平成22年9月定例県議会 (2)河川整備計画について

(2)河川整備計画について
河川整備についてのお尋ねの第三は、阿武川水系についてであります。
阿武川は、本県を代表する県河川の一つでありますが、この水系は、河川整備の基本方針も整備計画も策定されていません。阿武川水系は、既に河川の整備が完了していてその必要がないということなのか、それとも今後策定する予定があるのか、御所見をお伺いいたします。
次に、内水浸水被害についてお伺いいたします。
私たちが普通水害と言えば、河川のはんらんによる浸水被害を想像しますが、今日、河川のはんらんではなく、雨水が河川に排水されないために生じる内水、その内水による浸水被害が増加しております。
昨年七月の豪雨で、山口市において椹野川流域で千四百二十二戸の浸水被害を生じましたが、その九八%に当たる千三百九十七戸は、内水によるものでありました。しかも、そのうちの三百戸以上の家屋は、床上浸水に見舞われています。
ことし七月の豪雨による山陽小野田市の浸水被害は、厚狭川堤防の越流と内水はんらんが複合したものでしたが、浸水戸数は床上、床下含めて八百二十一戸であります。これと比べますと、昨年の山口市椹野川流域の浸水被害は、内水浸水だけで、ことしの山陽小野田市の被害を上回っていることがわかります。
昨年の豪雨災害は、土石流災害に関心と対策が集中しましたが、山口市においては内水による浸水被害も大きかったことを指摘し、その再発防止に向けての取り組みも大事な政策課題であることを、まず強く訴えておきたいと思います。
私の見るところ、ことしの豪雨による厚狭川流域、木屋川流域での浸水被害対策は、県主導でしっかり取り組まれ、再発防止に向けての河川整備も見通しが立っているように思われます。
一方、山口市における内水浸水被害対策への取り組みは、遅々たる感があります。
内水浸水対策事業は、基本的に雨水処理の下水道事業として取り組まれますので、事業主体は市町となります。そして、原則国二分の一の補助メニューにのっとって行われることから、県関与の余地はほとんどないように思われます。
しかし、私には、山口市における内水浸水対策事業の現状を見るにつけ、このことに県が関与を考慮していいケースがあるように思われてなりません。その一つが、山口市の問田地区浸水対策事業であります。
山口市の大内を流れる県河川問田川沿いに集落を形成している問田地区は、もともと低地であるため、昔から少し大雨が降ると内水被害に悩まされてきた一帯であります。昨年の豪雨では、道路や水田が広い範囲で冠水し、三十八戸の家屋が床上浸水の被害を受けました。この地が、床上浸水被害に見舞われたのは、山口市が戦後最大の洪水被害に見舞われた昭和四十七年に次いで二度目であります。山口市は、これへの対策として昭和五十年代に五年確率での都市下水路の整備をしたものの、これの受け先である問田川が、大雨が降ると水位が高くなるため、むしろ水の逆流が起こるありさまで、浸水被害は解消されるに至っておりません。子供たちの通学路になっている道路が冠水して通行不能になることはたびたびで、抜本的な内水浸水被害解消の対策が求められています。
地元住民からは、三十年余にわたり再三再四対策を求める要望が、県、市に対してなされてきましたが、日の目を見るに至っておりません。
現在、山口市は市内八地区において浸水対策事業を実施する計画を立てておりまして、問田地区もそれに含まれていますが、事業着手は見送られて見通しが立っていません。一方、昨年同様に浸水被害に見舞われた隣接の下千坊地区は、今年度から地元協議が始まっており、平成二十五年度ころまでには浸水対策事業が完了する予定となっております。
ずっと以前から要望活動を続けており、同様にと言っても、床上浸水被害は二度目である問田地区こそ、先に事業着手されていいのに、先送りされているのはなぜか。このことを市の担当者に問いただしましたところ、最大の理由は事業費が巨額に上ることでありました。
なぜ事業費が巨額になるのか、それは、問田地区の抜本的な浸水対策事業として想定されているのは、地区下水路の問田川への流れ出口に、逆流防止のゲートと内水排除のポンプを整備する工事でして、特に排水ポンプの整備に巨費を要すると思われるからであります。
