(1)予算の編成方針について
このたびは、二井県政の総仕上げと位置づけられました平成二十三年度山口県予算の編成方針についてお伺いいたします。
その一は、本県の現状と課題への基本認識についてであります。
言うまでもなく、二井県政の総仕上げは、山口県政の総仕上げではありません。山口県政は、将来道州制等への移行等がない限り、これからもずっと続いていきます。よって、当初予算は、何よりもまず、そのときの課題に対応したものでなければなりません。
そこでお尋ねいたします。知事は、次年度予算を編成するに当たり、本県の現状と課題をどう認識し、そのことに対応しようとしておられるのか、御所見をお伺いいたします。
お尋ねのその二は、財政規律の保持についてであります。
御案内のように、二井県政の財政運営上の公約は、県債残高は一兆一千億台に抑制し、平成二十一年度末をピークとして、それ以降減少に転ずるというものでありました。
ただ、この公約実現のためには、二つの前提がありました。一つは、災害等による突発的な財政需要が生じないこと、もう一つは、地方財政対策等により、財源調達のため県債発行を余儀なくされるような事態にならないことであります。
しかし、この二つの前提は、まさに公約達成の年、平成二十一年度に崩れます。この年の七月に発生した豪雨災害のため、多額の災害復旧事業債の発行が必要となりました。また、リーマン・ショックによる世界同時不況、景気の後退による税収減のため、国・地方ともに財源不足となりまして、平成二十一年度、平成二十二年度のいずれも、地方交付税の振りかえ措置としての臨時財政対策債を本県も大幅に増額して発行することを余儀なくされたのであります。
そのため、平成二十一年度末決算で、県債残高は一兆千九百四十六億円と、辛うじて公約の一兆一千億台を保ったものの、平成二十二年度において、県債残高はさらに増加して一兆二千五百七十八億円となる見通しであります。
二井知事も残念だったでしょうが、財政運営の公約を守ることはできない事態となりました。
ただ、そうした中で、臨時財政対策債、減税補てん債、減収補てん債と、償還時に国が、その償還額を基準財政需要額に算入して交付税措置する特別分の県債を除いた、純然たる県債一般分は、新たな県債発行額を公債費以下に抑えるというプライマリーバランスに留意した方針が保たれてきており、その残高は減少基調となっております。
わかりやすく言えば、国が面倒見ることを約束した分を含めると借金はふえているが、県独自で返済しなければならない借金は減らしているということであります。この点において、本県の財政運営は、借金総額はふえているものの、財政規律を保持する一線は守られているとみなしていいと考えます。
そこでお尋ねです。平成二十三年度予算編成においても、県債一般分の発行額は、公債費以下に抑制するというプライマリーバランスに留意した方針は堅持されるべきと考えますが、知事の御所見をお伺いいたします。
お尋ねのその三は、財源確保対策と山口県振興財団の今後のあり方についてであります。
さて、山口県振興財団は、山口県版埋蔵金とでも言うべき中国電力株式を基本財産とする財団であります。保有株数は、約五千万株で、最近は株価が下がっておりますので、時価評価額は八百数十億円であります。
この振興財団は、基本財産には手をつけることなく、近年は年約二十五億円の配当がありまして、この配当金を運用して、また必要に応じて借り入れをして、本県の財政運営に協力し、県事業の円滑な推進に寄与してきました。
平成元年以来の資金協力の実績を見ますと、大方毎年十七億円が道路・河川事業等の大規模建設事業等に充てられてきております。そしてさらに、きらら博が開催されました平成十三年には四十三億円、国民文化祭が開催されました平成十八年には三十億円と増加しておりまして、特段の事業があるときは、その財源として活用されてきたことがうかがわれます。ちなみに、今年度は国体関連分の増加があり、四十二億円となっております。
こうしたことから、振興財団は、本県の予算編成の大事な一角を占めているとも言えます。そこで、次年度予算編成に際して、振興財団のあり方について二つの面からお伺いいたします。
一つは、財源確保の面からであります。県は、「新・県政集中改革プラン」において、財源確保の取り組みの具体策の一つに保有株式の売却を上げています。そこでお尋ねです。ここでいう保有株式には、振興財団の基本財産である中国電力株式も含まれているのかお伺いいたします。
次にもう一つ、公益法人制度の改革という面からお伺いいたします。公益法人の改革は、従来の主務官庁の裁量権に基づく法人の設立を、法で定めた統一的な公益性についての判断基準に基づく法人の設立へと改めるものでして、その根拠となる法律は、平成十八年の通常国会を経て、平成二十年十二月より施行されています。
従来の社団法人、財団法人は、五年間の移行期間中に、新法に基づく法人への移行が求められ、それをしないものは解散することとされています。
移行期間の期限は、平成二十五年十一月末でありますので、振興財団も、それまでに新法に基づく財団への移行が求められます。
新法の財団への移行に当たっては、一般法人で行くのか、公益法人で行くのか、法人の目的や事業内容はどうするのか、基本財産はそのまま承継するのか等々のことについて、方針を決めていく必要があります。そこで、まずこうした基本的事項についての現時点での検討状況と、いつまでに結論を出すお考えなのか、お伺いいたします。
次に、公益法人制度改革についての私の見方を示し、現振興財団の基本財産の活用について伺いたいと思います。
私は、新法による公益法人制度は、公益性判断の基準が机上の理想論、一般論の趣があり、制限的列挙になっていることから、民間公益が増進されるというより、法人に対する管理が強化されることになるのではないかと見ております。よって、私は、現振興財団の基本財産を、そのまますべて新法に基づく財団に承継させるのは考えものだと思っております。
