平成24年2月定例県議会(2)人的支援について

(2)人的支援について

宮城県の南三陸町は、東日本大震災で津波による被害の程度が最も大きかった町です。
人口が、1万7千名余の町で死者・行方不明者793人、被災家屋は、流失・全壊・半壊以上が全家屋の6割に及び、最多時には、住民の半数以上が避難生活を余儀なくされました。
平地にあった建物は、住宅や民間施設だけではなく、町役場、警察署、公立病院等の公的施設も含め壊滅し、町職員も36名が犠牲になっています。その中には、津波に飲み込まれる直前まで避難を促す放送をし続けた女性職員もいました。
私は、この南三陸町を2月14日に、昨年の4月と10月に続いて3度目になりますが訪ねまして、復興に向けての取り組み状況や課題等について伺ってまいりました。
町役場では、総務課長や復興企画課長に対応いただきましたが、最も強調しておられたのは、用地関係の行政職員の人的応援が欲しいということでした。
南三陸町は、住まいや公共施設の高台移転を骨子とする復興10カ年計画を策定し、「復旧しながら復興する。」との考えで、復旧と復興を同時並行で進めており、通常年間予算70億円から80億円の町が、平成24年度は当初予算が350億円を超え、これまでの5年分に相当する予算規模を1年で執行することになる見通しであります。
多くの職員を津波で失った上に、復興に向けて膨大な仕事に取り組んでいかねばならない、南三陸町が人的支援を何にも増して強く求めている所以であります。
こうしたことは、南三陸町のみならず被災地の多くの自治体にとって共通する切実な課題です。
災害発生時の緊急対応としての人的支援が一段落した今日、次には、復興に向けての人的支援が求められています。
昨年12月20日、全国知事会は、被災三県の知事からの要請を受けて、各都道府県知事あてで、平成24年度における被災三県への復旧・復興のための職員派遣を依頼しております。
また、同12月26日、国土交通省 中国地方整備局長は、山口県知事あてで、特に土地区画整理事業及び防災集団移転促進事業に関し、当該分野における人的支援の積極的検討と、派遣可能人員等についての回答を依頼しております。
こうした人的支援の要請に、本県も可能な限り応えていくべきであると考えます。つきましては以下、人的支援について3点お尋ねいたします。
第一点は、東日本大震災発生後、今日までの本県の人的支援の実績についてお伺いいたします。
第二点は、被災地復興に向けた、これからの本県の人的支援の方針についてであります。国土交通省 中国整備局からの依頼にどう回答したのかも含めお伺いいたします。
第三点は、民間のマンパワーを活用する対策の提言についてであります。
災害時の自治体間の職員派遣は、今回の震災対応も含め地方自治法252条の17「職員の派遣」についての規定に基づいて行われています。
この制度は、これまでそれなりに有効に機能してきたと思われますが、今後の震災からの復興に向けての職員派遣は長期間にわたることが予想されますことから、この制度による人的支援には限界があるものと思われます。
自治体には、職員定数の縛りがあり、復興期間だけの職員採用ということも難しいと思われるからです。
一方、被災地自治体は復興に向けて、特に土地関係の専門的なマンパワーを通常時に増して数多く必要としております。
こうしたマンパワーの需給のギャップを解消する対策として、民間の力を活用する方策が考案されて然るべきと思われます。
私なりに常識的に思いつくことは、民間で土地関係の仕事をしている人達で震災復興のために働こうという方々のために、公共事業の用地関係の仕事をする際、修得しておくべき事項を教育する機関を設立して、そこから被災地へ人材を供給するということです。そこで学び、復興のために働いたことは、復興後、民間で土地関係の仕事をしていく上で役立つと思われますし、公務員の場合のように、長期派遣が終わった後の処遇の問題は生じません。
いずれにせよ被災地自治体が、復興に向けて必要なマンパワーを確保するには、地方自治法による職員派遣制度では限界があり、それを補完する民間のマンパワー活用の対策が不可欠と思われます。
つきましては、被災地復興に向けたマンパワー確保の対策として、行政の専門職員と同じように土地区画整理事業等の仕事に従事できる民間人の養成と活用を、国に提言すべきと考えますがご所見をお伺いいたします。

【回答】◎総務部長(平尾幸雄君)
東日本大震災復興支援についてのお尋ねのうち、人的支援についてお答えいたします。
まず、本県の人的支援の実績につきましては、発災直後の避難所の運営支援を初め、これまで福島県を中心に、被災三県に対して、各種技術職員や事務職員を実人員で四百人、延べ人員で約五千百人・日を派遣しております。
次に、今後の人的支援についてでありますが、県としては被災県のニーズに対応した即戦力となる人材を一人でも多く派遣したいと考えており、全国知事会等の要請にこたえるため、他県に先駆けまして、派遣可能な職員を庁内から公募するとともに、職員の職務経験が生かせるよう、受け入れ県と配属先の調整等を行ってまいりました。
この結果、来年度は福島県に十名、岩手県へ四名、宮城県へ二名の合計十六名の職員を一年間派遣することとしており、このうちお尋ねの中国地方整備局の要請に対しましては、土地区画整理事業の支援要員として、土木技術職員一名を岩手県宮古市に派遣することとしております。
次に、民間のマンパワーの活用についてでありますが、現在、被災自治体では、復興に向け増加する業務に対応するため、任期のある職員の採用や民間委託など、さまざまな取り組みがなされているところです。
したがって、お示しのような民間人の活用も含めた復興業務に当たる人材確保の方策につきましては、先般、国に設置された復興庁や復興局が被災自治体と連携し、そのニーズを踏まえながら検討されるべき課題であると考えており、本県として国に提言することは考えておりませんが、今後とも被災地復興に向けた人的支援の要請に対しては可能な限り対応してまいります。

2012年3月1日

平成24年2月定例県議会 再質問

災害廃棄物の広域処理受け入れについて再度お伺いいたします。
国が放射能汚染の安全性についての説明が十分でないということを知事、答弁の中で申されましたけど、私は、国が示しましたガイドラインを見まして、国はきちんと安全性の基準を示していると認識しております、理解しております。
それは、どういうことかと申しますと、これまでいわゆる放射性廃棄物として扱う基準としてキロ当たり百ベクレル、これを超えたものはそういうものとして扱うという、これまでの基準がある。
一方、今回は、八千ベクレル以下だったら埋め立て処分とか、そういうことが可能だというふうに国が示しているのは、これまで国が放射性廃棄物を扱う場合示してきた基準と食い違うのではないかという御指摘かと思うんですが、この百ベクレルという数値は、いわゆるクリアランスレベル、放射性物質として、汚染物質として扱う必要がなくて、もう一般のものとして扱って、そして出回っても何ら問題ないレベルというのが、いわゆる百ベクレル以下とされてるものでありますよね。
だから、今回のガイドラインを見ますと、いわゆる廃棄物の中で再生利用するものはこの百ベクレル以下のものにするという基準が示されておりますですね。
それから、埋め立て処分等するものにつきましては、八千ベクレル以下ということでありますが、何でこの八千ベクレルというのが設定されたのかという説明を見ますと、ベクレルというのは、放射性物質のほうから放射線が発される量をはかったものでありますが、それが人体等が受ける場合の人体等に与える影響をあらわした単位としてはシーベルトというのがありますですね。
それで、いわゆる八千ベクレル以下の廃棄物であれば、それのいろんな処理の作業等行ったとしても、一ミリシーベルトを超えることがないということで設定してるんだというふうに示されてありますですね。
この一ミリシーベルトというのは、いわゆる放射能についての考え方いろいろあるんでしょうけれども、この自然界にも放射能、放射線はあるわけでありまして、大体、日本人が年間で浴びている放射線の量が平均して一・五ミリシーベルトというふうに大体言われておりますですね。それ以下である一ミリシーベルト年間を超えないレベルだということで八千ベクレルというのが示されているということで、私は、国が示してる、国は安全性の基準はきちんと示しているというふうに理解しているわけでありまして、むしろ責任ある立場にある人たちがそこをきちんと説明することが十分じゃないということなのではないかと思っております。
一方、宮城県の村井知事は、県外の自治体が受け入れ基準を決めるなら、その基準に合ったものを受け入れてもらったらいいということも表明しておりますですよね。現に、山形県は、受け入れしています山形県は、四千ベクレル以下という基準を設定して受け入れをやっているわけでありますね。
でも先ほど知事は、東京の環境局に人を派遣していろいろと調べたということであったわけでありますが、被災地に派遣して、そして、どういう災害廃棄物であれば、そして、どういう方法であれば、そして、どの程度の量であれば受け入れが可能なのかどうかということの検討を実地調査も含めてやってみる必要があるんではないかと思うんですね。そういうお考えがあるのかどうか。そのことをお伺いいたしたいと思います。
もうすぐ三月十一日がやってまいります。いろんなことが、東日本大震災のことに関して報道される中で、心に響いたことの一つは、瀬戸内寂聴さんが、被災地でいろいろ説法をしておられる中で、「代受苦」と、かわりに苦しみを受けるということでありますけど、亡くなられた方々、被災された方々は、かわって苦しみを受けておられる。その苦しみというのは、被災してない我々のある意味想像を超えたものがあるのではないかなと思っております。
参考資料で、南三陸町の復興の計画と、あるいは震災被害が、津波の被害がどれほど大変だったのかというのをわかってもらうための資料をお配りしたわけでありますが、御承知のとおり、南三陸町は十五メートルほどの津波に襲われて、だけど庁舎は十二メートルで、町長さんは防災管理棟、これも高さが十二メートルで、防災管理棟にある無線機のアンテナにつかまってやっと助かったわけですよね。
ところが、きのうのニュースで、亡くなられた職員の遺族から、町長の指示が適切でなかったということで、その町長さん自身が訴えられてるということが報道されてまして、そのことに関してのマスコミのインタビューに非常に悲しそうな、つらそうな顔で答えておられたのを見て、本当に大変なことがあるんだなということを思うわけでありますね。
そういう被災地が今、手を差し伸べてほしいと切実に求めていることの一つが、この災害廃棄物の受け入れであります。
インターネットの書き込みにこういう言葉があったんだそうです。「瓦れきを受け入れないで東日本頑張れと言ってほしくない」と。確かに放射能についての不安感があるんであれば、政治、行政の責任において、そういう心配はないと判断できる基準を山口県なら山口県みずから決めて、そして、それに合ったものを受け入れていくということも検討されていいと、私は思います。
そういう意味で改めて被災地に実際、派遣して、どういう災害廃棄物であれば、どういう方法で、どの程度であれば本県が受け入れが可能なのか。そういうことの検討調査に取り組むべきと思いますが、このことにつきまして再度お伺いいたします。

【回答】◎知事(二井関成君)
再質問にお答えいたします。
ただいま国の安全基準について説明がありました。その安全基準そのものは、私も私なりに理解はいたしますけれども、その安全をいかに住民の皆さんの安心に結びつけていくのかということが非常に難しいところであります。
したがいまして、私は先ほど答弁申し上げましたように、まだまだ国のほうの我々が納得できる説明が十分になされてないというふうにも思いますから、国のほうから、ぜひ山口県に来ていただいて、私どもも関係市町に集まっていただいて、そういう説明会ができるような場を設けたいと思っておりますから、そこで十分情報交換をしながら、県としてどのようにしたらいいのかということを考えていきたいと思います。そして、その中で、具体的にどういうケースだったら受け入れられるのかということも考える必要性の中で現地に行く必要があれば調査に入りたいと。
既に私どもも昨年の八月にも石巻等にも行ったりとか、あるいは東京都のほうにも行って、いろいろ状況は把握をしておりますけれども、改めて必要があれば調査に行きたいというふうに考えているところであります。
以上でございます。