県は、この工事において逆流防止のゲートの整備は、県河川である問田川の整備にかかるものとして県が負担してもいいとの意向を示しておりますが、排水ポンプの整備は、下水路整備の一環の事業ということで当然に市負担で行うべきものとの立場であります。
通常は、こうした考えの整理に立って役割分担し、事業を行っていくことは当然ですが、問田地区の浸水対策事業においては、県はいま一歩踏み込んで、排水ポンプの整備にも応分の負担をすることを検討すべきだと考えます。
県は、厚狭駅周辺の市街地において、内水はんらんによる浸水被害が生じないようにするためには、大正川の水位が高くならないようにする対策が必要だということで、大正川が厚狭川と合流する部分に水門と排水機場を整備しました。この大正川排水機場には、これまで一基ポンプが設置されておりましたが、この夏の災害対策緊急事業として、さらに二基増設される予定であります。
同様に、問田川の水位を高くしない対策が可能であれば、問田地区の内水被害対策として、県は、それに取り組むでしょう。しかし、実際問題、それは不可能と思われることから、それにかわる対策として、地区下水路の問田川への流出口にゲートとポンプを整備するとの見方に立てば、ポンプの設置にも県が応分の負担をすることには、合理性があると言えるのではないでしょうか。
そこで、内水浸水被害対策についてのお尋ねであります。
理屈はともあれ、最も内水被害を受けており、最も長い間要望してきており、最も切実に対策を求めているにもかかわらず、事業費が巨額になるため浸水対策事業実施の見通しが立っていない問田地区のようなケースには、県が支援できるよう制度の創設を図り、内水浸水対策事業の円滑な実施を促すべきと考えますが、御所見をお伺いいたします。
治水対策についての質問の第三は、雨水対策であります。
近年、都市化の進行により土地の保水力が低下する一方、大量の雨水流出となる局所的な短時間の集中豪雨が全国各地で頻発する傾向にありまして、総合的な雨水対策の必要性が高まってきています。
御案内のように市街地の雨水対策のためには、下水道事業として都市下水路が整備されています。この都市下水路は、全国の市街地ほとんどが、十年に一回の確率で発生する降雨ということで、一時間五十ミリほどの雨を想定して整備されています。ところが、近年は一時間百ミリの雨も珍しくなくなってきました。
ちなみに、山口市の都市下水路は、一時間降雨量五十五ミリに対応したものになっています。それが昨年七月の集中豪雨の際、山口市は、レーダー解析で一時間百ミリの降雨があったと観測されていまして、市内各所で内水はんらんを生じました。また、平成になっての二十年余の間に、一時間五十五ミリ以上の降雨が、確率からすれば二回と推計されるところ、実際は六回発生しています。
こうした実情は、雨水対策としてのハード面の整備が、近年の降雨状況に対応してないことを示しています。しかし、財政面での制約が強い今日、ハード面で整備水準を高めていくことは困難と思われます。そこで必要になってくるのがソフト面での対応を含めた総合的な雨水対策であります。
そうした意味での雨水対策の柱は二つでして、一つは、土地の保水力を低下させないこと、もう一つは、雨水処理の分散化を進めることであります。
第一の柱、土地の保水力を低下させない対策としては、開発行為によって土地の保水力が低下する場合、調整池等を設置することによってカバーする方法があります。本県は、昭和六十二年に指導要領を定め、一ヘクタール以上の開発行為には調整池の設置を求めております。
ただ、この指導要領の問題点は、一ヘクタール未満の開発行為は対象にならないこと、もう一つは、一ヘクタール以上の開発であっても、一ヘクタール未満に分割して一年以上の間隔をあけて順次開発をやることにすれば、対象にならないことであります。
景気の後退により、近年一ヘクタール以上の開発行為は少なくなっているようですが、一ヘクタール未満の開発行為が、そういう形でどんどんなされていくとすれば、増加する流出雨水の影響が懸念されます。
そこで、雨水対策についての第一のお尋ねであります。調整池設置に関する指導要領は、現在のままでいいとお考えなのか、それとも見直しの必要があるとお考えなのか、御所見をお伺いいたします。
