平成24年11月定例県議会【産業政策】(4)観光力強化について

(4)観光力強化について

産業政策についての質問の第4は、観光力の強化についてであります。
先月11月12日の記者会見で、山本知事は「輝く、夢あふれる山口県」の実現に向け、「『5つの全力』関連要望」として、「産業力・観光力の増強」「人財力の育成」「安心・安全力の確保」「県民くらし満足度向上」に関する15項目を国に要望したことを発表されました。その中で最重要課題と形容詞をつけて「産業力・観光力の増強」を挙げておられます。
観光は、広い意味で産業の中に含めていいと思われるものを、敢えて「産業力・観光力の増強」と表現しておられるところに、山本知事が、特に観光に力を入れて取り組もうとしておられることが伝わってまいります。

さて、日本では、明治維新以降、産業を興して国を富ますことを最優先とし、国を挙げてさまざまな工業を興し「産業力」を高め豊かな国を実現してきました。その際、「産業力」を高める施策の実施や検討のために、国や地方自治体・経済団体の統計データが長年にわたり整備蓄積されてきていることはご案内の通りであります。そして、そうした「産業力」を数値化した統計資料は、多くの国民の納得のいく精度の高い政策の実現に役立てられてきましたし、国だけでなく、山口県の産業政策についても、いろいろな角度から議論し検討することを可能にしています。

ところが、「観光力」はいかがでしょうか。
何をもって、観光の「力」とされているのでしょうか。

平成15年2003年小泉内閣が観光立国への取り組みを重要政策と掲げ、外国人観光客数を2010年までに1000万人に増やす目標が掲げられたことは記憶に新しいところです。そして、平成18年2006年に、昭和38年に制定された旧「観光基本法」の全部を改正し、「観光立国推進基本法」が国会の全員一致で採択され、平成19年2007年1月1日に施行されました。それを受けて、平成20年2008年10月1日に国の観光庁が設置されました。
観光庁設置の大きな目的について、ホームページに掲げてあります。
「観光は、わが国の経済、人々の雇用、地域の活性化に大きな影響を及ぼすものであり、21世紀のリーディング産業となるものです。中でも訪日外国人旅行者の増加は、国際相互理解の増進のほか、我が国における旅行消費の拡大、関連産業の振興や雇用の拡大による地域の活性化といった大きな経済効果をもたらすものです。したがって、自然環境、歴史、文化等観光資源を創造し、再発見し、整備し、これを内外に発信することによって、我が国が観光立国を目指していくことが重要となっています」
ここに示されている「観光を21世紀のリーディング産業にしていく」という観光庁設置の目的は、観光が持つ多様で大きな可能性に着目したもので、成熟した日本の経済社会の将来を展望する時、望ましい方向と思われます。私は、そういう意味で、山本知事の「観光力」増強の取り組みに、大いに共感するものであります。

そこで大事と思われるのが、その観光の「力」をどのように数値化して表現するか、納得のいく数値で県民に示すかということではないでしょうか。提示される観光の「力」を示す数値をもって、他の観光地との比較や経年での変化をとらえ、検討してこそ、有効な観光政策が実現できると考えます。

山口県では、前知事のもとで平成21年2009年10月から推進している「山口県年間観光客数3千万人構想実現アクションプラン」があります。成果については、報告書等で示されている通りです。
しかし、そこで扱われているいくつかの数値、観光客の動向に関する数値の意味と実態には、客観的な評価の観点から疑問が持たれています。包括的な体系が構築されていない、基準が統一化されていないため地域間比較が不可能で、標本数が少なく分析に必要な精度が確保できないなど、いくつかの問題点があるからです。

観光庁においては、観光地の開発や活性化、外国人観光客誘致のプロモーションが活発に行なわれています。しかし、その一方で、政策の基本となる観光統計の整備も実施しています。観光庁設置後、承認統計として「宿泊旅行統計調査」と「旅行・観光消費動向調査」が実施されています。

そこでお尋ねです。今後、山口県が観光力の増強を実現するためには、観光に関する客観的で有効な統計数値の把握が重要であり、これを効果的に活用し、より実態に則した政策が立案・実行・検証され、より質の高い観光政策の実現と各地域における魅力ある観光地づくりが推進される必要があると考えますが、ご所見をお伺いいたします。

【回答】◎地域振興部長(渡邉繁樹君)
観光力強化についてお答えします。
観光政策の推進に当たっては、お示しのとおり、客観的で信頼性の高い統計データをもとに、的確に実態を把握し、マーケティングや観光戦略の企画・立案を効果的に進めていくことが重要です。
このため、本県においては、昭和四十四年から、市町の協力を得て、県内の観光地や宿泊施設を対象とした観光客動態調査を実施しており、その調査結果や、国が平成十九年以降順次整備をしてきた宿泊旅行統計などのデータも活用しながら、県内への観光客・宿泊客の実態把握や施策の検証等を行ってまいりました。
しかし、こうした国や県の観光統計については、それぞれ調査項目や方法などが異なっているほか、県の調査については、県独自のものであり、全国的な比較が難しいこと、また、国の調査については、市町ごとの実態や出発地別の分析が困難などの課題を抱えております。
このため、今後、年間宿泊観光客四百万人の実現に向けた戦略の検討に当たり、県の観光客動態調査について、市町ごとの調査方法の標準化を図るなど、その精度の向上を図りつつ、国の統計数値との関連を整理し、的確でわかりやすい統計となるよう改善を行いたいと考えております。
その上で、実態に即した目標の設定や、効果的な誘客対策、観光地の魅力向上など、各地域との連携による、より戦略的な観光政策の企画・立案を行い、観光力の強化を図ってまいります。

2012年11月30日