平成22年9月定例県議会 再質問 問田地区の浸水被害対策

問田地区のようなケースの場合も、特別、県としての対応は考えないと。市と県と役割分担に基づいて対応していくという答弁であったように思います。
この問田地区の内水による浸水被害は、県河川である問田川の水位が高いために生じている面があるわけでございますので、これの対策には、県も市と責任を共有しているんだということを、まず申し上げておきたいと思います。
さて、問田地区の内水被害対策として、ゲートやポンプを整備することは、地元住民からの要望に対する回答において、県河川課が示した解決策であります。
一方、地元関係者が期待している対策は、高井堰の撤去と問田川のしゅんせつであります。高井堰は、問田川が仁保川と合流して少し下がった地点、県立山口中央高校の横にある井堰であります。もともと固定堰だったものが、昭和四十八年に改修されまして、川幅の半分が可動堰になっております。
この高井堰の設置目的は、平川方面の農業用水の確保で、許可工作物として県が設置を認めているもので、管理は水利権者にゆだねられております。
さきの地元住民からの要望においても、この高井堰を撤去して、必要な農業用水はポンプアップで確保することが提案されておりますが、この提案への県河川課の回答は、高井堰を撤去しても水位が下がるのは二十センチ程度なので、抜本的な解決にならないというものでありました。
このことに関しまして、私見を申し上げますと、問田川の水位が二十センチ下がることになれば、問田地区の内水被害は相当程度軽減されるのではないかということであります。あわせて問田川のしゅんせつをやれば、ほぼ浸水被害対策としては、目的を達するのではないかと見ております。
ただここで問題になるのは、高井堰のことであります。川のしゅんせつは県の判断でできることでありますが、高井堰を撤去することには、水利権者の了解が要ります。また、高井堰の役割が農業用水の供給のためだけなのかということも、よく調べる必要があるでしょうし、高井堰の撤去と排水ポンプの設置との費用対効果の比較検討もすべきでありましょう。
そこで、私は、問田地区の浸水被害対策を具体的に決定するための協議会を県、市の担当者、地元関係者、水利権者、有識者等を構成メンバーとして設置すべきと考えます。
そして、県、市の担当者が想定している対策、地元関係者が期待している対策のいずれが、本当の浸水被害の解決策になるのか。また、費用対効果という面から、どちらが妥当なのか、関係者の理解が得られるのか等々のことをしっかり議論して、コンセンサスを得ることが、問田地区浸水被害対策実現に向けての第一歩になると考えます。
こうした協議会の設置に、県は市と連携して取り組むべきと考えますが、このことにつきましてお考えをお伺いいたしまして、二回目の質問といたします。

【回答】◎土木建築部長(山本則夫君)
問田地区の浸水被害対策のための協議会設置についてのお尋ねでございます。
先ほど申し上げましたとおり、問田川の浸水対策につきましては、県と市の役割分担のもと、それぞれの管理者が取り組んでいくべきものでありますことから、浸水対策については、引き続き市と協議は行ってまいりますけども、協議会の設置については考えてはおりません。
以上でございます。

2010年9月30日

平成22年6月定例県議会 (1)地方分権の制度改革について

(1)地方分権の制度改革について

山口から日本をよくする、これが山口県政に携わる者の気概でなければならないと考えます。
県議に復帰して三年余、大小さまざまな諸課題に取り組むことを通して、県議の役割の大事さを、日々痛感いたしております。
強固な中央集権国家である我が国では、私たちの地域と暮らしにかかわることも、その根幹部分は、国が政策形成をいたします。
しかし、その政策を起案する官僚も、立法措置をする国会議員も、日ごろは地方にいません。そこで、地方の現場にあって、私たちの地域と暮らしにかかわる国の政策を現場検証することが、県政に携わる者の大事な役割であります。
そして、実情に合わないものは改めるように国に働きかけ、国ができないことは、県や市町が補完するようにして、地域と人々の暮らしがよくなるようにしていくことが、県政を担当する知事、また県議として県政に参画する県議の責務であると考えております。
今日、明治維新、戦後改革に続く第三の改革が進行していると言われています。明治維新は、薩長雄藩を中心とした地方からの変革でありました。そしてまた、今日進行している変革も、地方からの変革のうねりに基づくものであってこそ本物であると言えると思います。
それは、しっかり地方に根差し、地域と人々の暮らしをよくしていく、新しい国の仕組みをつくるものでなければならないからです。そういう意味で、地方の現場にあって政治に携わっている私たちこそ、現在進行している日本変革の担い手たらねばならないのではないでしょうか。
もちろん、本県にあってその先頭に立つべきは二井知事であります。
平成八年は、夏の知事選に熱く燃えた年でありました。当時を振り返りますと、松陰先生が言われる草莽崛起とでも言うべき盛り上がりが、二井知事誕生を実現させたように思われます。そこには、日本全国のモデルとなる山口県をつくり上げてくれるであろうとの期待がありました。
当然二井知事は、そういう思いで山口県政を担当してこられたと思いますが、その二井県政も、はや四期目後半、総仕上げの時期を迎えようとしております。私は、この二井県政の総仕上げが、山口から日本をよくする県政の総仕上げになることを望むものであります。
そこで、二井知事にお伺いいたします。
今日進行している第三の変革の方向は、言うまでもなく中央集権国家から分権国家への転換であります。この変革が、地域と人々の暮らしをよくする、地に着いた真に実りある変革となるためには、二井知事のように、国と地方の双方で地方自治行政に携わり、さらに県知事として多年重責を担ってこられた方の考えが生かされ、そういう方が主導的役割を果たすべきだと思います。
よって、二井知事には、我が国の分権国家への変革も視野に入れて、県政の総仕上げを進めてほしいと期待するものであります。
ついては、新しい国のかたちとしての分権国家のあるべき姿をどう考え、県政の総仕上げを行おうとしておられるのか、御所見をお伺いいたします。
【回答】◎知事(二井関成君)
私からは、新しい国のかたちとしての分権国家のあるべき姿をどう考え、県政の総仕上げを行おうとしているのかというお尋ねにつきまして、少し長くなりますけれども、お答えをさせていただきます。
私が知事に就任をいたしました平成八年は、第一次地方分権改革がスタートし、それ以降、順次、地方分権推進法や地方分権一括法が施行されるなど、地方分権の取り組みが本格的に始まってまいりました。
そのような中、私は、二十一世紀には、必ず地方分権型社会が到来すると考えまして、大きく二つの視点から県政を推進をしてまいりました。
一つは、県民の意識改革であります。
御承知のとおり、地方分権とは、地方のことは地方みずからが責任を持ってやるということでありますから、単に行政だけではなく、そこに住んでいる住民の皆さんが、自分でできることは自分ですると、依存から自立に向けて大きく意識を変えていくことが重要になってまいります。
私は、そのような視点に立って、山口きらら博や国民文化祭等を活用しながら、いわゆる県民力を高める努力を重ねてまいりました。
したがいまして、私は県民の意識改革の面からは、来年の「おいでませ!山口国体・山口大会」を、県民力をジャンプさせる総仕上げとして位置づけております。そして、その県民力を、二○一五年の世界スカウトジャンボリーへとつなげていきたいと考えているところであります。
もう一つの視点は、制度改革であります。
私は、地方分権の制度改革は、近接と補完の原理に基づいて行うべきであると考えております。すなわち政治行政の果たすべき責務は、まず住民に最も身近な市町村が優先して行い、市町村ではできない広域的な分野は都道府県で行い、そしてどうしても国でなければできない分野のみ国が行うということであります。
したがいまして、まずは市町村が地方分権の受け皿になれる力をつけること、すなわち市町村の行財政基盤を強化し、政策能力、行政能力を高めていくことが必要であると考えまして、そのための最も有効な手段である市町村合併に鋭意取り組んできたところであります。
今後、市や町との関係での総仕上げとしては、住民サービスの向上につなげていけるよう、県の権限をできる限り市や町に移譲していきたいと考えております。
また、私は、国の役割は近接と補完の原理に基づき、外交・防衛や社会保障、経済対策、国家的プロジェクトなどに限定し、その他は地方に権限と財源を大幅に移譲し、すべて地方に任せるべきであると考えております。
私は、それが新政権でいう地域主権国家であると理解をいたしております。したがいまして、地域主権国家が早期に実現できるように、任期いっぱい全力投球してまいりたいと考えております。
以上、二つの視点から総仕上げの方向を申し上げましたが、当然のことながら、県みずからも、来るべき分権型社会における県づくりの確かな基盤をつくり上げていくことが重要であります。
したがいまして、私はデザイン21の第六次実行計画として策定した加速化プランに沿い、総仕上げに向けた限られた期間の中、これまで以上に選択と集中の視点に立ち、真になすべきことを見きわめた上で、所要財源の見通しをつけ、可能な限りの実現に向けて取り組んでいく考えであります。こうした観点から、「財源確保対策本部」に必要な作業を急ぐよう、既に指示をいたしております。
また、真の分権型社会におきましても、次代に負担を先送りすることなく、しっかりとした行財政基盤を確立していくために、行政改革、財政改革、公社改革について確実に進めてまいります。
私は、こうした取り組みを通じて、分権国家にふさわしい山口県の確固たる基盤をつくり上げ、その成果を次なる世代に確実に引き継いでいけるように、「住み良さ日本一の元気県づくり」を進め、デザイン21の総仕上げをなし遂げられるように、全力で取り組んでまいります。
そのほかの御質問につきましては、関係参与員よりお答えいたします。

