2.上関原発建設計画に関する事情の変化について【要望】
(ア)事情の変化はないとの認識について
3.水素先進県づくりの方向での上関原発建設計画の変更について【要望】
上関原発のことに関しまして、担当理事のほうから、上関原発に巡ることでの事情の変化はないという答弁があったところであります。
事情の変化があるかどうかの議論は水掛け論になりますので、それは避けますが、一つの行政のあり方、あるいは行政で取り組む職員の意識のあり方に関わることとして、参考までに申し上げたいと思います。
それはいわゆる思考の欠如、思考の停止ということが、真摯に現実に向き合って考えていくという姿勢が欠如しているんじゃないかという、そういうことの問題点であります。
20世紀を代表する政治学者の一人に、ハンナ・アーレントという女史がおられます。彼女はいわゆるユダヤ人の虐殺、いわゆる収容所のほうにユダヤ人を送る役割を果たしたアイヒマンが、戦後亡命しておったのが逮捕されて裁判にかけられたのを取材して、そして『エルサレムのアイヒマン』という書を出しました。そこにおいて彼女が示したのは、いわゆる何百万人ものユダヤ人を虐殺したその張本人のアイヒマンは悪逆無動の悪人であったということではなくて、平凡な一凡人で役人であったと。ただ、彼の場合には思考が欠如していた。そのために、それほどの大きな罪を犯すことになったと。いわゆるアイヒマンが、いやいや、ハンナ・アーレントが訴えたかったのは、いわゆる悪の凡庸さ、平凡な人間が真剣に考えることを欠如することによって犯す罪の大きさであります。
私は、上関の原発のことも含めまして、本県の職員の皆さん方は現実にしっかり向き合い、そして、県民の立場に立って真剣に考え、そして、なすべき役割を果たしていく。そういう県政の執行に取り組んでいただくことを要望いたしまして、私の質問を終わります。
2.上関原発建設計画に関する事情の変化について【理事答弁】
(ア)事情の変化はないとの認識について
3.水素先進県づくりの方向での上関原発建設計画の変更について【理事答弁】
水素先進県づくりと上関原発建設計画の変更についてのご質問のうち、事情の変化はないとの認識と、水素先進県づくりの方向での計画の変更についてのお尋ねに、まとめてお答えします。
お示しの石炭ガス化複合発電などの次世代の高効率石炭火力発電は、国のエネルギー政策において、その役割や重要性が位置付けられているところです。
原子力については、国は、本年2月に閣議決定した「GX実現に向けた基本方針」において、地域の理解を大前提に、廃炉を決定した原発の敷地内での次世代革新炉への建て替えを具体化していくとしています。
そして、その他の開発・建設については、各地域における再稼働状況や理解確保等の進展等、今後の状況を踏まえて検討していくとしています。
こうした中、上関原発については、国から、重要電源開発地点指定は引き続き有効であり、事情の変化がない限り解除する考えはないとの見解が示されており、国のエネルギー政策上の位置付けは、現在も変わっていないと認識しています。
また、地元上関町は町議会の議決を経て原発誘致を決定し、町長が中国電力に対し、原発誘致の申入れをされ、今日に至っており、原発立地によるまちづくりを進めたいという地元上関町の政策選択は、変わりありません。
このように、上関原発建設計画については、国のエネルギー政策上の位置付けや地元上関町の政策選択に変わりがないことから、県としては事情の変化がないと認識しているところであり、その変更を中国電力に対して勧告することは考えていません。
上関町の地域振興策の実現に向けた県の役割について【部長答弁】
上関原発建設計画に関する事情の変化についての御質問のうち、上関町の地域振興策の実現に向けた県の役割についてのお尋ねにお答えします。
市町におけるまちづくりについては、各市町において、地域の実情や住民のニーズ等を踏まえて、主体的に実施されるものであり、県では、市町の意向を尊重し、適切な役割分担の下、連携を図りながら、広域的な事業等の実施や、市町の取組への支援を行っているところです。
上関町についても、この基本的な考え方に立って、町からの要望を踏まえ、県道の改良工事や、離島航路に対する財政支援などを行っているほか、移住・定住の促進等に連携して取り組んでいます。
さらに、町のニーズをきめ細かく把握するため、毎年、知事が市町から地域の実情や要望をお聴きする機会を設けるとともに、県民局が窓口となって市町との連携強化を図っているところです。
