。」
私は、そういう意味でこれからの日本農業は、「健康な体をつくる食料の生産と流通を実現する。」との志に立ち、そういう農業として世界一になることを目指すべきだと考えます。
そういう日本農業は、たとえTPPに参加することになろうとも、日本国民の支持を得て守られ、世界の中で成長発展していくものと確信します。
勿論、志ある農業も、技術と経営が伴って成り立つものですが、経済的利益が先立つのではなく、志が先立つことが重要だと思う次第です。
「食料増産の農業から、健康な体をつくる農業へ。」「儲かる農業から、志ある農業へ。」、こうした方向で本県の農業が日本一になることを期待するものですが、このことにつきご所見をお伺いいたしまして、今回の質問を終わります。ご静聴ありがとうございました。

【回答】◎知事(二井関成君)
私からは、TPPと本県農業についてのお尋ねのうち、TPP交渉参加についてのお尋ねにお答えいたします。
TPP問題に関し、議員からは、多様な農業の共存と食と暮らしの安心・安全を守ることの二つの原則的な立場を堅持すべきとの御指摘がありました。
私も、仮に、農業分野で関税が撤廃され、安価な農産物が大量に輸入されることになれば、我が国の農業・農村は深刻な打撃を受けることが危惧され、多様な農業の共存の観点から、持続可能な農業を構築することの適切な措置を講ずることが必要であると考えております。
一方、食と暮らしの安心・安全を守ることにつきましては、食品表示制度等の規制や残留農薬の基準が緩和された場合に、例えば、ルールなき遺伝子組み換え食品等が流通すれば、国民の間で大きな不安が生ずることも懸念されるなど、まさに食の安心・安全の確保は、TPP参加の大前提となるものだと思います。
また、TPPは、農業分野のみならず、多くの分野で関税や非関税障壁の撤廃を目指す協定でありますので、各分野や国益全体に及ぼす影響等について、当然ながら慎重に議論し、取り組むことが必要であります。
しかしながら、政府におきましては、どの分野で関税や非関税障壁の撤廃を行うのか、今後の交渉はどう進めるのかという基本姿勢さえ明らかにしないままで、関係国との協議を開始するとの意向が示され、このことは国民に大きな不安と混乱を与える結果となっております。
したがいまして、私としては、まずは、国民の食の安心・安全の確保を前提に、政府の基本姿勢を明確にした上で、多様な農業の共存などの観点も含めて、想定される分野や影響、その対策等について多様な角度から国民的な議論を行っていただくことを強く願っております。
また、こうした視点に立って、引き続いて、全国知事会や中国地方知事会などあらゆる機会を通じて、私の考えを、国にしっかりと伝えていきたいと考えております。
そのほかの御質問につきましては、関係参与員よりお答えいたします。