2010年6月30日

平成22年6月定例県議会 (2)教育問題について

(2)教育問題について

その一は、教育目標についてであります。
山口大学の学長も務められた広中平祐先生は、本県由宇町の生まれで、数学のノーベル賞と言われるフィールズ賞を受賞された日本を代表する数学者であります。その広中先生が、山大の学長をやめられた後も、学長をしておられた市民大学の講座で講演されたのを聞いたことがあります。その講演で、先生は数学の定義について語られ、「数学とは、無限なるものの有限化である」と話されました。そして、「有限化とは、コンピューター処理できるようにすることである」と補足されました。
私は、講演が終わった後、広中先生に尋ねました、「存在するものすべてを百とした場合、コンピューター処理できるものの割合はどれほどですか」と。この問いに対して広中先生は、「五十です。心の世界はコンピューター化できません」と答えられました。
この先生の答えは、教育を考える上で大事な視点を提供していると思います。コンピューター処理できるようにするということは、いわゆる数値化するということであります。今日の時代、教育も含めあらゆる面で、その数値化が進行し、そのことに基づいて物事を評価し、対応していくということが一般化しています。しかし、そのとき、私たちは、数値化できるのは、存在するもののすべてではない、半分にすぎないということを見失ってはならないのであります。
私は、このことは、特に教育において大事なことで、教育の基本は、数値化できない心の教育も含めた全人的なものでなければならないと考えます。
本県では、そうした全人的教育を推進する上において、目指す教育の基本目標を示して取り組んできております。
これまで、どういう基本目標を掲げて本県の教育が推進されてきたかを振り返ってみますと、昭和五十年代の井上教育長時代は、「たくましい防長っ子の育成」でありました。その後の高山教育長時代は、「心の教育・情の教育の推進」で、これは高浜教育長、小河教育長と引き継がれます。
そして、平成八年に就任した上野教育長は、「夢と知恵を育む教育の推進」を本県教育の基本目標とすることを定めました。これは、以降ことしの春まで牛見教育長、藤井教育長と継承されてきました。
そこで、まず新しく本県の教育長に就任された田邉教育長にお伺いいたします。田邉教育長、あなたはこれから、どういう子供たちを育てることを教育目標にして、本県の教育行政を推進していくお考えなのか、御所見をお伺いいたします。
第二は、情操教育についてであります。
さて、先日私は、小中学校で音楽を教えておられる先生方とお話しする機会がありました。その先生方は、最近、音楽の専科の教師がいない小学校がふえていることを憂えていました。
「子供たちの現状を見ると、集中力の低下、感情のコントロールができない、人とかかわるのが苦手、個人主義といった子供たちがふえている。小学校時代から、子供たちの心を育てる情操教育として、音楽教育がしっかり行われる必要があるのに」。音楽教育に携わる者としての使命感に発するそうした声には、切実な響きがありました。
小学校でも、中規模、大規模校では専門性を必要とする教科は、専科教員が配置されることになっています。
音楽はもちろん、専門性を必要とする教科で、以前は中規模、大規模の小学校には、必ず音楽専科の先生がいましたが、近年は理科や算数等に配置される専科教員が多くなり、音楽専科をなくす学校がふえています。
山口市で見ますと、生徒数六百五十名の白石小学校も、生徒数六百七十八名の湯田小学校も、音楽専科の先生がいません。白石小は、算数専科が一人、理科専科が二人、湯田小は、理科専科が二人配置されております。
学級担任教諭とは別に配置される専科教員は、その学校の学級数に応じて加算されますが、この加算配置された専科教員に、何の教科を担当してもらうかは学校長判断であります。
その判断が、理数系重視、数値による評価という大きな流れに沿わざるを得ないため、その教育成果が、数値によって評価されがたい音楽教育を、学校教育全体の中で隅のほうへ追いやってしまうことになっているとしたら残念なことであります。
そうした現状を憂えて、音楽を学ぶことの大事さを訴えた声を紹介いたします。
仲間と心を通わせ、他人を思いやる気持ちや心を合わせる喜びを味わう。心を開き、自分の声を聞いてもらったり、相手の声に寄り添ったりしながら気持ちを合わせて音楽を楽しむ中で、子供たちはよりよいものを求め合ったり、お互いに助け合ったりすることを学んでいる。音楽という教科は、国語の要素、体育の要素、道徳の要素をかけ持った総合的な学習なのである。個人で楽しむものではなく、学校教育の中で集団で学ぶ意味、幼児期から思春期まで、味わうだけでなく学ばせなくてはならぬ教科なのである。
あるスクールカウンセラーが「歌がしっかり歌える学校に問題はない」と言っていた。心の成長に欠かせない音楽という教科。数字には出ないが、県として力を入れてもらえないだろうか。
これは、私に寄せられた声ですが、そのことを通して県政に携わる者すべてに知ってほしいとの思いで寄せられた声であると思います。
金子みすゞの詩に、「見えないけれど、あるんだよ」という一節がありますが、情操教育としての音楽教育は、「数字には出ないけど、大事なんだよ」ということなのではないでしょうか。
心の教育、情操教育は、決して理数教育と相反するものではありません。心が育てば、心の働きである知・情・意が育ち、理数教育の基礎がしっかりすることにつながると思われます。
やはり、日本が生んだ天才的数学者であった岡潔先生は、数学史上の巨人ポアンカレの「数学の本体は調和の精神である」との言葉を引用して、数学は、情緒、情操であると明言しておられます。
その情緒、情操をはぐくむ音楽教育が、小学校教育において、なおざりにされることがあってはならないとの趣旨で、この質問を行っている次第であります。
音楽教育をしっかりするということは、音楽教育の先生を適切に配置するということであります。その第一として、中規模以上の小学校には、音楽専科の教諭が、必ず配置される必要があると考えます。第二に、それ以外の数多くある小規模の小学校にも、音楽教育が行き届く教員配置のあり方が工夫されなければならないと考えます。
十五学級以上ある小学校を、中規模以上の小学校とみなした場合、本県では七十一校ありますが、音楽専科の教員数は五十七人ですので、これらの学校すべてに音楽専科の教諭を配置しようとすれば、その絶対数がまず足りていません。
県下の市で見ますと、岩国市は十六人の音楽専科の先生がおられて際立っていますが、それ以外の市は、すべて中規模以上の学校数より、音楽の専科教員が少ないという現状であります。下松市は、中規模以上の小学校が三校ありますが、専科教員は、理数が主で音楽専科の教諭はいません。また、美祢市は、小学校が二十二校ありますが、十五学級以上の小学校はなく、音楽専科の先生がいません。また、五十七人の音楽専科の先生の中には、ほかの専科を受け持っている先生もおられるものと思われます。
こうした現状を踏まえまして、県教育委員会が、義務教育課程の小中学校人事も一元的に管理しておりますことから、田邉教育長に、二点お伺いいたします。
第一点は、中規模以上の小学校には、純粋専科の音楽担当の教諭を必ず配置する方向を目指すべきと考えますが、教育長の御所見をお伺いいたします。
第二点は、二百五十校にも上る数多くの小規模の小学校にも音楽教育が行き届くよう、教員配置の工夫をすべきと考えますが、教育長の御所見をお伺いいたします。
最後に、部活動を理由とする就学校の変更についてお伺いいたします。
平成二十一年度の中学校全国柔道大会に、山口県の女子代表選手として個人戦に出場したIさんは、柔道だけではなく学業にもしっかり取り組む中学生で、同年開催された中学生の中国地区英語弁論大会では優秀賞を獲得しました。
彼女の場合、幼稚園のときから続けてきた柔道を、中学に進んでも部活でやることができる環境で中学生活を送ることができたことが、学業への励みにもなっていたように思われます。
ただ、彼女が現在小学六年生であったとしたら、来年中学に進学するとき、同様の中学生活が送れる中学校に進学することは不可能になりそうであります。
山口市教育委員会が、今年度から中学校に進学するとき、部活動が理由で校区外の中学校に入学することは認めない方針を、厳格に適用しようとしているからであります。
御案内のように、我が国の教育制度においては、公立の小学校、中学校、高校には、校区の定めがあり、それに基づき、義務教育課程である小中学生が公立学校において学ぶ場合は、市町村の教育委員会が、学びにつく学校、すなわち就学校の指定を行うことになっております。
この就学校の指定は、入学する生徒が住んでいる校区に基づいて行われますが、相当と認められる特別の事情がある場合は、保護者からの申し立てにより、就学校の変更が可能となっております。
このことにつき、文部科学省は、就学校の変更が認められていい事由として、いじめへの対応、通学の利便性など地理的理由、部活動等学校独自の活動等を示してはいるものの、最終的には各市町村の教育委員会が判断するものとしております。
この最終的判断をゆだねられている各市町村教育委員会は、いじめへの対応としては就学校の変更をおおむね認め、地理的要件による変更は緩和の方向にあるように思われます。
そこで、この就学校の変更につき、最も問題になるのが、小学校から中学校に進学するとき、部活動による校区外の中学校への進学を認めるかどうかということでありまして、本県の市町においても、このことには慎重な教育委員会が多く、十九市町のうち、これを認めているのは、柳井市、光市、長門市、下関市の四市だけであります。
冒頭に紹介しましたIさんの家がある山口市も、これを認めていません。そこで、彼女は中学への進学時、住所を移して、他の校区の中学校に入学しました。そうまでしたのは、彼女が実際住んでいる校区の中学校には柔道部がなく、その他校区の中学校に入学すれば、部活動で柔道ができたからであります。
ありのまま事実を語らなければ、課題の認識、問題の解決に至りませんので申し上げますが、Iさんは、住民票上の住所は移しましたが、実際は家から通学しました。そこにはとにかく、住民票を移しさえすればいいという暗黙の了解があったようであります。
昨年の三月、こうした部活動のために住民票だけを移して、実際は家から校区外の中学校へ通学することを問題視する記事が朝日新聞の社会欄に掲載されました。
見出しは、全国中学駅伝V、光市・大和中、女子部員五人越境となっております。光市大和中の女子陸上部が、その前年、二○○八年十二月に、本県のセミナーパークで開催された第十六回全国中学校駅伝大会で初優勝したものの、その登録選手八人のうち五人は、住民票を大和中校区に移してはいるが、実際は周南市や柳井市等、校区外の自宅から通学している部員であったことを明らかにした記事で、「住民票を移していれば適正と思っていた」という学校長のコメントも紹介されており、Iさんの場合と同様、暗黙の了解があったことを示唆する報道内容になっております。
文部科学省は、先ほど述べましたように部活動等を理由とする就学校の変更については、その最終的判断を各市町村の教育委員会にゆだねておりますが、その判断の基準となる要件及び手続については、これを定め公表、周知するよう通達しております。
光市の教育委員会は、この報道があった後、就学校の変更を認める要件の一つに、部活動を理由とする場合を明記し、校区外のみならず市外からも就学を許可する方針を公表して、部活動において越境が問題にならないよう対応しました。一方、山口市の教育委員会は、たとえ住民票を移しても、そこから通学するという実態が伴わなければ、就学校の変更は認めない方針を徹底することを通して、部活動による越境問題をなくそうとしているように思われます。
暗黙の了解事項について、光市は正式にこれを認め、山口市は以降これを認めないという方針を固めたとも言えるでしょう。
光市の対応は、市教育委員会内の協議で決めたように伺っていますが、山口市は、教育委員会が昨年十二月に、市内の公立小中学校の通学区域についての審議会を設置し、部活動を理由とする就学校の変更のことも含めて諮問しております。この審議会は、二回開催されて、ことしの三月に答申しており、その議事録及び答申書は公開されております。
私は、このように政策の形成過程の議論を公開する姿勢を評価するものですが、そうした議論の公開も、それが評価、批判、検証されることを通して、よりよき政策の形成に資することになると思われます。
そこで、山口市のこの審議会における議論について、率直な批判、検証を行ってみたいと思います。
審議会の意見では、基本的に部活動を理由として就学校の変更を認めることには慎重で、その理由の第一が、これを認めた場合、小規模の中学校が消滅することになるのではないかという懸念であります。
私は、まずこの懸念は心配し過ぎであり、事実に照らしてみるとき、杞憂にすぎないことを指摘したいと思います。
実際、本県で部活動による就学校の変更を認めている市で、今年度、中学進学時にその申請がどれほどあったかを調べてみました。その結果、市内における校区外への変更ということでは、光市は一名、柳井市は九名、長門市は一名で、下関市は五ないし十名ということでした。
この調査は、それぞれの市の教育委員会を訪ねて担当者にお伺いしたもので、部活動による就学校の変更を認めたにしても、その数は、そう多いものではないことがわかります。
普通、子供たちは中学に進学するとき、友達関係が続く地元の学校へ進学するものです。そういう中、部活のために校区外への進学を望むのは、よほど強い思いがある子であって、そう多くはないということであります。
柳井市の九名が多いように思われるかもしれませんが、部活動以外の理由での変更申請が十一名で、部活動の場合よりも多いというのが実情であります。柳井市は、柳井中が生徒数五百四十四名の大規模校で、次いで柳井西中の百六十七名、大畠中の六十八名、柳井南中の五十八名の四つの中学校がありますが、以前から柳井中に統合する計画もあったりして、小規模校の校区の子供たちが、部活で大規模校に進学しようとすることに対しては、一般的に理解があり、担当者の方は、部活動を理由に就学校の変更を認めたことによるトラブルは、聞いていないと語っておられました。
私は、以上のことから、部活動を理由とする校区外就学を認めれば、小規模校が消滅するとの懸念は、このことの影響の過大視であり、事実に即していないと考えます。
第二に、学校は地域のセンターの役目があり、それを大事にすべきだという意見であります。
私は、こうした学校を地域コミュニティーの核とみなす考え方は、小学校の場合は重視されていいと思いますが、その役割を中学校に求めるのは間違っていると考えます。
中学校では、生徒の可能性を伸ばす教育環境を整えることを中心にして、学校のあり方は考えられるべきであり、そういう観点からして、中学校においては適正規模の学校が、適正配置されることが望ましく、どこの中学校に行っても部活動を含めて等しい教育環境が整っているあり方こそ、追及されるべきなのではないでしょうか。
審議会は、答申において「部活動を理由とする就学学校の変更を無制限に認めるべきではない」としておりますので、どういう制限のもとでは部活動による就学校の変更を認めるのかを、審議会での議論を通して推察しました。その一つは、小規模校が、単独で野球チーム等をつくれないとき、隣の中学校と合同チームをつくって部活動をすることや、そうした合同チームの試合への出場資格を認めるということのようであります。それから、親のかわりになる人、あるいは親戚などがいるところへ住所を変更して、そこから通うというのであれば認めてもいいということのようであります。
私から言わせれば、これらのケースは、いずれも就学校の変更と言えるものではなく、前者は、合同チームによる部活動を認めているにすぎず、後者は、現に住所を移している実態があることになるわけだから、通常の校区への就学であります。
山口市の教育委員会の現在の考えからすれば、Iさんが、今年度入学であったとしたら、進学する中学校の校区に実際下宿することを求めたであろうと思われます。その場合、Iさんが、どうしたであろうかはわかりませんが、はっきり言えることは、Iさんが、柔道と学業の両立ができたのは、家から通学できて家族の支えがあったからだということであります。
山口市は、いじめへの対応等では、校区外の学校へ自宅から通学することを認めています。私は、同様にIさんのような場合も認めるのが、教育的配慮であると考えます。
この答申は、結論として「実情に応じて、できるだけ子供自身が取り組みたい部活動が可能となる環境づくりに努めるべきである」としています。
ついては、この答申を受けて山口市が、子供たちの可能性を伸ばす観点から、どういう場合に、部活動を理由とする就学校の変更を認めるのか、県下の市町のモデルとなる基準づくりに取り組まれることを期待するものであります。
部活動を理由とする校区外就学について、私の考えを申し上げますと、Iさんの場合のように、継続的に取り組んでいるものの部が、校区の中学校にない場合は、その部がある校区外の中学校への就学を認めるということは、本県の小中学校におけるガイドライン的な考え方として共有されていいのではないかと思っています。
小学校時代はやっていない、すなわちそれまでの継続的な取り組みはないが、中学生になったらやりたいと思う部が、校区の中学校にないという場合も認めるのか。校区の中学校に部はあることはあるが、同じ部活動でも他の校区の中学校の部がすぐれているので、そちらに行きたいという場合も認めるのか等々のことについては、判断が分かれるであろうことは理解できます。
しかし、私には、継続した取り組みがあり、部活への強い思いを持った子に対して、部活ができる環境を整える責任を果たさないまま、望む部活ができる校区外の学校への就学変更を認めようとしない考え方や姿勢は理解できません。果たしてそれは教育の名に値するものなのか、私は疑問に思います。
御案内のように、中学校における部活動は、教育課程外の学校教育活動として位置づけられており、それは、生徒の自主的、自発的な参加により行われる活動とみなされております。しかし、本県では平均して八割近くの中学生が、何かの運動部の部活動に参加している現状からして、部活動が適正に行われるようにしていくことは、中学校教育における重要な課題であることは言うまでもありません。
もちろん、小中学校の教育事務を直接担当するのは、市町村の教育委員会でありますが、都道府県教育委員会は市町村に対し、市町村の教育に関する事務の適正な処理を図るため、必要な指導、助言または援助を行う役割が求められています。
そこで、以上、るる申し述べてまいりましたことを踏まえ、教育長に、部活動を理由とする就学校の変更につき、三点ほどお伺いいたします。
その一は、部活動を理由とする就学校の変更に関する調査についてであります。地方教育行政の組織及び運営に関する法律、いわゆる地教法は、その五十三条において、都道府県教育委員会は、指導、助言及び援助等を行うため必要があるときは、市町村長または市町村教育委員会が管理し、及び執行する教育に関する事務について、必要な調査を行うことができるとしております。
私は、部活動を理由とする就学校の変更に関する判断基準の設定が、子供たちの可能性を伸ばすという観点から適正に行われているのか、指導、助言する役割を県教委が果たすことが望ましいと考えております。地元の事情や意見に影響されやすい市町の教育委員会より、県教委のほうが、このことについても第三者的に公平、かつ客観的に見ることができると思うからです。
県教育委員会は、昨年三月十七日付の文書で、県下の市町教育委員会に、「就学すべき学校の指定の変更や区域外就学については、市町教委において、地理的・身体的理由、さらには、いじめの対応などを理由とする場合のほか、児童生徒の具体的事情に即して相当と認めるときは、保護者の申し立てにより、これを認めることができる」旨、周知いたしております。
この通達文書にある、「児童生徒の具体的事情に即して相当と認めるときは」との文言が想定している主要な事由の一つが、部活動を理由とする場合であろうと思われます。
そこで、県教育委員会は、昨年周知した趣旨の実現が適正に図られているか、まず現況を把握するため、特に議論が分かれる部活動を理由とする就学校の変更について調査に取り組むべきと考えます。このことにつき、まず教育長の御所見をお伺いいたします。
その二は、情報や意見交換を行う協議会の設置についてであります。
私は、いじめへの対応というマイナス要因をなくすために校区外就学を認めるのであれば、子供の可能性を伸ばすというプラス要因での校区外就学も認められていいと考えるものであります。ただ本県では、それを認めたら大変なことになるという憶測で、慎重な市や町が多いようであります。
しかし、本県でも既に四市において、部活動を理由とする校区外就学が認められていることから、事実に基づいて望ましい基準づくりに向けての議論が可能と思われます。
そこで、部活動を理由とする就学校の変更について、情報、意見交換を行う協議会を設置して議論を深め、このことに関してのコンセンサスづくりを目指すべきと考えますが、教育長の御所見をお伺いいたします。
その三は、さきにお尋ねしました一及び二の取り組みを踏まえ、部活動を理由とする就学校の変更について、ガイドラインづくりに取り組むべきと考えますが、教育長の御所見をお伺いいたします。
以上で質問を終わります。

【回答】◎教育長(田邉恒美君)
教育問題の数点のお尋ねのうち、まず、教育目標についてお答えいたします。
県教委では、山口県教育の歴史や伝統を受け継ぎながら、社会の変化や、子供たちの状況等を踏まえ、お示しのとおり、その時々の目指す目標を掲げ、本県教育の振興を図ってまいりました。
近年、社会経済情勢が急激に変化し、教育が抱える課題が複雑・多様化する中、目的意識を持って意欲的に物事に取り組むことが、以前にも増して難しくなってきていると考えております。
このため、現在の教育ビジョンの基本目標であります「夢と知恵を育む教育」を受け継ぎ、一人一人の夢が実現できるよう全力で取り組み、将来に向かって夢や希望を抱き、さまざまな困難を乗り越えていく、知・徳・体の調和のとれた生きる力を身につけた子供たちをはぐくんでまいりたいと考えております。
次に、情操教育について、二点のお尋ねですが、まとめてお答えさせていただきます。
県教委といたしましては、音楽教育を初め、各教科や道徳、特別活動等の教育活動を通じて、豊かな情操が養われるものと考えております。
小学校におきましては、発達段階を考慮し、子供たちの状況をよく把握している学級担任が、音楽を初め、すべての教科等を受け持つことが原則となっており、こうしたことから、音楽専門の教員を採用していないところであります。
また、お示しのように、規模の比較的大きな小学校におきましては、学級担任以外の教員が、いわゆる専科教員として、音楽や理科、算数などの指導に当たっておりますが、どの教科を担当させるかにつきましては、教員の専門性も考慮しつつ、各学校の課題解決や特色ある学校づくりのために、校長が判断し、決定しているところであります。
こうしたことから、県教委といたしましては、学校の規模を問わず、お尋ねの純粋専科の音楽担当の教諭を一律に配置することは難しいと考えております。
今後、教員の指導力の向上や人事配置の工夫、小中連携の促進などにさらに取り組み、小規模校も含めた小学校における音楽教育のより一層の充実に努めてまいります。
次に、部活動を理由とする就学校の変更についての三点のお尋ねにお答えいたします。
近年、地方分権が進む中、地域に根差した教育行政を推進するため、市町教委の権限が拡大されているところであります。
こうした中、就学すべき学校の変更を認める具体的な理由につきましては、住民に最も身近な教育行政を行う市町教委が、地域・学校の実情や教育的配慮の観点から、より主体的に判断していくことが、ますます求められてきております。
県教委といたしましては、市町教委の就学に関する事務が適正に行われるよう、指導・助言しているところであります。
まず、お尋ねの調査の実施についてでありますが、部活動を理由とした就学校の変更に関する具体的な判断基準や、その設定理由等につきましては、市町教委が主体的に判断されるものと考えており、お尋ねのような調査を行うことは考えておりません。
次に、お尋ねの協議会の設置についてでありますが、県教委といたしましては、これまで各市町教委の取り組みについての情報提供に努めてきたところでありますが、市町村合併や学校統合が進む中、就学校の指定について各市町に共通する課題もありますことから、県、市、町の教育長会議において、意見や情報を交換する場を設けてまいりたいと考えております。
次に、お尋ねのガイドラインを作成することは、現時点では考えておりませんが、教育長会議において、部活動を理由とする就学校の変更等についての共通理解を図ってまいりたいと考えております。
以上でございます。