2012年3月1日

平成23年11月定例県議会 TPPと本県農業について

(1)TPPと本県農業について

県政に携わる者の大事な役割は、地方の現場の視点から、地域と暮らしにかかわりの深い国の政策を検証し、それがより良いものになるよう発言し、行動していくことであります。
そういう考えに立って、この度は「TPPと本県農業について」ということで質問いたします。
ご案内のように、TPPに関しては、これに参加すれば日本の農業は壊滅し、諸制度はアメリカ化されて、日本は崩壊するとのTPP亡国論と、TPPに参加することによって日本はアジア・太平洋地域の成長を取り込み、経済的繁栄の道が拓けるとのTPP成長論があり、この二つの主張は激しく対立していて、未だ、我が国はTPPに関し国論は一つに収斂していない状況にあります。
そうした中、野田総理は、ホノルルAPEC首脳会合出席の前日、11月11日に記者会見し、TPP交渉参加に向けて関係国と協議に入ることを表明しました。事実上、TPP参加の方向を明確にしたものと言えます。
私は、我が国がTPPに参加することについては慎重論であり、どちらかと言えば反対の考えを持っていました。
しかし、TPP交渉参加の方向が明確になった今日、最終的にTPPに参加するかどうかは不確定とはいえ、その可能性は大きいと見なければなりません。よって、そうした現実を踏まえ、県としても、その場合に備えて特に影響が大きいと見られる農業分野において今から必要な施策を講じていくことが求められます。

そのことにつき、以下7項目、県のご所見をお伺いいたします。

質問の第一は、TPP交渉参加についてであります。尚、ここではTPP関係国との協議も、実質的な交渉参加と見做してお尋ねしていることをお断りしておきます。
さて。私は、TPP交渉に参加するに当たって、我が国は、二つの原則的立場を堅持すべきであると考えています。
一つは、これまで貿易に関する国際会議の場で、我が国が主張してきた「多様な農業の共存」という理念を守る立場であります。
TPPは、「例外なき関税撤廃」を原則としており、センシティブ品目ということで配慮を例外的に認める品目についても、一定の猶予期間を経て、全て関税をなくすことを目標としております。
しかし、人口増大による世界的な食糧不足が将来予測される今日、それぞれの国々が、適宜必要な農業生産基盤を確保しておくことは、食糧危機を回避する上からも重要なことであり、「例外なき関税撤廃」の原則は、「多様な農業の共存」という理念が求める実際上の要請に対して、運用上柔軟に対応することを認めるものであっていいと考えます。

その二は、食とくらしの安心、安全を守る立場です。
TPP関係省庁がまとめた「TPP協定交渉の概括的現状」という資料を見ますと、輸入食品の安全性や食品の安全基準については、「現在のところ、牛肉の輸入規制、食品添加物、残留農薬基準や遺伝子組み換え食品の表示ルール等、個別の食品安全基準の緩和は議論されていませんが、今後、提起される可能性も排除されません。」と報告されています。
我が国は、流通する食品の残留農薬に関する制度を、2006年にネガティブリスト制度から、ポジティブリスト制度に切り替えました。ネガティブリスト制度では、指定された農薬だけが規制され、それ以外の農薬は、いわば野放し状態であったものを、ポジティブリスト制度では、指定された農薬は勿論、それ以外の農薬にも全て残留基準の規制が適用されます。
こうした食品安全基準に関する規制の緩和が、TPP交渉では議論される可能性があることを、この資料は示唆していますが、その際、食とくらしの安心、安全を守る立場を堅持して交渉の望むべきであることは当然であります。
そこでお尋ねです。以上TPP交渉参加にあたって、我が国が守るべき原則的立場について私の考えを申し上げましたが、知事は、本県の農業及び県民の食とくらしの安心、安全を守る立場にあるものとして、我が国のTPP交渉参加に対し、どういうことを望んでおられるのかご所見をお伺いいたします。また、そのお考えを、どのようにして国にお伝えになるのか併せお伺いいたします。第二の質問は、農業の6次産業化への取り組みについてであります。
山口市阿東徳佐にある農事組合法人Kは、今年の秋、山口県農業振興賞を受賞いたしました。法人設立は平成19年で、農地面積は37ha、3分の2は、米をつくり、他に大豆、麦、玉ねぎ、白菜、キャベツなどの生産に取り組んでいます。
法人構成員は9名で、年間粗収入は、補助金も含めて約5000万円です。作り手がいなくなった近隣集落の農地も、順次引き受けてきており、徳佐の地域農業を守る中核営農組織の一つとして、着実な歩みと続けております。
私は、先般11月中旬、この法人Kを訪ねました。訪ねた目的は、TPPについてどういう思いを持っておられるか、率直な生の声を聞きたいと思ったからです。また、農事組合法人の実態もよく知りたいとの思いもありました。
この法人の方々が、先ず語っておられたのは、法人が出来て、この地域と農業が守られていく基盤が出来たことの意義でした。また、法人が、コメ、大豆、麦、野菜の生産を、集積した農地を最大限活用する年間計画を立てて行うようになり、村の人たちには、時給ということではあるが周年働ける農事作業があって、賃金が支払われるので、法人化が農家の所得向上につながったことを強調しておられました。
自慢は、「うちのコメは魚沼より、うまい。」ということ、法人の事務所は、メンバーの納屋で、そうしたハード面には極力お金をかけず、将来の投資に備えて利益を蓄積する堅実な農業経営を、K法人は続けております。
以上、K農業法人を紹介したのは、現民主党政権が、農業政策の主要な柱に位置付けた「農業の6次産業化(これは、農業生産の1次と加工の2次と流通サービスの3次を足す若しくは掛けると6次になることからつくられた造語で、農業を生産のみならず、加工、流通サービスも含めたものにしていくことを云う)」を実現していくためには、こうした農業法人において6次産業化への取り組みがなされるようになることが大事で、そのためには、どういう政策が必要か、という視点から6次産業化の政策は検討されるべきと思うからです。
現民主党政権は、昨年3月に策定した新たな「食料・農業・農村基本計画」において、「戸別所得補償制度の本格実施」「農山漁村の6次産業化」「食の安全と消費者の信頼の確保」の三つを、新たな農政の柱と位置づけました。
そして、昨年11月には六次産業化法、正式な法律名は「地域資源を活用した農林漁業者等による新事業の創出等及び地域の農林水産物の利用促進に関する法律」ですが、これを国会で成立させ、12月に公布しました。
さらに、政府は今年の10月25日に、TPP参加に対応する施策として「わが国の食と農林漁業の再生のための基本方針・行動計画」を策定しましたが、ここで繰り返し強調されているのも、6次産業化であります。
6次産業化の理論的裏付けになっていると思われるものの一つは、平成17年に行われた国内の飲食費のフローについてのトータルな調査分析です。この調査では、食材として供給された食用農水産物10兆6千億円が、加工・流通を経て最終消費額は73兆6千億円となることが分析結果として示されています。
1次の生産物価格総額が、2次の加工、3次の流通を経て、最終消費額においては7倍強に拡大しています。そこで、1次生産の農業から、2次加工、3次流通の付加価値を取り込む農業に進化して、農業所得の向上確保を図る、これが、農業の6次産業化推進政策の背景にある考えであるといえます。
私は、こうした農業の6次産業化の推進は、我が国の農政の方向として正しく、大いに力を入れていくべきだと考えるものでして、現政権が6次産業化に着目して、農業政策の柱に据えたことは評価するものであります。
ただ問題は、6次産業化を実際担うのは農業法人であろうと思いますが、6次産業化に取り組む農業法人の在り方や、現在ある平均的な農業法人が、6次産業化していくための道筋が、具体的に示されていないということであります。
そこで、私が訴えたいことは、国に頼ることなく、国の政策を待つことなく、本県農業の課題として、TPP参加の可能性等将来を見通した上で、本県農業の6次産業化に取り組んでほしいということであります。そして、私が訪ねたような農業法人が、6次産業化できる具体的な道筋と法人経営の在り方を追求してほしいと思います。
ご承知の方も多いと思いますが、本県には、昭和60年頃から農業の6次産業化に着目し、それを実践して成功している農業法人があります。同じく、阿東徳佐にある船方農場が、それです。
農業の6次産業化を、最初に提唱したとされる今村奈良臣東大名誉教授が、その着想を得たのは、昭和63年、船方農場が、朝日農業賞を受賞した際、同教授が、審査員として船方農場を視察したことがヒントになったのではないかという見方もあるほどです。
昭和60年代から、農業の6次産業化を唱え、悪戦苦闘しながら、それを実践して、1次の農業生産業、2次の加工業、3次のサービス業を、それぞれ独立の事業体としつつ、グループとして統括する形態にして事業経営を軌道に乗せ、現在更に発展を続けている船方農場の歩みは、農業の6次産業化を考える上で、多くの参考事例に満ちています。
私は、先般、船方グループの坂本代表から、同グループの、これまでの6次産業化への取り組みと成果につき説明を受け、その感を深くしました。
そこでお尋ねです。私は、本県の先進事例も参考にしつつ、本県農業の6次産業化に取り組むべきと考えますが、県のご所見をお伺いいたします。

質問の第三は、有機農業についてであります。端的にお伺いいたします。
第一点は、有機農業の技術体系の確立についてお伺いいたします。
本県は、平成19年に「山口県有機農業推進計画」を策定し、平成23年度までに、普通作物で1体系、園芸作物で1体系の有機栽培の技術確立に取り組むこととしました。普通作物は米で、園芸作物はホウレンソウと承知しているところでありますが、計画期限である本年度において、その技術体系の確立はどうなっているのか、お伺いいたします。

第二点は、有機認定の農家数及び圃場面積についてであります。
平成22年度における山口県の有機認定の農家数は9戸、圃場面積は359aであります。これは、47都道府県の中で、いずれも少ない方から2位であります。最下位は、いずれも東京であります。全国平均を見ますと、農家数は85戸、圃場面積は19290aであります。山口県は、全国平均と比較しても、少ない方へ大きくかけ離れています。
こうした数値から見ますと、本県は、有機農業への取り組みに熱心でないとの見方が成り立ちますが、県は、有機認定の農家数及び圃場面積の現状を、どう受け止めているのか、お伺いいたします。

第三点は、今後の有機農業への取り組みについてであります。
農薬や化学肥料を使わない自然循環型の農法である有機農業は、健康な体をつくる安心・安全の農作物を求める消費者ニーズに答えるものであり、環境負荷が少なく、自然環境と調和した永続性のある農業であることから、大いにその普及が図られて然るべきと考えます。
国が、平成18年「有機農業の推進に関する法律」を制定したのを受けて、県は平成19年に「山口県有機農業推進計画」を策定し、その取り組みを進めてきたところでありますが、普及の実は上がっていない感があります。
ついては、今後本県は、有機農業の普及にどう取り組むお考えなのか、お伺いいたします。

