(2)エネルギー基本計画の見直しと上関原発について
さて、菅首相が見直しを表明した従来の計画とは、昨年六月に閣議決定したばかりのエネルギー基本計画のことで、現在五十四基ある原発を、二○三○年までにさらに十四基新設・増設し、総発電量に原子力が占める割合を五○%とする原発拡大推進の内容となっておりまして、新設の原発に上関原発も含まれております。
菅首相は、このエネルギー基本計画を見直して、太陽光・風力発電などの再生可能エネルギーと省エネ社会実現を二本柱として重視する意向を示しました。
原発への依存を減らす方向での計画の見直しは、原発の新設・増設をやめるか減らすということになるでしょうから、私は、菅首相の意向に沿ったエネルギー基本計画の見直しが行われれば、上関原発建設計画は中止になる公算が高いと見ております。
二○三○年までに新設・増設予定になっている十四基の原発は、建設の進捗度合いにそれぞれ差があって、島根原発三号機のように、既に建設は完成し、本格稼働に向けて試運転の段階のものは中止の判断が難しいかもしれませんが、上関原発は、まだ国の正式な建設許可を受けておらず、準備工事の段階で、それもまだ緒についていない状況であるので、見直しの際は、当然に計画中止の原発の対象になると思われます。
ただ、本県が、上関原発建設計画について、「国のエネルギー政策に協力し、地元の政策選択を尊重する」との従来の対応方針で終始一貫した場合、見直しによる計画中止の原発に上関が含まれない可能性もあると見ております。
県が、祝島を含む上関町全体の意思を地元の政策選択として尊重するように、国は、上関町を含む山口県全体としての意思を上関原発計画に対する地元の政策選択として尊重するものと思われます。
その県の対応方針が「地元の政策選択を尊重する」ということで変わらず、また、その地元とは上関町のことであるとの認識に変更がなく、そして、その上関町が原発誘致の方針を変えなければ、国のエネルギー基本計画見直しの際、上関町の原発誘致が、県の政策選択として尊重されることになります。
果たして、そういうことでいいのか、疑問に思うのは私だけではないでしょう。私は、上関原発計画については、上関町が祝島も含む町全体の意思に基づいて政策推進してきたように、県が、上関町を含む県全体の立場に立っての意思を明確にし、国に対して、それを表明する時期に来ていると思います。
そして、県民の多くが支持する県の政策選択は、現実的脱原発の立場に立つことであり、そういう意味での上関原発建設計画の中止であると考えます。
そこでお尋ねであります。私は、国がエネルギー基本計画の見直しを行うに当たり、二井知事が、上関原発計画の中止をその内容に盛り込むよう国に対して意見表明されることを期待するものでありますが、そうするお考えはないのか、知事の御所見をお伺いいたします。
【回答】◎知事(二井関成君)
私からは、脱原発についてとエネルギー基本計画の見直しと上関原発についての二点のお尋ねに、まとめてお答えをいたします。
これまで、国は、エネルギー基本計画において、原子力発電を我が国の基幹電源と位置づけ、安全の確保を大前提として、国民の理解と信頼を得つつ、積極的な利用拡大を図ってまいりました。
しかしながら、このたびの福島第一原子力発電所の事故を契機として、原子力発電に対する国民の信頼が大きく損なわれたところであります。
国におきましては、まずは一刻も早く事故を収束させ、事故原因の徹底究明と安全指針等の検証を行い、新たな知見に基づく安全指針等の見直しを早急に進めるべきであります。
その結果を踏まえた上で、エネルギー政策の見直しに取り組むべきであると考えております。
現在、国におきましては、このたびの事故を踏まえて、新成長戦略実現会議において、エネルギー政策について、これまでの原子力、化石エネルギーに加え、自然エネルギー、省エネルギーを柱に加えるなど、見直しの議論が始まったばかりであります。
お示しの、脱原発については、確立された定義はありませんし、国民の間にさまざまな意見がありますので、私が軽々に申し上げるべきではないと考えております。
エネルギーは、国民生活の安定向上並びに国民経済の維持・発展に欠くことのできないものであります。国の存立にかかわる重要な問題でありますから、国において、新たなエネルギー政策の中で、原子力発電をどう位置づけるのか、上関原電を含む原子力発電所の新増設計画をどう定めるのか、国民の幅広い意見を踏まえて、国民的合意を得ながら、慎重かつ迅速に議論を進めるべきであると考えております。
したがいまして、上関原電計画の中止についても、国に意見表明することは考えておりません。
いずれにいたしましても、上関原電計画につきましては、国のエネルギー政策に協力をし、地元上関町の政策選択を尊重するという基本姿勢に立って、今後の国の動向、また上関町の動向を注視してまいります。
そのほかの御質問につきましては、関係参与員よりお答えいたします。