2010年6月30日

平成22年3月定例県議会 (1)森林づくりについて

(1)森林づくりについて

緑の砂漠が広がっている。山口近郊の山林を案内してくれた彼は、今日の我が国の山の現状をそう表現いたしました。
一見、青々とした木々の緑に覆われている山も、一歩踏み込んでみると、至るところで荒廃が進んでいます。
我が国は、国土の三分の二が森林で森林資源が豊かな国でありますが、森林の四一%は人工林であります。その人工林は、戦後の国策としての造林推進で拡大したものでありまして、その面積は一千万ヘクタールに及んでいます。我が国の国土面積は、三千八百万ヘクタールでありますので、国土の四分の一以上が人工林になったことになります。
この造林事業は、燃料が木炭や薪から電気・ガス・石油に切りかわる燃料革命の進展に伴いまして、建築用材として経済的価値の高い杉、ヒノキの針葉樹をメーンとして推進されました。
燃料革命以前は、農家周辺にある里山の雑木林が、天然林の広葉樹で、家庭燃料や農業に必要な肥料・飼料の供給源としてあり、生活に欠かせないものでありました。それが戦後、燃料革命により価値が薄れて、広葉樹は伐採され、杉、ヒノキ等の針葉樹を植林していく拡大造林が、急速に進められたのであります。
これは、戦後復興期、そしてそれに続く高度経済成長期と、建築の木材需要が増大していく中、それにこたえる将来を展望した取り組みであったと言えるでしょう。
しかし、植林した杉、ヒノキがすぐに建築用材として役立つわけではありません。昭和三十年代、高度経済成長期に入り、住宅を初めとする木材需要の増大に国内供給量は追いつかず、それを補うため、外国からの木材を輸入するようになります。段階的な木材輸入の自由化がスタートしたのであります。そして、昭和三十九年に木材輸入は全面自由化されました。
現時点から振り返ってみると、この木材輸入の自由化が始まった際に、このことが我が国林業にどういう影響を及ぼすかを長期的に見通しての政策的措置が必要であったように思われます。
以来、国産材と比べて安く、かつ大量のロットで安定的に供給される輸入木材、すなわち外材への需要は次第に高まり、輸入量は年々増加し、シェアを高めていきます。
それでも、高騰を続けていた国産材の価格は、ついに昭和五十五年ごろをピークにして下落に転じます。以後、その傾向は今日まで続き、国産木材の価格は、現在ピーク時の三割ないし五割にまで下落しました。このため、日本の林業経営は極めて苦しい状況に追い込まれ、林業離れ、林業の衰退が進行しています。
そして、膨大な人工造林の多くは、将来利益を生む見通しが見えないため、施業管理に経費を投ずることが困難になっており、適切に間伐等が行われることなく放置され、今日の山林荒廃の原因となっております。
また、木材自給率は昭和三十年には九割以上であったものが、今では二割にまで落ち込んでいます。
山口県に目を向けますと、森林面積は四十三万九千ヘクタールで、県土面積の七二%を占めております。この森林の四五%は人工林で、十九万七千ヘクタールあります。
所有形態別に森林面積の割合を見ますと、本県は国有林が三%、県有林や市町有林等の公有林が一三%、そして民間の私有林が八四%であります。国全体で見ますと、国有林が三一%、民間の私有林が五八%となっておりますことから、本県は、いかに国有林が少なく、民間の私有林が多いかがわかります。この私有林の四二%に当たる十五万六千ヘクタールが人工林であります。
県は、平成十五年度に、この私有林における人工林の整備状況を調査しました。その結果、十年以上の長期にわたり放置され、手入れの行き届かない森林が五一%を占めていることが明らかになりました。
木が密植して日光が差さず下草も生えていない。地肌がむき出しになっており、表土が流れて木の根が洗い出されている。木が立ち枯れている。私はこうした杉林、ヒノキ林を目の当たりにして、長いこと林業の仕事に従事してきた彼が言う緑の砂漠、青々とした山の荒廃が、本県でも人工林の各所で生じており、看過できない森林問題であることを知りました。
県が、平成十六年三月に策定した「やまぐち森林づくりビジョン」は、こうした現状や課題を的確に把握した上で、豊かな森林の再生に向けて、その考え方、施策の方向、具体的対策を余すところなく網羅しています。
このビジョンは、森林づくり県民税の導入に当たって、県民の理解を得るために作成された面もあろうと思われますが、その内容は、本県の森林づくりの指針書足るにふさわしいものになっています。私は、このビジョンが目指す方向を是とした上で、「森林再生のかぎは、木を使うことにある」との観点から、本県の林業施策について質問いたします。
早稲田大学准教授白井裕子著「森林の崩壊」は、我が国の森林問題のよって来るゆえんと所在を明らかにし、木づくりの伝統構法を守ることの大切さを訴えた好著ですが、この本の中で著者は、「世界の森林問題が『木を切り過ぎる』ことならば、我が国の森林問題は『木を切らな過ぎる』ことであろう」と指摘しております。
日本は世界有数の木材消費国でありますが、国内で自然に育つ木の増加分だけで、国内需要量を大方賄えるほど森林資源が豊かな国であります。しかるに、我が国の木材需要において国産材が占める割合、すなわち、木材自給率はわずか二割であります。
ある意味、ここに今日の日本の森林問題のすべてが集約されていると言っても過言ではありません。
そういう意味からして、私は、現政権になって、農林水産省が昨年十二月に、「コンクリート社会から木の社会へ」と銘打って「森林・林業再生プラン」を公表し、目指すべき姿として「十年後の木材自給率五○%以上」を打ち出したことを、遅きに失したとはいえ評価するものであります。
そこで、第一にお伺いいたします。国のこうした方針を受けて、私は、県として木材自給の向上に向けて、目標を設定して取り組むべきと考えます。
木材自給の割合を高めていくということは、林業振興のみならず、山、森林と地域とのつながりを回復していく施策としても意義あるものと考えます。
ただ、ここで留意していただきたいのは、木材自給率ではなく木材自給と申し上げていることであります。現在の山口県の木材自給率を調べてもらったところ三割で、国に比べて高いことはわかりました。
ただ、自給率を計算する場合、素材生産量から国の場合は輸出に回った分、県の場合は県外に流通した分を差し引いた量が木材自給量になりますことから、木材輸出がわずかな国の自給率と、県外への木材流通の割合が高い県の自給率を同様にみなすことは適切でありません。自給率の計算式では、生産された木材の中で県外に売れる木材の割合が高いと、県の木材自給率は低くなります。しかし、県産材が、県外に売れることは歓迎すべきことであります。
そこで私は、県における木材自給の目標設定は、率ではなく量にすべきだと考えます。本県の木材需要量の見通しを立てて、その五○%以上を県産材とする目標を設定することが、県の林業政策としては妥当であると考えます。
また、林業振興の観点からは、県外流通分も含めた県産素材生産量の目標設定も当然にあってしかるべきと考えます。もちろん、素材生産も木材市場を無視して行うことはできませんので、県産材の需要喚起と利用促進の取り組みが不可欠であります。
以上のことを踏まえお尋ねいたします。県は、木材自給の向上に向けて、目標設定や県産材の需要喚起、利用促進に今後どう取り組まれていくお考えなのか、その基本方針について御所見をお伺いいたします。
第二に、公共建築物への県産木材使用促進についてお伺いいたします。
赤松農林水産大臣は、年が明けて一月五日の記者会見で、公共建築物等への木材利用を法制化して促進しようという意欲を示し、「この通常国会へ法案を提出してやろうということを、今林野庁のほうへもお願いしております」と語っております。
こうした大臣の意を受けて、林野庁は、法案提出の準備をしているようですが、二月十八日に開催された全国木材組合連合会の会議において、林野庁木材利用課長が、その概要を説明しております。
その会議資料によりますと、(仮称)公共建築物等における木材の利用の促進に関する法律案の趣旨は、木材の利用の確保を通じた林業の持続的かつ健全な発展を図るため、農林水産大臣及び国土交通大臣が策定する公共建築物等における国内で生産された木材その他の木材の利用の促進に関する基本方針について定めるとしております。
そして、法律の条文には、「都道府県及び市町村における方針の策定」という項目を設け、都道府県知事及び市町村は、「公共建築物における木材の利用の目標等を内容とする、公共建築物等における木材の利用の促進に関する方針を定めることができる」とのできる規定を盛り込む内容となっております。
本県では、国に言われるまでもなく、公共工事への県産木材の利用促進は、既に取り組んできており、着実に成果を上げております。
県及び市町における公共施設・土木工事の県産木材の使用量は、平成十年度と比べて、平成二十年度は、その二・四倍に伸びております。また平成二十年度の県内公共工事に使用された木材のうち、県産材の利用率は八○%であります。
ただ、民間も含めた本県の全木材消費量の中で、公共工事利用の県産材が占める割合はどの程度かというと、二・八%でわずかであります。まだまだ、本県において、公共建築物等の中で木造化する対象をさらに広げ、県産木材の利用を一層広げていく余地は大いにあり、それを推進していかなければなりません。
私は、そこで、これまでの取り組みを一歩進め、山口県では、公共建築物等への木材利用の実施計画を三ないし五カ年の期間で策定することを提案したいと思います。
この学校は平成二十五年度に改築する。それにはあの山の木を使う。そういう計画を可能な限り把握し、また立てて、三ないし五カ年の実施計画をつくるということであります。
なぜ三ないし五カ年計画かと申しますと、木づくりのよさを生かす建築には時間がかかるからであります。これを単年度予算、単年度事業でやろうとすれば、無理を生じます。工業製品と違って、木の製品は、いいものを提供しようとすれば時間を要します。最近は、製材した木は人工乾燥される場合が多いようですが、でき得れば木のよさを生かすには、半年から一年余りかけて自然乾燥するのがいいようです。
もう一つの理由は、この計画は、森林循環の林業モデルを盛り込んだ内容にすべきと考えるからであります。
本県の公共建築物への県産材利用促進の取り組みは、さらに進化させて、木の選定、伐採から始めて、伐採後の植林も含んだ森林の循環をつくり出す林業モデルの形成につながる事業として、県下の市町や森林組合等と協働して計画の策定に取り組むことが望ましいと考えます。そうした計画の期間は、少なくとも三ないし五年は必要かと思われます。
私は、こうした木の選定に始まり、それ以後の伐採、搬出、製材、建築に至るまで、林業の全プロセスを包含する計画の策定と実行が、産業として成り立つ林業システムの構築にもつながっていくことを期待するものであります。
そこでお尋ねです。公共建築物等への県産木材利用を一層促進するために、県下の市町や森林組合等と協働して、三ないし五カ年の実施計画を策定して推進すべきと考えますが、御所見をお伺いいたします。
第三に、林業の生産性向上についてお伺いいたします。
先ほど紹介した「森林の崩壊」の著者白井裕子女史は、日本と欧州先進国との間では、林業の生産性に圧倒的な差があることを指摘しています。
例えば、木を切り出して製材するまでの生産性を比較してみると、スウェーデン、フィンランドの切り出しコストは、一立米――一立方メートルということでありますが、一立米当たり日本円で千五百円程度ですが、我が国ではそれが七千円から一万一千円にもなります。
また、一人が一日に生産する量を見ると、北欧諸国では一九五○年ごろにはおおよそ一・五立米で、日本とそう違いはなかったのが、二○○○年には三十立米に達し、林業の高度化が進んでいます。片や日本は、今でも三ないし四立米で、数値だけで見れば生産性に十倍もの違いが生じております。
この格差は、戦後五十年ほどの間に開いたものであります。欧州の先進国は研究開発を積極的に実施し、林業の機械化を進め、それとともに山林所有者の共同化などのソフト政策を進めてきました。
日本は、昭和三十年代、木材輸入の自由化を開始したとき、同時にこうした林業の生産性向上のための施策に着手すべきであったと思われます。
国際貿易において自由化の傾向は、将来とも一層強まると予想されることから、一たん自由化された木材の輸入が、制限される方向に向かうことは、今後とも期待できません。
とすれば、我が国林業の生産性を上げる基盤整備を着実に進めて、その上で価格競争力においても外材にまさるとも劣らぬ国産材、県産材の林業経営が育つよう図っていかなければなりません。
さきの質問で、公共建築物に県産材の利用を徹底していくことを求めました。もちろんこのことは大事ですが、いかんせん県全体の木材消費において、現在のところ公共工事が占める割合は少なく、九五%以上は民間消費であります。だから、林業の本格復興のためには、その民間の木材市場でシェアを広げなければなりません。そのためには、価格競争力を強めることが求められ、林業の生産性の向上が不可欠なのであります。
「やまぐち森林づくりビジョン」は、森林施業の団地化・共同化の促進、効率的な路網の整備と機械化の促進に取り組むこととしており、林業の生産性向上に向けた基盤整備の一般的方向を示しておりますが、今求められているのは、それらのことを計画的に具体化していく取り組みであります。
そこでお伺いいたします。私は、本県林業の生産性向上の目標を定め、それを達成するための林業の生産基盤の整備水準を具体的に設定して、計画的にその実現に取り組むべきと考えます。このことにつき、御所見をお伺いいたします。
第四に、森林バイオマスの取り組みについてお伺いいたします。
森林再生は、森林と人々の暮らしとのつながりを回復する営みであるとも言えます。地元の森林の木で家を建て、それをまた生活の燃料、エネルギーとして使っていく。一方、木を伐採したら、植林して施業管理を適宜行い、森林を保全していく。こうした関係が人々の暮らしと森林との間で成り立っていたのが、途切れてしまいました。家を建てるのも輸入外材が多くなり、燃料も石油・石炭にかわり、国内の木の使用が減り、放置され荒廃する森林が増大する原因となりました。
そこでさきに、建築面で木を使うことを促進して森林とのつながりを回復し、林業復興、森林再生を図っていくべしとの趣旨から、木材自給、公共建築物への県産木材使用、林業の生産性向上について質問いたしました。

次に、燃料やエネルギー源として、森林が再び地域や人々の暮らしに活用され、そのつながりを回復していくことを期待して、森林バイオマスへの取り組みについて質問しようとする次第であります。
バイオマスとは、生物資源(bio)の量(mas)をあらわす言葉で、地球に降り注ぐ太陽エネルギーを使って、生物が光合成によって生成した有機物であり、持続的に再生可能な資源であります。その中で、森林が生み出す木は、主要なバイオマスエネルギー源の一つでありまして、木質バイオマスとも称します。
日本は、豊かな森林資源に恵まれた国でありますので、石油や石炭の化石燃料では資源小国ですが、森林バイオマスをエネルギーとして活用できるようになりますと、一気に資源大国になります。しかも、石油、石炭はいずれ枯渇しますが、森林バイオマスは持続的に再生可能なエネルギー資源であります。
また、バイオマスは、燃焼等により二酸化炭素を放出しても、その二酸化炭素は、バイオマス形成過程で吸収・貯蔵した二酸化炭素の量と同等であることから、バイオマスエネルギーは、トータルとして大気中の二酸化炭素を増加させません。このことをカーボンニュートラルと申しますが、石油や石炭等の化石燃料の使用を、こうしたカーボンニュートラルのバイオマスにかえていくことは、地球温暖化の原因とされている二酸化炭素の増加を抑制することとなり、地球環境を保全していく上からも、喫緊の最重要課題であります。
本県は、平成十四年三月に「やまぐち森林バイオマスエネルギー・プラン」を策定して、森林バイオマスへの取り組みを本格化させ、このプランに基づいて、三つのプロジェクトを推進してまいりました。
私は先般、その三プロジェクトを視察いたしましたが、その一つ、既設石炭火力発電所施設での混焼システムは、新小野田発電所で実施されているもので、燃料の石炭に、林地残材や間伐材等の木質バイオマスをまぜて燃焼させる、いわゆる混焼による火力発電を実現しています。
木質バイオマスの混焼の割合は三%で、年間の量は現在一万トンですが、受け入れ施設を増設する予定で、それが完成すると年間受け入れ量は三万五千トンに増加する見通しであります。
新小野田発電所の発電量は百万キロワットで、山口県の全家庭に供給する電力の五六%をカバーしているそうですが、木質バイオマスを受け入れての混焼は、全国の発電所の中でもトップレベルの水準で、他の電力会社からの視察も多いようであります。私が行ったときも、それに遭遇しましたが、新小野田発電所の所長は、「山口県が森林バイオマスに熱心に取り組まれ、一緒にやってきたことが、今生きています」と、本県の取り組みを評価しておられました。
その二は、中山間地域電熱供給システムということで、岩国市錦町で実験的に行われている木質チップをガス化して発電と熱供給を行うガス化コージェネレーション施設であります。この施設がつくり出す電力や熱は、隣接する二つの老人施設に供給されており、森林バイオマスによる地域エネルギーの地産地消を目指しての実験モデル施設になっております。この施設も、全国からの視察が多いようであります。
その三は、小規模分散型熱供給(ペレットボイラー)システムであります。岩国市の山奥、天尾に県森林連合会の木材市場がありまして、ここにペレット生産工場が併設されております。
ペレット――これがサンプルでございますけどね、(提示)ペレットは、木材を細かく破砕して、直径数ミリ、長さ一センチ前後の小さな木質固形燃料につくりかえたもので、袋詰めにして供給し、部屋ストーブから施設ボイラーまで灯油の代替燃料として普及していこうというものであります。そのための原料である森林バイオマスの収集から、ペレットの製造、そして熱利用施設の整備とそれへの供給を効率的にシステム化していく取り組みが推進されています。
これら三つのプロジェクトは、森林バイオマスの取り組みとして全国に先駆けるもので、二井県政の志が感じられます。
そこでお尋ねいたします。地域や人々の暮らしの燃料、エネルギー源として森林バイオマスを活用していくことは、我が国を資源大国にし、森林再生・林業復興につながり、さらには地球環境保全に資するもので、その意義は極めて大きいものがあります。本県は、その森林バイオマスのプロジェクト事業を全国に先駆けて推進してまいりましたが、これまでの取り組みの総括と、今後の展望について御所見をお伺いいたします。
第五に、森林づくり県民税と山地災害対策について、三点お伺いいたします。
今議会には、平成十七年度から施行された森林づくり県民税に関する条例の改正の議案が提案されております。改正内容は、この税を賦課する期間を、平成十七年度から平成二十一年度までの五年間としていたものを、さらに五年間延長して平成二十六年度までと改めるものであります。
私は、このことに異存はなく、全面的に賛成でありますが、この県民税が五年間延長されることによって行われる森林整備事業において、昨年七月の豪雨によって発生した山地災害対策はどうなるのかに関心があります。
私は、昨年の九月県議会で、土砂災害の検証と対策について質問し、樹木の植生等により山それ自体を強くしていく取り組みが必要なのではないかと尋ねました。これに対し、松永農林水産部長から「山地災害対策検討委員会を設置して、防災の視点から森林整備のあり方について意見・提言をいただき、これを踏まえて、今後の対策や整備の方向を検討したい」との答弁がありました。
設置されました山地災害対策検討委員会は、ヘリコプターによる現地調査を実施し、四回の委員会を経て、昨年の十二月にその検討結果を報告書にまとめました。その報告書を見ての私の所感は、原因の究明は詳細であり、災害復旧対策は具体的であるが、防災の視点からの森林づくりについては、一般論が述べられているにすぎず、どういう植生の山地にしていくべきなのかの具体像が明確でないということであります。
「想定される原因」という項目で、この報告書は、崩落地周辺の植生状況を明らかにしておりますが、被災地の九三%は通常災害に強いと思われている松、広葉樹地帯でした。なぜ、そうなのか。松は松くい虫にやられて松枯れしていたからなのか、広葉樹も高い木が育っておらず、低木で根が張っていなかったからなのか、とにかく尋常でない数百年に一度の大雨が降ったからなのか、素人的にもいろいろ考えてしまいますが、この報告書はその点についての分析を明確にしていません。
この報告書は、急がれる災害復旧対策については具体策を示すも、防災の視点からの森林づくりについては、一般的方向を示すにとどまり、その具体策の検討は県にゆだねる内容になっております。
そこでお尋ねの第一点です。植生の観点から、災害に強い森林づくりを、昨年七月の豪雨で山地災害が発生した山口・防府地域の山々において、具体的にどう進めていくのか、御所見をお伺いいたします。
お尋ねの第二点は、その具体的対策の一つとして抵抗性松を植えるべきだとの提案がありまして、このことにつきお伺いするものであります。
この対策の提案者は、昨年の豪雨災害発生のメカニズムを地質や植生との関係において分析された工学博士であります。
抵抗性松とは、松枯れ病の原因であるマツノザイセンチュウが侵入しても枯れない抵抗性のある松のことで、枯れてしまった松林の中に生き残っている松から、そうした松が選定育成されたものであります。
山口・防府地区で豪雨による山地災害が発生した箇所は、花崗岩分布地域にほぼ重なりますが、このことは花崗岩分布地域の豪雨に対する脆弱さを反映しています。その花崗岩分布地域の植生の特徴は松類であります。花崗岩は、風化して真砂土化しても栄養分の貧弱な土壌にしかなりませんが、松はそうした土壌に育ちます。そして松は、枯れなければ根が地中に深く真っすぐ上に伸びる直根があり、降雨・流水で流されやすい花崗岩風化による真砂土の土層を緊縛して、流亡を防ぐことができる植物であります。
報告書も山口・防府地区における森林づくりということの一つに、「未立木地に、防災の観点から抵抗性松の植栽など検討することも必要です」と記しております。
そこでお尋ねであります。山地災害が発生した山口・防府地区の花崗岩分布地域における抵抗性松の植樹は、防災の視点からの森林づくりに有効と思われ、その実施を期待していますが、このことにつき御所見をお伺いいたします。
さて、ことしの一月十八日に「第四回やまぐち森林づくり推進協議会」が開催され、森林づくり県民税の延長によって行われる森林整備事業の見直し最終案が了承されました。しかし、この事業案を見る限りにおいて、豪雨による山地災害の対応が、どう反映されているのか定かでありません。
森林づくり県民税は、県民が関心を持ち、必要性を感ずる森林整備事業に有効に使われてこそ、県民の理解を得られるものであります。
そこでお尋ねの第三点であります。森林づくり県民税で、豪雨のため被災した山地を災害に強い森林にしていくため、どういう森林整備事業を行っていくお考えなのか、御所見をお伺いいたします。
最後に、森林づくりに関連して藻場・干潟の再生についてお伺いいたします。
森林を再生することは、豊かな海の再生にもつながります。森、川、海はすべてつながっており、「森は海の恋人」などとも言われているのであります。
豊かな森林は、水を蓄える緑のダムとなり、きれいな水をはぐくみます。そして植生豊かな森林は、多様な生態系をはぐくみ、海の生物に必要な栄養素をつくり出し、その栄養は川を伝って海に届けられます。そのため漁師が、自分たちの海を豊かにするため、上流域の水源地域に植樹するなどの取り組みが行われております。
私の地元山口市においても、市内を流れます椹野川をモデルに「源流の森づくり」「自然豊かな川づくり」「山口湾の藻場・干潟の再生」など流域全体を豊かにしていく取り組みが行われ、全国的な先進事例となっております。
山口湾では、かつて多くのアサリがとれておりましたが、他の瀬戸内海沿岸部と同様、アサリの資源は壊滅状態となっておりました。しかし、この取り組みにより、壊滅状態だったアサリ資源が順調に回復するなど、山口湾の再生が着実に進んでいるようであります。
森と海をつなぐ、本県におけるユニークな取り組み事例としては、逆さ竹林魚礁なども上げられます。逆さ竹林魚礁とは、干潟に竹の枝が逆さになるように設置する魚礁で、平生町にある水産大学校田名臨海実験実習場で発案されたものであります。
平生湾に設置された逆さ竹林魚礁には、ナマコが大量に繁殖していることが確認されるなど、豊かな漁場回復への効果が認められており、全国的にも広まっているようであります。
このような森と海をつなぎ、豊かな海を取り戻す取り組みは、全国に誇れるものではないでしょうか。
藻場・干潟は「海のゆりかご」とも呼ばれ、魚の産卵場であり、稚魚の生育の場でもあります。県では、「儲かる漁業」の実現を目標に掲げておられますが、この目標はそこに豊かな海があって、その海に育てられた豊富な水産資源があってこそ実現できる目標であります。
今後とも全国発信できるような取り組みを進め、水産資源の回復につながる藻場・干潟の再生に努めていただきたいと考えます。
そこでお尋ねいたします。豊かな漁場回復に向けた藻場・干潟の再生に、今後どのように取り組まれるのか、御所見をお伺いいたしまして、一回目の質問を終わらさせていただきます。(拍手)