土地の保水ということに関連しての雨水対策でお尋ねしたいことの第二は、公共工事における雨水対策についてであります。道路の舗装や、公共施設の建設の場合は、それが一ヘクタール以上であっても調整池等の設置が求められているわけではありません。しかし、公共工事によって増加する流出雨水への対策は、当然にとられていると思いますが、どういう配慮をしておられるのか、御所見をお伺いいたします。
次に、雨水処理の分散化ということについてお尋ねいたします。
雨水処理の分散化は、降った雨が一気に流れ出ないように、地域のあちこちで、雨水をしみ込ませたり、ためたりして、降った雨を分散させ、一気に集まらないようにする対策のことであります。
具体的には、舗装を浸透性あるものにしていく、一定規模以上の都市施設や住宅団地には雨の貯留施設を設ける、大雨のときは遊水池になる広場を整備しておく等のことが考えられます。
そこで、私は、こうしたことを盛り込んだ山口県版雨に強いまちづくりガイドラインを、県下の市町と連携して策定することを提案したいと思いますが、このことにつき、御所見をお伺いいたします。
最後に、浸水被害の分類把握についてお伺いいたします。治水対策を確実に進めていくためには、浸水被害の原因と実態を正確に把握することが不可欠ですが、本県の場合、浸水被害が、河川堤防の越流によるものなのか、内水はんらんによるものなのか、それともその両者の複合によるものなのかの分類把握が不十分であります。
それは、県や市町の河川や下水の各管理者ごとには把握されているものの、担当者間の十分なすり合わせが行われていないため、浸水被害全体としての原因別分類把握が明確になっていないからであります。
こういうことでは、特に内水浸水被害対策がおろそかになってしまうのではないかと心配であります。
つきましては、浸水被害の原因、実態を、県・市一体となり、各担当者が連携して、河川越流か内水はんらんかの分析も含め把握するようにすべきと考えますが、御所見をお伺いいたします。
以上で、一回目の質問を終わります。

【回答】◎土木建築部長(山本則夫君)

治水対策のお尋ねのうち、河川整備計画の二点についてです。
まず、本県の河川整備計画は、今後予想される大雨にも対応できる内容になっているのかというお尋ねです。
県では、近年、ゲリラ豪雨が頻繁に発生していることを踏まえ、現行の河川整備計画の検証を行うこと等を目的として、専門家からなる検討委員会を設置したところです。
具体的な検討状況ですが、まず、最新のデータがある厚狭川、木屋川を事例とし、集中豪雨の総雨量、時間的・地域的分布、河川流量や浸水被害の発生区域などを現行の河川整備計画と比較したところ、計画を上回る降雨量や整備区間外での浸水被害などが認められました。
このため、委員会では、河川ごとに、地域特性や集中豪雨を勘案し、河川整備の計画規模、整備方法、整備区間などを改めて検証することとしております。
県としましては、今後、当委員会から、それぞれの河川について、順次提言をいただき、これらを踏まえて、現行の河川整備計画の妥当性を検討した上で、今後、予想される大雨にも対応できるよう、必要に応じて見直すこととしております。
なお、主要十河川以外の河川整備計画の検証につきましては、十河川の検証結果を踏まえ、検討してまいります。
次に、阿武川の河川整備基本方針等の策定についてです。
阿武川は、主要十河川の一つとして、当委員会で検証を行うこととしています。
当河川は、旧河川法に基づき策定した「阿武川水系工事実施基本計画」により、河口から約十キロメーターの河川改修と阿武川ダムの建設を実施したことから、おおむね五十年に一回程度の確率で発生する洪水を流すことができ、近年大きな浸水被害は発生しておりませんが、当委員会からの提言を踏まえ、現行の工事実施基本計画を改めて検討し、必要に応じて、河川整備基本方針や河川整備計画を策定することとしています。
次に、治水対策のお尋ねのうち、内水浸水対策事業に係る県の支援制度の創設についてです。
お示しの問田川では、河川改修に当たり、問田川に排水機場を設置すれば大規模施設となり、多数の家屋移転や工事費など、膨大な費用が必要となることから、経済性や実現性の観点から、堤防をかさ上げする方法により実施することとし、これまで仁保川合流部から整備を進め、約五キロの区間の河川改修を完成しております。