これまでは、それに手をつけることなく大事に保有してきた基本財産ですが、必要とあらば直接その基本財産を県事業に利活用することも考慮されていい時期に来ていると考えます。
平成二十一年二月県議会で、知事は、振興財団資金の活用について、歴史的な経緯や県民の貴重な財産であるという考えに立って、住み良さ日本一の元気県づくりに資するような形にさらになるよう有効活用方法について検討する旨、答弁しておられます。
私は、基本財産を、将来を担う子供たちの教育環境の安全のための学校の耐震化や、これからの新しい時代の産業基盤、生活基盤となる超高速ブロードバンド化に向けた情報通信インフラの整備等のために使うことは、県民の理解が得られる利活用の方向だと考えております。
要は貴重な県民の財産が、宝の持ち腐れにならないよう有効活用されることが大事で、二井知事の県政総仕上げに活用されることも当然あってしかるべきと考えるものです。
そこでお尋ねいたします。振興財団は、向こう三年以内に、新法に基づく財団法人に移行することになりますが、現有の基本財産は、どう活用するのが最も望ましいとお考えなのか、御所見をお伺いいたします。
【回答】◎知事(二井関成君)
私からは、明年度予算編成方針に関するお尋ねのうちで、まず、本県の現状と課題への基本認識についてお答えをいたします。
私は、県勢の発展基盤を揺るぎないものとし、本県が躍進できるための確かな道筋をつけていくために、実行計画となる加速化プランを策定し、これに基づいて、諸施策を推進をしてまいりました。
そして、平成二十四年度としている加速化プランの計画終期が近づく中、残された期間でプランの確実な実現を図り、その成果を、これからも続いていく山口県政の礎として、しっかりと継承しなければならないと考え、そのための取り組みを総仕上げというふうに申し上げているところであります。
一方で、県政がその時々に直面する諸課題に対しましても、当然のことながら、的確に対応していかなければなりません。
お尋ねの本県の現状につきましては、人口減少や少子・高齢化等の全国を通ずる問題が、本県においても一層進行するとともに、厳しい景気・雇用情勢への対応や、頻発する自然災害への備えなど、県として緊急的に取り組むべき課題も生じております。
このような状況を踏まえまして、私は、耐震化の推進やハザードマップの整備促進等の「くらしの安心・安全基盤の強化」に関連するものを初め、三十五人学級化の推進、新規雇用二万人創出構想の実現など、十七の加速化プラン重点事業を特に優先すべきものと定め、明年度予算編成において、集中的な予算配分を行うということにいたしたところであります。
こうした現下の課題への対応を含め、今後、加速化プランの総仕上げに取り組んでいくこととなりますが、私としては、厳しい状況の中にあっても、プランに掲げる重点事業や「住み良さ・元気指標」を一つでも多く達成し、また、水準を高めることができるように、最大限の努力を行ってまいる考えであります。
次に、財政規律の保持についてであります。
お尋ねのありました一般分の県債は、公共事業を初めとする社会資本の整備に当たり、住民負担に係る世代間の公平と、財政負担の平準化を図る観点から、借り入れによって財源の調達を行っているものであります。
そうした性格を踏まえつつ、私は、将来における償還が過大の財政負担とならないように、これまで、プライマリーバランスの黒字の確保に留意をしながら、公共事業等の投資水準の適正化に努め、新規発行の抑制に取り組んでまいりました。
これにより、投資的経費に充当する一般分の県債の残高は、お示しがありましたように、既に平成十四年度末をピークとして、減少傾向となっております。
明年度予算編成におきましては、経済対策とも関連する国の公共事業予算や、投資補助金に係る一括交付金化の行方が極めて不透明ではありますが、私としては、引き続き、投資的経費に係る県債発行額を基準とするプライマリーバランスを堅持してまいりたいと考えております。
また、県債残高全体の抑制に向けましては、国の地方財政対策により、地方交付税の振りかえとして地方が発行を余儀なくされている臨時財政対策債等の特別分の県債を削減することが不可欠であり、地方交付税総額を復元・増額し、地方が借入金に頼ることなく、安定した財政運営を行えるよう、国に対して、引き続き強く求めてまいる考えであります。
次に、財源確保対策と山口県振興財団についてのお尋ねであります。
山口県振興財団が保有する中国電力株式につきましては、どこまでも振興財団の財産であり、県の保有ではありませんので、お尋ねの「新・県政集中改革プラン」における保有株式の売却の対象となるものではありません。
一方で、振興財団による県への資金的協力は、県財政にとりまして、極めて安定的な歳入であり、私は、同じく「新・県政集中改革プラン」に掲げる外郭団体資金の積極的な活用の観点に立って、明年度におきましても、加速化プランの総仕上げに向け、国体関連事業等の所要一般財源に充当していきたいと考えております。
こうした中で、お示しがありましたように、平成二十五年十一月末を期限とする公益法人制度改革に伴い、民法に基づく財団法人として設立した振興財団につきましても、改革への対応が必要となっております。
このため、振興財団の今後のあり方や、お尋ねのありました、財団の基本財産であり、県民の貴重な財産でもある中国電力株式をどのように活用していくのかという点も含めて、現在、所要の検討を進めているところでありまして、現時点では、具体的にお示しする段階にはありませんが、私としては、明年度末までを一応のめどに、県としての対応方針を決定しなければならないと考えております。
そのほかの御質問につきましては、関係参与員よりお答えいたします。