質問の第四は、土地改良事業についてであります。
TPPを含む高いレベルの経済連携と農業再生を両立させるというのが、現政権の方針でありますが、農業再生ために強調されているのは、6次産業化であって、農業生産基盤の整備という観点からの具体的政策が伴っていないことは、残念であります。
TPP対応のために10月25日に決定された「農林漁業再生のための基本方針」を見ても、既に区画整備されている水田を、畦畔除去等により更に大区画化を進めるとのことは述べられていますが、水田の汎用化についての言及がないことは納得がいきません。米、野菜、畑作の計画的作付が可能になる水田の汎用化は、農業経営を強化する上において不可欠の生産基盤整備であるからです。
土地改良事業費は、国においても、県においても平成22年度から大幅に減っております。国の予算で見ますと、平成21年度は5772億円であったのが、平成22年度には半分以下の2129億円となっております。
本県予算では、平成21年度は144億円であったのが、翌22年度には、108億円と、3分の1近く減っております。
こうしたことの影響が、本県でも圃場整備事業に取り組んでいるところに及んでおり、当初計画通りの予算が確保できないため、事業の進捗が遅れて関係者が苦慮する事態が生じております。
以上、土地改良事業が現在置かれている状況の一端を申し上げましたが、本当に強い農業をつくるというのであれば、ソフト、ハード両面からの取り組みが必要であり、ハード面での主たる施策となるのが、農業生産基盤を整備する土地改良事業であります。
本県の、土地改良事業の整備目標は、「やまぐち食と緑のプラン21」に示されていまして、平成22年までに圃場整備率85%を達成することであります。

そこで、一点目のお尋ねですが、現時点での圃場整備率はどうなっているのか、お伺いいたします。
次に二点目は、本県の今後の土地改良事業の方針と計画についてお尋ねです。
今後、県は、水田の汎用化や水田区画の拡大等について具体的に整備目標を定めた土地改良事業の方針と計画を策定して、本県の農業生産基盤の整備を強力に進めるべきと考えますが、このことにつきご所見をお伺いいたします。

質問の第五は、自給率の向上についてであります。
平成5年に94歳で逝去するまで40年近く世界経済調査会の理事長職にあって、戦後歴代内閣の経済指南番と呼ばれた木内信胤氏の代表的な著作の一つに「当来の経済学」というのがあります。
私が、この本を買い求めたのは昭和55年で、30年ほど前、山口市議会議員になりたての頃ですが、以来折々にこの本を読んでは様々なことで示唆を受けてきました。
この本に、「国民が求める農政の目標は何か」という文章があります。農業のことを考える上で参考になる内容ですので、先ずその一部を紹介したいと思います。

「自給度は、あまり無理がなくて出来る範囲で、成るべく向上して欲しい。」
「少数の優秀な専業農家があることはもちろん非常に望ましいが、日本農業の担い手は兼業農家であっていい。」
「人間は天地の間に身を置き、天然自然の理に従って生きている。その事実をまともに表現しているのが農業だから、これに従事することによって人間は、自然自然に天然自然の道というものを会得して行く。」
「零細な兼業農家が、なお農業を棄てないのは、農業のこのような性質による。だからこれからの日本の農業は、今の兼業農家主体をさらに一歩進めて、〝老若男女を問わず、できるだけ多くの日本国民が、一生のうち、一年のうち、一週間のうち、いくらかは農事に携わる機会を持つ″ということになればいい。」

木内氏は、このような考え方を新しい意味での「国民皆農思想の登場」と呼び、「日本国民が真に求めている農政の目標」は、かくの如きものであるに違いない、との考えを表明しています。
私は、こうした考え方に共感し、日本農業の目標として、その方向に進むことを支持するものです。
国民の多くが、生活の一部に、土に親しむ農を取り込むようになることは、国民の暮らしの在り方が、より健康的なものとなり、国全体としても、健全で落ち着いた国になるように思われるからです。
そして、そうした意味での国民皆農が、我が国の農地を守り、農政の目標である食料自給率の向上にもつながるように思う次第です。
ご案内のように、現在の我が国農政の目標は、カロリーベースで食料自給率40%の現状にあるのを、50%までに引き上げようというものであります。
目下、そのことに向けて様々な諸施策が推進されていますが、私は、そういう施策の一つとして、家庭の食料自給率を高める施策を推進してほしいと思っております。各々の家庭が、少しでも農に携わるようになれば、自ずと家庭の食料自給率は高まるでしょうから、このことは、木内氏の言う国民皆農に通ずる施策の推進であるとも言えます。
先ほど紹介した船方グループ代表の坂本多旦(かずあき)氏は、自らの農業経営に打ち込む一方、農林水産省の農業・農村政策審議会委員として、多年国の農業政策の形成にかかわり、日本の農業はどうあるべきかの課題にも真剣に取り組んでこられました。そして最近、新たな農地利用体系の確立を提言した「日本農業の課題と対応策」というレジメをまとめられました。
このレジメは、農地を、自然的な環境や社会的な環境の視点から、経済的には成立しなくても政策として守るべき「環境農地」と、経営活動としては活用しにくいが兼業及び自給農業に向いている「自給農地」と、農地の面的な集積をはかり経営的に活用できる「経営農地」の三つに分けて、我が国の農業を組み立てていくことを提案しています。
坂本氏ならではの的確な提案で、早く国の農地政策として採用されたらいいと思いますが、この三つの農地の中で、農地を守るために支援と工夫を最も要するのは自給農地であります。自給農地の多くは中山間地であり、そこでの農業の担い手は、ほとんど兼業農家ですが、離農や耕作放棄地が増えていて、中山間地直接支払制度で何とか食い止めようとしているのが現状です。
そこで、坂本氏が想定するように中山間農地の農業の担い手として兼業農家の外に、自給農業を楽しむ一般市民が新たに加わるようにすることは、謂わば国民参加で中山間地の農地を守るようにして行くことであり、家庭の食料自給率を上げ、ひいては国の食料自給率を上げることにもなり、誠に望ましい方向だと思います。

そこでお尋ねです。以上申し上げてきましたことから、食料自給率の向上にもつながる施策として、中山間地の農地において、一般市民が自給農業を楽しむことができる環境の整備に取り組むことを提案したいと思いますが、ご所見をお伺いいたします。

質問の第六は、フードバレーの形成についてであります。
農業を成長産業にすることに、世界の中で最も成功している国はオランダであります。オランダは、農業立国の農業大国であり、米国に次ぐ世界第二位の食料輸出大国であります。そうしたオランダ農業の核になっているのが、ワーヘニンゲン大学を中心とするフードバレーの存在です。
フードバレーは、「農と食のシリコンバレー版」ともいうべきもので、「農と食と健康に関する科学と技術とビジネスの集積地」と理解していいと思います。
私は、このことを平成22年11月県議会で取り上げ、本県農業を成長産業にし、新しい産業集積を実現していくために、フードバレーの形成に取り組むことを提案いたしました。
これに対し、二井知事から「産学公が知恵や技術を持ち寄り、本県のポテンシャルを活かした魅力ある産業の形成を図っていくこと、いわゆるフードバレー的発想が重要であり、私もそのことが農林水産業の成長にもつながるものと考えております。」との答弁をいただきました。フードバレー的発想が重要であるとの認識を表明いただいたことで、この質問も意義があったと思っています。
さて現政権は、農業を6次産業化して成長産業にするとの戦略を打ち出しておりますが、それもフードバレーの形成があって、本格的なものになると思われます。
そこでこの度は、フードバレーの形成について、さらに一歩踏み込んだ具体的な提案をしたいと思います。
私は、本県で新たな産業集積の可能性がある地域は、新山口駅の南部に広がる一帯であるとみております。現在、新山口駅から国道2号線までは市街化しておりますが、国道2号線から南に阿知須のきらら浜に至る一帯は、農業地帯が広がっております。私は、この地域が本県におけるフードバレーの形成地としてふさわしいのではないかとみております。
この一帯は、近くに空港があり、新幹線の駅もあり、道路網も整っていて新たな産業の集積地としては高いポテンシャルを秘めております。
ここに如何なる新たな産業の集積を図っていくかに、大げさに言えばこれからの山口県の将来がかかっていると私は見ておりますが、穀倉地帯が広がるこの一帯は、例えば自動車産業等の製造業の集積地としては相応しくなく、フードバレーの形成地として適地であるとみている次第であります。
平成17年に、小郡町、阿知須町は合併により山口市となりましたので、この一帯はすべて山口市でありますが、山口市は今、商工会議所が中心になって、アクティブエイジングシティ構想の実現に取り組もうとしております。
アクティブエイジングとは、1999年からWHO(世界保健機構)により提唱された取り組みで、健康寿命を伸ばし、すべての人々が、年を重ねても生活の質が低下しないように、健康で安全に社会参加できるよう促すことです。
そういう方向で、山口市を世界一のアクティブエイジングシティにすることを目的に、山口アクティブエイジングシティ構想は策定され、その構想は、山口市の総合計画に盛り込む方向での検討と、もう一つは、この構想が、経団連の「未来都市モデルプロジェクト」に選定されており、日立製作所等経団連会員企業や山口大学、県立大学等を構成メンバーとする協議会で構想具体化の検討が始まろうとしております。
私は、この構想とフードバレーの形成ということはマッチングしており、新山口駅の南から阿知須きらら浜方面に広がる一帯にフードバレーを形成していくということは、農振地域の土地利用計画の見直し等も必要になってくることから、すぐすぐにというわけにはいきませんが、将来に向けて長期展望の中で実現すべきビジョンとして、県・市共同して本格的な検討を始めていいのではないかと思う次第です。
つきましては、以上申し上げましたことを踏まえ、改めて本県におけるフードバレーの形成につき、ご所見をお伺いいたします。

質問の第七は、志ある農業についてであります。
「安全な食べ物という農業の原点に戻ろう。」 秋川実さんが、そう決意して秋川牧園を創業したのは、今から約40年前の昭和47年のことでした。
当時は、昭和40年から始まった海外鶏いわゆる「青い目の鶏」の輸入攻勢で、国内に約千四百軒あった養鶏業者のほとんどが、廃業倒産か下請に追い込まれていました。
秋川さんが、専務理事をしていた養鶏農協も、御多分にもれず、懸命に防戦するも力尽き、昭和42年倒産、以来秋川さんは10年間、負債整理の茨のむしろに座することになります。秋川牧園創業は、そうしたさなかのことでありました。
「あれから40年」は、綾小路きみまろのブラックユーモアの常とう文句でありますが、あれから40年。創業以来、理想の農と食を追求し続けて秋川牧園は、現在年商は40億円を超え、農業の会社としては日本で初めて株式上場し、健康で安全な食べ物の提供を、生産者、消費者と共に実現するリーディング・モデルカンパニーとして、着実な発展を続けております。
以上、山口市仁保にあります会社、秋川牧園を紹介いたしましたのは、農業においても大事なのは、原点の思い、そういう意味での志なのだ、ということをこの会社の歩みから感じたからであります。
「食は、命なり。」「食正しければ、命正し。」と言われますが、正しい食事が、健康な人づくり、健康な地域づくり、健康な国づくりの基本で、そのことは健康な体をつくる食料の生産から始まります。
戦後、国民を飢えさせないために食料増産を課題としてきた日本農業の、これからの課題は国民の体を健康にする農業への進化であります。」
私は、そういう意味でこれからの日本農業は、「健康な体をつくる食料の生産と流通を実現する。」との志に立ち、そういう農業として世界一になることを目指すべきだと考えます。
そういう日本農業は、たとえTPPに参加することになろうとも、日本国民の支持を得て守られ、世界の中で成長発展していくものと確信します。
勿論、志ある農業も、技術と経営が伴って成り立つものですが、経済的利益が先立つのではなく、志が先立つことが重要だと思う次第です。
「食料増産の農業から、健康な体をつくる農業へ。」「儲かる農業から、志ある農業へ。」、こうした方向で本県の農業が日本一になることを期待するものですが、このことにつきご所見をお伺いいたしまして、今回の質問を終わります。ご静聴ありがとうございました。

