(2)人的支援について
宮城県の南三陸町は、東日本大震災で津波による被害の程度が最も大きかった町です。
人口が、1万7千名余の町で死者・行方不明者793人、被災家屋は、流失・全壊・半壊以上が全家屋の6割に及び、最多時には、住民の半数以上が避難生活を余儀なくされました。
平地にあった建物は、住宅や民間施設だけではなく、町役場、警察署、公立病院等の公的施設も含め壊滅し、町職員も36名が犠牲になっています。その中には、津波に飲み込まれる直前まで避難を促す放送をし続けた女性職員もいました。
私は、この南三陸町を2月14日に、昨年の4月と10月に続いて3度目になりますが訪ねまして、復興に向けての取り組み状況や課題等について伺ってまいりました。
町役場では、総務課長や復興企画課長に対応いただきましたが、最も強調しておられたのは、用地関係の行政職員の人的応援が欲しいということでした。
南三陸町は、住まいや公共施設の高台移転を骨子とする復興10カ年計画を策定し、「復旧しながら復興する。」との考えで、復旧と復興を同時並行で進めており、通常年間予算70億円から80億円の町が、平成24年度は当初予算が350億円を超え、これまでの5年分に相当する予算規模を1年で執行することになる見通しであります。
多くの職員を津波で失った上に、復興に向けて膨大な仕事に取り組んでいかねばならない、南三陸町が人的支援を何にも増して強く求めている所以であります。
こうしたことは、南三陸町のみならず被災地の多くの自治体にとって共通する切実な課題です。
災害発生時の緊急対応としての人的支援が一段落した今日、次には、復興に向けての人的支援が求められています。
昨年12月20日、全国知事会は、被災三県の知事からの要請を受けて、各都道府県知事あてで、平成24年度における被災三県への復旧・復興のための職員派遣を依頼しております。
また、同12月26日、国土交通省 中国地方整備局長は、山口県知事あてで、特に土地区画整理事業及び防災集団移転促進事業に関し、当該分野における人的支援の積極的検討と、派遣可能人員等についての回答を依頼しております。
こうした人的支援の要請に、本県も可能な限り応えていくべきであると考えます。つきましては以下、人的支援について3点お尋ねいたします。
第一点は、東日本大震災発生後、今日までの本県の人的支援の実績についてお伺いいたします。
第二点は、被災地復興に向けた、これからの本県の人的支援の方針についてであります。国土交通省 中国整備局からの依頼にどう回答したのかも含めお伺いいたします。
第三点は、民間のマンパワーを活用する対策の提言についてであります。
災害時の自治体間の職員派遣は、今回の震災対応も含め地方自治法252条の17「職員の派遣」についての規定に基づいて行われています。
この制度は、これまでそれなりに有効に機能してきたと思われますが、今後の震災からの復興に向けての職員派遣は長期間にわたることが予想されますことから、この制度による人的支援には限界があるものと思われます。
自治体には、職員定数の縛りがあり、復興期間だけの職員採用ということも難しいと思われるからです。
一方、被災地自治体は復興に向けて、特に土地関係の専門的なマンパワーを通常時に増して数多く必要としております。
こうしたマンパワーの需給のギャップを解消する対策として、民間の力を活用する方策が考案されて然るべきと思われます。
私なりに常識的に思いつくことは、民間で土地関係の仕事をしている人達で震災復興のために働こうという方々のために、公共事業の用地関係の仕事をする際、修得しておくべき事項を教育する機関を設立して、そこから被災地へ人材を供給するということです。そこで学び、復興のために働いたことは、復興後、民間で土地関係の仕事をしていく上で役立つと思われますし、公務員の場合のように、長期派遣が終わった後の処遇の問題は生じません。
いずれにせよ被災地自治体が、復興に向けて必要なマンパワーを確保するには、地方自治法による職員派遣制度では限界があり、それを補完する民間のマンパワー活用の対策が不可欠と思われます。
つきましては、被災地復興に向けたマンパワー確保の対策として、行政の専門職員と同じように土地区画整理事業等の仕事に従事できる民間人の養成と活用を、国に提言すべきと考えますがご所見をお伺いいたします。
【回答】◎総務部長(平尾幸雄君)
東日本大震災復興支援についてのお尋ねのうち、人的支援についてお答えいたします。
まず、本県の人的支援の実績につきましては、発災直後の避難所の運営支援を初め、これまで福島県を中心に、被災三県に対して、各種技術職員や事務職員を実人員で四百人、延べ人員で約五千百人・日を派遣しております。
次に、今後の人的支援についてでありますが、県としては被災県のニーズに対応した即戦力となる人材を一人でも多く派遣したいと考えており、全国知事会等の要請にこたえるため、他県に先駆けまして、派遣可能な職員を庁内から公募するとともに、職員の職務経験が生かせるよう、受け入れ県と配属先の調整等を行ってまいりました。
この結果、来年度は福島県に十名、岩手県へ四名、宮城県へ二名の合計十六名の職員を一年間派遣することとしており、このうちお尋ねの中国地方整備局の要請に対しましては、土地区画整理事業の支援要員として、土木技術職員一名を岩手県宮古市に派遣することとしております。
次に、民間のマンパワーの活用についてでありますが、現在、被災自治体では、復興に向け増加する業務に対応するため、任期のある職員の採用や民間委託など、さまざまな取り組みがなされているところです。
したがって、お示しのような民間人の活用も含めた復興業務に当たる人材確保の方策につきましては、先般、国に設置された復興庁や復興局が被災自治体と連携し、そのニーズを踏まえながら検討されるべき課題であると考えており、本県として国に提言することは考えておりませんが、今後とも被災地復興に向けた人的支援の要請に対しては可能な限り対応してまいります。