県としては、引き続き、こうした取組を通じて上関町の意向をしっかりと把握しながら、町の地域振興につながるよう適切な支援を行うなど、求められる役割を果たしていきたいと考えています。
これからの水素先進県づくりについて【知事答弁】
合志議員の御質問のうち、私からは、これからの水素先進県づくりについてのお尋ねにお答えします。
まず、これからの水素先進県づくりの施策体系についてです。
本県では、周南コンビナートの苛性ソーダ工場から純度の高い副生水素が生成されるという地域特性を活かして、全国をリードする「水素先進県」の実現に向けた取組を展開してまいりました。
具体的には、新たな技術開発の促進による産業振興や水素社会の実現に向けた地域づくりなどの施策を中心に、環境・エネルギー関連産業の振興に取り組んできたところです。
また、脱炭素化の潮流が速度を増す中、本県のコンビナート企業群では、脱炭素化と将来にわたって国際競争力の維持・強化を図るため、アンモニア・水素等への燃料転換などの取組の検討が進められています。
これらの取組は、「やまぐち産業脱炭素化戦略」のプロジェクトの中で、それぞれ、水素先進県の実現を目指す環境・エネルギー関連産業の振興と、次世代燃料への転換によるカーボンニュートラルコンビナートの実現として位置付け、目標の達成に向けた取組を進めているところです。
次に、これからの水素先進県づくりの具体的な進め方についてです。
まず、副生水素という地域特性を活かした環境・エネルギー関連産業の振興については、産業技術センターを核とした先進的な研究開発・事業化支援による産業振興や、燃料電池自動車の導入促進に取り組む市町への支援を通じた地域づくりなどに取り組んでまいります。
一方、周南地域のコンビナート企業では、海外からの大量の輸入を想定したアンモニアサプライチェーン構築による燃料転換に向けた検討が進められており、県としてもこうした取組をしっかりと後押ししているところです。
この取組は、現時点では石炭に代わる燃料の一部としてアンモニアを活用するものですが、2050年カーボンニュートラルに向けて、将来的には水素の利活用も想定されます。
このため、私は、アンモニアをはじめ、水素を含む次世代燃料への転換に向けた県内企業の動向も見極めながら、産業脱炭素化戦略に基づく関係施策を着実に進めてまいります。
その他の御質問につきましては、関係参与員よりお答え申し上げます。
3. 水素先進県づくりの方向での上関原発建設計画の変更について
その3は、水素先進県づくりの方向での上関原発建設計画の変更についてであります。ここで言う水素先進県づくりの方向ということで具体的にイメージしていることは、発電の面でも水素の利活用が、実際上は水素のキャリアであるアンモニアの利活用が図られ、火力発電においてアンモニアの混焼が進み、さらに専焼に向かいカーボンフリーが実現していくというものです。
そうした方向での上関原発建設計画の変更が、どういうものになるかは明らかで、既に申し上げていることでありますが、将来的にアンモニアの混焼・専焼を視野に入れたCO2回収型の即ちカーボンフリーの石炭ガス化複合発電(IGCC)若しくは石炭ガス化燃料電池複合発電(IGFC)への計画変更であります。この方向での計画変更は、先に述べましたが、今日、中電の経営戦略においても妥当性を持つものと見ております。
ついては、只今申し上げました方向での上関原発建設計画の変更を、山口県は中国電力に勧告すべきと考えますが、ご所見をお伺いいたします。
質問は、以上ですが、以下補足的に申し上げておきます。既に実用化されている石炭ガス化複合発電(IGCC)のひとつに、福島復興電源として福島県の勿来・広野地点に設置され2021年から営業運転を開始した勿来IGCC発電所があります。この発電所の概要を紹介した資料によりますと、福島復興への寄与ということで、雇用の面では建設時は、2地点合計2000人。その後恒久的雇用(発電所運転・運営、燃料輸送等)と定期検査時での作業者雇用を見込むとあります。また、経済的波及効果は、環境影響評価着手から運用を含めた数十年間で、福島県内に1基当たり総額800億円の経済波及効果があると試算されています。こうしたことから、IGCC若しくはIGFC発電所の設置は、上関町にとって原発に代わる地域振興策になり得るのではないかと思う次第です。
尚、岸田首相が今月1日、COP28の首脳級会合で演説し、石炭火力新設の終了を表明しましたが、それは温室効果ガスの排出削減対策が採られていない石炭火力発電所のことでありまして、IGCCやIGFCの発電所は、その対象にはならないことを申し添えます。