【回答】◎知事(二井関成君)
私からは、TPPと本県農業についてのお尋ねのうち、TPP交渉参加についてのお尋ねにお答えいたします。
TPP問題に関し、議員からは、多様な農業の共存と食と暮らしの安心・安全を守ることの二つの原則的な立場を堅持すべきとの御指摘がありました。
私も、仮に、農業分野で関税が撤廃され、安価な農産物が大量に輸入されることになれば、我が国の農業・農村は深刻な打撃を受けることが危惧され、多様な農業の共存の観点から、持続可能な農業を構築することの適切な措置を講ずることが必要であると考えております。
一方、食と暮らしの安心・安全を守ることにつきましては、食品表示制度等の規制や残留農薬の基準が緩和された場合に、例えば、ルールなき遺伝子組み換え食品等が流通すれば、国民の間で大きな不安が生ずることも懸念されるなど、まさに食の安心・安全の確保は、TPP参加の大前提となるものだと思います。
また、TPPは、農業分野のみならず、多くの分野で関税や非関税障壁の撤廃を目指す協定でありますので、各分野や国益全体に及ぼす影響等について、当然ながら慎重に議論し、取り組むことが必要であります。
しかしながら、政府におきましては、どの分野で関税や非関税障壁の撤廃を行うのか、今後の交渉はどう進めるのかという基本姿勢さえ明らかにしないままで、関係国との協議を開始するとの意向が示され、このことは国民に大きな不安と混乱を与える結果となっております。
したがいまして、私としては、まずは、国民の食の安心・安全の確保を前提に、政府の基本姿勢を明確にした上で、多様な農業の共存などの観点も含めて、想定される分野や影響、その対策等について多様な角度から国民的な議論を行っていただくことを強く願っております。
また、こうした視点に立って、引き続いて、全国知事会や中国地方知事会などあらゆる機会を通じて、私の考えを、国にしっかりと伝えていきたいと考えております。
そのほかの御質問につきましては、関係参与員よりお答えいたします。

【回答】◎農林水産部長(松永貞昭君)
TPPと本県農業について、数点のお尋ねにお答えします。
まず、本県農業の六次産業化への取り組みについてお答えします。
本県では、農業者が加工・販売分野に主体的に進出する六次産業化の取り組みは、所得の向上や農村の活性化に重要であると考えており、各種施策を推進した結果、農産加工品の開発・販売などによる集落営農法人の経営の多角化や女性グループの起業化の取り組みが拡大しております。
今後におきましては、六次産業化法の制定に伴う国の新規事業を活用し、山口県食品開発推進協議会と連携して、本年七月に設置した「山口六次産業化サポートセンター」において、専門知識を有する三名のプランナーが経営計画、資金計画などの策定を支援し、きめ細かな指導・助言を行うこととしております。
こうした取り組みを通じて、TPPのみならず貿易の自由化や産地間競争など、厳しい競争に的確に対応できるよう、農業法人を初め、農業者の六次産業化の取り組みを促進し、農業所得の向上に努めてまいります。
次に、有機農業についての三点のお尋ねにお答えします。
まず、有機農業の技術確立についてであります。
本県では、平成二十年度から、農林総合技術センターで水稲とホウレンソウの有機農業の栽培技術を確立する研究に取り組んでおります。
水稲では、鶏ふんをペレット状にした肥料や、六十度のお湯による種もみの消毒、機械による雑草防除などを組み合わせた技術を開発し、また、ホウレンソウでは、菜種油かすと魚の骨を加工した肥料、太陽熱を利用した土壌消毒、防虫ネットによる害虫の進入防止などを組み合わせた技術を開発し、それぞれ現地で適応性試験を実施し、平成二十四年度から県内各地に普及していくこととしております。
次に、有機JAS認定の現状についてであります。
有機JAS認定は、水稲や野菜では二年間連続して化学肥料、化学農薬を使用していない圃場で栽培していること、周辺から化学肥料や化学農薬が飛来、流入しないよう措置することなど、農業者の負担が大きい制度であることから、本県では、件数、面積とも伸び悩んでおります。
次に、今後の有機農業の普及についてであります。
TPPなどを背景に、有機農業は安心・安全な農産物を県民に供給する有効な手段の一つであると考えております。
このため、現在開発している技術の普及・定着の加速化、有機JAS認定よりも農業者の負担が軽減できる本県独自のエコやまぐち農産物認証制度の一層の推進、有機農業に取り組む経費の一部を助成する新たな制度の活用、山口県有機農業推進団体協議会と連携した情報交換会、技術研修会の開催などを通じて、有機農業の一層の普及・定着に取り組んでまいります。
次に、土地改良事業についての二点のお尋ねであります。
まず、圃場整備率についてであります。
圃場整備率については、お示しの「やまぐち食と緑のプラン21」において、要整備面積三万一千ヘクタールに対して八五%の整備目標を掲げておりますが、平成二十二年度末までの整備面積は、約二万二千六百ヘクタール、七二・七%の整備率にとどまっております。
この要因としては、経営面積が比較的小さい農家や兼業農家が多いこと、さらには、農業者の高齢化、後継者不足等により、地元の合意形成が遅延しているためと考えております。
次に、今後の土地改良事業の方針と計画の策定についてのお尋ねであります。
お示しのように、本県の農業生産基盤の整備を計画的に進めるためには、具体的な整備目標を定めた土地改良事業の方針と計画のもとに行うことが必要でありますが、TPP問題など農業をめぐる環境は大きく変化しており、まずは国が明確な方向を示すべきであると考えております。
県はこれまで、圃場整備や水田汎用化などの農業生産基盤に係る具体的な整備目標を定めた「やまぐち農業農村整備推進プラン」に基づき、各種基盤整備事業を推進してきたところでありますが、このプランは平成二十四年度を終期としております。
現在、国において、本年三月の東日本大震災を受け、一年前倒しをして、次期土地改良長期計画の策定作業が進められていることから、県としては、今後の国の動向を注視するとともに、市町はもとより農業生産法人や土地改良区などの農業関係団体の意向も踏まえ、生産基盤整備を着実に進めるための新たな推進プランの策定に向け、検討を進めてまいります。
次に、食料自給率の向上についてであります。
本県では、安心・安全な県産農水産物に対する県民の期待にこたえるため、地産地消の取り組みを核として、集落営農法人などの担い手を中心とした生産対策や、学校給食・販売協力店などと協働した需要拡大対策を一体的かつ積極的に推進し、県内食料自給率の向上に努めているところであります。
御提案のありました自給農業については、直接、食料自給率の向上にはつながらないものの、楽しみながら農作業を体験することにより、農業・農村に対する理解を深め、食料の大切さを実感できるなどの意義はあるものと考えております。
次に、フードバレーの形成についてお答えします。
農林水産物を活用して、加工、流通などの幅広い分野で、民間企業、研究機関、大学などの産学公と連携し、新たな加工技術や商品の開発、販路の開拓などを総合的に進めていくことは、本県の農林水産業の成長につながるものとして重要であると考えております。
このため、県としましては、平成十九年に産学公で構成する山口県食品開発推進協議会を設置し、その知識や技術を結集して、県産農水産物を素材にした外郎、焼き抜きかまぼこ、ジェル状の食酢加工品などの新商品を開発してきたところであります。
また、当協議会と連携し、六次産業化法の制定に伴う国の新規事業を活用して、本年七月に「山口六次産業化サポートセンター」を設置し、商品開発等の専門知識を有する三名のプランナーを配置するなど、農林漁業者が加工・販売分野に主体的に取り組む六次産業化を積極的に支援しております。
さらに、地産地消の取り組みが県内に幅広く普及・定着し、県産農水産物を利用する意識が高まる中で、食品加工や流通業者などと協働した取り組みを積極的に進めてきた結果、県産原料一○○%の豆腐、清酒、かまぼこなどの加工品の開発・販売に加え、県産食材一○○%の食のカタログギフトを制作・販売するなど、多くの成果が得られているところであります。
今後とも、これまでの成果を踏まえ、フードバレー的な視点も持ちながら、引き続き、さまざまな分野と連携して、県産農水産物を活用した技術開発、商品開発、販路開拓などの取り組みを一層拡大することとしております。
また、お示しのありました山口市南部におけるフードバレーの形成については、このような取り組みを進める中で、民間企業、市、関係団体などの機運が高まれば、検討に着手してまいりたいと考えております。
最後に、志ある農業についてのお尋ねであります。
担い手の減少・高齢化やTPPを初めとする貿易自由化の動きなど、農業を取り巻く環境が一段と厳しさを増す中で、県民の安心・安全な食を支える本県農業が持続的に発展していくためには、志ある人材を地域農業の中核となる担い手として確保・育成していくことが、何よりも重要と考えております。
このため、まず、農業に夢と志を抱く若者が円滑に就農し、定着できるよう、全国に先駆けて実施している就農相談から経営安定まで一貫したきめ細かな県独自の支援対策を一層充実強化し、農業・農村の活性化に不可欠な新たな人材を確保してまいります。
また、若者や女性・高齢者など多様な人材が活躍できる集落営農法人の設立を加速化するとともに、志を持ったリーダーを初め、法人経営の複合化・多角化を担う人材の育成に努めてまいります。
さらに、志を持ってすぐれた農業経営を実践している農業者を指導農業士として認定するなど、安心・安全な農産物の生産や青年農業者の育成の面から、本県農業を牽引する人材を幅広く確保していくこととしております。
県としましては、引き続き、こうした志を持った多様な人材の総力を結集して、足腰の強い本県農業を構築することにより、住み良さ日本一の元気県づくりにつなげていく考えであります。