【回答】◎知事(二井関成君)
ただいま合志議員から国の「森林・林業再生プラン」などを示されての多岐にわたる御質問がありましたが、私からは、木材自給の向上に向けた取り組みの基本方針と森林バイオマスの取り組みの二点についてお答えをさせていただきます。
まず、木材自給についてであります。
木材価格の長期低迷や担い手の減少・高齢化、農山村地域の過疎化など厳しい経営環境の中で、荒廃した人工林が増加をするなど森林・林業を取り巻く現状を踏まえまして、私は、県民の暮らしや産業を支える豊かな森林づくりを進めるために、平成十六年三月に「やまぐち森林づくりビジョン」を策定をし、本県における森林づくりや林業振興の方向性をお示しをさせていただきました。
また、このビジョンに基づきまして、荒廃した人工林を再生をし、森林の持つ多面的な機能の回復を目指す森林づくり県民税の導入や、未利用森林資源の利活用にもつながる森林バイオマスエネルギーの実証実験、優良県産木材の認証制度等、これを利用した木造住宅への助成制度の創設など、全国に先駆けた取り組みを果敢に進めてまいりました。
このような中で、今回、国において、国内の木材自給率を十年後に現行の二四%から五○%まで引き上げることなどを骨子とした「森林・林業再生プラン」が示されたところであります。今後一年をかけて、その具体的な検討をされるということになっております。また、プランでは、森林の持つ多面的機能の持続的な発揮や林業・木材産業の再生、木材利用・エネルギー利用の拡大などの方向性が示されております。
この中で、バイオマスエネルギー分野など、既に本県におきまして先駆的に取り組んでいるものもありますし、これまでの取り組みの結果として、住宅分野での県産木材の利用なども進んできておりますので、私としては、国のプランが具体化されていない現段階におきましては、本県におけるこれまでの取り組みを着実に進めていきたいと考えております。また、今後、国の検討状況なども踏まえながら、本県における取り組みのあり方を適宜見直しながら、地域における木材の利用を促進をしていくことが重要と考えております。
なお、御提言のありました、本県における木材自給の数値目標のあり方につきましては、国のプランの掲げる数値は大変意欲的であり、このための具体化策にも期待をいたしておりますが、私としては、関係者の理解も必要な目標の設定に当たりましては、国の支援策などの具体化も踏まえまして、その要否も含めて検討させていただきたいと考えております。
次に、森林バイオマスの取り組みについてであります。
間伐材など未利用森林資源をバイオマスエネルギーとして利用いたしますことは、木材の利用促進や森林整備を初め、中山間地域における新たな産業や雇用機会の創出、さらには、世界的な問題となっている地球温暖化の防止などさまざまな効果が期待をされます。
私は、平成十四年三月に、いち早くやまぐち森林バイオマスエネルギー・プランを策定をし、その基本的な方向をお示しをいたしますとともに、平成十七年十二月には、国のNEDOのバイオマスエネルギー地域システム化実験事業の指定を受けまして、関係市や森林組合、企業などと連携をして、地域エネルギーシステムとして確立をしていくための実証実験に取り組んでまいりました。
本県の取り組みは、石炭火力発電所での大規模な混焼やガス化発電、ペレット利用という利用形態が多様でありますし、間伐などの伐採から輸送を含めた、川上から川下までの総合的な取り組みとして全国的にも大きな注目を集めております。また、これまでの取り組みの結果として、各システムの運用体制につきましても、関係機関の連携が図られる段階になってきております。
私は、本県におけるこれまでの取り組みを確実なものとするために、加速化プランの中でも森林バイオマスエネルギーの活用を重点事業に掲げますとともに、国に対しましても大規模な利用を図るための制度の創設などを要望してまいりました。この結果として、お示しがありましたように、石炭火力発電所での混焼システムでは、当初予定をされた一万トンの利用体制から三万五千トンへと大幅な利用の拡大が図られているところであります。
今後においては、利用量の拡大に応じた間伐材などの供給体制の整備や、各システムのエネルギー効率のさらなる向上などの課題もありますので、私としては、関係機関と連携をして、これらの課題の克服に取り組み、新たな地域エネルギーシステムである森林バイオマスエネルギー利用システムの定着化、さらには活着を図ってまいりたいと考えております。
そのほかの御質問につきましては、農林水産部長より答弁をさせます。
【回答】◎農林水産部長(松永正実君)
森林づくりに関する四点のお尋ねにお答えをいたします。
まず、公共建築物への県産木材の利用促進についてであります。
公共分野での県産木材の利用促進につきましては、庁内の関係部局、教育委員会等で構成する「県産木材利用推進連絡会」を設置し、小中学校の校舎や体育館の内装の木質化、公園施設・公共土木工事での木材利用などに関係部局が連携して取り組みますとともに、今年度から、国の経済危機対策の中で措置された森林整備加速化・林業再生基金を活用して、保育園などの施設における園舎の木質化などの取り組みを進めているところであります。
現在、国において、公共建築物等への木材の利用の促進に関する法律案が検討され、この中で、都道府県の責務として、国の施策に準じた取り組みに努めるとともに、「公共建築物等における木材の利用の促進に関する方針を定めることができる」とされ、今後、具体的な内容が検討されることとなっております。
したがいまして、今後の国の検討結果などを踏まえまして、お示しのありました実施計画の要否も含め、県としてのあり方の検討も進めてまいりたいと考えております。
次に、林業の生産性向上についてであります。
小規模・零細な森林所有者が多く、担い手の減少・高齢化など森林・林業を取り巻く厳しい経営環境の中で、持続可能な林業経営を実現するためには、生産基盤の整備や経営の効率化は重要な課題となっております。
また、生産基盤の整備には、団地化に向けた合意形成や森林現況調査の実施、効率的な路網の配置、高性能林業機械の導入、機械オペレーター等の人材育成などハード・ソフト両面にわたる多般な取り組みが必要と考えております。
このため、県といたしましては、平成十九年度に、山口市阿東町において約三百ヘクタールの人工林を対象に、施業の集約化などを中心としたモデル事業を実施し、この結果をもとに県内各地域での普及に努め、現在二十カ所、約六百ヘクタールでの取り組みがなされております。
また、森林整備加速化・林業再生基金を活用いたしまして、森林組合などと連携して、間伐の促進や、これに必要な作業道など林内路網の整備や高性能林業機械の導入など、経営の効率化に資する基盤整備に取り組むこととしているところでありまして、本基金の実施期間三年間におきまして、約千ヘクタール程度の基盤整備を予定をしております。
林業経営は、五十年から百年にわたる樹木の育成が基本でありまして、経営の起点となる木材価格の動向は、このような超長期の中では見きわめがたいところもございますので、県としては、地域林業を担う市町、森林組合との連携のもと、将来を見据えた基盤整備や担い手の育成を図る中で、経営の効率化を進めることが重要と考えており、生産性向上の目標も、このような取り組みを進める中で、地域の実情に応じて集約されるものと考えております。
次に、森林づくり県民税と山地災害対策についての三点のお尋ねであります。
まず、昨年七月豪雨で被災をした山口・防府地区における災害に強い森林づくりについてであります。
山地災害対策検討委員会におきましては、防災や減災の面において、森林の果たす役割を指摘をし、今後における本県の森林づくりのあり方につての提言をいただいたものでありまして、県としては、この提言も踏まえて、地域防災計画の見直しを行ったところであります。
また、山口・防府地区においては、十七カ所に及ぶ大規模な山腹の崩落を生じておりますので、県としては治山事業の計画的な実施により、この復旧に全力で取り組みますとともに、市や森林組合、森林所有者などと連携しながら、杉、ヒノキの人工林や広葉樹林につきましては、保安林整備事業や造林事業などにより、森林の現況に即した間伐や天然林改良など適切な森林整備を実施し、また、樹木の大きな生育が見られない未立木地につきましては、その実態を見きわめながら、保安林整備事業などにより、抵抗性松やコナラなど広葉樹の植栽を進めることで、防災機能の高い森林づくりを着実に進めていきたいと考えております。
二点目は、抵抗性松の植栽についてであります。
松くい虫被害に強い抵抗性松は、お示しのとおり樹木の生育条件に劣る花崗岩地域におきましても生育するだけでなく、深くまで伸びる根を持ち土砂崩壊防止などの防災機能の高い樹種の一つであります。
また、このような植栽に当たりましては、ヤシャブシやヤマモモなどの広葉樹の肥料木と針葉樹の抵抗性松を混植するなどして、森林の再生を図ることが、防災の視点からの森林づくりに有効な手法とされております。
したがいまして、花崗岩地域の多い山口・防府地域における未立木地におきましては、今後、森林所有者の理解も得ながら、保安林などの指定を行いまして、抵抗性松の植栽による森林の再生を進めていきたいと考えております。
三点目は、森林づくり県民税についてでございます。
森林づくり県民税での事業は、山地災害の防止を初め、水源の涵養、地球温暖化の原因となる二酸化炭素の吸収源としての役割など、森林の持つ多面的な機能の回復を目指して導入された制度でありまして、県内全域にわたり、荒廃した人工林の再生などの取り組みを進めているところであります。
昨年七月の豪雨災害などの復旧等に当たりましては、治山事業等により適切に対応することが基本であり、森林づくり県民税事業では、県民が幅広く受益できる荒廃森林の再生に主眼を置いた取り組みを進めることが適当と考えておりますが、次期事業におきましては、本県のこれからの森林づくりにつながるモデル事業として豊かな森林づくり推進事業を実施することとしております。
この事業の中で、山口・防府地区で見られるような荒廃したアカマツ林の回復再生を図るための手法の検討などを行うこととしておりますので、こうした検討結果を踏まえ、効果的な治山事業や造林事業への新たな提案を行うなど、災害に強い森林づくりを進めてまいりたいと考えています。
また、こうしたハード事業にあわせまして、森林所有者や下流地域住民が一体となった森林づくりを進めていくことが重要でありますので、森林づくり県民税事業で新たに導入をすることとしている森林づくり活動支援事業を活用して、地域住民が参加して行う植樹活動や育樹活動などを通して、森林の持つ機能への理解や防災意識の高揚を図りながら、地域が連携した森林整備を推進していきたいと考えております。
最後に、藻場・干潟の再生についてであります。
お示しのとおり、豊かな漁場は、森・川・海の一体的な管理によりもたらされることから、県ではこれまで漁業者の行う植林活動を支援いたしますとともに、平成十五年からは、お示しのありましたように山口湾におけるアマモ場造成や干潟の耕うんなど、藻場・干潟の再生に向けた取り組みを進めてまいりました。
また、今年度からはこうした取り組みを県内十市町に拡大をし、ウニの駆除、アサリの被覆網による漁場管理等の漁業者グループが行う藻場・干潟の保全活動を支援をしているとこであります。
その結果、山口湾や周南地域の干潟では、これまでほとんど見られなかったアサリが収穫できるなどの成果があらわれてまいりました。
県としては、今後、こうした藻場・干潟の再生に向けた取り組みを加速化するため、藻場を構成するヤツマタモク、アラメの人工採苗や干潟の再生につながるアサリ人工種苗放流等の技術開発を引き続き進めますとともに、来年度からは新たに、本県のみにまとまった分布が認められ市場評価の高いカイガラアマノリの量産化技術開発に取り組み、「紅きらら」という商品名で、地域特産化を目指す漁協の取り組みを支援するなど、干潟の有効利用による生産性の向上にも努めてまいります。
また、漁業者主体で行われております保全活動の重要性を、地域住民参加の干潟耕うんや、高校での実習、小中学校の体験学習等を通じまして広く普及啓発することにより、活動の輪を広げてまいりたいと考えております。
県としましては、今後とも森・川・海をつなぐ多様な生態系がもたらす豊かな漁場の回復に向けまして、藻場・干潟の再生に積極的に取り組んでまいります。

2010年3月30日

平成22年3月定例県議会 再質問 ペレットについて

二回目の質問であります。
藻場・干潟の再生では、また子供たちがアサリ狩りに行けるような干潟の再生を期待いたしております。よろしくお願いいたします。
再質問、時間がありませんので、ペレットに限って再質問をいたします。
ペレットを燃料にいたしましたボイラー、いわゆるペレットボイラーを導入した施設が本県では既に十五施設ありまして、さらに来年開催される国体施設でも導入されるようであります。
今後、積極的な導入が望まれるわけでありますが、設置費用とその後の維持管理を含めたコストが大きな問題になると思われます。原油価格の相場などで大きく異なると思われますが、電気や灯油、ガス等を使用した場合と比べて、どの程度コストに差が出るのか、お伺いいたしたいと思います。
また、参考資料にも載せておりますけれども、徳佐小学校で各教室にはペレットストーブがありまして、また、多目的ホールの床暖房はペレットを燃料として行われておりまして、子供たちに喜ばれております。これから学校施設においてペレットストーブ、ペレットボイラーの導入を図っていくということは、教育環境の整備という面からのみならず、子供たちへの環境教育という面からも望ましく、そのことへの取り組みを期待するところでありますが、このことにつき教育長の御所見をお伺いいたしまして、二回目の質問といたします。

【回答】◎農林水産部長(松永正実君)
ペレット利用に係るコストについての再質問であります。
まず、設備の導入費用でありますが、ペレットボイラーは他のボイラーと比べまして、二倍から三倍程度の額となっております。また、維持管理費の大半を占める燃料費としては、石油価格がやや高目になっております、現時点では、同じ熱量で灯油などとペレットを比較いたしますと、ほぼ同一の価格となっております。
県としましては、ペレットボイラーの導入に当たりましては、初期費用の負担が課題となりますので、国の助成制度などを活用して負担の軽減を図りますとともに、ペレットの利用を促進するために製造や輸送コストについてさらに削減を図ってまいりたいと考えております。

2010年3月30日

平成21年11月定例県議会 (1)フードバレーについて

(1)フードバレーについて

さきの総選挙で圧倒的な勝利を得た民主党を中心とした連立政権、鳩山政権が誕生いたしました。私が見たところ、鳩山政権、最も輝いておりましたのは、鳩山首相の所信表明演説までで、後は、やはり現実の課題と格闘、苦闘しているなと、それなりの支持は保っているけれども、評価する声と批判する声と相半ばしてきているなという感を持っているところであります。
さて、民主党が掲げております看板は、国民の生活が第一であります。ただ、今民主党が問われているのは、国民の生活が第一の政党なのか、それとも、選挙が第一の政党なのか、それが、まさしく今問われているのではないかなという感がいたします。
真に国民生活が第一の政党というのであれば、少なくとも、二十一世紀前半の一億数千万の国民生活と日本の国の命運がかかっている、そしてまた、同様に、二十一世紀前半のアジア太平洋地域の平和の基礎となる日米同盟が、揺るぎないものになるよう責任ある対応をすべきだと考えているところであります。
さて、今我が国は、格差の問題、雇用の問題、景気の問題、財政の問題と、さまざまな困難な問題に直面しております。私は、こういう困難な問題を解決する根本的な策は、グローバル経済の中で、第一次産業をいかにして成長産業にしていくのかというところにあると見ております。そういう観点から、このたびも、一般質問をさせていただきます。
それでは、早速一般質問に入ります。