【回答】◎農林水産部長(松永貞昭君)
TPPと本県農業について、数点のお尋ねにお答えします。
まず、本県農業の六次産業化への取り組みについてお答えします。
本県では、農業者が加工・販売分野に主体的に進出する六次産業化の取り組みは、所得の向上や農村の活性化に重要であると考えており、各種施策を推進した結果、農産加工品の開発・販売などによる集落営農法人の経営の多角化や女性グループの起業化の取り組みが拡大しております。
今後におきましては、六次産業化法の制定に伴う国の新規事業を活用し、山口県食品開発推進協議会と連携して、本年七月に設置した「山口六次産業化サポートセンター」において、専門知識を有する三名のプランナーが経営計画、資金計画などの策定を支援し、きめ細かな指導・助言を行うこととしております。
こうした取り組みを通じて、TPPのみならず貿易の自由化や産地間競争など、厳しい競争に的確に対応できるよう、農業法人を初め、農業者の六次産業化の取り組みを促進し、農業所得の向上に努めてまいります。
次に、有機農業についての三点のお尋ねにお答えします。
まず、有機農業の技術確立についてであります。
本県では、平成二十年度から、農林総合技術センターで水稲とホウレンソウの有機農業の栽培技術を確立する研究に取り組んでおります。
水稲では、鶏ふんをペレット状にした肥料や、六十度のお湯による種もみの消毒、機械による雑草防除などを組み合わせた技術を開発し、また、ホウレンソウでは、菜種油かすと魚の骨を加工した肥料、太陽熱を利用した土壌消毒、防虫ネットによる害虫の進入防止などを組み合わせた技術を開発し、それぞれ現地で適応性試験を実施し、平成二十四年度から県内各地に普及していくこととしております。
次に、有機JAS認定の現状についてであります。
有機JAS認定は、水稲や野菜では二年間連続して化学肥料、化学農薬を使用していない圃場で栽培していること、周辺から化学肥料や化学農薬が飛来、流入しないよう措置することなど、農業者の負担が大きい制度であることから、本県では、件数、面積とも伸び悩んでおります。
次に、今後の有機農業の普及についてであります。
TPPなどを背景に、有機農業は安心・安全な農産物を県民に供給する有効な手段の一つであると考えております。
このため、現在開発している技術の普及・定着の加速化、有機JAS認定よりも農業者の負担が軽減できる本県独自のエコやまぐち農産物認証制度の一層の推進、有機農業に取り組む経費の一部を助成する新たな制度の活用、山口県有機農業推進団体協議会と連携した情報交換会、技術研修会の開催などを通じて、有機農業の一層の普及・定着に取り組んでまいります。
次に、土地改良事業についての二点のお尋ねであります。
まず、圃場整備率についてであります。
圃場整備率については、お示しの「やまぐち食と緑のプラン21」において、要整備面積三万一千ヘクタールに対して八五%の整備目標を掲げておりますが、平成二十二年度末までの整備面積は、約二万二千六百ヘクタール、七二・七%の整備率にとどまっております。
この要因としては、経営面積が比較的小さい農家や兼業農家が多いこと、さらには、農業者の高齢化、後継者不足等により、地元の合意形成が遅延しているためと考えております。
次に、今後の土地改良事業の方針と計画の策定についてのお尋ねであります。
お示しのように、本県の農業生産基盤の整備を計画的に進めるためには、具体的な整備目標を定めた土地改良事業の方針と計画のもとに行うことが必要でありますが、TPP問題など農業をめぐる環境は大きく変化しており、まずは国が明確な方向を示すべきであると考えております。
県はこれまで、圃場整備や水田汎用化などの農業生産基盤に係る具体的な整備目標を定めた「やまぐち農業農村整備推進プラン」に基づき、各種基盤整備事業を推進してきたところでありますが、このプランは平成二十四年度を終期としております。
現在、国において、本年三月の東日本大震災を受け、一年前倒しをして、次期土地改良長期計画の策定作業が進められていることから、県としては、今後の国の動向を注視するとともに、市町はもとより農業生産法人や土地改良区などの農業関係団体の意向も踏まえ、生産基盤整備を着実に進めるための新たな推進プランの策定に向け、検討を進めてまいります。
次に、食料自給率の向上についてであります。
本県では、安心・安全な県産農水産物に対する県民の期待にこたえるため、地産地消の取り組みを核として、集落営農法人などの担い手を中心とした生産対策や、学校給食・販売協力店などと協働した需要拡大対策を一体的かつ積極的に推進し、県内食料自給率の向上に努めているところであります。
御提案のありました自給農業については、直接、食料自給率の向上にはつながらないものの、楽しみながら農作業を体験することにより、農業・農村に対する理解を深め、食料の大切さを実感できるなどの意義はあるものと考えております。
次に、フードバレーの形成についてお答えします。
農林水産物を活用して、加工、流通などの幅広い分野で、民間企業、研究機関、大学などの産学公と連携し、新たな加工技術や商品の開発、販路の開拓などを総合的に進めていくことは、本県の農林水産業の成長につながるものとして重要であると考えております。
このため、県としましては、平成十九年に産学公で構成する山口県食品開発推進協議会を設置し、その知識や技術を結集して、県産農水産物を素材にした外郎、焼き抜きかまぼこ、ジェル状の食酢加工品などの新商品を開発してきたところであります。
また、当協議会と連携し、六次産業化法の制定に伴う国の新規事業を活用して、本年七月に「山口六次産業化サポートセンター」を設置し、商品開発等の専門知識を有する三名のプランナーを配置するなど、農林漁業者が加工・販売分野に主体的に取り組む六次産業化を積極的に支援しております。
さらに、地産地消の取り組みが県内に幅広く普及・定着し、県産農水産物を利用する意識が高まる中で、食品加工や流通業者などと協働した取り組みを積極的に進めてきた結果、県産原料一○○%の豆腐、清酒、かまぼこなどの加工品の開発・販売に加え、県産食材一○○%の食のカタログギフトを制作・販売するなど、多くの成果が得られているところであります。
今後とも、これまでの成果を踏まえ、フードバレー的な視点も持ちながら、引き続き、さまざまな分野と連携して、県産農水産物を活用した技術開発、商品開発、販路開拓などの取り組みを一層拡大することとしております。
また、お示しのありました山口市南部におけるフードバレーの形成については、このような取り組みを進める中で、民間企業、市、関係団体などの機運が高まれば、検討に着手してまいりたいと考えております。
最後に、志ある農業についてのお尋ねであります。
担い手の減少・高齢化やTPPを初めとする貿易自由化の動きなど、農業を取り巻く環境が一段と厳しさを増す中で、県民の安心・安全な食を支える本県農業が持続的に発展していくためには、志ある人材を地域農業の中核となる担い手として確保・育成していくことが、何よりも重要と考えております。
このため、まず、農業に夢と志を抱く若者が円滑に就農し、定着できるよう、全国に先駆けて実施している就農相談から経営安定まで一貫したきめ細かな県独自の支援対策を一層充実強化し、農業・農村の活性化に不可欠な新たな人材を確保してまいります。
また、若者や女性・高齢者など多様な人材が活躍できる集落営農法人の設立を加速化するとともに、志を持ったリーダーを初め、法人経営の複合化・多角化を担う人材の育成に努めてまいります。
さらに、志を持ってすぐれた農業経営を実践している農業者を指導農業士として認定するなど、安心・安全な農産物の生産や青年農業者の育成の面から、本県農業を牽引する人材を幅広く確保していくこととしております。
県としましては、引き続き、こうした志を持った多様な人材の総力を結集して、足腰の強い本県農業を構築することにより、住み良さ日本一の元気県づくりにつなげていく考えであります。

2011年11月30日