2011年11月30日

平成23年8月定例県議会 再質問

野田首相が誕生いたしました。私は、彼が言う「ドジョウの政治」、泥臭い政治というのはいいなと感じております。金魚の見ばえのいい政治じゃなくて、川底の底辺のどろどろした泥臭いところに身を置いて政治を進めていくという、「ドジョウの政治」という考え方はいいなと思いますね。
我々県議の役割あるいは県政に携わる執行部の役割も、やはりひとつ大事なことは、国の政策を地方の現場にあって検証して、そして現場から国の政策をよりよくしていく、いわゆる泥臭い政治というのは、現場に身を置いて現場にあるさまざまなどろどろした困難を一つずつ丁寧に解決しながら進めていく政治というふうに私は受けとめているところであります。
知事の場合は、住み良さ日本一の県づくりということでありまして、これも見ばえのいい住み良さ日本一ではなくて、本当に生活に苦労している人たちの現場に身を置いて一つ一つの課題を解決していく、そういうことで住み良さ日本一を実現していく、そういう県政であってほしいと思うわけであります。
そういう中で、いわゆる施設に入られる高齢者の方々というのは、本人はもちろんでありますが、本人の家族の方々も今は立場が弱いのであります。だからこそ、そういう介護施設の場合は、介護の質が保たれるようにきちっと政治が、行政が必要な取り組みをしていくということが重要であります。
私が、このたび特に老健施設でそのことが必要ではないのかということを申し上げましたのは、ある高齢者の方が老健施設に入所されて、栄養失調状態になってしまって、そしてまた、全身がむくんで肺に水がたまるような状況になってしまったと。その様子を家族の人が見て、これは大変だということでそこの施設の診断を受けるように、医者の診断を受けるように強くお願いして診てもらったところ、いわゆる栄養失調状態、肺に水がたまっているということがわかって、総合病院のほうに入院されたということであります。
やっぱり一人一人にちゃんと目が行き届いている施設もあれば、そうでない施設もあるわけでありまして、先ほど部長の答弁では、何か問題がある施設があった場合は、何か対処するみたいなことでありましたけれども、そういうことではなくて、そういうことにならないようにしていく取り組みが、平均的に標準的な水準のサービスが提供される施設にしていく、そういう取り組みは非常に、施設を整備することとあわせて重要だと思うわけであります。
介護サービス情報の公表制度につきまして、今、知事が必要と認めるときに調査するに変わるということでありましたが、じゃあガイドラインについて、衆議院の厚生労働委員会での質問に対して、老健局長が答えている部分があります。それを見ますと、最初の事業所の指定のとき、あるいは事業所としての指定を更新するときに調査に入ったりするようなことを検討したらどうかと考えているという答弁をしているんですね。
その指定の更新というのは何年に一遍行われるかというと、六年に一遍なんですね。だからそれだと毎年これまで行われておったものが、それなりの役割を果たしておったものが、六年に一遍の調査になってしまう、そんなガイドラインを示すのかと。まさしく現場を、実態を知らない官僚が制度をつくっているみたいなことが感じられまして、本当に見ばえのいいことばっかりやろうとしているのかと、何かちょっと怒りを覚える感じでありますね。
私としては、二井知事にぜひそういう施設に入っておられる方々の、あるいは施設に家族を預けている方々の思いのところに思いをいたして、そして、そういう方々にこたえる介護施設のサービスを確保していくためにはどうしたらいいのかということで、まずは介護サービスの情報の公表制度に係る県の調査の判断基準、それは策定してほしいと思うんですね、まずは。
それから、指導監査も四年から五年に一遍ということではなくて、少なくとも二年に一回は行われるというようなことを前向きに考えるべきだと思うわけであります。住み良さ日本一の県政総仕上げに向けて今取り組んでおられる二井知事に対しまして、このことについてお伺いいたしまして、私の質問を終わります。(拍手)
◎健康福祉部長(渡邉修二君)

二点のお尋ねだと思います。
一点は、国のガイドラインに基づいて、サービスの確保・向上になるようなガイドラインにぜひしてほしいということでございます、判断基準にしてほしいということでありますけれど、私を含めて恐らくここにいらっしゃる方は、介護保険サービスをいずれは何らかの形で受けられることになろうかと思いますので、その観点で、ガイドラインが出てきました時点で鋭意検討をさせていただきたいと思います。
それと、これまで国のほうに介護情報サービスの公表について要望した結果、御指摘のありましたように、今回の介護保険法の改正の中で、都道府県知事が認めるときには調査ができるということになってきております。
これは、基本的には介護サービス情報については全国的な共通の問題でございますので、その制度設計を担当しております国の責任において検討されることが必要と考えております。それで、この八月十日付で、中国・四国九県民生主管部長会議におきまして、この介護保険情報公表制度についても要望をいたしておりまして、制度設計を行う国の責任において、情報の正確性を担保できるような財源措置を含めて具体的な対策を講じるように要望したところでございます。
引き続き、必要に基づきまして、国に対して適切に対応させていただきたいと思っております。

2011年8月30日

平成23年6月定例県議会 (1)脱原発について

(1)脱原発について
今、私たちは、かつて父祖の世代が廃墟となった戦後日本を見事復興したように、新たな日本復興のときを迎えております。
二万三千名を超える多くのとうとい人命が失われたこのたびの大災害、東日本大震災を単なる災害に終わらせてはなりません。東日本大震災は、今日の日本が内包する問題を浮き彫りにし、警告を発しています。
犠牲になられた方々の死を無にしないためにも、このことを真摯に受けとめ、真に安全で希望が持てる国、日本をつくっていくこと、そのことに向けて世代責任を果たしていくことが、今日生きているすべての日本人に求められています。
私が、このたび、上関原発について質問することといたしましたのは、東日本大震災に伴う福島第一原発事故は、原発大国化路線からの転換を日本に促す天の警告であったと受けとめているからであります。
そしてまた、山口県民の多くが、いまだ収束していない福島第一原発事故の報道に日々接し、本県の上関原発はどうなるのだろうと関心を向けているからであります。
それでは、通告に従い一般質問を行います。
私は、上関原発建設計画の中止とエネルギー政策の転換を国に求める立場を山口県は明確にすべきであると考えております。こうした考えに基づき、上関原発建設計画への県の対応についてお伺いいたします。
私は、石油や石炭等エネルギー資源のほとんどを海外に依存している我が国が、エネルギーの自給率を高めるために原子力発電に取り組むことは、国策として当然のことと考えておりました。また、発電時に二酸化炭素を出さないということで、地球温暖化対策としても、原子力発電は妥当な方向と思っておりました。
さらに、日本が世界の大国としての地位を将来にわたって保持していくためには、幾らかリスクがあろうとも、原子力の技術を、平和利用への限定は当然としても、持ち続けることが必要と考えておりました。
以上の意味で、私は、原発推進論者とまではいかなくても、原発肯定論者であり、容認論者でありました。
しかし、東日本大震災に伴う福島第一原発事故災害の深刻な事態を目の当たりにして、原発に関心を向け調べていくうちに、通常の生活、経済活動を原発に依存するのは間違っていると確信するに至りました。
原子力は、国家の存立や人類の生存のための最終的な非常手段としてはあり得ても、これを日常的なツールとして利用することは避けなければなりません。
理由は、二つあります。一つは、余りにもリスクが大き過ぎるということであります。その二は、原子力発電で生ずる放射性廃棄物の最終処理の方法技術は確立されておらず、別の形での深刻な地球環境汚染が進むということであります。
第一の理由、リスクが大き過ぎるということでありますが、私は、このたびの福島第一原発事故は、最悪の場合は、日本全土が放射能汚染で住めなくなる、まさしく国家壊滅の危機に瀕した事故であったと見ております。
我が国が商業用の原子力発電を始めることを決定した翌年、昭和三十五年に、科学技術庁の委託を受けて日本原子力産業会議が科学技術庁原子力局に提出した報告書があります。
「大型原子炉の事故の理論的可能性及び公衆損害額に関する試算」と題するこの報告書は、当時、我が国最初の商業用原子炉として計画が進められていた茨城県の東海発電所で最悪の大事故が起こった場合に、どれほどの被害が発生し、日本政府がその被害を補償できるか等を真剣に検討したものであります。
それによると、事故が発生した場合の物的損害は、最高で、農業制限地域が長さ一千キロメートル以上に及び、損害額は一兆円以上に達し得るとされております。
東海発電所から半径一千キロメートル以内には、北海道から九州までがほぼ含まれますので、圏外は沖縄だけで、日本の国土ほとんどが農業制限地域になる可能性があるわけであります。
農業が制限されるのは、土地が放射能汚染されて、産出された農作物は人体に有害で食べることができないということでしょうから、それは人が住めなくなるのと同義のように思われますが、最悪、日本全体がそうした事態になる可能性があることをこの報告書は示唆しております。
この報告書が想定した東海発電所の原子炉は、出力十六万六千キロワットでしたが、福島第一原発の原子炉は、一号機四十六万キロワット、二号機・三号機・四号機・五号機は七十八万四千キロワット、六号機は百十万キロワットであります。
報告書が想定した東海原発の三倍から七倍の規模を持つ原子炉が六基も林立している福島第一原発事故が最悪の事態になった場合は、日本全土が、農業制限どころではない、もっと深刻な放射能汚染に見舞われ、日本壊滅が現実となるということを思うとき、福島第一原発事故終息に向けての取り組みは、国の存立をかけた原子力との戦争であります。
原子力発電によって得られる生活の利便さ、経済的利益は大きいものがあるかもしれない。しかし、それは国をつぶす危険を冒してまで追求すべきものではない。少し生活が不便になろうと、経済的利益が失われようと、原子力発電への依存は減らしていく方向へ我が国のエネルギー政策を転換していく、そのことが今求められています。
第二の理由についても触れておきたいと思います。
原子力発電は、CO2を出さないからクリーンだとの見方があります。これは、原発の半面だけしか見ていません。原子力発電が危険な放射性廃棄物を排出していることを見落としているからであります。
原発をよく「トイレなきマンション」に例えることがありますが、確かに、原子力発電で生じた放射性廃棄物を地球環境を汚染しない形で処分する方法、技術は、いまだ確立されていません。原子力発電は、技術体系としては未完のまま、見切り発車的に実用化されてしまったと言えます。
そのため、放射性廃棄物は、その数量は増加する一方であるものの、最終処分場が世界じゅうどこにもなく、原発を持つ国にとっては、その処理が厄介で困難な課題となっております。
放射性廃棄物は、放射能濃度により、低レベル放射性廃棄物と高レベル放射性廃棄物とに分類されますが、高レベル放射性廃棄物の主たるものは、使用済み核燃料であります。
原発で発電のために使用された核燃料は、三年ないし四年で新しいものと交換されます。その際、使用済みとなった核燃料は、容器である燃料棒ごと、当面は原発敷地内の燃料貯蔵プールに保管されます。
我が国では、この使用済み核燃料は、核燃料サイクルの方針に沿って、次は青森県六ヶ所村に建設された再処理工場に搬入されます。
この再処理工場で、使用済み燃料は、硝酸で溶かされ、それからプルトニウムとウランが再利用目的で抽出されることになっています。そして、残った廃液は、ガラスで固めてキャニスターという容器におさめられ、三十年から五十年間冷却しながら貯蔵した後、最終的には地層処分する計画になっております。地層処分とは、地下三百メートル以上の深い地中に埋めることであります。
以上は、我が国の核燃料サイクル計画で想定されていることでありますが、現時点では、ガラス固化体の貯蔵は行われていますが、最終処分となる地層処分の場所は決まっていません。
そこで、真摯な議論が求められるのは、地層処分の場所をどこにするかということではなく、高レベル放射性廃棄物を最終的には地層処分するというやり方が許されていいのかということであります。
高レベル放射性廃棄物をガラス固化体にして、キャニスターという容器におさめた一本の重量は約五百キログラムですが、これがどれほど強い放射能を有しているかということは、人がこれに触れれば二十秒で致死量に達する放射線を浴びるということからもわかります。
放射能の大きな単位にキュリーというのがあります。一キュリーの放射能で、一平方キロメートル全地域が立入禁止になるほどであります。
ガラス固化体の放射能をあらわすには、この単位が向いているようでありまして、ガラス固化体キャニスター一本の放射能は、これがつくられた当初一カ月は三百九十二万キュリーであります。
日本の国土面積は約三十八万平方キロメートルでありますので、一本で日本の十倍強の広さが立入禁止になるほどの放射能がある計算になります。
放射性物質は、時の経過とともに減っていきますが、このガラス固化体キャニスター一本の放射能は、一万年後も六百キュリー残っております。百万年たっても、同じ重量のウラン鉱石の五百倍の放射能があり、ウラン鉱石と同程度の放射能になるまでには、数千万年の時間の経過を要すると見られています。
二○○九年二月、アメリカ政府が「高レベル放射性廃棄物は、百万年の監視を要する」との見解を明らかにした背景には、こうした事実があると思われます。
こうした極めて高濃度の放射性廃棄物のガラス固化体が、六ヶ所村には、現在既に千三百本以上貯蔵されています。これらのガラス固化体は、実はフランスやイギリスで再処理されたものであります。
六ヶ所村再処理工場は、液状にした高レベル放射性廃棄物のガラス固化に成功しておりません。そのため、六ヶ所村工場には、高レベル放射性廃液が二百四十立方メートルたまっています。
これは、その一立方メートルが漏れただけでも、東北地方北部と北海道南部の住民は避難しなければならなくなるほど危険なものであります。
しかし、この技術的課題は克服されるとの前提で、我が国の原子力事業は進められているようで、現行の計画どおり原子力発電が行われていき、発生した使用済み核燃料を再処理してガラス固化していけば、その数量は、平成三十三年までにキャニスター四万本に達すると推計されています。
これが全部地層処分された場合、一万年後も一本に六百キュリーの放射能が残っていますので、総計二万四千(二千四百万)キュリーの放射能が地中に残っている計算になります。これは、日本国土の六十倍強の面積が立入禁止になるほどの放射能であります。
こうしたものを地層処分にするということは、自分やせめて子や孫の世代さえよければいいという、まことに身勝手な発想に由来するもので、環境倫理にもとるばかりでなく、これから数千年、数万年にわたって、日本列島、地球に生をうけることになるであろう人類に対する重大な罪であると考えます。
元東大総長の小宮山宏氏は、「原子力は、二十世紀後半から二十一世紀にかけての過渡的なエネルギーであり、二十二世紀は太陽エネルギーの時代に向かうであろう」と述べていますが、そうだとすれば、放射性廃棄物を出さない原子力発電の技術体系の確立に取り組まなければなりません。
今日の原子力発電が安全性や放射性廃棄物の問題を根本的に解決できていないのは、元来、米軍が軍事利用目的で原子力潜水艦のために開発した原子炉を民間用原発として実用化したものであるからです。
現在の原発は、要は、火力発電の燃料を核燃料にしたものであり、核燃料を使う危険性を、安全措置を何重にも施すという多重防護というやり方で封じ込め、安全性を確保しようとしています。
しかし、このやり方では、事故のたびに新たな安全基準を設定して防護策を強化するということを繰り返していくものの、あらゆる事態を想定して防護策を施すことは不可能に近いので、想定以上の事態に遭遇したとき、重大事故を引き起こしてしまいます。
福島第一原発事故が、まさしくそうした例であります。
ここでは、津波の高さは五メートルと想定されていましたが、実際は十五メートルの津波に襲われました。
原子炉で水素爆発は構造上起こらないと確信されていましたが、次々と水素爆発が起こり、原子炉建屋が破壊されて、大量の放射性物質が放出される結果となり、原発事故レベルは、チェルノブイリと同じ最悪事故レベル七となりました。
二十一世紀の人類生活のために原子力の平和利用は不可欠というのであれば、そのための原子炉は、安全性という点においては、化学原理、技術原理の上から重大事故を起こさない設計のものでなくてはならず、原子力利用のトータルなサイクルの中で、放射性廃棄物は解消され、地球環境を汚染しないものでなければなりません。
そうした設計思想に基づく新しい型の原子炉が開発されれば、私は、その原発の推進論者になりたいと思います。
しかし、現行の原発からは脱していくべきだと考えております。したがって、現行の型の原発を新設、増設していくことには反対であります。
前置きが長くなりましたが、福島第一原発で使われていた沸騰水型原子炉と基本的に同型である上関原発の建設計画の中止を求める論拠を明らかにするため、以上述べさせていただきました。
それでは、これまで申し上げましたことを踏まえ、上関原発建設計画への県の対応について、数点お伺いいたします。
(1)脱原発について
菅首相は、五月十日の記者会見で、福島第一原発事故を受けた今後のエネルギー政策について語り、「従来の計画を白紙に戻して議論する」と述べ、原発への依存を減らす方針を表明しました。
また、小泉元首相は、五月二十八日、横須賀で講演し、「自民党政権も原発を推進し、過ちもあった。これからは原発をふやすのは無理で、大事なのは、いかにして原発への依存度を下げていくかだ」と述べました。
私は、こうした菅首相や小泉元首相が言う原発への依存を減らす方向も、脱原発だとみなしております。
脱原発にも、原発の新設・増設は認めないのはもちろん、現在稼働している原発も即刻廃止することを求める原理主義的脱原発と、原発の新設・増設はしないことから出発して、電力事情に応じて順次原発依存を減らしていく現実的脱原発の二通りあります。
今日、国民の多くは、現実的脱原発を支持しており、菅首相も小泉元首相も、その方向に進むべきことを表明したものと思われます。
脱原発は、決して時代便乗でもなく、大衆迎合でもありません。福島第一原発事故と真剣に向き合った結果であります。
そこでお尋ねであります。私は、山口県は原発の新設・増設は認めないが、現在使われている原発を減らしていくことは、電力事情に応じて対応していく現実的脱原発の立場に立つべきと考えますが、このことにつき知事の御所見をお伺いいたします。