日本は瑞穂の国であり、日本農業は我が国の基幹産業として世界市場で成長していく、私には、そういう確信があります。そして、そのことを実現していくことが、我が国の農業政策、すなわち、農政の目的でなければならないと考えます。
ところで、世界市場で成長していく日本農業と申しますと、「それは、とても無理」という声が返ってきそうであります。今日、日本農業弱小観が、しっかり定着しているからであります。しかし、この日本農業弱小観は、本当にそうなのでしょうか。
最近、農業問題について、鋭い的確な指摘と発言で注目されている本県山口市小郡出身の農業ジャーナリスト浅川芳裕氏は、日本農業弱小観は根拠がなく、我が国が世界の農業大国であることを、国際連合食糧農業機関(FAO)の具体的なデータに基づいて明らかにしております。
彼は、我が国農業の弱さを裏づけ、国民の不安を増幅させる大前提としてある、日本は、世界最大の食糧輸入国で、食糧の海外依存が際立った国であるとの認識は、間違っていると主張します。
二○○四年の先進五カ国の農産物輸入額を比べた場合、一位が米国の五百九十九億ドル、次いでドイツの五百八億ドル、日本はイギリスと三位同列の四百十五億ドルで、フランスの三百四十六億ドルという順になること。
実際の依存度をあらわすと見られる国民一人当たりの年間農産物輸入額を試算すると、一位イギリス六百九十ドル、続いてドイツ六百十七ドル、フランス五百五十七ドル、日本はそれらのほぼ半分の三百二十四ドルで、むしろ、一番少ない米国二百十四ドルのほうに近いこと。
さらに、対GDP農産物輸入比率を見ても、全く同順で、イギリス一・九%、ドイツ一・八%、フランス一・七%、日本○・九%、米国○・五%となっており、日本の国力に占める輸入食糧負担は決して多くないと言えること等が、彼の主張を裏づけています。
そして、農産物を生産額で見ると、日本の七百九十三億ドルは、フランス、ドイツ、イギリスを初めとするEU諸国のどこよりも多く、農業大国と言われるロシア二百十一億ドル、オーストラリア二百三億ドルの三倍超で、世界の中で日本は、農民人口が大多数を占める一位、二位の中国、インド、三位の米国、四位の農業立国ブラジルに次ぐ世界五位の農業大国であるのです。
生産量から見ても世界トップレベルの個別の品目は少なくなく、ホウレンソウ世界三位、イチゴ六位、キュウリ七位などトップテン入りするものもあれば、果物の王様リンゴで十四位、欧州メジャー作物ジャガイモでさえ十九位と健闘しており、四割減反の米は世界十位であります。生産額、生産量いずれにおいても日本が農業大国であることを示す、浅川氏の以上の指摘は説得力があります。
私たちは、日本農業弱小観は払拭して、日本農業の底力に着目し、その大きな可能性に自信を持ち、世界市場においてこれを成長させていく方向を目指すべきなのではないでしょうか。
さて、農業の原点は、言うまでもなく、健康な体をつくる命の源としての食糧を生産し供給することであります。この原点をしっかり踏まえた上で、これからの農業は、単に農産物を生産する第一次産業としての農業にとどまらず、第二次産業としての加工、第三次産業としての流通を包含し、食にかかわるさまざまな分野を広いすそ野として持つ、総合産業としての農業に進化していかなければなりません。
そうした認識に立って、事業経営体としての農業を確立し、生産技術と事業経営の両面において、その高度化を絶えず図っていく農業が、二十一世紀の日本農業を担い、成長させていくことになると考えます。
農業の原点を踏まえ、総合産業としての農業の高度化を、技術と経営の両面から絶えず図り成長していく農業、そういう意味での成長産業としての農業を確立し、本県農業が基幹産業として県勢振興の役割を果たすようになることを期待し、以下御所見をお伺いいたします。
まず第一は、米輸出への取り組みについてであります。
日本の主要作物である米の需要拡大が、我が国農業活性化の最大の課題であります。米の需要は長期的に減少してきましたが、直近では減少に歯どめがかかり、二○○七年七月から二○○八年六月の一年間で八百五十五万トンと、前年に比べて十七万トン(二○%)増加し、米の国民一人当たり年間消費量もピーク時の半分近くまで減少してきていたのが、二○○七年度は、○・四キログラムの増加となりました。
これは、小麦製品を含めた食料品全般の価格が上昇する中で、比較的価格が安定している米に需要がシフトしたためと見られておりますが、我が国が人口減少社会に移行したことを考えますと、将来を展望しての抜本的な需要拡大策は、米の用途を主食以外にも多方面に広げていくこととあわせ、海外に販路を開拓し需要をつくり出していくことであります。
国は、現在農林水産物・食品の輸出促進に力を入れており、平成二十五年度までに一兆円規模の輸出を目指すとしておりますが、その中で、二○○八年における米の輸出数量は千二百九十四トンで、ここ三年間でほぼ倍になっています。
これを国別に見ますと、輸出総量では台湾が四百五十三トンと最大の輸出先となっており、以下、香港三百四十一トン、シンガポール百七十三トン、中国九十トンと続いております。
本県も、平成十九年十一月から、JAあぶらんど萩産のコシヒカリを「維新伝心米」という商品名で台湾に輸出し、以来本年八月末までの二年弱で輸出総量は三十トンに上っております。
私は、台湾への米輸出を実現した関係者の努力を高く評価し、今後これが一層増大していくことを期待するものですが、台湾へは多数の産地から輸出されており、日本産米対象の市場は飽和状態にあると見られていまして、新たな海外の販路として中国への米輸出の期待が高まります。
しかし、膨大な人口を擁し、目覚ましい経済成長で富裕層も増大している中国には、日本産米の需要は相当にあると思われるものの、二○○八年の中国への米輸出量は九十トンで、台湾の五分の一の微々たるものであります。
これは、昨年九月県議会で、東アジア地域への米輸出について質問した際、松永部長が答弁されましたように、中国に向けた米輸出については、検疫条件が厳しく、関税割り当ての制限等、制度的に高い障壁が存在することによるものと思われます。
よって、中国への米輸出を増大していくためには、日中政府間交渉によって、その障壁解消が図られていくことが基本ですが、本県は、中国山東省と三十年近く友好交流の歴史を積み重ねてきており、培ってきた信頼関係がありますことから、これを生かして、県産米の山東省への輸出を実現していく有効策があるのではないかと思う次第であります。
これまで、本県と山東省は、経済交流ということでは、毎年交互に商談会を開催するなどして、それなりの実績を上げてきております。私は、この経済交流をさらに進一歩させ、双方の経済発展につながる交流として本格的に拡大していくために、具体的に双方が相手方に輸出したい重要品目を定め、その実現に向けて課題を共有し、課題解決に共同して当たる協議機関を、山口県、山東省双方の産学官の適任者を構成メンバーとして設置することを提案するものであります。
そして、本県としては、その機関で協議する重要品目に県産米を指定したらいいと考えます。
そこでお尋ねいたします。台湾に続いて、中国に向けて本県の米輸出が実現することを期待し、まずは、長い友好交流の歴史を積み重ねてきている中国山東省との間で、お互いが望む重要品目の相手方への輸出を実現するための協議機関を設置することを提案いたしますが、このことにつき御所見をお伺いいたします。
第二に、農商工等連携事業への支援についてお尋ねいたします。
このことにつきましては、昨日、塩満議員のほうから、農商工連携の全体像、意義等を踏まえての質問がありましたが、私なりの課題把握に基づいて質問をさせていただきます。
地域における農商工のさまざまな資源のよきマッチング、もしくは融合を促し、新たな事業を創出して地域内経済の好循環を実現し、活性化しようとする農商工連携促進の取り組みは、今日の地域政策の重要な柱でありますが、これは同時に、農業に代表される第一次産業を、第二次産業、第三次産業を包含した総合産業として成長発展させ、地域経済を豊かにしていく取り組みであるとも言えます。
国は、昨年五月に農商工等連携促進法を制定し、これを推進する仕組みを整えました。以来、国が定めた高い基準を達成して、全国で二百八十六事業が、農商工等連携事業の認定を受けております。
しかし、高いハードルを乗り越えて国の認定を受けた事業も、適宜支援策が講じられないと、事業計画の目標達成、そして、そのことによる地域経済へのプラス効果の波及が困難になります。
本県では、これまで三事業が、この認定を受けておりますが、その第一号は、有限会社クレアツーワン、屋号は、山口ごま本舗でありますが、このクレアツーワンと農事組合法人「あさグリーン優とぴあ」との連携事業で、山口県産黒ごまを原料として、昔ながらの製法で製造したこだわりの「国産黒ごま油」及び「国産黒ごま関連商品」の開発・製造・販路拡大の事業でした。
この認定事業で期待された地域経済への効果の一つは、黒ゴマ栽培農家を育成拡大し、本県を黒ゴマの一大産地とすることでした。
しかし、このことが計画どおり進んでいません。黒ゴマ生産を担当するはずだった農事組合法人「あさグリーン優とぴあ」が、初年度生産できた黒ゴマはごくわずかで、その後、生産撤退に等しい状況にあります。この農事組合法人は、建設会社が農業方面に進出したものでしたが、生産技術の蓄積と農業経営のノウハウがないと、農業への参入も、そうみやすくないことがうかがえます。
また、この事業の発足当初には、五十名もの方から黒ゴマ生産に取り組みたいとの申し出があったそうですが、続いている人は一人もいないそうです。
クレアツーワンは、これまで国産のゴマということで、鹿児島、熊本からゴマを購入してゴマ油を製造販売してきた実績があることから、本県にゴマの産地が形成されれば、生産されたゴマをすべて買い取ることは可能であります。
ところが、ゴマの生産をやろうという方々が求めたのは、生産されたゴマの買い取りだけではなく、計画どおり生産できなかった場合の補償でした。それがなければゴマ生産に取り組めないと言われても、そこまでは一企業として対応はできません。
幸いなことに、JAあぶらんど萩が五百キロ、JA山口中央が百キロの黒ゴマ生産に取り組んでいただいたことにより、それを使っての山口県産黒ゴマ油の製造販売はできましたけれども、この連携事業五カ年計画の目標達成に必要な年間九トンの県産黒ゴマの生産、それに向けた産地形成の見通しは全く立っていません。
私は、この連携事業が直面している黒ゴマの産地形成という課題は、県が農業政策上の課題として、農協等と一緒になって取り組むべきことであり、そうしてこそ解決できる案件であると考えます。
農商工連携での農は、農林漁業を代表しての農であり、そういう意味での農商工連携は、地方再生のかぎである第一次産業を、成長産業にしていく取り組みであるとも言えることから、これを県政上の重要政策として位置づけ、この連携事業が軌道に乗るよう支援していくことが大事と考えます。
そこで、農商工連携の視点から農業を成長産業にするための取り組みついて、三点お伺いいたします。
その一は、農商工等連携事業が果たす役割を、どう認識しておられるのか、その二は、農商工等連携事業への支援の具体的方針について、その三は、本県における黒ゴマの産地形成について、御所見をお伺いいたします。
第三に、フードバレーの形成についてお尋ねいたします。
私は、本県において新たな産業集積を実現していくために、フードバレーの形成に取り組むことを提言いたしたいと思います。
農と食のシリコンバレー版ともいうべき「フードバレー」の名称は、アメリカのコンピューター産業の集積地シリコンバレーに由来したもので、「食の集積地」という意味で使われております。
この言葉の最も的確な定義は、オランダ経済省企業誘致局の「フードバレーは、文字どおり食品・農業・健康をテーマとした専門知識の集積地である」との説明であります。
この説明は、平成十六年に、伊藤忠商事が、オランダのフードバレーの中核大学ワーヘニンゲン大学と、食料バイオ分野で提携することになったことを紹介した記事にあるもので、御参考までに、この記事の紹介をもう少しさせていただきます。
伊藤忠が先端技術戦略の提携パートナーをオランダから選んだ理由の一つは、ヨーロッパにおける新農業技術の開発や、食品健康分野における斬新な製品の開発にオランダが大きな役割を果たしてきたことが挙げられる。
オランダは、食品研究に向ける研究開発投資の面では世界有数の国で、食品産業総売り上げの二%以上を年間研究開発費に投じている。
ワーヘニンゲン大学は、これまで何十年にわたり農業技術や食品安全など、食品や健康にかかわるあらゆる分野での幅広い科学研究で知られている。
世界の食品研究において確固たる評価を築いてきた結果、ワーヘニンゲン大学の周辺には、食品関連の企業や各種機関が集まっている。
フードバレーで注目すべきは、企業・行政・研究機関の三者が緊密な協力関係にあることである。
フードバレーには、イノベーション力ある企業が多数集まっている。また、ワーヘニンゲン大学の周辺には、バイオテクノロジー関連の新規ベンチャー企業もふえてきている。
フードバレーのもう一つの大きな特徴は、「科学とビジネスの出会い」というコンセプトを実践して発展を続けていることだ。
以上のことから、フードバレーとは、どういうものかということは、おおよそ察していただけると思いますが、これらのことを要約して、私は、フードバレーは、農と食と健康への思いを形にする、知とわざの集積地であると申し上げたいと思います。
そうしたフードバレーが本県に形成されるとすれば、すばらしいことだなと、そう思うのは、私だけでしょうか。
フードバレーへの取り組みを全国的に見ますと、最も力を入れて取り組んでいるのが静岡県の富士宮市で、ここは平成十六年から「フードバレー構想」を掲げ、市役所にフードバレー推進室を設けて、市民と生産者・NPO・企業・大学が連携して、市を挙げて食のまちづくりに取り組んでいます。
また、大阪府を中心とする近畿地域は、平成十九年から産学官連携で食関連クラスター形成を目指して、オランダ・フードバレーと食品産業交流を進めています。
九州では、若い経済人の団体である青年会議所九州地区協議会が、九州産業活性化ビジョンをまとめ、その中で、フードバレーを九州経済圏として形成すべきだと訴えています。
私は、フードバレーの形成は、日本各地いずこでも可能で、条件の有利、不利、環境の適、不適の差は、そう大きくないと見ております。大事なのは、農と食と健康に関連する知とわざのネットワークを形成する意思で、その意思が明確で強いところにフードバレーは形成されると考えます。
しかし、そうとはいえ、条件が有利で環境が整っているところが、強い明確な意思でフードバレーの形成に取り組むことが望ましいことは言うまでもありません。
そして、山口県は、まさしくそういうところであると思います。農業、漁業ともに盛んで豊かな食材に恵まれ、食品製造業も多く、大学や官民の研究施設等のすぐれた研究機関が幾つもあり、交通の利便性も高い本県は、日本のフードバレーを形成し得る有力地の一つであると言っても過言ではないと思います。
私は、フードバレーの形成は、山口らしさを生かし伸ばす新たな産業集積の道であり、山口の農業を知識産業化して、付加価値の高い成長産業にする道であると考えます。
そこで、フードバレーの形成に向けて、三点お伺いいたします。
その一は、山口農業を成長産業にし、農と食を中心にした新しい産業集積を実現していくために、フードバレーの形成を、これからの県勢振興の重要政策と位置づけて取り組むべきと考えますが、御所見をお伺いいたします。
その二は、本県農業の加工分野の強化ということについてであります。
御案内のように、これからの農業経営においては、食品加工の分野がウエートを高め、食品加工を含めた農業経営、もしくは、食品加工分野と連携した農業経営が、これまで以上に推進されるべきと思われます。そして、それは同時に、フードバレーの土壌形成につながるものであります。
つきましては、本県農業の加工分野の強化が重要と考えますが、制度面、技術面からどう支援していかれるのか、御所見をお伺いします。
その三は、食品産業の集積についてであります。
本県は、製造業の中で食品製造業の事業所数が約二五%を占め、食品製造業の集積比率が全国的に見ても高い県であります。このことを、フードバレー形成に向けての本県の強みとして、食品産業の集積を戦略的に進めていくべきと考えますが、このことにつき御所見をお伺いいたします。
以上で、一回目の一般質問を終わります。
【回答】◎知事(二井関成君)
私からは、フードバレーに関するお尋ねのうち、その位置づけについてお答えをいたします。
お示しのフードバレーは、食品・農業・健康に関する専門知識の集積地であり、食関連の産学公が連携する仕組みを構築し、食を中心とした産業集積を図るための取り組みであろうかと理解をいたしております。
本県では、豊かな自然と風土に恵まれた、特色ある農水産物が各地域で数多く生産されており、古くからこれらの素材を生かし、例えば、下関地域では、全国有数の水産加工業の集積地となるなど、食に関する産業の形成が図られております。
私は、こうした食品産業が将来に向けて発展をしていくためには、お示しのように産学公が知恵や技術を持ち寄り、本県のポテンシャルを生かした魅力ある産業の形成を図っていくこと、いわゆるフードバレー的発想が重要であり、私も、そのことが農林水産業の成長にもつながるものと考えております。
このために、私は、産学公の連携を県政の重要課題に掲げ、これまで、山口大学農学部との共同研究に関する包括協定の締結や、水産大学校や県立大学とも緊密に連携を図りますとともに、産学公の各機関の参加のもとに、食品の加工開発や知的財産の活用を推進する「山口県食品開発推進協議会」を設立するなど、その体制の整備を図ってきたところであります。
また、このような体制のもとに、食品産業と研究とのマッチングを進め、県産農水産物の特性を生かした食品の商品化にも取り組んでまいりました。
その結果、少し細かい話になりますが、「はなっこりー」や県産カボチャ「くりまさる」を材料として使用したオリジナル外郎や、フグや鯨を活用したしょうゆの開発、食品加工向けに大きな需要が期待されるウイルス病に強い自然薯の開発、さらには、本県オリジナルの酒米「西都の雫」を使った清酒の開発など、着実にその成果を上げているところであります。
また、地産地消を進め、ふるさと産業の振興を図る観点から、農商工連携制度を活用した新たな商品の開発や食品加工製造業者と農業者との情報交換会の開催など、本県農水産業の特性や魅力を食品産業に多様に活用する施策の展開も進めております。
私は、今後とも産学公の連携を一層進め、本県農水産業の振興と食品産業の育成に向けた取り組みを加速化してまいりたいと考えております。
そのほかの御質問につきましては、関係参与員よりお答えいたします。
【回答】◎農林水産部長(松永正実君)
数点のお尋ねにお答えをいたします。
まず、中国への米輸出の取り組みに関する協議機関の設置についてであります。
御案内のように、世界的な日本食ブームや東アジア諸国の著しい経済発展によりまして、こうした地域をターゲットとした輸出の取り組みは、県産農水産物等の需要拡大を図る観点から、大きな意義があるというふうに考えております。
しかしながら、中国への米の輸出につきましては、検疫条件が非常に厳しいため、現在のところ、指定された精米工場が神奈川県の一カ所に限定をされていること、また、関税割り当ての制限等、制度的に高い障壁が存在することから、お示しのとおり、我が国から中国への輸出量も、低水準にとどまっており、現状では、本県独自での取り組みは極めて困難な状況にあると考えております。
このため、ことし六月には、国に対して輸出相手国における検疫等の障壁を軽減するための働きかけの強化を要望したところあります。
こうした状況を踏まえ、山東省との協議機関の設置に関する御提案がございましたが、まずは、米の輸出の可能性について、山東省と協議してまいりたいと考えております。
次に、農商工等連携事業への支援について三点のお尋ねであります。
まず、農商工等連携事業が果たすべき役割の認識についてでありますが、農商工連携は、県産農水産物の付加価値の向上や、新たな需要の掘り起こし等が促進され、県産農水産物の需給拡大や農家・漁家所得の向上につながりますことから、一次産業の振興を図る上で、その果たすべき役割は非常に大きいと認識をしております。
次に、農商工等連携事業への支援の具体的方針についてであります。
県では、農商工連携に取り組む農業者・漁業者や商工業者のマーケティングや経営面を支援をすることとして、中小企業制度融資や、やまぐち産業振興財団の中小企業育成基金を活用した助成、農業者・漁業者や商工業者のシーズやニーズを収集するアンケート調査などに、生産者団体、商工会、商工会議所等の関係機関と連携をして取り組んでおりますほか、産学公が連携した「山口県食品開発推進協議会」によりまして、県産品を活用した新商品開発、販路拡大を支援をしております。
また、生産者団体、流通・食品・外食関係者等で組織をいたしました「やまぐちの農水産物需要拡大協議会」での地産地消の取り組みの中におきましても、農商工連携の取り組みを推進をしているところでございます。
具体的には、農林水産業者と食品小売業者・飲食業者とが連携をいたしました販売協力店や、やまぐち食彩店を設置をいたしておりまして、しゅんの農水産物を対象とした販売促進キャンペーンや地産地消料理の提供に取り組んでおります。
また、農林水産業者と食品加工業者との連携によりまして、本県の豊富な水産物とその加工技術を組み合わせをした「山口海物語」の製品開発、あるいは、県産農水産物を使用した「やまぐち地産・地消弁当」、長門ゆずきちを使用したポン酢、ドレッシング等の商品開発、販路開拓に向けた商談会の開催等の取り組みも進めております。
今後とも、こうした取り組みを総合的に進め、市町、関係団体等と緊密に連携をいたしまして、農商工連携の促進に向けた、幅広くきめ細かな支援を行ってまいります。
次に、農商工等連携事業に係る黒ゴマの産地形成についてであります。
県としては、商工業者の需要にこたえられるよう、これまで、萩市や山口市での生産体制の整備に向け、JA等と連携して、生産者への栽培誘導や技術指導、産地確立交付金を活用した産地づくり等に取り組んでまいりました。
しかしながら、黒ゴマは、新たな品目でありますために、生産者の技術不足や、乾燥調製に多くの労力を要しますこと、さらには加工原料用であることから、安定的かつ低コストでの生産が求められることなど多くの課題がございまして、取り組み初年度の平成二十年産の出荷量は約六百キロにとどまっております。
このため、今後、商工業者が求める量を安定的に確保できるよう、栽培講習会の開催や巡回指導等による生産技術向上に向けた支援を行いますとともに、農業生産法人等を核に、地域の生産者が一体となった規模拡大の取り組みを促進するなど、商工業者、市町・JAと緊密に連携しながら産地形成に努めてまいります。
次に、農業経営における食品加工分野への支援についてのお尋ねでございます。
農産加工の取り組みにつきましては、これまで、県下各地で農山漁村女性グループを中心に、地域資源を活用したさまざまな加工品の開発に取り組まれておりまして、県では、そのノウハウを活用し、女性みずからが起業家を目指す、いわゆるルーラルビジネスの育成を積極的に支援をし、統一ブランド「やまみちゃん」として、現在百七十九の品目が認定をされるなど、多様な商品開発が進んできております。
また、これらの取り組みに加えまして、最近では、内発的な六次産業化に向けまして、経営の多角化を図るため、農産加工に取り組もうとする集落営農法人に対しまして、商品開発やマーケティングなどに関する研修の場を提供いたしまして、専門家を派遣して加工技術を指導するなどの各般の支援を強化した結果、これまで十近くの法人が、新たに豆腐やもちなどの農産加工を開始をしております。
また、大手食品企業が、サラダ等の材料に使用いたしますタマネギを、法人が安定的に供給できる仕組みの構築や、地産地消をコンセプトに、商品開発を目指すコンビニエンスストアに、生産者とのマッチングの場を提供するなど、法人と食品企業との結びつきについても、積極的な支援を行っているところであります。
さらに、技術面では、平成十九年度に農林総合技術センターに食品加工研究室を設置し、機能性の高い加工食品の開発に向けて、主要な県産農産物の成分分析などの研究を進めますとともに、農山漁村女性の行う漬物や調味料の改良から、商工関係者が希望する地域特産品の開発まで、きめ細かな支援を行っているところであります。
県としては、意欲ある農業経営者が食品加工に積極的に取り組んでいけるよう、今後とも制度面、技術面から一層の支援に努めてまいります。
【回答】◎商工労働部長(佐本敏朗君)
食品産業の集積についてお答えします。
本県の食品製造業は、お示しのように、県内事業所数に占める割合が高く、県内農林水産資源を有効に活用する上でも、新技術や新商品の開発及び販路拡大を通じた競争力の強化が重要であることから、これまでも、産業技術センターによる技術相談や共同研究、やまぐち産業振興財団の助成事業や商談会事業等の活用による支援を行ってきたところです。
この結果、粉末化技術による「やさいファインパウダー」や「はなっこりーの青汁」、お茶を素材にした石けんなど県内資源を素材とした生産技術の確立や商品化が図られたところです。
さらに、本年度新たに、大学や試験研究機関、企業等の連携により、新たな商品開発へつなげる取り組みも進めております。
また、食品製造業は、比較的景気の影響に左右されず、安定的な成長が期待できる分野であることから、これまでも、企業立地促進補助金等の優遇制度を活用し、食品加工企業の誘致にも努めてきたところです。
県といたしましては、引き続き、食品産業の県内への誘致に取り組むとともに、新技術等で新事業展開を図ろうとする企業に対し、成長過程に応じ、やまぐち産業振興財団など支援機関のネットワークを活用して支援することにより、集積を推進していくこととしております。