→(理事答弁)
2. 上関原発建設計画にかんする事情変化について
ア.事情の変化はないとの認識について
その2は、上関原発建設計画に関する事情の変化についてです。
私は、今年の2月県議会の一般質問において、今回同様上関原発の建設はあり得ないことを指摘して、計画変更に向けて県がリーダーシップを発揮するよう求めました。これに対し「上関原発建設計画については、事情の変化がない中で、計画変更について県が役割を果たすことは考えていない。」旨の答弁がありました。事情の変化がないというのは、「重要電源開発地点指定は引き続き有効であり、解除する考えがないとの見解が国から示されている。また、原発立地によるまちづくりを進めたいという地元上関町の政策選択は、現在も変わっていない。」とのことで、その旨答弁で述べられています。
そこでお尋ねです。
上関原発建設計画は、平成13年に電源開発基本計画への組み入れが了承され、平成16年に重要電源開発地点の指定制度が創設されてからは、その制度に基づく指定を受けた計画として今日に至っております。平成23年の福島原発事故の以前と以後とでは、重要電源開発地点の指定を受けている点は変わらなくとも、上関原発に係るエネルギー政策は大きく変化しております。このことに関しては西哲夫上関町長自身が、中国新聞の中間貯蔵施設についてのインタビューに応じて、次のように述べています。
「原発の見通しについて中電は『明確に答弁できない』、政府は『廃炉の跡地に次世代原発を造る』とする。それでは上関町は候補地にもならない。原発と中間貯蔵施設では財政や経済への効果は天と地の差がある。だが、座して待つなら衰退する、と考えた。」と。
こうした状況であっても、県は、重要電源開発地点の指定の解除がなければ、上関原発建設計画に関する事情の変化はないとの認識なのか、先ずご所見をお伺いいたします。
→(理事答弁)
イ.上関町の地域振興策の実現に向けた県の役割について
次に、西町長の発言から、上関町が、現在原発に代わる地域振興策を真剣に模索していることは明らかです。こうしたことから、上関原発建設計画については、事情の変化がない中で、計画変更について県が役割を果たす考えはないとの方針は改めて、原発に代わる上関町の地域振興策の実現に向けて、県も役割を果たすべきだと考えますが、ご所見をお伺いいたします。
→(部長答弁)
1. これからの水素先進県づくりについて
その1は、これからの水素先進県づくりについてであります。
県のホームページには、「『水素先進県』の実現を目指した山口県の取組」が掲載されていますが、これには、周南コンビナートの脱炭素化への取り組みは載っていません。この取り組みは、燃焼してもCO2を出さない水素、その水素のキャリアであるアンモニアのサプライチェーン構築を、本県の代表的な石油化学コンビナートにおいて実現し、コンビナートの脱炭素化を図ろうとするものであることから、当然に取り上げられていると思っていました。ところが、そうではありませんでした。理由は、脱炭素化に向けた水素関連の取組は、脱炭素の範疇で施策対応しているので、水素先進県実現への取り組みには含めていないとのことでした。
そうしたこれまでのことはさておき、今後は、本県の水素先進県づくりの全体像には、脱炭素のための水素・アンモニア利活用に向けた取り組みも含めて施策の推進を図るべきと考えます。そこでお尋ねです、これからの水素先進県づくりの施策の体系はどう考えているのか、また、具体的にどう進めていくお考えなのか、ご所見をお伺いいたします。
→(知事答弁)
20代・30代の若い世代の所得向上について【部長答弁】
一億人国家シナリオと県政についてのお尋ねのうち、20代・30代の若い世代の所得向上についてお答えします。
非正規雇用については、価値観やライフスタイルに応じて多様で柔軟な働き方を選択できる一方で、正規雇用と比べ、雇用が不安定、賃金が安い、能力開発の機会が少ないなどの課題があります。
こうした課題の解決に向けては、正社員を希望する方の正社員転換を支援し、非正規雇用で働く若者の所得向上と収入安定を図ることが重要と考えています。
このため、県では、山口しごとセンターにおいて、非正規労働者の正規雇用化に向けたスキルアップ研修の実施や、雇用転換支援員によるマッチングを行うとともに、正規雇用した企業に対し支給される国のキャリアアップ助成金の活用促進を図っています。
こうした取組に併せ、非正規雇用労働者の希望や意欲・能力に応じた正規雇用への転換や、待遇改善施策の充実を図るよう、全国知事会を通じて国に要望してきたところです。