【回答】(2)エネルギー基本計画の見直しと上関原発について 参照

2011年6月30日

平成23年6月定例県議会 (2)エネルギー基本計画の見直しと上関原発について

(2)エネルギー基本計画の見直しと上関原発について

さて、菅首相が見直しを表明した従来の計画とは、昨年六月に閣議決定したばかりのエネルギー基本計画のことで、現在五十四基ある原発を、二○三○年までにさらに十四基新設・増設し、総発電量に原子力が占める割合を五○%とする原発拡大推進の内容となっておりまして、新設の原発に上関原発も含まれております。
菅首相は、このエネルギー基本計画を見直して、太陽光・風力発電などの再生可能エネルギーと省エネ社会実現を二本柱として重視する意向を示しました。
原発への依存を減らす方向での計画の見直しは、原発の新設・増設をやめるか減らすということになるでしょうから、私は、菅首相の意向に沿ったエネルギー基本計画の見直しが行われれば、上関原発建設計画は中止になる公算が高いと見ております。
二○三○年までに新設・増設予定になっている十四基の原発は、建設の進捗度合いにそれぞれ差があって、島根原発三号機のように、既に建設は完成し、本格稼働に向けて試運転の段階のものは中止の判断が難しいかもしれませんが、上関原発は、まだ国の正式な建設許可を受けておらず、準備工事の段階で、それもまだ緒についていない状況であるので、見直しの際は、当然に計画中止の原発の対象になると思われます。
ただ、本県が、上関原発建設計画について、「国のエネルギー政策に協力し、地元の政策選択を尊重する」との従来の対応方針で終始一貫した場合、見直しによる計画中止の原発に上関が含まれない可能性もあると見ております。
県が、祝島を含む上関町全体の意思を地元の政策選択として尊重するように、国は、上関町を含む山口県全体としての意思を上関原発計画に対する地元の政策選択として尊重するものと思われます。
その県の対応方針が「地元の政策選択を尊重する」ということで変わらず、また、その地元とは上関町のことであるとの認識に変更がなく、そして、その上関町が原発誘致の方針を変えなければ、国のエネルギー基本計画見直しの際、上関町の原発誘致が、県の政策選択として尊重されることになります。
果たして、そういうことでいいのか、疑問に思うのは私だけではないでしょう。私は、上関原発計画については、上関町が祝島も含む町全体の意思に基づいて政策推進してきたように、県が、上関町を含む県全体の立場に立っての意思を明確にし、国に対して、それを表明する時期に来ていると思います。
そして、県民の多くが支持する県の政策選択は、現実的脱原発の立場に立つことであり、そういう意味での上関原発建設計画の中止であると考えます。
そこでお尋ねであります。私は、国がエネルギー基本計画の見直しを行うに当たり、二井知事が、上関原発計画の中止をその内容に盛り込むよう国に対して意見表明されることを期待するものでありますが、そうするお考えはないのか、知事の御所見をお伺いいたします。
【回答】◎知事(二井関成君)
私からは、脱原発についてとエネルギー基本計画の見直しと上関原発についての二点のお尋ねに、まとめてお答えをいたします。
これまで、国は、エネルギー基本計画において、原子力発電を我が国の基幹電源と位置づけ、安全の確保を大前提として、国民の理解と信頼を得つつ、積極的な利用拡大を図ってまいりました。
しかしながら、このたびの福島第一原子力発電所の事故を契機として、原子力発電に対する国民の信頼が大きく損なわれたところであります。
国におきましては、まずは一刻も早く事故を収束させ、事故原因の徹底究明と安全指針等の検証を行い、新たな知見に基づく安全指針等の見直しを早急に進めるべきであります。
その結果を踏まえた上で、エネルギー政策の見直しに取り組むべきであると考えております。
現在、国におきましては、このたびの事故を踏まえて、新成長戦略実現会議において、エネルギー政策について、これまでの原子力、化石エネルギーに加え、自然エネルギー、省エネルギーを柱に加えるなど、見直しの議論が始まったばかりであります。
お示しの、脱原発については、確立された定義はありませんし、国民の間にさまざまな意見がありますので、私が軽々に申し上げるべきではないと考えております。
エネルギーは、国民生活の安定向上並びに国民経済の維持・発展に欠くことのできないものであります。国の存立にかかわる重要な問題でありますから、国において、新たなエネルギー政策の中で、原子力発電をどう位置づけるのか、上関原電を含む原子力発電所の新増設計画をどう定めるのか、国民の幅広い意見を踏まえて、国民的合意を得ながら、慎重かつ迅速に議論を進めるべきであると考えております。
したがいまして、上関原電計画の中止についても、国に意見表明することは考えておりません。
いずれにいたしましても、上関原電計画につきましては、国のエネルギー政策に協力をし、地元上関町の政策選択を尊重するという基本姿勢に立って、今後の国の動向、また上関町の動向を注視してまいります。
そのほかの御質問につきましては、関係参与員よりお答えいたします。