2009年11月30日

平成21年11月定例県議会 再質問 農林総合技術センターの機能強化について

フードバレーの形成につきまして、二井知事から前向きな取り組みのお考えが示されたことをうれしく思い、また評価したいと思います。
オランダにフードバレーが形成されておりまして、それが、ある意味で、世界の最もモデル的なフードバレーの形成地になっていると思われますが、ここでその中心、核施設になっておりますのは、先ほども申し上げましたように、ワーヘニンゲン大学であります。
山口県におきまして、フードバレーを形成していく場合にも、やはり核になる施設が必要だと思いますが、そういう役割を果たすものの一つとして期待されるのは、本県の場合には、県の農林総合技術センター、そういったところではないのかなとも思われる次第でありまして、こういったところのやはり機能を強化していくということが、第一なんじゃないのかなという思いを持つわけでありますが、このことにつきまして、お考えを承っておきたいと思います。
それから、中国への米の輸出につきましては、その可能性を山東省と協議したいということでありましたので、ぜひ前向きの協議をお願いしたいと思います。
いろいろハードルが高いこともありますが、何事も実現しようと思うことから始まると思いますので、ぜひ中国山東省へ、本県の米輸出を実現しようという思いで協議を持ちかけて、また、臨んでいっていただきたいなと思う次第でございます。
以上で、質問を終わります。

【回答】◎農林水産部長(松永正実君)
農林総合技術センターの機能強化が必要だということで、どう考えているかという再質問であったというふうに思います。
現在、農林総合技術センターでは、先ほどもちょっと御答弁申し上げましたが、特に加工分野においては、農水産物の加工貯蔵技術の開発、あるいは、栄養機能性成分の情報提供といった、本県農林水産物の付加価値向上に向けた取り組みを重点的に進めております。また、新しく、省エネ対策として、生産コスト低減による経営の安定化に向けまして、トマトやイチゴなどの施設園芸での冬の暖房用燃料の節減技術、地中熱の自然エネルギーを利用した夏の施設冷房技術の開発等に取り組んでおります。
こうした取り組みは、いわゆる産学公の連携の取り組みとして推進をしておりまして、今後とも、そうした産学公の連携の中核として研究機能が担えるように取り組んでまいりたい、また、成長産業に向けた新たな研究課題にも、積極的に取り組んでいきたいというふうに考えております。

2009年11月30日

平成21年9月定例県議会 (1)消防の広域化・土砂災害の検証と対策

(1)消防の広域化・土砂災害の検証と対策

新政クラブの合志です。まずもって、さきの七月二十一日豪雨災害で、お亡くなりになられた方々の御冥福をお祈り申し上げますとともに、被災された皆様にお見舞いを申し上げます。そして、被災地の一日も早い復興と、安心・安全の県づくりに微力を尽くすことを誓うものであります。
それでは、通告に従い一般質問を行います。
ずっずっと堆積した土砂が動いている。これに誘発されて、いつまた土石流が発生するかわからない。土石流に襲われたら命はないだろう。しかし、引き返すわけにはいかない。現地確認の任務を果たすために、行かなければならない。五人の消防隊員は、命の危険に直面する中、土石流が流れた後に堆積した土砂のぬかるみに、時には腰までつかりながら、そうした思いで、孤立した村、稔畑に徒歩で向かいました。
七月二十一日、防府、山口の双方にかかる山稜の中腹、標高二百メートルの高地にある山口市小鯖の稔畑地区も、かつてない甚大な自然災害に見舞われました。
記録的な猛烈な大雨のため、至るところで山地崩落、土砂崩れ、土石流が生じ、幾つもの家屋が土石流に見舞われ、つい一月前、ことしの六月に竣工したばかりの基盤整備した水田の多くに土砂が流れ込みました。そして、この地区に至る三本の幹線道路はすべて通行不能となり、地区内の道路も寸断され、約七十戸ある稔畑は孤立してしまいました。
こうした稔畑地区の現況を確認する必要があるということで、山口市消防本部は、消防隊員を派遣、最初は自動車で向かったが、この地区に入るための三本の道路はことごとく不通、ついに隊員は、歩いて稔畑に向かうことを決断しました。
冒頭に紹介したのは、この消防隊員たちが命がけで任務遂行に立ち向かったさまであります。
稔畑の集落にたどり着いた消防隊員は、直ちにヘリによる住民の避難救出が必要と判断、その旨を消防本部に伝え、救援ヘリの派遣を要請しました。そして、各戸を安否確認に回り、救援ヘリのヘリポートの確保、住民の集結地誘導に取り組みました。
県は、山口市からの要請を受け、大規模特殊災害時における広域航空消防応援実施要綱に基づいて、ヘリコプター応援を近隣の県に要請、これにより広島市消防航空隊と福岡市消防航空隊及び愛媛県消防防災航空隊が来援し、七月二十一日、二十二日の二日間かけて、延べ九十四名の人員救出を完了しました。
かつてないすさまじい自然災害に見舞われた稔畑地区は、おかげで幸いなことに人の犠牲は一人も生じませんでした。そして今、復興に立ち向かっています。
火災発生時だけではなく、自然災害のときも消防の果たす役割は大きく、七月二十一日の豪雨災害時には、この事例と同じような消防関係者の奮闘が、各地であったであろうことを思います。
また、消防の関係者のみならず、同時に大きな危険と隣り合わせの中で、二次災害の発生防止、住民の安全確保、道路復旧等に取り組まれたさまざまな防災関係者、土木工事関係者のことを思います。
そして、これらのすべての方々に感謝をささげ、敬意を表しつつ、このたびは、災害発生時の初動において、人命を守る大事な役割を担う消防の広域化について、まずお伺いいたします。
なお、御案内のように、消防の広域化につきましては、六月県議会で国井議員さんが、そして昨日は、同会派の新藤議員さんが、大事なポイントを踏まえての質問をされたところでありまして、重なるところもございますが、私なりの視点で質問をすることをお許しいただきたいと思います。
さて、消防組織は、住民自治の消防組織としての消防団と、行政機関としての消防組織である常備消防の二通りあります。そして、消防は市町村の事務とされています。
しかし、そうとはいえ、行政機関としての消防組織である常備消防のあり方については、消防の目的を果たしていくために、どういう形が最も望ましいのかの議論に、県も、県民生活の安心、安全を確保していく責任を有する当事者として加わり、市町と共同してその実現に取り組んでいくべきと考えます。
御案内のように、国の消防広域化の方針を受けて、県は平成二十年五月に「県内四本部からスタートし、将来的には広域化の効果が最も大きい一本部の枠組みを目指す」とする「山口県消防広域化推進計画」を策定しました。
しかし、その後これに対して、県市長会から異議、異論が出まして、県市長会は、現行の十三消防本部体制を七本部体制とする対案を本年三月に県へ提出しました。
このため、県が担うべき役割ということで取りまとめた本県の消防広域化推進計画の内容と、消防事務として担う県下の市の市長会の消防広域化案が、相異なるという事態となり、それは解消されることないまま現在も続いております。
そうした中、ことしの七月大雨災害があり、これへの対応経緯から知事は、「今回の災害状況を踏まえて、今後の広域消防のあり方についても、いま一度検討を加える必要があると思っております」「今、市町で七消防本部案で検討されておりますが、果たして、今回のようなこれほど大きな災害が起きたときに、七消防本部でいいのかどうかを、ぜひ、関係市町の中で検討してもらいたいと思っています」「一番いい形としますと、やはり、県警本部と同じような形で、県が一つになっている形がいいのではないかと思います」との見解を、記者会見において明らかにされております。
そこで、お伺いいたします。知事は、消防の広域化は、特に今回の災害を踏まえて、一県一消防体制が一番いい形であると発言しておられますが、ことし本県で、現行の消防体制の圏域を越えて消防の広域連携が行われた事故災害としては、六月の秋芳プラザホテル中毒事故や、七月の大雨災害があります。これらの事故災害の場合、本県が一消防体制であったとしたら、どういう点でよりすぐれた対応が可能であったとお考えなのかお伺いいたします。
次に、県は、本県消防広域化の最も望ましい形としては、一消防体制がいいとの考えを有しながらも、その合意形成には相当の期間が必要と見込み、それを待っていては、平成二十四年度までに消防広域化を実現するとの国の方針に沿うのは困難との判断から、市町の意向を踏まえた現実的な枠組みとして、「四本部でスタートし、将来一本部を目指す」との計画をまとめたものと思われます。
しかし、県一消防体制がいいとの結論が明確なのであれば、消防力の強化、向上は、即、県民の命と暮らしの安全・安心に直結するものであることから、その最も望ましい形の実現に向けて、合意形成に全力を尽くすべきなのではないでしょうか。
たとえ、その合意形成に時間を要し、本県の消防広域化が、国が求める計画年度よりおくれたとしても、それを意に介することは全くなく、しっかり腰を据えて取り組むべきと考えます。
それは、国の、このたびの消防広域化推進施策は、ただ、そのメリットを示し推進を都道府県に促すだけで、実現すべき具体像と方法論について明確な政策を欠いているため、国の計画どおり、全国で消防広域化が進むことはなかろうと思われるからであります。
また、四本部体制整備のための投資と、その先、近い将来に予想される一本部体制整備のための投資という二重投資の無駄、それに伴う財政負担の無駄は、避けなければならないと考えます。
そこで、お尋ねいたします。まず、既に策定した本県の消防広域化推進計画は、枠組みについては、一消防体制とする内容に変更したほうが望ましいと考えますが、御所見をお伺いいたします。
そして、そうだとすれば、一県一消防体制ということで、時間はかかっても県下の市町との合意形成を図ることが先決となりますが、そのことに向けてどう取り組んでいかれるお考えなのかお伺いいたします。
さて、消防広域化の議論の順序は、まず県一消防体制の大方針を確定した後、個々の具体的課題をどう解決していくかの議論に移るということであろうと思いますが、県一消防体制のあり方も、大別して二通り考えられます。一つは、消防本部と各消防署というあり方、もう一つは、消防中央本部と各方面本部、そして各消防署というあり方であります。その、いずれが望ましいかの議論も必要と思います。
広域化の議論のプロセスで萩市試案ということで、現状の消防本部が、方面消防本部として管轄区域の本部機能は有するが、大規模災害発生時など広域的な対応が必要な場合、方面消防本部との調整や関係機関との連携を行うものとして中央消防本部があるとする、緩やかな一本部制が提案されましたが、これに対し県は、この案では消防体制の一体性が保持されず、消防力の強化につながらない。また、国の財政支援の対象にならない等の理由から、広域化案としては適当でないとの回答をされました。
私は、萩市試案に対する県の見解を支持するものでありますが、消防の命である初動が、的確かつ迅速に行われるための通信指令業務管轄の適正規模は、どうなのか、県一でいいのか、幾つかの区域に分けたほうがいいのか、消防通信指令業務従事者の意見をよく踏まえて、しっかり検討する必要があると思っています。その上で、県本部統括のもと方面本部を置くかどうか、それは必要ないかの議論をして結論を出すことにすればいいと考えます。
そこで、お尋ねいたします。一県一消防体制が実現した場合、消防の命である通信指令業務の的確性、迅速性の確保についてどうお考えなのか、御所見をお伺いいたします。
ところで、改めて申すまでもなく、さきの七月豪雨災害の際、消防ヘリ「きらら」を有する本県の消防航空隊に加え、近隣県から四消防航空隊が来援し、救援活動に従事したことからもわかるように、今日、消防において航空消防のウエートが増してきています。
消防組織法は、「市町村の消防の支援のため、都道府県は航空消防隊を設けるものとする」と定め、航空消防隊は、都道府県が保有するものの、その役割は市町村消防の支援という補完的なものであります。
しかし、消防力強化の次なるステップは、消防本部による航空消防の一体的運用を図っていくということなのではないでしょうか。
消防力の強化が、そういう方向に進んでいくのであれば、航空消防を市町村消防で装備することは、政令市以外は困難と思われますので、当然に都道府県消防というものが考慮されるようになると予想されます。
一方、消防の生命線というべき消防救急無線は、平成二十八年五月までに、現在のアナログ方式からデジタル方式に移行することとされており、そのデジタル化に際し消防庁は、県を一ブロックとして整備計画を策定するよう求めています。
さらに、注目すべきは、全国四十七都道府県中、十二県が一県一消防体制とする広域化推進計画を策定していることであります。
こうしたことから、現在、国が推進している消防広域化を、時代の進展に即応したものにするのであれば、最大の課題は、長い歴史を有する市町村消防の原則を見直し、常備消防においては都道府県消防を選択できる消防制度にしていくことであると考えます。
そこで、お尋ねいたします。消防力の強化、向上につながる時代即応の消防広域化を実現するためには、常備消防においては、市町村消防の原則を見直して、都道府県消防も可能なように、消防組織法を改正すべきと考えますが、御所見をお伺いいたします。
次に、土砂災害の検証と対策について質問いたします。
七・二一豪雨災害は、床上、床下合わせて四千棟を超える浸水被害をもたらし、十七名ものとうとい人命が犠牲となりましたが、そのうち十四名は土砂災害によるものであり、今なお災害のつめ跡を残しているのも土砂災害であります。
平成十一年六月二十九日、広島県を襲った豪雨災害は、死者三十一名を出し、そのうち二十四名は土砂災害によるものでした。
この広島災害の惨事を契機として、国は、総合的な土砂災害対策に本格的に取り組み、翌平成十二年に国会で土砂災害防止法が成立し、平成十三年四月一日より施行され、今日に至っております。
土砂災害防止法は、基礎調査に基づく警戒区域の指定を都道府県の事務としております。都道府県は、基礎調査を実施して、急傾斜地の崩落、土石流、地すべりなどの土砂災害のおそれがある区域を土砂災害警戒区域に指定し、さらに、その警戒区域の中で、建築物に損壊を生じ、住民に著しい危害が生じるおそれがある区域を、土砂災害特別警戒区域に指定します。
土砂災害警戒区域が指定されたら、市町村は地域防災計画に記載し、土砂災害に対する警戒避難体制に関する事項を定め、土砂災害ハザードマップを作成配布して、その危険を住民に周知することとされております。
また、特別警戒区域においては、住宅宅地分譲や、社会福祉施設等の開発行為は許可制となり、建築物の構造規制や移転勧告を行うことができるようになっています。
本県の、この土砂災害防止法に基づく調査、指定の進捗状況は、県下二十市町のうち、長門市、岩国市など七市において土砂災害警戒区域を指定しており、四市町が調査中、九市町が、これから調査着手予定という状況であります。
さきの八月臨時県議会で、柳橋土木建築部長は、「土砂災害防止法に基づく土砂災害警戒区域の指定の進捗率は、約四割です。今後は平成二十九年度までに全市町で区域指定することとしており、それまでに基礎調査を終える予定ですが、できる限り前倒ししてまいります」と答弁しておられます。
なお、今議会、松永議員の代表質問で、知事答弁におきまして、平成二十四年度までに土砂災害ハザードマップを、県下全市町作成完了するようにしたいということでありますから、前倒しというのは、その二十四年度までに、この警戒区域の指定をやってしまうという方針が示されたものと理解しているところであります。
私は、そうした方針で、県が土砂災害防止法に基づく基礎調査、警戒区域指定の作業を加速化していくことは評価するものでありますが、そのことにまさるとも劣らず大事なことは、警戒区域指定の精度を上げていくことであると思っております。
土砂災害防止法が、その目的を果たしていくためには、警戒区域の指定が的確であることが求められます。そして、そのためには、山地崩落、土石流発生の原因、メカニズムを、実例に基づいて検証究明し、そのことを踏まえて、警戒区域指定の基準が、より一層実態に即した適正、妥当なものになるよう、常に点検、見直しされていく必要があります。
思うに、このたびの七・二一豪雨による土砂災害は、そういう意味での貴重な事例を提供しています。
犠牲になられた十四名の方々の死を無駄にしないためにも、本県は、このたびの土砂災害の調査に遺漏なきを期して取り組み、その調査結果を、山口県のみならず全国の土砂災害被害防止に役立てていく責務があると考えます。
そういう観点から、数点お伺いいたします。
まず第一に、七・二一豪雨による土砂災害の調査及びそのことに基づく防災対策について、基本方針をお伺いいたします。