こうした中、現在、国においては、次元の異なる少子化対策の実現のための「こども未来戦略方針」を策定し、若い世代の所得向上を図るための政策として、非正規雇用の方々の正規化を促進することとしています。
具体的には、生活費等への不安なく、主体的にリスキリングに取り組むことができるよう、生活を支えるための新たな給付や融資制度の創設などについて検討されています。
県では、こうした国の検討状況を見守りながら、引き続き、若者が安心して働くことができるよう、非正規雇用で働く若者の所得向上と収入安定に取り組んでまいります。
普遍性のある育児休業制度について【部長答弁】
一億人国家シナリオと県政についてのお尋ねのうち、まず、普遍性のある育児休業制度についてお答えします。
現在、国においては、次元の異なる少子化対策の実現のための「こども未来戦略方針」を策定し、年末までに、方針の具体化を進め、戦略を策定することとされています。
この方針においては、多様な働き方と子育ての両立支援を図るため、雇用保険が適用されていない週所定労働時間20時間未満の労働者についても、育児休業給付等を受給できるよう、雇用保険の適用拡大に向け検討を進めることが示されています。
また、自営業・フリーランス等の育児期間中の経済的な給付に相当する支援措置として、国民年金の第1号被保険者について、育児期間に係る保険料免除措置を創設することとされています。
こうした中、お尋ねの育休制度を普遍性のある制度にすることについては、社会保障制度として、給付と負担の在り方も含め、国において検討されるべきものであり、県として、国に提言することは考えていませんが、子育て世帯への経済的負担の軽減等については、引き続き、国に要望を行ってまいります。
地方創生について【知事答弁】
合志議員の御質問のうち、私からは地方創生についての2点のお尋ねにまとめてお答えします。
地方創生は、自立発展できる住みよい地域を創り、東京圏から地方に人を呼び込むことで、持続可能な地方分散型の社会を実現し、そのことを通じて、将来にわたって活力ある日本社会を維持していくことを目指す政策です。
私は、こうした国の政策に呼応し、地域の経済の活性化や魅力の向上を図る取組を通じて、本県の活力を高めていくことが重要と考え、県としての「まち・ひと・しごと創生総合戦略」を策定し、国の地方創生推進交付金なども活用しながら、総合的な取組を進めてきたところです。
この結果、企業誘致による新たな雇用の場が生まれ、移住者等が大きく増加し、中山間地域において持続可能性を高める地域づくりが進むなどの成果が上がっています。
こうした中、今般のコロナ禍を経て、国民の意識や価値観が大きく変化するとともに、デジタル化・脱炭素化などにより、社会経済の構造変革が急速に進んでおり、国においては、こうした動きに対応した、「デジタル田園都市国家構想」が新たに策定されています。
それぞれの地域が、デジタル技術の活用により、個性を生かしながら、自主的・主体的な取組を進め、東京一極集中の是正と多極化を図ることで、地方から国へのボトムアップの成長に繋げる、地方創生の新たな展開が始まっており、県としても、取組をさらに強化していかなければなりません。
このため、私は、新たな総合戦略を策定することとし、産業競争力の強化や人材の定着・移住の一層の促進など、持続可能な地域の構築に向けた取組をさらに進め、確かな成果に繋げていくこととしており、このことはお尋ねの「自律分散型統治」にも通じることになると考えています。
また、地方創生の取組を進める上で、地方の権限を高め、財政基盤を強化していくことが必要不可欠であることは、改めて申し上げるまでもありません。
とりわけ、地方の税源については、その偏在が大きな課題となっており、自治体間の財政力に大きな格差が生じていることから、国に対して、その是正に向けた積極的な取組を求めていく必要があります。
権限の面においても、提案募集方式の導入等により、一定の成果は出ているものの、まだ十分とは言えない状況です。
このため、私は、先般実施した政府要望においても、地方の安定的な財源の確保と国から地方への権限移譲を求めたところであり、今後も、全国知事会等とも連携しながら、取組を進めていきます。
私は、今後とも、国としっかり連携し、また、地方が主体的に施策を実施していく上で、必要な提案も国に行いながら、本県の実情や特性に応じた地方創生の取組を積極的に推進し、持続可能で活力に満ちた山口県の実現に取り組んでまいります。
その他の御質問につきましては、関係参与員よりお答え申し上げます。