2011年6月30日

平成23年6月定例県議会 (3)上関原発と新エネルギー政策について

(3)上関原発と新エネルギー政策について

さて、私は、上関原発建設計画がどうなるかは、今後の我が国のエネルギー政策の動向を示すものとして、重要な意味を持つと見ております。
上関原発の中止は、エネルギー政策が、原発推進から原発依存を減らす方向へ、そういう意味での脱原発へ転換したことを示すものとなります。
一方、上関原発が計画どおり建設されることになれば、福島原発事故を受けていろいろ議論はあったけれど、結局のところ、原発推進の現行路線は変更されなかったことになります。
そういうことで、上関原発については、建設か中止かの議論が、今後、全国レベルで展開されることも予想されますが、私は、より安全な地域社会をつくる、後世に地球環境汚染を残さないという原則的立場から、脱原発への転換となる上関原発の中止が、将来に向けての正しい選択と考えます。
こういうことを申し上げますと、「だったら、必要電力の確保はどうするのか。太陽光や風力の発電では、発電量が小さく、とても原子力発電の代替はできない」との反論の声が返ってきそうですので、このことを上関原発に即して考えてみたいと思います。
この問題は、上関原発建設計画では営業運転開始予定が平成三十年三月になっておりますので、上関原発を中止した場合、その予定年月以降の中国電力管内の必要電力の確保は可能かということになります。
私は、電力供給体制をこれまでの大規模集中効率型から小規模分散自立型に転換していくことを進める、あわせて、火力発電能力の向上強化を図ることで、上関原発を中止しても、必要電力は十分確保されるものと見ております。
電力供給体制を小規模分散自立型に転換していくというのは、太陽光・風力・小水力等の自然エネルギーによる発電と蓄電技術と、賢い送電網と訳されていますが、電力需給の最適化を自律的に図るデジタルネットワークであるスマートグリッド等の組み合わせにより、家庭や地域における電力自給率を高め、電力消費の平準化を進めていくことであります。
電力会社の発電設備は、電力の最大需要にこたえることができるよう整備されていますので、家庭や地域において電力の自給率が高まり、最大需要電力であるピーク電力を押し下げることになる電力消費の平準化が進めば、電力会社は供給余力が増加し、電力不足は生じなくなると思われます。
一方、火力発電能力の向上強化は、そうしたソフト的な取り組みの効果を見きわめつつ、万が一にも電力の需給ギャップを生じないよう電力供給能力を整えておくためと火力発電のクリーン度を高めるために、石炭火力を天然ガス火力に切りかえていく方向で進めていくことが望ましいと思われます。
天然ガス火力は、石炭火力に比べてCO2排出の面でも格段にクリーンであり、熱効率も高く、天然ガス自体は埋蔵量も豊富で、二百年以上は大丈夫と見られています。
そういうことで、私は、上関原発の営業運転開始が予定されている平成三十年までの時間に、それらの取り組みをしっかりやれば、上関原発を中止しても、電力不足は生じないと見ている次第であります。
そして、脱原発に向けた新エネルギー政策においては、この小規模分散自立型の電力供給が重要な柱の一つになると推察しています。
私は、この小規模分散自立型の電力供給地域モデルをつくることは、二十一世紀の新しい地域社会の可能性を示すものとして、極めて意義深い取り組みになるものと思っています。
世の中の動きも、これまでは「大きく集中して効率的に」でしたが、これからは「小さく分散して自立的に」という方向に転換していくように思われます。
そして、その方向転換が、東京一極集中、地方疲弊から脱して、地方復活、元気な日本の実現につながっていくのではないでしょうか。
そこでお尋ねであります。新エネルギー政策の重要な柱となり、二十一世紀の新しい地域社会の可能性を示す小規模分散自立型の電力供給地域モデル構築に向けて、本県が産学官共同で取り組むことを提案したいと思いますが、このことにつき知事の御所見をお伺いいたします。
以上で、一回目の質問を終わります。(拍手)
【回答】◎商工労働部長(森敏明君)
新エネルギー政策についてのお尋ねにお答えをいたします。
エネルギー政策は、本来、国において、エネルギーの安定供給の確保や環境への適合、経済効率性等に留意しながら、総合的、計画的に推進することが求められております。
しかしながら、太陽光やバイオマスなどの再生可能エネルギーは、地球温暖化対策やエネルギー自給率向上に資するとともに、環境産業等地域経済への波及効果も期待できますことから、これまでも、「やまぐち環境創造プラン」等に基づきまして、太陽光発電システム等の導入促進や森林バイオマスの活用などに積極的に取り組んできたところでございます。
こうした中、今年度新たにスタートいたしました「新エネルギー利活用プロジェクト」におきまして、地域における水素の持続的な利活用や地産エネルギーを効果的に活用した、いわゆるスマートファクトリーの導入等に関する調査を、大学や水素供給事業者、太陽光やIT関連の企業等と連携して行うことといたしております。
特に、スマートファクトリーの導入に関する調査につきましては、中小企業の工場において、例えば、副生水素を活用した燃料電池による発電や、お示しのありました太陽光・風力・小水力等による発電と蓄電技術及び省エネルギー技術を融合させることにより、安定的かつ最適に電力を供給するハイブリッド型の低炭素工場モデルの構築を目指すものであります。
したがいまして、将来的には、中小都市が点在する本県の地域特性も生かしながら、御提案の、小規模分散自立型の電力供給地域モデル構築を視野に入れまして、密接な産学公連携のもと、「新エネルギー利活用プロジェクト」を積極的に推進してまいります。

2011年6月30日

平成23年6月定例県議会 再質問

きのう、中国電力の株主総会におきまして、副社長が「上関原発は中止しない」という考えを表明されたということが報道されております。
私は、中国電力がそういう判断をするのは当然であろうと思っております。
電力事業、特に原子力発電は、国策民営で進められてまいりまして、そういう方針のもと、電力事業者は原子力発電に取り組み、中国電力においては、島根原発があり、また上関原発が計画されているということでありまして、見直しという菅首相の意向が表明されておりますが、まだそういうものが明確でない現時点におきまして、「上関原発建設計画を中止しない」という考えを中電が表明するのは、当然であろうと受けとめております。
また、昨日は、玄海原発につきましても、海江田大臣が、地元町長や、あるいは佐賀県知事に会って、稼働の方向が見えてきたようでありますが、私も、このことは、先ほど申し上げました現実的脱原発の立場から、一定の理解をするものであります。
ただ、上関原発につきましては、将来にわたっての国のエネルギー政策がどうなっていくのかという方向づけにつながるものであって、まさしく、政治が明確に政治判断すべきことであります。
もちろん、その政治判断は、国が第一義的にすべきこと、あるいは国の責任においてすべきことでありますが、先ほど知事の答弁の中にも「幅広い国民の議論、意見を踏まえて」という、「合意が形成されるべきものと考える」と、こういう御答弁であったように思うんでありますが、その「幅広い国民の意見を踏まえ」ということの中におきまして、国がこれからエネルギー政策を決めていく上において最も重視するのは、原発立地が予定されている県の考えはどうかということであろうと見ているところであります。
六月二十八日、一昨日の読売新聞に、いわゆるエネルギー基本計画は来年改定すると、来年の半ばまでには改定するという方針を政府は固めたということが記事としてあります。
そうなりますと、それまでの間に、山口県はどう考えているのかという意見表明を国のほうから求めてくることがあると予想されます。そうなった場合に、どうするお考えなのか、お伺いいたしまして、二回目の質問といたします。

【回答】◎知事(二井関成君)
現在、国において、エネルギー政策を白紙から見直すということで検討されておりますから、その過程の中で国から私に対する意見が求められれば、その段階で、その時点での私の意見は申し上げたいと考えております。
以上です。

◆(合志栄一君)

国のほうから意見を求められれば、その時点で自分の考えを表明するということでありました。
知事は、これまで繰り返し、「国のエネルギー政策に協力し、地元の政策選択を尊重する」ということを繰り返し述べてこられました。その方針の前提としては、安全の確保が大前提でということでありました。
私は、この安全の確保ということに、もう一つ、放射性廃棄物を出さない、後世に負の負担を残さないという意味での放射性廃棄物を出さないということも、あわせて前提にすべきなのではないかと思うわけであります。
そういうことも含めまして、知事の任期中に、できれば国体の前に、上関原発は中止の方向の知事意見の表明がなされることを要望いたしまして、私の質問を終わります。
御清聴どうもありがとうございました。

2011年6月30日

平成23年6月定例県議会 ◆附記(一般質問関係)

◆附記(一般質問関係)
「高レベル放射性廃棄物は、100万年の監視を要する」
2009年2月、アメリカ政府は「高レベル放射性廃棄物は、百万年の監視を要する。」との見解を発表しました。
高レベル放射性廃棄物とは、原子力発電所から排出されるもので、主に使用済み核燃料のことをいいます。
この使用済み核燃料は、我が国では青森県の六ヶ所村再処理工場に搬入されることになっていまして、そこでは先ず溶かして液状にする処理がされます。
その後、それをガラス状に固めてキャニスターという容器に納めて30年から50年間冷却保存した後、地層処分ということで300メートル以上深い地中に埋める計画になっています。
問題なのは、このキャニスター1本の重量は500キログラムですが、猛烈に高い放射能を有していて、長期間それが残るということです。
放射能の大きな単位に、キュリーというのがありまして、1キュリーの放射能があれば、1平方キロメートルが立ち入り禁止になるほどですが、キャニスター1本だけで、当初1ヶ月は392万キュリーの放射能があります。
日本の面積は約38万平方キロメートルでありますので、その10倍強の面積が立ち入り禁止になるほどの放射能です。
それが1万年たっても600キュリーの放射線が残っており、100万年立っても同量のウラン鉱石の500倍の放射能が残っています。
アメリカ政府が、100万年の監視を要するとの見解を発表した背景には、こうした事実があります。
キャニスターに納められた放射性廃棄物は、現在六カ所村に1300本以上貯蔵されていますが、現行の計画通り我が国の原子力発電が続けられれば、平成33年までに、その数量はキャニスター4万本に達すると推計されています。
これらを地層処分するということは、後世に借金を残す以上に深刻な環境汚染の負の遺産を残すことになり、やってはならないことであります。
私が、6月県議会で、原発への依存を減らすという意味での脱原発に国のエネルギー政策は転換すべきであり、山口県は上関原発中止の立場を明確にすべきと表明したのも、原発には安全性の確保問題と併せて、以上申し上げました放射性廃棄物処理の問題があるからです。(合志栄一)

◆法と経済ジャーナルに掲載される◆
合志県議の6月定議会での一般質問「脱原発について」が、7月17日に、法と経済ジャーナルのトピックスに、山口県議の唱える「現実的脱原発」として掲載される。