問田地区の浸水対策につきましては、山口市と協議の上、県と市の役割分担のもと、問田川からの逆流を防ぐ施設は、河川管理者である県が設置し、問田地区下水路を問田川に流すポンプ施設は、下水道の管理者である山口市が設置することとしております。
県としましては、お示しの問田地区のようなケースにおいても、内水浸水対策は、市町との役割分担で行うこととしており、新たな制度の創設は考えておりませんが、今後、市町が内水対策を実施する時期に合わせた逆流防止施設の設置や、下水道の補助事業採択に向けての国との調整、下水道計画策定への助言など、できる限りの支援に努めてまいります。
最後に、治水対策のお尋ねうち、雨水対策について四点のお尋ねです。
まず、一ヘクタール未満の開発行為に関する調整池の取り扱いについてお答えします。
一ヘクタール未満の開発行為については、調整池設置に関する指導要領に基づく調整池の設置は義務づけておりませんが、放流先の河川の流下能力が不足する場合には、水路の改修や調整池の設置を行うよう指導をしているところです。
また、お示しの、結果として一ヘクタール以上となる規模の開発については、全体として一ヘクタール以上の開発行為ととらえ、調整池の設置について指導してまいります。
これらについては、権限移譲している市町にも改めて周知することとしていることから、調整池設置に関する指導要領の見直しまでは考えておりません。
二点目は、公共事業によって増加する流出雨水対策についてです。
県が行う公共事業のうち、道路事業については、道路構造令に基づき設計をし、道路土工要綱に基づく排水計画によって、雨水排水路の断面が不足する場合には、排水路の新設等により、必要な断面を確保しております。
また、大規模な道路事業で雨水の流出量が多く、水路の新設等では対応が困難な場合などには、雨水の流出抑制対策として調整池を設置し、付近の住家、水路、公共施設等に影響をしないよう措置をしております。
また、大規模な公園事業等についても、開発指導要綱を準用し、調整池を設置し、下流の水路や河川への影響を軽減しているところです。
県としましては、今後とも、公共工事における雨水対策について、十分配慮していきたいと考えています。
三点目は、雨水処理の分散化のための山口県版ガイドラインの策定についてです。
都市部の雨水対策につきましては、市町が下水道整備を進めておりますが、近年、下水道の流下能力を大きく超える集中豪雨により、浸水被害が増大しております。このため、国は平成十八年三月に、浸水被害の軽減を図る具体的な手法を示した「下水道総合浸水対策計画策定マニュアル」を作成しました。
当マニュアルには、公共施設の地下雨水貯留施設、浸透ますや浸透側溝などの雨水の流出を抑制する施設の整備、局地排水用小型ポンプの設置、さらには、不要となった浄化槽の雨水貯留タンクとしての使用など、雨水を分散処理する対策手法が示されております。
県としましては、現在、お示しのようなガイドラインを作成することは考えておりませんが、まずは、このマニュアルの普及に努めるとともに、市町の実態に即したマニュアルの活用方法や、活用するに当たっての諸課題について検討してまいります。
四点目は、浸水被害の原因と実態の把握についてです。
治水対策を確実に進めていくためには、浸水被害について、本川がはんらんした外水はんらんか、支川がはんらんした内水はんらんか、両者が複合されたはんらんかを正確に把握することが重要であります。
しかしながら、お示しのように、現在、県や市町の各河川管理者が、浸水の原因について独自に把握をしているものの、十分なすり合わせが行われていないため、今後のより一層の内水浸水被害対策の強化に向けては、県や市町が一体となった形での浸水被害の原因や実態の把握が有効と考えます。
こうしたことから、県としましては、今後は、市町が管理する河川の浸水状況や原因などについて、情報提供を受け、双方の浸水情報のすり合わせを行い、改めて、はんらんの形態について、市町の意見も聞きながら、調査・分析を行い、その結果を情報提供することで、浸水被害の原因や実態について、県や市町間の情報共有に努めてまいります。
また、事業計画の策定に当たっては、河川の現在の流下能力や河川改修の目標流量などの情報を双方が持ち寄って協議するなど、連携・調整に努めてまいります。
以上でございます。

2010年9月30日