第二に、このたびの豪雨により土砂災害が発生した、防府市、山口市においては、計九百四十五カ所の警戒区域指定が行われておりますが、土石流が発生した六十六カ所は、すべて警戒区域指定されているところなのか、指定以外のところでも発生しているのか、そうだとすれば指定外は何カ所か、また、指定区域外で土砂災害が生じたことをどう受けとめておられるのか、お尋ねいたします。
第三に、土砂災害の発生原因とメカニズムの検証究明は、土砂災害が起こったことの究明だけではなく、警戒区域に指定されていながら土砂災害が起こらなかったところについても、その起こらなかったことの検証究明を行うことも、あわせ必要と考えますが、御所見をお伺いいたします。
第四に、山崩れや土石流発生の原因は、物理的、力学的な面と、地質や植生などの応用理学的生態的な面との両面があると思われます。よって、原因究明の調査メンバーには、地質や山林植生などの専門家が必要と思いますが、どうなっているのでしょうか。
また、土砂災害防止法に基づく警戒区域指定は、基本的に力学的構造の面からの基準に基づいて行われているようですが、生態的側面も含めての調査に基づく指定であってこそ、実効性のあるものになると思われます。よって、土砂災害警戒区域指定のための調査にも、同様に地質や植生の専門家を加える必要があると思いますが、御所見をお伺いいたします。
さて、このたびの土砂災害について、地質的特徴をモデル化し解析した地質専門家によるレポートを読みましたが、山口、防府の土石流発生範囲が、ほぼ花崗岩分布地域におさまることを指摘し、花崗岩の山では、その岩盤の上にある花崗岩が風化してできた真砂土が、その上の表土が薄い場合は雨によって崩れやすく、二十度ないし二十五度の緩やかな勾配の場合も、雨で山崩れが起こり、それが発端となって土石流が発生する可能性があることを推定しています。
そこで、第五のお尋ねです。急傾斜地ということで指定される警戒区域は、傾斜度が三十度以上という基準になっています。しかし、このたびの土砂災害では、それ以下の傾斜度のところにおいてもがけ崩れが生じていないかお尋ねいたします。もし、そういうことがあれば、特に、花崗岩の山においては、警戒区域の基準を見直す参考事例になると思いますが、御所見をお伺いいたします。
第六に、山崩れや土石流が多発したのは、松くい虫などが原因として松がだめになり、山が弱くなったからだという指摘があります。また、先ほど紹介したレポートは、松が枯れた後、シダ類が繁茂している山は、灌木類が育つことが抑圧されて表土層の形成が進まないばかりか、低木の根による表層の緊縛がなされないため、雨による崩落が生じやすいことを指摘しています。
こうした指摘が当を得ているとすれば、土砂災害対策として、砂防ダム、治山ダムをつくるということのみならず、山それ自体を、樹木の植生等によって強くしていく取り組みが必要と思われますが、そうした対策について御所見をお伺いいたします。

三番目に、防災情報センターの設置について質問いたします。
防災情報は、個別的、具体的であって役に立つものであり、そういう防災情報を提供する機関が必要であるとの趣旨で、防災情報センターの設置について質問いたします。
さて、自然災害を防止するために、必要なハード面の整備を行うことは大事なことです。しかし、自然災害を完全になくしてしまうことはできません。どんなに膨大な予算を投入しても、それは不可能なことです。
そこで、次に大事なことは、自然災害が起こったとき、どういう被害軽減、回避の備えがあるかということであります。常日ごろから、自然災害が発生したとき、人命を守り、被害を軽減するための対応策を考え、準備しておくことが重要です。
そして、その備えのために不可欠なのが、自分のところの自然災害の危険がどういものであり、どう対応したらいいのか、そういう意味での防災情報を、個別的、具体的に把握しておくことであります。
自然災害の中でも、特にそのことが求められるのが土砂災害であります。そこで、まず、土砂災害の防災情報提供の現状を見ておきたいと思います。
土砂災害の場合、警戒情報は、県と気象台が共同して、大雨による土砂災害発生の危険度を降雨に基づいて判断し、市町単位で発表し、該当市町に通報します。
危険度は、レベル一からレベル四までの四段階に区分されており、レベル一は、土砂災害の発生に注意。レベル二は、土砂災害の発生に警戒。レベル三は、今後二時間以内に土砂災害が集中的に発生する危険性が高い。レベル四は、土砂災害が集中的に発生のおそれありとされており、レベル三が土砂災害警戒情報発表の目安とされております。
自分のところの土砂災害の危険度レベルは、県庁ホームページで山口県土砂災害警戒情報システムを検索すれば、見ることができます。そこでは、県内を五キロメートルメッシュ二百九十三区画に区切り、そのメッシュごとに土砂災害の危険度四段階を色分けして図示しています。
土砂災害警戒の通報を受けた市町は、この五キロメートルメッシュによる自分の市町の危険度表示を参考にして、土砂災害への対応を行うことが期待されています。こうした土砂災害警戒情報システムと、土砂災害防止法に基づく警戒区域の指定があれば、土砂災害による被害は、回避もしくは軽減できなければならないのですが、七・二一豪雨災害では、そうなりませんでした。
土砂災害警戒区域の指定は済んでおり、土砂災害警戒情報も通報されていたにもかかわらず、防府市では十四名もの方が、土砂災害の犠牲となられたのであります。防府市が、土砂災害警戒情報を放置して対応しなかったこと、「ライフケア高砂」が、国の基準で作成が求められている風水害への対応マニュアルを備えていなかったこと等のことが、批判されています。
しかし、土砂災害警戒情報の通報があったとしても、警戒区域の指定が、現時点では、全県で約九千八百カ所、防府の場合は五百八十七カ所ある中、大まかな五キロメートルメッシュでの危険度表示を参考にして、避難勧告地域を特定するなどのことは困難と思われます。
被害防止の対応のためには、さらに一歩進めて、より個別的、具体的な土砂災害についての防災情報を、行政の側も、住民や施設等も、事前に備えていることが必要なのであります。
そのための取り組みを行政の側が進めていくことは当然ですが、住民や施設の側が、それぞれに応じた具体的な防災情報を持つことは、それ以上に重要であります。そうした防災情報があれば、住民は、公表される災害情報で、行政の指示を待つことなく、自主的に被害防止行動をとることができるからであります。
自分の家は、自分の町内は、自分の職場は、自分の施設は、どういう自然災害の危険があるのか、そしてそれにどう対応したらいいのか、そのことを常日ごろから、各自が、防災情報として具体的に承知していることが、自然災害の被害を軽減、回避する上でとても大事と思います。
そこで、お伺いいたします。住民や施設などの求めに応じて、個別的、具体的にどういう自然災害の危険があるのか、それにどう対応したらいいのかを、防災情報として提供することを役割とし、市民、県民と防災情報のかけ橋となる常設の機関として、防災情報センターを設置すべきと考えますが、御所見をお伺いいたします。
以上で、一回目の質問とさせていただきます。
【回答】◎知事(二井関成君)
私からは、消防の広域化のお尋ねについて、一県一消防本部体制に対する、基本的な考え方についてお答えをいたします。
私は、県民の安心・安全を確保する観点から、現場活動要員の増強や高度資機材の計画的な整備などの、消防組織の強化を図り、昨今の大規模化・多様化する事故や広域的支援を要する災害等に的確に対応することや、現下の厳しい地方財政下において、消防に関する行財政運営の効率化・基盤の強化を図るためには、消防の広域化を実現することが極めて重要であると考えております。
特に、今回のような災害を踏まえますと、初動時における救出・救助等の迅速・的確な対応を図るためには、一元的な指揮命令や資機材の有効活用の観点から、消防の広域化は重要であり、将来的には広域化の効果が最も大きい、県一本部体制を理想として目指していくことが必要であると考えております。
しかしながら、現在の消防組織法におきましては、市町村消防を原則としておりますことから、そうした県一の消防体制を確立する上においては、さまざまな課題や制度的な改善を要するものがあります。
具体的には、広域化された消防本部は、防災等に一義的責任を有する市町よりも広い管轄区域になりますことから、広域の消防本部と各市町の首長、あるいは、防災組織との連携のあり方が最も重要な課題になると考えております。
したがいまして、私としては、県一消防本部体制を理想としながらも、こうした連携のあり方等の課題を踏まえ、広域化について、市町において十分議論されるべきであると考えており、また、国においても検討されるべき課題であると認識をいたしております。
そのような中、一つのステップとして、国の有利な財政支援措置が受けられる平成二十四年度までに、可能な限りの消防の広域化が図られるよう、市町に対して強く働きかけていきたいと考えております。
そのほかの御質問につきましては、関係参与員よりお答えいたします。
【回答】◎総務部長(岡田実君)
消防の広域化など、合わせて六点のお尋ねにお答えをいたします。
まず、本県が一消防本部体制とした場合のすぐれた対応についてです。
県一の消防本部体制が実現した場合には、通信指令等の本部機能の統合等の効率化を通じ、救助や救急等の現場活動要員が増強され、また、はしご車や救助工作車等の高度な資機材等の計画的な整備が可能となり、お示しの六月の美祢市における中毒事故や七月の豪雨災害で発生したような、消防隊員の被災等の不測の事態にも、より的確に対応できる、強固な体制の整備が図られるものと考えております。
また、県下全域の被害状況や消防の出動状況があらかじめ的確に把握でき、同一指揮命令系統の中で、被災地への迅速な部隊の追加投入等、大規模災害時における初動対応の強化が図られるなど、あらゆる面で消防力の強化につながるものと考えております。
次に、消防広域化推進計画の枠組みに関し、県の推進計画の変更についてのお尋ねです。
市町における消防広域化の議論は、目下、始まったばかりであり、これから、大規模災害への対応の観点等からも、十分に議論を重ねていただくことが重要であります。
お尋ねの県の推進計画の変更については、今後、こうした市町による広域化の議論が進展し、合意が図られる際には、改めて見直すこととしております。
次に、県一消防本部体制に向けた合意形成についてです。
将来的には、適当と考えられる県一消防本部体制の実現に向けて、今後とも、市町に対し、一層の働きかけを行い、消防の実施主体である市町において十分な議論が行われるよう、県として必要な対応を図っていく考えです。
次に、通信指令業務についてのお尋ねです。
県一消防本部となり、指令業務が一元化された場合、火災や救急、救助等の要請に対し、災害等の現場からの距離に応じた部隊の出動順位や、効率的な経路、はしご車やドクターカー等の特殊な車両の出動等について、指令において、県下全域にわたる部隊を考慮した上で、適切かつ迅速な出動命令が可能となります。
また、指令業務の一元化によって、一一九番通報者が瞬時に把握できる発信地表示システム等の高機能装置を導入することなどにより、通信指令業務の的確性、迅速性は、これまで以上に向上するものと考えております。
次に、都道府県消防についてのお尋ねです。
昭和二十三年に消防組織法が施行されて以来、住民に最も身近な市町村が、消防の責務を負うとの「市町村消防の原則」のもとで、消防体制の強化が図られてきたところであります。
一方、お示しのように、災害の複雑化、多様化が一層進む中、以前にも増して、広域自治体である都道府県がその補完的役割を果たす期待も大きくなってきております。
お尋ねの都道府県消防を可能とすることについては、こうした状況も踏まえながら、今後、国・都道府県・市町村を通じて、なおさまざまな議論を重ねていく必要があると考えられます。
いずれにしても、本県としては、現行法に基づく体制のもとで、市町に対し、指導・助言を行いながら、消防防災体制の一層の充実強化に取り組んでいく考えであります。
最後に、防災情報センターの設置についてのお尋ねです。
災害発生時の被害の軽減を図るためには、住民がみずからの居住地についての過去の浸水や土砂災害等に関する危険度等を把握し、災害に備えておくことは極めて重要なことであります。
このため、県や市町など防災関係機関は、適切な役割分担の上で、住民に対し防災情報の提供を図るとともに、住民からの照会や相談に適切に対応する必要があります。
具体的には、市町においては、自主防災組織の紹介や、ハザードマップの整備による危険箇所・避難場所・避難経路など、地域に密着した、個別的・具体的な情報を提供する一方、県においては、お示しもありましたが、気象情報や河川水位、潮位さらには、土砂災害に関する情報など、広域的観点からの情報をホームページ等を通じて提供することとしております。
このように、県、市町においては、お示しのありましたような防災情報センターとしての役割を果たしているところであり、県といたしましては、今後とも、県、市町がそれぞれの役割に応じて、また十分連携を図りながら、おのおのが、いわば防災情報センター的機能を十分発揮できるよう、防災情報の一層の充実強化に努めてまいります。

【回答】◎土木建築部長(柳橋則夫君)
土砂災害の検証と対策に関する数点のお尋ねです。
まず、土砂災害の調査及び防災対策の基本方針です。
本県は、地形的、地質的特性から、全国三位の多くの土砂災害危険箇所を有しており、土砂災害がいつ、どこで発生してもおかしくない状況にあり、このたび、かつて経験したことのないような大規模な土石流が多数発生いたしました。
これに対するハード対策の実施には、膨大な期間と費用が必要となります。
このため、ハード対策とあわせてソフト対策、特に警戒避難体制の早急な確立が重要であると考え、土砂災害警戒区域、避難場所、避難経路等の防災情報が記載されている土砂災害ハザードマップを、これまでの砂防計画では平成三十年度までに整備することとしていましたが、今回の災害を踏まえ、平成二十四年度までに大幅に前倒しすることとしました。
一方、今回の災害では、従来の土砂災害警戒区域の調査や指定について、さまざまな教訓が得られました。
今後、土石流発生原因の究明などを行い、その成果を、土砂災害防止法に基づく警戒区域指定の調査の実施方法や、警戒区域指定の基準に反映させていくとともに、全国で広く成果を活用していただけるよう、国に対しても必要な情報提供を行う考えであります。
県としましては、今回の災害から得られた多くの貴重な経験、教訓を生かし、今後とも、土砂災害防止対策に全力で取り組んでまいります。
二点目は、土石流発生箇所についてです。
防府市では、警戒区域内で四十二渓流、警戒区域外で十一渓流の合わせて五十三渓流で土石流が発生しました。
警戒区域外の十一渓流のうち、保全対象の人家等がある三渓流については、今後、警戒区域の指定を行ってまいります。これらの三渓流は、谷の奥行きが浅いことや、河床の勾配が緩いなどの理由で、警戒区域指定の調査の対象外となっており、今後、調査方法の改善を検討してまいります。
一方、山口市では、十三渓流で土石流が発生しました。現在、警戒区域指定の調査を実施中であり、今回の災害を踏まえ、今後、警戒区域の指定を行ってまいります。
三点目は、土砂災害の検証究明についてです。
周辺で土砂災害が発生したにもかかわらず、警戒区域内で土砂災害が発生しなかった原因については、各分野の専門家から成る「土石流災害対策検討委員会」の中で議論していただきます。
四点目は、地質や山林植生の専門家についてです。
県では、土石流と山地災害の原因、復旧対策について検討を行う委員会を、それぞれ設置することとしています。
この二つの委員会では、お示しの地質や山林植生の専門家に委員として就任していただいております。
また、警戒区域指定の調査に、お示しの専門家を加えることは、委員会での成果を踏まえ、今後必要に応じて検討してまいります。
五点目は、急傾斜地についてです。
今回の豪雨により、県内において、百三十二カ所でがけ崩れが発生しており、その中で傾斜度三十度未満は一カ所です。土砂災害防止法では、傾斜度三十度以上で警戒区域を指定することとしておりますが、これは、傾斜度三十度を超えた場合、災害の頻度と危険度が増すとされていることからです。
今回の災害を受け、お示しの点につていも、今後、現地の状況を十分精査してまいります。
【回答】◎農林水産部長(松永正実君

土砂災害対策のうち、森林整備についてのお尋ねにお答えをいたします。
今回の豪雨による山腹の大規模な崩壊につきましては、雨量や土質など多様な要因を検証して、今後の対策のあり方を検討する必要がございます。
このため、県としては、森林分野の学識経験者などで構成する「山地災害対策検討委員会」を設置をして、現在、幅広い観点からの調査検証を進めております。この委員会では、防災の視点からの森林整備のあり方につきましても、意見や提言をいただくこととしておりますので、その結果も踏まえながら、今後の対策や整備の方向について検討したいと考えております。