2011年6月30日

平成23年2月定例県議会 (1)介護サービス情報の公表制度について

(1)介護サービス情報の公表制度について

人としての尊厳を保持する介護事業の第一義の大事は、まさにこの一点にあります。
平成十二年から施行されました介護保険法は、老齢になり、人の介護を受けないと生活維持ができなくなっても、人としての尊厳を保持して、ともに生きていくことができる仕組みを制度化したものであると言えます。
介護保険法は、平成十八年に改正された際、そうした法の趣旨をより明確にし、介護される者の尊厳の保持を、この法の目的を定めた第一条に明記いたしました。
そして、法の第五章、第十節において、介護サービス情報の公表を新たに制度化したのであります。
介護サービス情報の公表制度は、法の建前としては、介護保険法第百十五条の三十五において「介護サービスを利用しようとする者が、適切かつ円滑に当該介護サービスを利用する機会を確保するため」と記されているように、介護サービスの利用者がよりよいサービスを選択できるよう介護情報を公表する制度であります。
しかし、私は、この制度の真のねらいは、法改正で明記されました「介護を受ける人の尊厳を保持する」という目的に沿って介護サービスの質の保持向上を図ることであり、そのことを介護の仕事に従事する人たちの信条や善意、道徳心等に期待するだけではなく、介護サービスの事業者や従事者に促す仕組みをつくり、制度としての担保しようとした点にあると見ております。
介護サービス情報の公表制度が導入されてから、介護サービス事業者は、年に一回、手数料を払って県が指定した調査機関の調査を受けることになり、その調査結果は、インターネットで公表されるようになりました。
本県で調査機関に指定されているのは、県の社会福祉協議会とNPO法人やまぐち介護サービス評価調査ネットワークでありまして、この指定調査機関の調査活動に伴う費用及び調査結果のインターネット公表の費用等は、事業者が支払う調査手数料で賄われております。
ちなみに、この手数料は、本県では居宅系事業所は三万六千八百円、施設系事業所は四万三千円となっております。
介護サービス事業者には、この制度の施行に伴い、こうした費用負担や調査協力のための事務負担が新たに生じた上に、せっかく公表された情報が、余り利用されていない等々の事由から、制度スタート時点から、この公表制度を疑問視する声が強く、不評でありました。
また、指導監査や外部評価など類似の制度があり、介護サービス情報の公表制度を不要とする声もありました。
さらに事業者の多くは、そうした調査を受けるまでもなく、介護事業が経営として成り立つために、利用者が選んでくれるよう介護サービスの質の向上に努めているとの思いがあります。
こうした声を受けてなのか、厚労省は、平成二十四年度に予定されている介護保険法の見直しにおいて、すべての介護事業者に年一回義務づけてきた第三者機関による調査と、調査結果の公表を事実上廃止する方向で介護保険法の改正を行おうとしております。
調査が実施されるのは、都道府県知事が必要と認めた場合のみで、介護サービス情報公表制度の大幅な後退であります。
発端は、昨年七月六日に行われた当時の長妻厚労省大臣の記者会見における発言でありました。
このとき長妻大臣は、この情報公表制度の趣旨は大切であるとしながらも、公表制度にかかる事業者の手数料負担を廃止することを含めて抜本的見直しを次期制度改正時に行うよう事務方に指示したことを明らかにしました。
さきに紹介しましたように、介護サービスの情報公表制度における調査及び公表の費用は、調査手数料収入によって賄われているため、別途財源確保の手だてをしないままの手数料無料化発言は、事実上の公表制度の廃止を意味します。
ミスター年金で名をはせ、厚労大臣の座を射とめた長妻議員ですが、彼は、大臣として何らなすところなく、ただ、介護保険制度の質的低下を招いただけの大臣であったと断ぜざるを得ません。
介護保険制度の画期的な点は、従前、医療法人や社会福祉法人の領分と考えられていた介護を、NPO法人や株式会社など民間法人も事業としてできるようにしたことであります。
介護事業を民間法人にも門戸開放したことは画期的としても、それが評価に値するものとなるためには、介護サービスの質を確保する仕組みが制度設計されていなければなりません。
そうした考え方に基づく制度設計の大前提として、介護保険制度の施行に伴い、介護も行政機関が措置する制度から、利用者が介護サービス事業者と契約する制度に変わりました。
このことは、介護を含む我が国の福祉事業のあり方の根本的な転換でありますが、介護事業を民間に門戸開放したことに伴う当然の対応であったと言えます。
事業者は、よりよい介護サービスを提供して、利用者から選ばれるよう努めなければ、事業経営が成り立たなくなりますので、おのずと介護サービスの質の向上に取り組むこととなります。
こうした契約制度のもとで、事業者は当然に介護サービスの向上に努めていること、また、指導監査や外部評価が制度化されていること等を理由に、介護サービス情報の公表制度は不要であるとの意見もありますので、本当にそうなのか、点検しておきたいと思います。
契約制度のもとにおいて、事業者の多くが介護サービスの向上に向けて努力していることを私も認めるものでありますが、実際問題として、利用者に選択の余地がほぼなきに等しくなるケースがあることを指摘しておかなければなりません。
例えば、有料老人ホームがその一角に介護サービスの事業所を設けたとした場合は、そのホームへの入居者は、他の事業所を選ぶことは困難と思われます。
また、ケアマネジャーが利用者の希望ではなく、所属法人の関連事業所を優先的に使用するよう指示されている例も聞きます。
こうしたケースも含め民間の事業者が、すべて等しく一定水準の介護サービスを維持していくためには、定期的に第三者の調査の目が入ることは必要と考えます。
行政機関から指導監査があるから類似の調査は必要ないとの声もありますが、事業者に対し、個別の実地指導を伴う監査を行うのは、三ないし五年に一回というのが実情であります。
介護保険制度で、介護サービスの事業は、民間法人も可能となって、事業者の数が飛躍的に増加したためであります。
三ないし五年に一回の監査で、介護サービスの水準保持を制度として担保していることになるのか疑問であります。指導監査があった年に重ねての調査は不要と思いますが、年に一度は、第三者の調査の目が入るようにすることは、介護サービスの事業を民間に門戸開放したことに伴い当然に制度化すべきことではないでしょうか。
外部評価制度があるから必要ないとの意見もありますが、外部評価の対象となるのは、グループホーム、小規模多機能の事業所でして、現在二千四百を超す本県の介護事業所のうち二百ほどに過ぎません。二千二百を超える大多数の事業所は外部評価の対象になっておりません。
私は、介護サービス情報の公表制度を見直すというのであれば、現行の仕組みは基本的に維持した上で、実地指導の監査があった年は不要とする、外部評価制度の対象施設は外す、一定のサービス水準を保持するようになった事業者の調査は隔年にする、小規模事業者の調査手数料は減額する、事務負担の軽減のため調査様式の改善を図る等々のことを検討すべきだと考えます。
ところが、厚労省が現在やろうとしている見直しは、手数料の無料化に伴う事実上の現行の公表制度の廃止であって、介護サービスの低下を防ぐ防波堤の役割を果たしていると思われる公表制度が機能しなくなるのではないかと危惧されます。
以上申し上げましたことを踏まえ、介護サービス情報の公表制度について数点お伺いいたします。
その一は、現行の介護サービス情報の公表制度が果たしている役割の認識についてであります。
この制度は、介護サービスの利用者がよりよいサービスを選択できるため、指定調査機関が確認した調査情報を公表することを目的とする制度とされておりますが、私は、そうした第三者機関による定期的な調査と公表が介護サービス事業の質の保持向上に資する役割を果たしていると見ておりますが、このことにつき御所見をお伺いいたします。
その二は、厚労省が現在進めている介護サービス情報の公表制度の見直しについてであります。
調査手数料の廃止を先行させて、第三者機関による介護サービス事業の調査と、そのことに基づく情報の公表を、都道府県知事が必要と認めた場合以外はやめてしまう見直しは、介護サービスの質の保持向上を制度として促し担保しようとする介護保険制度の設計思想からして、間違った方向への見直しと私はみなすものですが、このことにつき御見解をお伺いいたします。
その三は、平成二十三年度における本県のこの公表制度の運用方針についてであります。
平成二十四年度から公表制度の調査手数料は無料化するという方針が示されている中、前年度の平成二十三年度は、全国四十七都道府県中、十七都道府県は、現行制度による運用を継続するように承知しておりますが、本県は、どうする方針なのかお伺いいたします。
その四は、本県独自の介護サービス水準の保持向上に向けた取り組みについてであります。
事実上、第三者機関による介護サービスの調査公表が廃止となる見直しは問題であると思いますが、その方向での介護保険法の改正方針が定まっている以上、本県が独自に介護サービス事業の質的低下を防ぎ、その水準の維持向上を図る仕組みづくりに取り組むことが期待されます。
ついては、住み良さ日本一の元気県づくりを目指す二井県政の総仕上げとなる平成二十三年度において、この課題に取り組まれることを求めるものでありますが、御所見をお伺いいたします。
その五は、介護サービス事業を評価調査する専門員の育成確保についてであります。
介護サービス事業を本当に評価調査できるようになるためには、相当期間経験を重ねて習熟することが必要と思われまして、おおむね三年ほどで人事異動がある県や市町の担当職員に、そのことを求めることは無理なのではないでしょうか。
よって、行政組織とは別個の評価調査機関があって、そこにおいて介護サービス事業を評価調査する専門員の育成確保が図られることが、本県の介護保険制度の水準向上のために必要と思われますが、このことにつき御所見をお伺いいたします。

【回答】◎健康福祉部長(今村孝子さん)
介護サービス情報の公表制度についての数点のお尋ねにお答えいたします。
まず、第三者機関による調査・公表の果たす役割についてですが、お示しの介護サービスは、利用者本人による選択を基本的な理念として、これを実現するためには、すべての介護サービス事業者や施設について、サービスの内容や運営状況など、利用者の選択に役立つ正確な情報の公開が不可欠です。
また、この情報は、第三者が、客観的に調査・確認し、調査結果を定期的に公表することにより、利用者が事業者を比較検討でき、みずからのニーズに応じた良質なサービスを選択することが可能となります。
本県では、介護サービス情報の公表制度を開始して以来、「情報が実際と異なる」といった苦情もなく、円滑に実施されております。このことが事業者のサービス改善への取り組みを促進し、介護サービス全体の質の保持向上に一定の役割を果たしてきたものと認識しております。
次に、厚生労働省の見直しに対する見解についてです。
現行制度は、利用率が低いことや、事業者の費用負担が重いといった問題があることから、今回の見直し案が示されましたが、その中には、客観的な調査の仕組みを廃止することも盛り込まれております。
このことは、情報の公開に当たって最も重要である正確性を確保する上で懸念があるものと考えております。
このため、県といたしましては、昨年十一月に、国がブロック単位に開催しました公表制度に関する国と県との協議の場で、国において、情報の正確性を担保できる方策を講じるよう要望したところです。
次に、本県における平成二十三年度の本制度の運用についてです。
国の見直し方針を受け、本年一月、速やかに高齢者保健福祉推進会議介護・地域ケア部会を開催し、事業者や利用者、さらには指定調査機関などから、平成二十三年度の運用について、幅広く意見を伺ったところです。
多くの委員から、情報公開の必要性は認められるものの、手数料や事務の負担が重い、公表内容が複雑で利用しづらいなどから、現行制度を早急に見直してもらいたいとの意見がありました。
このため、こうした意見を踏まえ、平成二十三年度においては、既に調査を受けた二十二年度の情報を引き続き公表し、現行方式による調査の実施や手数料の徴収は行わないこととし、現在、関係者の理解と協力が得られるよう調整に努めているところです。
次に、お尋ねの本県独自の介護サービス水準の保持向上に向けた取り組みと介護サービス事業を評価調査する専門員の育成確保については、介護保険制度を運営する上で、いずれも全国共通の問題でありますことから、制度設計を担当する国の責任において適切に検討されるよう、国に対し要望してまいりたいと考えております。

2011年3月1日