2009年9月30日

平成21年9月定例県議会 再質問

二回目の質問でございます。
消防の広域化につきましては、一消防体制がいいということが明確なのであれば、県としてもその方向に、もっと知事初め、前向きに取り組んでいただきたい、そう要望いたしておきます。
それから、防災情報センターは、いわゆる自然災害の被害が回避されるためには、繰り返しになりますが、行政の側と住民の側と双方が、防災への備えを常日ごろから持っておく。なかなか住民の側は、日ごろは生活に追われて、なかなかそういう意識を忘れがちになるわけでありますけども、必要が生じたときに、そのことを感じたときに、具体的にいろんなことに答えて防災情報を与えてくれる。そういう機関があり、そして、そこがまた、防災情報についてのさまざまなネットワークを持っておる。
そういうものがあることによって、住民サイドの防災の備えが大きく進んでいくことになると思いまして、今、県や市町が、その防災情報センター的な役割も果たしていくということでありますが、そういう役割を果たす機関が、やっぱり明確に常設されてあることが必要になってくると思いますので、このことも前向きに御検討していただきたいと要望しておきます。
それから、今回の土石流が発生したことで、ため池が大事な役割を果たしたということを申し上げておきたいと思います。
今回の土石流では、整備が完了したため池が土石流を受けとめ、下流の被災を防ぐ役割を果たしているケースがございます。
特に、防府の長尾ため池と斧磨(ちょうのとぎ)ため池の二つのため池は、下流を走る山陽新幹線が被災するのを防いでおります。土石流が直接新幹線を襲ったときの被害と影響の大きさを考えますと、このことは注目されている事例であります。
ため池が、農業用目的だけではなく、防災機能も含めて多目的効用があることを確認し、しっかりしたため池整備に取り組まれた関係者の努力を評価いたしたいと思います。
そして、今後とも、危険ため池の解消と、必要なため池整備には着実に取り組まれていかれますよう要望いたしまして、私の質問を終わらさせていただきます。

2009年9月30日

平成21年6月定例県議会 (1)難病患者のショートステイについて

(1)難病患者のショートステイについて

同僚県議でありました久保田后子さんが、宇部市長選に立候補いたしまして、見事当選を果たして山口県初の女性市長が誕生することは、まことに喜ばしいことでありますが、おかげで一人会派になりました新政クラブの合志でございます。通告に従い、早速一般質問を行います。
「この呼吸器を外して、一緒に死んでしまおうか」そんな気持ちに一瞬なることがあったと、奥さんは述懐されました。
この方の御主人は、平成十二年にALSが発病しました。ALSは、筋萎縮性側索硬化症と言いまして、病状が進むと呼吸困難に陥るため、人工呼吸器の補助が必要となる難病であります。
発病の翌年、当時の県立中央病院で気管切開、人工呼吸器装着等の医療措置を行い、その後、柳井病院に七カ月ほど入院して、平成十三年の十二月から在宅での療養を開始されました。
在宅療養は、家族に精神的にも、体力的にも大きな負担を強います。それでも、よくなる見通しがあれば励みにもなるでしょうが、難病の場合はそれも期待できません。
「お父さんも、よくなるわけではないし、いつまでこの状態が続くかわからない」奥様が在宅療養の御主人を見ながら、つい、そういう思いに駆られて、死んでしまいたいという絶望的な気持ちになられることがあったであろうことは、想像にかたくありません。
それでも、この奥様は頑張られて、平成十九年五月に御主人が亡くなられる直前まで約六年半、家で御主人を見られました。その上で、大きな支えになったのは、山口市にある身体障害者療護施設N園が、一月ないし二月に一度、二泊三日のショートステイを受け入れてくれたことでした。これがなければ、二人は、心中しておったかもしれないと、その奥様は語っておられました。
そして、「家族に難病の方がおられるところは大変と思うので、よろしくやってくださいませ」とお願いされました。
以上は、難病の主人を家で見られたSさんという方をお訪ねして、いろいろお話をお伺いしたときのことであります。
このときのことを思い起こし、今回で三回目になりますが、分権時代における県医療福祉行政の役割という観点から、改めて難病患者のショートステイについて質問いたします。
この質問の発端は、平成十九年の九月県議会で、障害者自立支援法についての質問を行うに当たり、障害者施設を訪問して実情を聞いて回ったときに、N園から難病患者のショートステイ事業を継続していくことに苦慮している旨の話を聞いたことであります。
医療ケアを必要とする難病の方のショートステイは医療機関でということに制度上なっているが、実際はショートステイは福祉の領域だということで、医療機関が受け入れないので、身体障害者療護施設であるN園に難病の方のショートステイ受け入れの要請が来る。その場合、看護師の配置を通常より強化して医療ケアもできるようにして受け入れてきた。難病の方をショートステイで受け入れた場合、医療機関での対応も、福祉施設での対応も医療的対応の中身は同じであるが、福祉施設の場合は医療ケアのための経費が評価されないため、医療機関と福祉施設とでは報酬単価に大きな差があり、施設経営上難病患者のショートステイ事業を継続すべきか苦慮しているとの趣旨の話でありました。
この話を聞いて、これは国の制度上の不備であり、それを補完するのが県政の役割であるとの観点から、難病患者のショートステイ報酬の、医療機関と福祉施設の差額分を、県で助成するよう求めたのが、このことに関しての第一回の質問でありました。
この質問に対しての部長答弁は、報酬単価の設定は、制度の根幹にかかわることから、国において検討されるべきものであり、県独自の助成は考えていないというものでありました。
再質問で、国の制度を補完するということでの知事見解を求めましたが、特に県として補完しなければならない政策ではないとの答弁でした。そこで、再々質問で、鳥取県が医療的ケアを必要とする重度障害児(者)のショートステイを、郡部地域において老健施設が受け入れた場合、福祉施設との差額分を助成する制度を創設した事例を紹介し、県の前向きの対応への期待を込め、要望で質問を締めくくりました。
難病患者のショートステイを一般質問で二回目取り上げたのは、昨年の十二月県議会でした。このときは、前回の質問時における、報酬単価は、国において検討されるべきものであり、県独自の助成は考えていないとの部長答弁を踏まえ、県は国に対し制度改正を要請すべしとの趣旨で質問いたしました。
制度改正の内容は、障害者療護施設が、看護体制の強化により医療ケアを伴う難病患者のショートステイを受け入れるケースを、ショートステイ事業の中に正式に位置づけ、それが可能な報酬単価の設定を求めるものでした。
この質問に対する部長答弁は、自立支援制度においては、人工呼吸器を使用されているなど医療の必要性の高い場合は、医療機関のショートステイで対応することとされていることから、お示しのようなサービスの位置づけや報酬の改定について、改めて国に要請することは考えていないというものでありました。
この答弁には、残念な思いがいたしました。財政事情が厳しい中、県独自の助成は困難としても、現状認識や課題解決に向けての思いは共有しており、当然に国に対する働きかけには賛同してくれるものと期待していたからであります。
私は、県政の重要な役割は、県民の暮らしや地域づくりの根幹にある国の政策の現場検証であり、そのことを通して実情に合わないところは改めるよう国に働きかけ、国ができないことは補完して、県民の暮らしと地域づくりがよくなるようにしていくことであると考えております。
このような県政の役割は、地方分権が大きく進行している現在、一層高まっており、地方の現場の視点から国の政策形成に積極的にかかわり、参画していくことが、今日の県政には求められているのではないでしょうか。
そこで、このたびは、そうした観点から本県の医療福祉行政が、難病患者のショートステイ制度の改善に向けて役割を果たしていくことを期待し、私なりの現場検証に基づき、難病患者ショートステイの現状認識や課題等について御所見をお伺いいたします。
その第一は、医療ケアを必要とする難病患者のショートステイを受け入れる医療機関がないという現状認識についてであります。
自立支援法では、医療ケアを必要とする短期入所――ショートステイのことでありますが、医療ケアを必要とする短期入所は医療機関でということになっており、医療型短期入所事業所の指定を受けた医療機関が、受け入れることになっています。本県で、この事業所指定を受けているのは、山口宇部医療センター――旧山陽病院であります。この山口宇部医療センターと、重症心身障害児施設である鼓ケ浦整肢学園の二つでありますが、鼓ケ浦整肢学園は受け入れを休止しており、山口宇部医療センターも難病患者の一般のショートステイは受け入れていません。
県の医療福祉行政上は、医療型短期入所事業所の指定で、難病の方々のショートステイ受け入れの環境を整えたということになっているのでしょうが、実際はそれが機能していなくて、なきに等しいというのが実情であります。こうした現状についての認識があるのか、まずお伺いいたします。
第二は、在宅療養をしている難病患者のショートステイ先を、医療機関に限定する必要はないということであります。
難病の症状が重くなって、在宅療養では対応できなくなれば、当然に医療機関への入院となります。ショートステイは、基本的に在宅療養の代替であることから、難病の場合も、家での療養と同等の医療ケアを提供できるところであれば、必ずしも医療機関でなくても、受け入れは可能と考えます。このことにつき御所見をお伺いいたします。
第三は、ショートステイには、スポット的なものと定期的なものと二通りありますが、定期的な難病患者のショートステイ受け入れの必要性についてであります。
法事がある、結婚式がある等のスポット的な事情や緊急事態に対応して医療機関が、緊急入院という名目で難病の方を短期に受け入れることはあるようです。
そこで、難病患者のショートステイも、スポット的な面はどうにかクリアできていると思われますが、未解決の切実な課題として、定期的なショートステイ受け入れ先の確保があります。
さきに、医療ケアを必要とする難病患者のショートステイを受け入れる医療機関がないと申し上げましたが、実態を踏まえて正確に言えば、難病患者を定期的にショートステイで受け入れる医療機関がないということであります。
まことに、難病患者のショートステイ問題の核心は、実にこの一点にありまして、最初に紹介しましたSさんも、一月ないし二月に一度、定期的に受け入れてくれる施設があったから、難病の御主人を在宅で見続けることができたのであります。
そこで、お伺いいたします。県は、難病患者の定期的なショートステイ受け入れ先の確保が必要であり、そのことが政策課題としてあることを認識しておられるのか、御所見をお伺いいたします。
第四は、身体障害者療護施設は、看護機能を強化すれば、難病患者の定期的なショートステイ受け入れ先になり得るということであります。
医療ケアが必要な難病患者の定期的なショートステイを、医療機関が受け入れない現状にあって、医療機関にかわる受け入れ先として向いていると思われるのは、身体障害者療護施設であります。なぜなら、難病の方は身体に障害を生じて身体障害者療護施設にお世話になっているケースが多いからであります。
このような身体障害者療護施設は、ショートステイ時に医療ケアのための看護体制を常時とれるよう、看護師の配置を行うことができれば、十分難病患者のショートステイ受け入れは可能であり、定期的な受け入れ先になり得ると思われますが、このことにつき御所見をお伺いいたします。
第五は、身体障害者療護施設の中で、特に難病障害者受け入れの整備をした施設についてであります。
国は、平成十年度から身体障害者療護施設が、ALSによる難病障害者を受け入れることができるよう、体制整備を進めてきております。
身体障害者療護施設は、入所者が五十人規模の場合は、非常勤の嘱託医師が一名、常勤の看護師が三名いて、常時医療ケアを行っているわけではありませんが、必要が生じたときは、医療ケアができる体制になっていまして、入所者の健康管理と介護・生活支援を行っています。
国は、この施設にALS等の障害者のための人工呼吸器や喀痰吸引器――痰の吸引器でございますね、喀痰吸引器等の特殊な設備を備えた専用居室の整備を図ることとしたもので、本県では、国のこの方針を受けて整備された施設が二施設ありますが、実はSさんの御主人を受け入れたN園はその一つであります。
私は、こうした施設が、医療ケアを必要とする難病障害者を受け入れるケースを、自立支援法の短期入所(ショートステイ)の報酬単価区分の中に正式に位置づけて、通常の施設運営より看護師配置を強化した分を評価した報酬設定を行うことが、難病患者の定期的なショートステイ確保対策として、最も現実的で望ましい施策であると考えますが、御所見をお伺いいたします。
第六は、障害者福祉サービス報酬改定における医療連携体制加算についてであります。
国は、障害者自立支援制度の見直しに当たり、平成二十一年度の障害者福祉サービス報酬の改定においては、「医療連携体制加算」を新たに設けました。
これは、児童デイサービス、短期入所(ショートステイ)であります、共同生活介護、自立訓練、就労移行支援等において、医療的なケアを要する者に対し、医療機関との契約に基づく連携により、当該医療機関から看護職員の訪問を受けて提供される看護について評価を行うこととしたもので、利用者一人の場合、日に五千円の加算が認められることになったものであります。
東京都台東区に、「たいとう寮」という障害者の共同生活援助・共同生活介護のためのケアホームがあります。台東つばさ福祉会という社会福祉法人の施設ですが、ここでは、医療ケアを必要とする重度障害者や難病の方々のショートステイを予約制で受け入れています。その場合は、もちろん看護師がついているわけですが、その看護師の人件費を区が、台東区が見ていました。
こうしたケースが、医療連携加算では評価されることになったわけであります。
このことは、一歩前進ということで喜んでいいのですが、残念なのは、医療連携体制加算が認められるのは、ケアホーム「たいとう寮」のように、指定基準上、看護職員の配置を要しない施設ということになっていて、Sさんの御主人を受け入れたN園のような身体障害者療護施設は、対象になっていないことであります。
先ほど述べましたように、身体障害者療護施設は、必要に応じて医療ケアができるように看護職員の配置基準が定められています。こうした施設は、医療連携体制加算の対象になっていないのであります。この施設が難病の方をショートステイで受け入れるには、看護職員の配置を、必要に応じての医療ケアから常時の医療ケアへと、通常の場合よりも強化しなければなりません。
私は、このように、看護職員を配置している施設が、正当な事由から通常管理の場合に、より看護職員の配置を強化した場合も、医療連携体制加算の対象にすべきと考えますが、県の御所見をお伺いいたします。
第七は、以上の現状認識と課題把握に基づく、国への働きかけと県の補完施策についてであります。
県の要望として、国に働きかけていただきたいことは、これまでのお尋ねの中で述べていることですが、次の二点であります。
一つは、医療連携体制加算についてでありまして、看護職員を配置している施設が、正当な事由により看護職員の配置を強化した場合も、この加算の対象にするよう要望するということであります。
二つ目は、国の方針を受けてALS等の難病障害者を受け入れることができるよう施設整備した身体障害者療護施設が、難病障害者をショートステイで受け入れた場合は、短期入所の報酬単価区分の中に準医療型として正式に位置づけるか、医療型短期入所に含めるかして、評価するように求めることであります。
県が、補完施策として行うべきと考えますのは、これらの要望が自立支援制度の報酬見直しで実現するまで、関係市町と連携して、障害者療護施設が難病障害者をショートステイで受け入れた場合、医療ケアに伴う経費増分を助成することであります。
このたびの質問で、幾らかくどいと思われるほど、種々お尋ねしているのも、要は、今申し上げました国への要望と、県の補完施策の実現を求めて、実情を踏まえて言葉を尽くしている次第でありまして、このことにつき御所見をお伺いいたします。
以上で、一回目の質問を終わります。
【回答】◎知事(二井関成君)
私からは、難病患者のショートステイの現状認識についてお答えをいたします。
難病は、原因不明で治療法がいまだ確立をされておらず、長期にわたる療養を要しますことから、患者本人のみならず、その家族にとりましても、介護や精神的な面において負担は大きいものであると認識をいたしております。
このため、県といたしましては、難病患者やその家族の不安を和らげ、安定した療養生活が確保できるよう、健康福祉センターを中心に、関係機関からなるネットワーク会議を開催しながら、家庭訪問による相談援助や患者・家族交流会の開催などに取り組んでおりまして、また、経済的な負担軽減を図るための医療費助成を行うなど、支援の充実に努めております。
こうした中、難病患者のショートステイは、在宅療養を支える上で重要なサービスであると考えております。お示しの障害者自立支援法のみならず、介護保険法に基づくサービスなど、多様な制度を活用し、それぞれの患者の状態に応じて総合的に対応しているとこであります。
私は、難病対策につきましては、国において全国的な制度として実施されるべきものであると考えております。これまでも、保健・医療及び福祉関連サービスの充実などについて、全国知事会等を通じて要望しているところであります。
今後とも、難病対策につきましては、福祉分野や医療分野での制度的な見直しが必要であると考えております。難病患者やその家族の生活の質の向上が図られるよう、国に必要な働きかけを行いますとともに、市町や関係機関等と連携をして、対策の推進に努めてまいりたいと考えております。
そのほかの御質問につきましては、関係参与員よりお答えいたします。

【回答】◎健康福祉部長(今村孝子さん)
難病患者のショートステイ先の確保について、数点のお尋ねにお答えいたします。
まず、ショートステイの受け入れ先についてですが、難病には多くの疾患があり、多様な病態がある中で、医療の必要性には個人差が多く、個々の状況に応じた対応が求められております。
こうしたことから、難病患者のうち医療の必要性の低い方は、通常、社会福祉施設等のショートステイを利用されていますが、医療の必要性の高い方については、緊急時に直ちに医師が対応でき、また医療機器が十分そろっているなどの理由から、医療機関において対応されることが必要であると考えております。
次に、定期的なショートステイについてですが、県といたしましては、患者さんや家族の状況に応じて、福祉施設や医療機関のショートステイが適切に利用できることは重要と考えております。障害者自立支援制度や介護保険制度等を活用しながら、受け入れ先の確保に現在努めているところです。
次に、身体障害者療護施設における定期的なショートステイについてです。
この施設は、原則として、常時の介護を要するが医療の必要性は低い障害者を対象とする福祉施設でありますことから、看護体制について一定の強化を図ったとしても、多様な病態がある難病患者の受け入れには、おのずから限界があるものと考えております。
次に、お示しのALS等の専用居室を持つ身体障害者療護施設におけるショートステイについてです。
昨年実施したALS患者の調査では、何らかの医療措置を受けている方は、すべて医療機関のショートステイを希望しておられること、また、介護保険制度等により医療機関が利用できる仕組みとなっていますことから、現時点では、お示しの、自立支援制度における報酬上の評価まで行う必要は低いものと考えております。
次に、医療連携体制加算についてですが、この加算は、看護職員の配置を要しない事業所でも、日常生活における医療ケアに、ある程度対応できるよう設けられたものであり、既に看護師が配置されている施設の看護体制をさらに強化するものとは、趣旨を異にしているものと受けとめております。
最後に、国への働きかけと県の補完施策についてですが、自立支援制度における報酬上の措置等については、本来、制度設計者である国において、施設のあり方を踏まえて検討されるべきものであると考えております。県といたしましては、難病患者やその家族の生活の質の向上が図られるよう、必要な措置については、国に対し要望してまいります。
また、難病患者のショートステイについては、医療や福祉を取り巻く環境の急速な変化の中、医療と福祉の役割分担のあり方、福祉施設における受け入れ機能の強化、人材の確保などの課題がありますことから、県といたしましては、今後、こうした課題を踏まえ、必要な措置について検討してまいりたいと考えております。

2009年6月30日